スライムですが、なにか?   作:転生したい人A

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転生の真実

『もしもし、Dです』

 

 急に現れたスマホから予想通りの人物の声が聞こえてくる。

 

 ああ、やっぱり。

 

『お久しぶりです。急にどうしたんです?』

『お久しぶりです、スライムさん』

『あーあー、聞こえない、聞こえない』

 

 私がDに挨拶していると、蜘蛛子ちゃんは耳?を押さえて現実逃避している。

 そんなにDと話すのが嫌なのだろうか?

 まあ、世界最悪の邪神と自称するようなやばい神と関わりたくないんだろうけど。

 

『あー、何ということでしょう。私の手になぜか蜘蛛自爆ボタンが』

 

 Dの言葉を聞いた瞬間の蜘蛛子ちゃんの行動は速かった。

 糸でスマホを引き寄せると、先ほどまで前足で塞いでいた耳?に当てる。

 

『しもしも、ごめんなさい!許してぇ!押さないでぇ!ていうか何そのボタン!?』

『冗談ですよぉ。ボタンなど無くても蜘蛛を汚い花火に変えるくらい出来ますから』

 

 Dの全く抑揚のない声で言われても冗談には聞こえないだろうねぇ。

 まあ、本当にそんなもの無くても私達なんて消せるだろう。

 

『ご安心を、こんな面白おかしい人材を無駄に散らすようなことはしません』

『そうっすか、光栄っす。あはははあははは・・・・・・』

『あはははは』

 

 蜘蛛子ちゃんの乾いた笑い声と本当に笑っているのかと思うようなDの笑い声が重なる。

 

『じゃあ、そういことで』

 

 蜘蛛子ちゃんはスマホを置くと、どこかに歩いて行こうとする。

 

『自爆』

『ごめんなさい!?』

 

 そんなに怖いなら大人しく話を聞けばいいだろうに。

 

『そもそもDが爆発させるなら自爆じゃなくて爆破じゃないの?』

『ああ、そうですね。だとしたら、自爆ボタンではなく爆破ボタンですね』

『どっちにしろ嫌だよ!?』

『ほら、蜘蛛子ちゃん、落ち着いて、深呼吸しようか。ほら、ヒッヒッフー、ヒッヒッフー』

『ヒッヒッフー、ヒッヒッフー』

 

 私の言葉に蜘蛛子ちゃんが合わせるように深呼吸をする。

 

『産卵のスキル獲得できた?』

『こんなことで出来るわけないでしょ!?』

『え、出来てないの?D、今のは獲得させるところでしょ』

『おお、これは失礼しました。次の機会があればさせますね』

『しなくていいよ!?』

 

 いやぁ、蜘蛛子ちゃんも元気になったねぇ。

 それじゃあ、そろそろ本題に入りましょうか。

 

『それで、今回は何の用なの?』

『単なるお祝いですよ、お二人が不死に至った』

『お二人?』

『はい、蜘蛛さんもスライムさんも不死になりました』

 

 蜘蛛子ちゃんも不死になってたんだ。

 

『ねえ、この不死って、なんでこんなスキル作ったの?』

『人は満たされると最終的に何を目指すと思います?』

『え?』

 

 どうやら蜘蛛子ちゃんには不死のスキルが存在している意味が分からないようだ。

 この世界のシステム的にはあっておかしくないスキルなのにねぇ。

 

『流石、スライムさんですね。蜘蛛さんに分かるように言いますと、富、名声、武力、権力、そして不老不死。どこの世界でも人の目指すものなんて、その程度です。そして、それが本当に手に入ると知ったら、どうすると思います?』

『ああ、そういうこと』

 

 今の問いで蜘蛛子ちゃんも分かったようだ。

 

『そういうことです。たとえ手が届かないとわかっていても、人は縋りたくなるものです。何を犠牲にしてでも。そうして頑張って頑張って、結局は手に入れられずに力尽きる。その頑張った結晶は管理者が美味しく頂く。実に効率的だと思いません?』

『流石、世界最悪の邪神様ですね。人の欲や感情をよく理解してますね』

『そうでしょう』

 

 本当に、人の欲や感情をよく利用したシステムだこと。

 

『じゃあ、それ私達ポンと手に入れちゃったんだけど、どういうこと?』

『ザナ・ホロワとアストラル・スライムは不死の魔物という設定なんです。まさか、本当に進化してしまう個体が出てくるとは予想していませんでしたが、おめでとうございます。あなた達は世界で唯一のユニークモンスターになりましたぁ。パチパチパチー』

 

 蜘蛛子ちゃんのザナ・ホロワは知らないけど、そもそも私以外のスライムを見たことないんだけど、ユニークモンスター以前に他に存在してるの?

 

『はい、その世界にスライムは存在していますよ。スライムはその世界で唯一自然発生する魔物なんですが、条件が厳しくてあまり数がいないんです。分裂出来るまで強くなる前に他の魔物に殺されることが多いため、本当に数が少ないんです』

『なるほど、つまり、私は自然発生したスライムというわけねぇ』

『はい』

 

 こんな迷宮だと他のスライムは発生してもすぐに殺されそうねぇ。

 転生者の私だから生き残れたわけねぇ。

 

『スラちゃんは希少なスライムだから不死を獲得できたってこと?』

『いえ、そんなことはありませんよ。そもそもアストラル・スライムに進化する条件を満たすことがかなり難しいんです。なので、スライムだから手に入ったというわけではないですよ』

 

 まあ、あんなふざけた条件をクリア出来るのなんて悟りとかいう成長チートがないと無理でしょうね。

 

『え?じゃあ、私は?』

『ザナ・ホロワに関しては進化する前に死ぬように出来てたんです』

『え?何それ?』

『ゾア・エレには腐蝕攻撃がありましたね?けれど、腐蝕耐性はありませんでした』

『そうなの?』

『えっと、多分』

 

 大分前のことだから忘れてるね、これは。

 まあ、私もどの進化で何のスキルが手に入ったかなんて覚えてないけどねぇ。

 

『はい。ですから、普通のゾア・エレは腐蝕攻撃を使った瞬間、自分も死ぬことになります。良かったですね。耐性を持っていて』

『危な!?マジかー、私知らないうちに死にかけてたのかぁ』

『だから、腐食無効は持っておいた方がいいって言ったのに』

『スライムさんの取り方は正気を疑いますけどねぇ』

『な!?世界最悪の邪神に正気を疑われるなんて・・・・・・』

 

 私は何もおかしいことなんてしてないというのに。

 

『失礼な、私は正気ですよ。人から正気を奪うのが私です』

『なるほど、あの時、私はDに正気を奪われていたのか』

『いやだなぁ。人のせいにしないでくださいよぉ。スライムさんが勝手に正気を失っただけです』

『私は生まれてこのかた正気を失ったことはないよ』

『そうですね。スライムさんはそういう人でした』

 

 ん?どういう意味?

 

『結局、あんたの目的って何?』

『言ったはずですよ、娯楽だと』

 

 まあ、そうでしょうね。

 純粋な悪意の塊みたいなDが、人助けなんて目的でこんなことするわけないものね。

 

『でも、今日は気分がいいので、それなりにサービスして色々とレクチャーして差し上げましょうか?』

『おぉ!マジっすか、じゃあ何で私達この世界に転生したの?』

『ああ、あの光の正体がなんだったのかは気になるかな』

『ご説明しましょう、あなた達は地球の日本で死にました』

 

 それは分かってるって。

 

『それは先代の勇者と魔王が関係しています。両者ともに次元魔法の天才的使い手で世界の壁を越える魔法を編み出してしまったのです』

『なにそれ、すっげ』

『ええ、ただシステム外の技術に対してシステムの補助は働かないのです。彼らには次元を越えるという高度な術式を補助無しでは制御できませんでした。結果、術式は暴発、しかも世界の壁を越えた先、地球の日本のとある場所で爆発してしまったのです』

『なるほどねぇ』

 

 それがあの時見た光の正体ってわけかぁ。

 

『つあり、それが・・・・・・』

『そう。あなた達の高校の教室です』

『なんてはた迷惑な!』

『全くです。勇者と魔王が暴走した結果とは言え、私は作ってから放置していた、その世界のシステムを点検し直す羽目になりました』

『作って放置!製作者の怠慢!』

『その世界を管理するのは管理者、私はシステムを提供しただけの部外者です』

 

 その割にはかなり干渉している気がするけどねぇ。

 

『それはまあ、何の罪もない高校生達が、私が構築したシステムに巻き込まれて死んだわけですから』

『高校生達?』

『はい、爆発で死んだのは教室にいた26人。私はその魂を保護し、記憶をそのままにその世界で生きて行けるようにスキルを付与しました。後は、適性に合うスキルを一つずつプレゼントし、なるべく魂の波長が近い種族に転生できるように斡旋しました』

『ん、んん、私、蜘蛛だよね』

 

 それを言ったら私はスライムなんだけど。

 スライムに波長が近いってどんな魂よ。

 

『まあ、余程波長が合ったんでしょうねぇ。他の人は大半が人族に転生してますよ』

『ノー、なんでやねん!私だって人間に生まれたかったわ』

 

 Dの言葉に蜘蛛子ちゃんが床を転げまわる。

 そんなに人に生まれなかったのが悔しいのだろうか?

 

『ですが、こうしてフライング気味に活動できているわけですし、あながち外れとも言い難いですよ』

『フライング?』

『蜘蛛子ちゃん、多分思ってるのと違う』

『他の方々はまだ赤ん坊です』

『ああ、フライングってそっちか』

『生まれるのも人族より早かったですしねぇ』

 

 魂が肉体に入ってから生まれるまでの時間の差かな。

 スライムの私はどうなのか知らないけど。

 

『さっき、26人が転生したって言った?』

『はい、そうですよ』

『教師入れたら27人じゃないの?』

『ああ、それは私が転生してないからですね』

『はあ!?あんた教室にいたの!?名前は!?』

『秘密です』

 

 なるほど、そういうことねぇ。

 まあ、Dの正体についてはいつでも分かるし今はいいか。

 

『名前はともかく、システムの製作者の私がいたから勇者と魔王の魔術があの教室に開通してしまったんです』

『あんたが原因の一部ってことだよねぇ』

『おそらく、私を倒すつもりだったんでしょう』

『邪神を撃つために勇者と魔王が手を組むとは、熱い展開だねぇ』

『管理者を敵と見なしている勢力がいるようですねぇ。先代の勇者と魔王は彼らにそそのかされたのではないかと』

『ああ、ただの馬鹿だったかぁ』

 

 まあ、人類側からすれば苦しめられてるから間違いではないだろうけどねぇ。

 その原因が自分達にあるのだから自業自得だけどさぁ。

 世界の真実を隠せば簡単に騙せそうだねぇ。

 

『まっ、転生して何をするかはあなた方次第。これからも面白く見させていただきます』

『いや、見るなし』

『あなたちのこれからを期待していますよ。特に蜘蛛さんは彼女に勝てることを祈ってます。願わくばもっと私を楽しませてくださいね』

 

 言いたいことだけ言ってスマホが消える。

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