テテテーテテイオー   作:haguruma03

6 / 6
トウカイテイオー

芝の匂いが鼻腔を擽る。観客の声援が耳に入る。妙に体が軽く、今の自分が最高のコンディションであるのがわかる。

 

「…あれ?」

気がつくとボクはゲートの中にいた。

着ている服はボクの勝負服。

あたりを見渡すと、そこは見覚えのある光景で…あ、ここ中山競バ場だ。

 

すぐにボクは気がついた。

そりゃ気がつくよ、だって今日ボクはこの競バ場を走り終えた。

トゥインクルシリーズの最後を飾る有馬をボクは走り終えたのだから。

 

あのレースはとても満足のいくレースだった。最高のレースだった。

心残りなんて一つもない。

 

…でも、ならば何でボクはこんな夢を見ているのだろう?

 

今回のレースどころか、トゥインクルシリーズで走った全てのレースに心残りのあるレースなんてボクはない。

 

だから、もう一度やり直したいなんて思うはずもなく、こんな有馬を再現した夢なんて見るつもり全くないのに何で……?

 

 

ガシャン

 

 

ゲートが閉まる音が聞こえた。

音は3つ。

誰かが発バ機に入った音だ。

 

いったい誰が…

 

ボクはそう思い、そちらに目を向けて……あぁなるほど

 

ボクは3人を見て納得した。

 

どうやらさっきボクが考えていた事はある意味間違いだったらしい。

確かに走り抜けたトゥインクルシリーズに心残りはない。

全部全力だった。

戦った全ての勝負に悔いはなかった。

 

だけれど、戦えなかった3つの勝負がボクにはあった。

勝負ができなかった心残りが3つあった。

 

思わず笑ってしまう。

前といい今回といい、本当にこの夢を…いや、彼女達と勝負できるボクは幸せだなって思う。

 

なんたって、こんなレース、今までいた全てのウマ娘にとって初めてに違いない。

 

 

「おぉ、前と違って余裕があるねボク」

負けを知らぬ、赤い勝負服を着た『最強』のウマ娘が生意気そうな笑みを浮かべる

 

「…ん、やっぱり。トレーナーの匂いがするねボク」

恋を知った、青い勝負服を着た『最愛』のウマ娘がじっとりとした空気を纏う

 

「…君も走り抜けることができたんだね、ボク」

諦めない心を持ち、夢を掛けた白い勝負服を着た『最高』のウマ娘が優しげな視線を向けてくる。

 

3人ともベテランのウマ娘達。

同じ夢を持ちながら全く違う道を歩んだアスリート達。

同じ所と同じぐらい違う所を持つ、似てはいるけど違う存在。

 

そんな彼女らがボクに同じ視線を向けてくる。

 

それは出会った時に、心くじけそうになっていたボクに向けていた視線とは違う。

好敵手へと向ける眼差しだ。

 

ボクは今、彼女達にとって敵として見られている。

同じ場所に立つ存在、自分を負かすことができる存在として見てくれている。

 

 

それがボクはとても嬉しかった。

 

彼女達に言いたいことは山ほどある。

感謝したいという気持ちは溢れるほどある。

あの後どうなったのか、どうトゥインクルシリーズを走り抜けたのか、一緒にお喋りしたい気持ちは止まらない。

 

けれども、それは後回しだ。

今はやるべきことがある。そして言うべきことがある。

それは…

 

「ボクが、一番のトウカイテイオーだ」

 

ボクはそう言い、構え前を向く。

ボクの挑発といってもいい言葉に返信はない。

代わりに聞こえるのは同じように構える音が3つ。

 

ボクは見なくてもわかる。

ボクも僕も僕も僕も、笑っている

 

最高の相手、最高の場所、最高のコンディション。

勝負の舞台としては完璧な舞台だ。気持ちが高ぶって止まらない。

 

あぁ、勝ちたい、勝ちたい、君たちに勝ちたい!!

 

次の瞬間ゲートが開いた

 

ボクは我先にゲートから飛び出し、叫んだ

 

「さぁ、勝負だぁあああああ!!」

 

 

 

<完>

 

 

 

 

 

 

 

 




*あとがき

この度は『テテテーテテイオー』を読んでいただき本当にありがとうございました。
そして、誤字脱字報告、感想、評価をしてくださった皆さん本当にありがとうございます。

正直ここまでお気に入りが入った作品は初めてなので、こんなに人が見てくれたのはとても嬉しく、感激いたしました。
日々いただく感想や評価、誤字報告に力をもらいました。

今年は色々と忙しく、全くSSかけていなかったところに、ふと空いた時間ができたので、何となく思いつくままに描いた作品が、今まで書いたSSの中で一番人気になるなんて思いもしていませんでした。
まさか3月に書いたハリボテエレジーSSを追い抜かすことになるとは…

長編を書くのが苦手で、執筆速度も遅い私ですが、また次回の作品などで出会うことがあればその時は宜しくお願いします。


*プロット

『このSSを書いたわけ』
ボボボーボボーボボ読み返してたら頭の中でテテテーテテーテテという単語が思いついた。
たまたまその時に時間があったので久しぶりにSSを書いてみた。
なんで『テテテーテテーテテイオー』じゃなくて『テテテーテテイオー』になったかというと、そんなに長い話とそんな数の様々なテイオーを出して話をまとめる気力と力量がなかったから。

ボーボボ期待して見に着てくれた皆さんごめんなさい。


『主人公テイオー』

テテテーテテイオーの主人公。
元ネタはネットで見たウマ娘の超初期案だと思われる『プロトタイプテイオー』
『皇帝』が母親って書かれてて、アニメから入った身としては割とびっくりした。
あと、割と感想欄で『プロトタイプテイオー』を知っている人がいてびっくりした


『専属テイオー』
我らがアプリテイオーが元ネタ
アニメみたいに成長するかと思ったらまさかの、最後まで我輩テイオー様でちょっと笑ったけど、これはこれで可愛い
よく育ててるけど、チャンミで使う機会がなかなかなくて悲しい。
あと赤テイオー欲しい。


『湿度テイオー』
二次創作でよく書かれるしっとりテイオーが元ネタ
とはいえ、あまり重くヤンデレなのは違うな〜と思ったのでマイルドに。
ウエディングテイオー待ってます

『スピカテイオー』
言わずものがな。アニメテイオー。
何度見ても二期ウマ娘は神アニメ。



▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。

評価する
※目安 0:10の真逆 5:普通 10:(このサイトで)これ以上素晴らしい作品とは出会えない。
※評価値0,10についてはそれぞれ11個以上は投票できません。
評価する前に 評価する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。