スライムですが、なにか? 作:転生したい人A
「はい、あー」
「「「「「あー」」」」」
「はい、いー」
「「「「「いー」」」」」
何もない荒野に人形達とソフィアの声が響き渡る。
サリエーラ国の首都でソフィアとメラが故国を捨てることを決断してからおよそ一年が経った。
今私達はサリエーラ国の北にある小国家群、その中にある広大な荒野にいる。
荒野の空には鳥と爬虫類の中間みたいな竜と龍が飛んでいる。
アリエルさんが大声で通るだけだからと伝えたことで、龍の群れに襲われることなく荒野を通れている。
鳥みたいで美味しそうなのもいるけど、アリエルさんに止められてるからねぇ。
一、二匹食べても怒られない気がするのだけど、ダメなのかなぁ?
「はい、うー」
「「「「「うー」」」」」
アリエルさんに続いて声を出している人形達とソフィアに視線を向ける。
ソフィアはすでに赤ん坊とは言えないくらいに成長しているが、念話で話し続けていたために舌足らずになってた。
そして人形達は私と白ちゃんで作った疑似声帯を埋め込んだことで発声出来るようになった。
しかし、発声できるようになっただけでしっかりと話すことが出来るわけじゃない。
だから、ソフィアと一緒に人形達も発声練習をしている。
そういえば、私人化した時に発声練習何てしてないな。
そもそも人化したとは言え、中身はスライムなのに声帯なんてあるのかな?
どうでもいいことを考えながらメラに視線を向ける。
メラは虫の息で死にそうな顔しているが、それでも必死に歩いている。
一歩歩くごとに岩盤上の硬い地面に足跡を残しながら必死に歩いている。
一年以上の間、私が死ぬギリギリまで追いつめ続けているため、メラのステータスはかなり上がっている。
今のメラなら竜にも勝てるでしょうねぇ。
いやぁ、一年でそれなりに強くなってくれて私は嬉しいよ。
まあ、私がアリエルさんと全力戦えば余裕で超える程度の成長だけどねぇ。
本気で修行した時は一年で万単位でステータスが上がってたしねぇ。
私とメラじゃ転生者である以前に、チートな成長補正がないから仕方ないんだけどねぇ。
ここ最近私が一番気になっているのはソフィアの妬心のスキル。
メラが他の子と仲良くしてると目が据わってくる。
白ちゃん曰く、ヤンデレらしいソフィア。
私がメラの修行でメラの体に触れている時なんか、すごい目を向けて来る。
よく目にそれだけの感情を込められるものだよ。
私の目なんてどんなに頑張っても感情何て込められないのにねぇ。
どうでもいいことは置いておいて、ソフィアの妬心は七大罪系スキルらしい。
七大罪系スキルは精神に影響及ぼす危険なものらしい。
白ちゃん二つ持ってるけど、そこのところどうなんでしょうかねぇ。
そもそも支配者スキル五つ持ってる時点でチートだよねぇ。
私なんて悟りの影響で他の支配者スキル取れないのに。
私としては嫉妬のスキルが精神にどれだけの影響を与える分からないが、取れるものは取った方がいいと思う。
そもそもメラの惨状を見て嫉妬する方がおかしいと思うが、そこは考えないでおこう。
あら?この反応は・・・・・・
ソフィアのスキルについて考えていたせいで、注意が遅れてメラが落ちていく。
どうやら足元に空洞があったせいで地面が薄くなっていたようだ。
白ちゃんがメラが落ちた穴に近づいたことで直接穴の中の様子が見えた。
メラは無傷なのが見える。
この程度の高さから落ちて怪我するような優しい鍛え方はしてないので当然の結果かぁ。
それよりも。
私達が穴を覗き込んでいると、メラに巨大な蟻が近づいて来た。
空洞の正体は蟻型の魔物の巣だったようだ。
蟻は雑魚だし、メラでも余裕で殲滅できるけど。
レベル上げはステータス向上系のスキルを上げてからにした方が良いよねぇ。
なら、あいつらは私が殲滅しようかなぁ。
蟻の殲滅を決めて私が白ちゃんの背中から降りようとすると、アエルが穴に飛び込んでいった。
アエルは人形達の中でも率先して動く行動派で、人形達のリーダー的存在。
率先して動いて、ちゃっかり美味しいところを持っていくこともある。
アエルが飛び込んだ後に、リエルとフィエルが飛び込む。
サエルはそれを見送ってちょっとオロオロとしてから飛び込んでいく。
サエルはアエルとは正反対で、人形達の末っ子的存在でおどおどした性格をしている。
あんな格下に躊躇するのは少し心配だけどねぇ。
まあ、可愛いから良いかなぁ。
人形達が突撃したことであっという間に蟻の殲滅が終わる。
正直、メラでも余裕の相手に人形達が出たのだから蟻が蹂躙される以外ありえないのだけどねぇ。
白ちゃんが蟻の死体を回収するために下に降りたので、私も蟻を空納にしまいながらメラに声を掛ける。
「メラ、まだステータス向上系のスキルレベルが低いから本格的なレベル上げはまだ先」
「分かりました」
人形達に蟻を殲滅されたことで剣を抜いた意味がなくなり呆然としていたメラは私の言葉で納得したようで剣をしまう。
「災難だったね。怪我はない?」
「はい、大丈夫です」
「よかったよかった。じゃあ、上に戻ろっか」
メラがアリエルさんが垂らした糸につかまり登ろうとするのを見てると白ちゃんが蟻の巣の奥に進んでいく。
あら?どうしたんだろう?
蟻の巣の奥に何かあるのかな?
「うん?白ちゃーん?どこ行くのー?」
アリエルさんの呼びかけを無視して進んでいく。
やっぱり、奥に何かあるのねぇ。
アリエルさん達は互いに顔を見合わせ、不思議そうに首を傾げる。
しかし、白ちゃんが止まらないと慌てて追いかけて来る。
「へいへーい?白ちゃん、聞こえてますか?どうしてそっち行くのかな?」
白ちゃんはアリエルさんの言葉を無視して土魔法を使い真下へ続く穴を開ける。
そして何の説明もないまま穴に飛び込む。
穴は下の通路に繋がっていたようで、そこにいた蟻を邪眼で瞬殺して空納にしまっていく。
こんな蟻を回収するために来たわけではなさそうだしねぇ。
一体、何が気になっているのだろうか?
「青ちゃん、白ちゃん止めてよぉ」
「黙ってついて来る」
「はい」
白ちゃんを止めてくれとアリエルさんから助けを求められるが、即答で断る。
すると、アリエルさんは諦めたようで肩を落として落ち込む。
メラがアリエルさんを励ましているが、気にせずに白ちゃんは進んでいく。
最終的に女王蟻の元まで来て殲滅する。
「何してんのさ、白ちゃん。むやみやたらに生態系を破壊するのはよくないって思うな」
「思うだけなら変わらないので黙ってください」
「青ちゃん、酷くない!?」
後を追って来たアリエルさんの呆れ気味の苦言を一蹴して白ちゃんの様子を見る。
「ほら、帰るよ」
「まだですよ」
「ええ?」
帰ろうとする魔王に白ちゃんの代わりに答えてあげると、うんざりしたような声が帰って来た。
他の面々は白ちゃんの行動にうんざり、というより怪訝な顔をしている。
多分、白ちゃんの目的はこの下にある。
さて、面白いものが見つかるといいなぁ。
白ちゃんがさらに掘り進めたことで、漸く私にも白ちゃんが何を見つけたのか分かった。
そして私と同じで探知がカンストしてる魔王も気づいたようだ。
「白ちゃん、これって」
魔王の緊迫感満載で真剣な面持ちの呟きに、他の皆もただ事ではない空気を感じ取ったみたい。
これは、面白いものが出て来たねぇ。
流石は白ちゃん、面白いことが向こうから寄ってくるみたいだよ。
私が心の中で喜んでいると、目的の場所に到着したようだ。
かなり深くまで掘り進めたようだし、私でも途中まで気づかなかったほどだ。
いくら探知がカンストしても見つからなかったもの。
「え?」
それを見た瞬間、ソフィアが思わずといった感じで口を開いた。
まあ、仕方ないことだと思う。
私達はこれが何か知っているのだからねぇ。
この世界の文明の技術ではありえない立派な金属の扉。
アリエルさんから聞いた文明崩壊前の遺跡。