スライムですが、なにか? 作:転生したい人A
私と白ちゃんが神になってから二年が経った。
二年前の事件で膨大なエネルギーを取り込んだことにより、神になったまでは良かった。
しかし、神になったことでシステムから除外されたことにより、ステータスやスキルが使えなくなった。
私も白ちゃんもシステムの補助無しでは魔術が使えないために大幅に弱体化した。
「ひゅー、ひゅー」
その弱体化が原因で現在白ちゃんは私の膝の上で虫の息になってる。
前世の体のスペックを基に今の私達のスペックは出来ているようで、白ちゃんは地球基準でも虚弱だ。
ただ歩いているだけで倒れてしまうほどに体力が落ちていた。
今は歩いているわけではなく馬車に乗っていて、馬車酔いで白ちゃんがダウンしている。
「白ちゃん大丈夫、じゃないね。もうちょっとの辛抱だよー。宿屋はすぐそこだ」
「だって、もう少し頑張ってねぇ」
「わかった」
アリエルさんの励ましに合わせて私も白ちゃんを励ます。
白ちゃんは死にそうになりながらも返事をしてくれる。
私が白ちゃんの様子を見ていると、フィエルが近づいて来る。
フィエルが白ちゃんの頬を指先で突っつき始めたので、私がフィエルを止める。
「今はそっとしておいてあげて」
私が止めると、フィエルは大人しく突っつくのを止めた。
しかし、今度は白ちゃんの頭を撫で始める。
撫でるというよりは、頭を掴んで回すと言った方が正しいかなぁ。
「やめようか、フィエル」
フィエルに頭を撫でるのを慌ててやめさせる。
そんな撫で方をすると白ちゃんが大変なことになってしまう。
私がフィエルを止めると、アエルがフィエルの頭にチョップを叩きこむ。
フィエルはなぜ叩かれたのか分かってないようだ。
白ちゃんのことを心配してるんだろうけど、お願いだから大人しくしていて欲しい。
正直、私は白ちゃんのお世話で手一杯なので、人形達の面倒を見る余裕はないしねぇ。
私の隣で座ったままこちらをチラチラと見ているサエルに視線を向ける。
サエルは自発的に動くことはないが、私が弱体化してからは基本的に私を守るようにずっと隣にいる。
基本的にアリエルさんが居るため、サエルに守られるようなことは一度もなかったけどねぇ。
もう一人のリエルは、何を考えているか分からない顔で虚空を見つめている。
アエルにはフィエルとリエルの面倒をしっかりと見てもらいたいものだねぇ。
ソフィアは最初の頃は白ちゃんのことを心配していたが、最近は完全に放置している。
メラは最初の頃、率先して白ちゃんの看病をしようとしていたが、私が居れば問題ないので断っている。
メラ的には恩返しのつもりなのだろうけど、必要ないので仕方ない。
私としてはメラを鍛えることが出来なくなったのは残念だけどねぇ。
今は私がやっていたことをアリエルさんに代わりにやって貰っている。
ソフィアを守れるくらいに強くするって約束もあるからねぇ。
メラは見た目が唯一まともな大人の男なので、街に入る時は矢面に立つことが多い。
白ちゃんが人型になったため、私達は全員街の中に入るようになった。
人形達も私と白ちゃんが改造したことで、人にしか見えないので問題なく街の中に入れる。
問題は私と白ちゃんの目が見られたら人じゃないとバレるので目をいつも隠している。
私は布で顔を隠しているが、白ちゃんはフードを目深にかぶり、街の中ではいつも目を閉じている。
おかげで、私も白ちゃんもどこかの令嬢と思われているらしい。
まあ、私は和服のせいでもあるんだろうけどねぇ。
明らかに、一般人ではないって分かるだろうし。
この二年で色々あったが、私と白ちゃんが弱体化したことによる一番の問題は荷物だ。
私と白ちゃんが旅に必要な荷物を空納に全部入れていたので、荷物を持たずに旅を出来ていた。
私と白ちゃん以外に空間魔法を使える人はいないので、空納に入れていた荷物を持ち運ばなければならなくなった。
私と白ちゃんの魔法能力がかなり高かったため、空納の容量もかなり大きかった。
それを人力で運ぶことも出来なくはないが、巨大なリュックを背負うことになるので馬車を買うことになった。
私達の空納に入っていた荷物はギュリギュリが取り出してくれた。
まあ、取り出された空納の中身に唖然としたけどねぇ。
私の非常食として詰め込まれていた大量の魔物の死体。
私や白ちゃんと人形達が暇つぶしに作った大量の服。
野営道具一式、大量の調理器具と調味料。
挙げればきりがないくらい。
その中で一番問題だったのが、私が修行時に付けていた大量の神重鉛。
私が修行に使っていたこともあり、持ち上げられるのがアリエルさん一人だった。
人形達でも神重鉛の腕輪は一つも持ち上げられなかった。
それが何個もあるので、流石のアリエルさんも全部を持つことは無理だった。
かなりの魔力を込められた神重鉛を放置していくのは流石に出来ないし、魔力を抜けるのは込めた私だけ、私は神になったことで魔力を抜けなくなった。
仕方ないので、ギュリギュリに処分を頼むことになった。
今度からは空納の整理もしないとだめだねぇ。
まあ、今は使えないんだけど。
「白ちゃん、青ちゃん、宿屋着いたよー」
アリエルさんの言葉を聞いて私は白ちゃんに視線を向ける。
「白ちゃん、一人で歩ける?」
「むりー」
「そう。なら、いつも通りね」
「お願い」
白ちゃんに確認を取り、私は白ちゃんをお姫様抱っこする。
馬車酔いしている白ちゃんを揺らさないように気を付けながら運ぶ。
私より運ぶのに適した人はいるが、今まで白ちゃんの背中に乗せて貰っていたのだ。
白ちゃんが動けない時くらい、私が運ばないとだめでしょう。
白ちゃんを宿のベッドに降ろすと、そのまま寝てしまった。
私も夕食を食べ、白ちゃんの隣のベッドで寝る。
次の日、目が覚めると私と白ちゃん、サエルを残してみんなお出かけ中のようだ。
白ちゃんはまだ寝ているようだったので、白ちゃんのベッドに座って日の光を遮る。
寝ている白ちゃんの頭を撫でていると、白ちゃんも目が覚めたようだ。
起きた白ちゃんを部屋に備え付けられている鏡台の前に立たせる。
「サエル、白ちゃんの服選んできて」
人形達は白ちゃんの身だしなみをいじるのが好きらしいので服選びを任せる。
本当は私の身だしなみもいじりたいようだが、私は化粧はしないし、服もずっと同じ和服なのでいじれる機会がない。
どうしてもいじりたそうな時は髪をいじらせてあげている。
サエルが服を持ってくるまでの間に、私は白ちゃんの髪をすいて三つ編みにする。
サエルが半袖ミニスカの露出が高い服を持ってくる。
サエルは意外と大胆な服を着せたがる。
私もサエルに任せたらこんな服着せられるのかなぁ。
流石に、こんな露出の多い服は着たくない。
白ちゃんは文句を言わないが、諦めてるだけで思うところはあるのだろう。
サエルが白ちゃんに服を着せて、日焼け止め効果のある化粧水を肌に塗る。
白ちゃんの身だしなみを整えると、白ちゃんはローブを取り出して着こむ。
白ちゃんがフードを目深にかぶったのを確認して遅めの朝食を取るために宿の食堂に向かう。
食堂では二人の男が酒を飲んで談笑していた。
そして私達に視線を向けて怪訝な顔をする。
面倒な予感がするけど、お腹空いたしいいか。
二人の男の横を通り過ぎようとすると、男の一人がわざとらしくよろける。
そして私の顔を覆ている布を取ろうと、手を伸ばしてきた。
「おおっと!え?」
男は間抜けな声を出しながら自分達のテーブルの上に落ちる。
白ちゃん達は驚いたようだが、気にせずに私は白ちゃんの手を掴んで進む。
「おい!待てよ!」
無視して進もうとする私達に手を伸ばしてくるもう一人の男も同じように手首を掴んでもう一人の男の上に投げる。
白ちゃんも男達も私が何をしたのか分かってないようで、かなり驚いている。
サエルも大人の男を片手でぶん投げる私に驚いているようだ。
まあ、ステータスが無くてもこのくらいは出来る。
そうでなければ、数万もステータスに差があるアリエルさんと摸擬戦なんて出来ないでしょ。
問題があるとすれば、ステータスで守れてるこいつらにダメージを入れるのは簡単ではない。
これ以上絡んでくるならサエルに殺させよう。
男達がまた絡んで来ようとする前に、食堂の奥からおばちゃんが出て来て男達を止めた。
もしおばちゃんが出てこなければ、二人は死んでただろう。
おばちゃんは冒険者がどうの、オーガがどうのと言っていたが興味が無かったのでほとんど聞き流した。
「さ!ご飯食べに来たんだろ?騒がせた詫びに安くしとくよ!」
男達に絡まれたのも無駄ではなかったねぇ。
二回ぶん投げただけで安くしてくれるなんていい人だ。