「どこ、ここ?」
ボクの口からそんな言葉が漏れたのもしょうがない。なぜならボクはいつの間にか真っ白な部屋にいたからだ。
ボクの服装は寝間着、目の前には3つの扉がある。
それらの扉にはプレートがつけられており、それぞれ『専属』『湿度』『スピカ』の文字がかけられていた。
ワケがわかんないよ
『専属』?『湿度』?『スピカ』?
扉につけるには合わない単語たち
ワケわかんないのはそこだけだけじゃない。
そもそも、こんな部屋にボクが来た覚えはない。
ボクはぼんやりとした意識を手繰り、思い出す。
この部屋で目を開ける前の記憶は、確か入学式を終え、初めての寮生活が始まり、同室となったマヤノトップガン……そういえばマヤノって呼ぶことにきめたんだっけ
そんなマヤノとおしゃべりして、好きなこと、夢のこと、憧れのことを話しながら眠った記憶がある。
つまりこれは…
「夢ってこと…?」
ボクがそう呟くと、ぼんやりとしていた意識がはっきりした。
それと同時にこれが夢だとボクははっきり認識できた。
そういえば眠る前にマヤノトップガン…マヤノが言っていた。
夢の中で夢と認識できる特別な人がいることを。そしてそんな人は夢を自由に作り変えることができるのだと。
『だからマヤは夢でブーンって飛ぶの結構好きなんだぁ〜』
『時々指をパチンって鳴らして風景を変えたりしながらね』
そんな事を言ってたっけ
つまり、ボクもまたその特別な人間なのだろう
「まぁ、テイオー様ならこんな事、お茶の子さいさいだね」
ボクはそう自慢げにふふんと息を鳴らすと、こんな辛気臭い部屋をもっといい部屋にするべく指をパチンと鳴らした…
…
……パチンと鳴らした
………あれ?
「あれぇ?なんで…?」
いくら変えようとして見ても夢が変わらない。
…どうやら、認めたくないけれど、ボクはまだ未熟で夢を思い通りに変えることができないらしい。
「む〜」
無性に悔しくて、つい唸ってしまう。
まさかトレセン学園に入って、最初のつまずきがこんな事だとは思いもしなかった。
だけどいくら唸っても状況は変わらない。
はぁとため息をつき、ボクは3つの扉を再度見る。
……なんとなくだけどわかってはいた。
夢だと認識した時、この3つの扉を開けなければこの夢は終わらない事を。
なんでトレセン学園に入学して初日からこんな目に合わなければならないのだろう?
そんな陰鬱とした気持ちがボクの心に浮かぶけど、ボクは両手で頬をパチリと叩き気合を入れた。
いくら鬱々としてもしょうがないし、そんなのボクらしくない
ボクは無敗の三冠バになるトウカイテイオー。こんな事で怖気付くわけがない。
早速ボクは一つ目の扉「専属」を開いてみることにした。
さて、部屋の中に何があるんだろう…?