スライムですが、なにか?   作:転生したい人A

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神の領域へ至った者達

「本当にあなた達は面白い」

 

 綺麗だけど感情を感じられない平坦な声が、すぐ近くから聞こえた。

 その声を誰が発したのかはすぐに分かった。

 だから、私は心を空っぽにして何も考えずに寝たふりをする。

 

「まさかあそこで食べるなんて行動に出るとは。流石の私にも予測不可能でしたよ」

 

 相変わらず、全く感情を感じられない平坦な声で話し続ける。

 どうしてここに居るのか、その気になれば予測出来ただろうにと思うことをせず、何も考えずに聞き流す。

 

「あのままだと爆発する恐れもありましたので、一時的に私のところに避難させました。爆発せずに無事力をものにしたようなので、杞憂でしたが」

 

 話の内容だけは理解して、一切反応しない。

 変に反応すれば喜ばせるだけだと、知っているからこそ何も反応しない。

 声は白ちゃんの疑問に答えているようだ。

 

「スライムさん、無視し続けるのは酷くないですか?」

 

 ・・・・・・・・・・・・

 

 白ちゃんへの話が終わったのか、私に話しかけて来る。

 当然、何の反応も示さず無視を続ける。

 

「まあ、スライムさんには説明する必要はありませんね」

 

 どうやら私には何の説明もしないようだ。

 ひたすらに無視を続けていると、いきなり背後から抱き着かれた。

 

「スライムさんが無視を続けている間に好きなだけ体を触らせてもらいますね」

 

 無視をやめたところでやめるつもりはないでしょうに。

 邪神の言葉に少し呆れた感情を出してしまったが、すぐに消す。

 いつも見せつけるように触っている仕返しなのか、未だに体を撫でまわすのを無視し続ける。

 服の中にまで手を入れて来るが、無視無視。

 

 ある程度、触られていると何か思いついたように邪神が話し始める。

 

「そうそう、忘れていました。ようこそ、神の領域へ。歓迎しますよ、葵さん、名無しの蜘蛛」

 

 祝うのを忘れていた上に、私の体を触りながら言っても祝われている気がしない。

 それにその言い方は白ちゃんに気付かせる気なのか。

 

「いつまでも前世の名前や名無しのままでは不便でしょうし、名前を付けてあげましょう。神化祝いの、私からのささやかなプレゼントです」

 

 なんの確認もなしに勝手に決めようとする、邪神にまた呆れてしまう。

 

「青織と白織。スライムさんの名前が青織で、蜘蛛さんの名前が白織です。我ながら良い名前だと思いますよ」

 

 自分で言うことではないでしょうに。

 邪神の言葉に対して先ほどから呆れを隠しきない。

 むしろ、呆れを隠すことをやめた。

 

「そうそう。青織さん、楽しい時間をあげたのですから、私のことも楽しませてくださいね」

 

 よく言うわねぇ。

 前世であなたがしたことを忘れたの?

 後、触るのやめてから言うべきでしょ。

 

 好き勝手言う邪神への文句だったが、そこで意識が途切れる。

 

 

 

 目が覚めると、私は白い壁に囲まれていた。

 

 これって繭?

 

 私が繭を破ろうと力を込めるが、破ることが出来ない。

 繭がかなり丈夫なせいで破ることが出来ずにいると、外から繭が破かれた。

 繭を破いたのはアリエルさんだったようだ。

 

「青ちゃん?」

「そうですが、どうかしましたか?」

 

 驚いているアリエルさんに問い返しながら、私は繭の外に出る。

 そしてアリエルさんから返事が返ってくるまでの間に繭の中に視線を向ける。

 繭の中に大鎌があったので、あれで破ることも出来たんだ。

 

 いや、そもそもなんで私は繭を破れなかった?

 私の力はアリエルさんと大して変わらないはず、それに神化した私の方が力が強いはずだ。

 ああ、ステータスもスキルも全て使えなくなったんだ。

 まさか、サポートを受けないとステータスの強化すら満足に出来ないとは。

 

 弱体化したことを知り、ため息をつく。

 それでもすぐに現状を受け入れて繭の中から大鎌を取り出す。

 

「青ちゃん。その目、どうしたの?」

「目?何か変わってますか?」

「瞳が少し変わってるよ」

 

 アリエルさんの言葉に目を確認しようにもスキルが使えないせいで鏡も出せない。

 ちょうど繭から取り出して持っていた大鎌の刃に目を移して見てみる。

 虹彩の色は前と変わっていないが、瞳孔が出来ていた。

 猫のような縦長の瞳孔で、水色に光っている。

 元から人間とは思えない目をしていたが、完全に人外の目になってしまっている。

 

 これは、隠して置かないとだめだねぇ。

 

 しかし、隠そうにも今まで顔を隠していた布は空納の中。

 スキルが使えない以上、顔を隠すことが出来ない。

 そんなことを考えていると、アリエルさんは私が入っていた繭の隣にあるもう一つの繭を破っていた。

 アリエルさんが破った繭から白ちゃんが出て来て盛大にコケる。

 

「白ちゃん!大丈夫?」

 

 私は顔面から地面に倒れた白ちゃんに駆け寄る。

 白ちゃんは足が人間の足になっていた。

 そして白ちゃんの瞳も変わっていて、瞳の中に小さな瞳が四つ重なっている。

 どうやら、神化して人型になったことで蜘蛛の目と人の目が一緒になったみたいだ。

 後、なぜか知らないが全裸。

 

 私は和服来てたんだけどねぇ。

 ああ、これ私と繋がってるから大鎌と同じ扱いなのかな?

 

「ほら、立てる?」

 

 私は白ちゃんの体を支えながら起き上がらせる。

 スキルが使えない以上、私も白ちゃんに服を作ってあげることが出来ないので服はどうしようもない。

 そんなことを考えていると、ギュリギュリが現れる。

 

「目を覚ましたか」

「ギュリエ!今はちょっとダメ!あっち向いてて!」

 

 アリエルさんが慌ててギュリギュリに後ろを向かせる。

 私はギュリギュリに白ちゃんの体を見られないように、白ちゃんを抱き寄せて和服で隠す。

 

「私は女性の体を見ても何も感じんが?」

「そっちがよくてもこっちがだめなの!デリカシーないんだから!だからサリエル様にも振り向いてもらえないんだよ!」

 

 アリエルさんの辛辣な一言に、ギュリギュリがダメージを受けているが、今はどうでもいい。

 

「とりあえず服着て」

「アリエルさん、今私達スキル使えないみたいです」

「え?」

 

 私の言葉にアリエルさんと白ちゃんは驚いている。

 白ちゃんは私に言われて試したようで、本当にスキルを使えないことを理解したようだ。

 白ちゃんはスキルが使えないと分かると、茫然自失状態になってしまった。

 取り合えず、白ちゃんに服を着せるために私が支えながらテントに連れて行く。

 テントで白ちゃんは着せ替え人形にされて遊ばれていた。

 私はアリエルさんに顔を隠すための布を作って貰う。

 私の方から透けて見えるように作って貰ったので、問題なく見える。

 

 これでよし。

 

 私は白ちゃんが着せ替えられたりするのを見ながらアリエルさんの話を聞く。

 途中でポティマスのことなどを話していたが、あんな小物のことなどどうでもいい。

 あの後何があったのかが気になっていたので、それ以外の話はほとんど聞き流していた。

 アリエルさんの話では地上でもかなりの被害が出ていたようだ。

 主に神言教の兵士が、だけどねぇ。

 人形達とクイーンタラテクトはかなり活躍していたようだ。

 アエルが白ちゃんと私に褒めてオーラを出しながら頭を突き出してきた。

 白ちゃんと私で順番に撫でてやると、リエル達も撫でてもらうために近づいて来る。

 アエルを撫でた後にサエルが私に、フィエルが白ちゃんに撫でて貰いに来た。

 なぜか、ソフィアも撫でて貰いに来たのは謎だ。

 

 君は私達と同じ転生者でしょう?

 

 ソフィアとメラの迎えに行ったのは、ギュリギュリらしい。

 そしてUFOの事件からかなり日が経っているらしく。

 私と白ちゃんが繭状態で帰って来たために、荒野で野宿をすることになったらしい。

 

 それは大変だったねぇ。

 どうやら、みんなに心配を掛けたようだねぇ。

 アリエルさんは目の前で私達が消えたせいでかなり心配してたようだ。

 

 そして白ちゃんの化粧が終わると、アエルが鏡を見せる。

 そこで自分の瞳の状態に気づいたようだ。

 

「そろそろいいか?」

 

 ギュリギュリの問いを聞いて、アリエルさんがテントの入り口を開け、ギュリギュリとメラを中に入れる。

 そこからギュリギュリが私達の状態を説明してくれる。

 

 まあ、私は分かってるから別にいいんだけどねぇ。

 

「そこの、二人はあの騒動の折、GMA爆弾をその身に取り込み、そのエネルギーを吸収したことによって進化した。神へと至る進化、神化をな」

 

 そもそも、それが私の目的だったんだけどねぇ。

 

「それによって二人は生物の枠を超え、私と同じ神へと至った。しかし、その結果システムの適用範囲から外れ、スキルが使えなくなったのだ。それだけでなく、ステータスも反映されていないはずだ」

「ということは?」

「今の二人はエネルギーが無駄に多いだけの一般人だな」

「まあ、補助無しで魔術を使えるようになるまではこのままってことねぇ」

 

 まあ、一般人ってのも面白そうだし私は良いんだけどねぇ。

 あの邪神からしてみればつまらないでしょうけど、今まで楽しませてあげてたんだから少しくらい退屈すればいいのよ。

 

「まあ、なっちゃったもんは仕方ないね。二人が力を取り戻すまでは私らがフォローしよう」

「お世話になります」

 

 これから守ってくれるアリエルさんに頭を下げる。

 

 誰かに守られるなんて初めてかもしれない。

 いや、この世界では白ちゃんとお互いに守り合い生きて来たんだったねぇ。

 けど、一方的に守られるのは初めてかぁ。

 

 誰かに守られるということを新鮮に思っていると、サエルが近づいて来る。

 まるで、私が守るとでもいうかのように私の傍に立つ。

 守ってくれるのは嬉しいけど、もうちょっと胸を張っていて欲しい。

 あまり自信なさげな態度でいられると、こっちまで不安になる。

 

 まあ、サエルの性格も力も分かっているので心配はしてないけど。

 

 珍しく率先して動いたサエルによろしくと声を掛けて頭を撫でてやる。

 私達を見て他の人形が白ちゃんに我先にと近づいていき、白ちゃんに頭を突き出していた。

 

 君らは頭を撫でられたいだけじゃないよねぇ?

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