スライムですが、なにか?   作:転生したい人A

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大変遅くなって申し訳ありません。

次はもう少し早く投稿できるように頑張ります。


邪神の目覚め

 街の冒険者に私達が魔族なんじゃないかと警戒されはじめたことで、これ以上の面倒ごとに巻き込まれる前に街を出ることになった。

 ちょうど街道の通行規制もオーガが追い払われたことで解除されたところだし、タイミングとしてはいいのだろう。

 たた、オーガが私達の行先と同じ魔の山脈に逃げて行ったのはすこし気になるけど、アリエルさんが居ればオーガ程度問題はないし大丈夫でしょう。

 何の問題も起きることなく、魔の山脈の麓にある廃村に到着した。

 この廃村は元々は魔の山脈攻略の前哨基地的な扱いだったらしいが、話によると件のオーガに襲撃されて壊滅したらしい。

 傷ついた家屋と赤黒い染みの数々、随分と派手に散らかしたらしい。

 もう少し綺麗にやってくれれば、今日止まる場所の選択肢も増えたのにな。

 

「ふむ。とりあえず無事な家で一夜明かそうか」

 

 魔王の言うとおりに無事な家で寝るために、家に向かって歩き出そうとした時。

 

「ねえ、古い血の臭いと新しい血の臭いがあるのだけれど、どういうことかしら?」

 

 犬のようにそこら中の臭いを嗅いでいたソフィアが、そんなことを言い出した。

 正直、その情報に対して興味はあまりないけど、新しい血と古い血の臭いを嗅ぎ分けられるなんて流石吸血鬼。

 

「ああ、気づいた?この臭いは、たぶんエルフの血だね」

 

 エルフとまで特定できるアリエルさんの鼻がすごいのか、単純に年の功なのか。

 まあ、転生して間もないソフィアとアリエルさんでは、経験の差が大きいし年の功が有力かな。

 

「あいつら、きっとこの廃村で私たちのことを待ち構えてたんでしょ。けど、何かに襲われて壊滅した。まあ、きっとこっちの方向に逃げ出したっていうオーガが犯人だろうね」

 

 ほら、どうでもいい情報だった。

 多少強い程度のオーガに壊滅させられる程度の戦力ってことは、私たちへの嫌がらせ、もしくはそれ以外の目的があった連中でしょうね。

 仮にここで私たちをどうこうしようと思っていたのなら、神話級の魔物だろうと問題なく討伐しているはずだ。

 私が把握出来てない範囲に目的がある場合はわからないけど、嫌がらせってことなら転生者同士の殺し合いで精神的に追い込むとかでしょうね。

 アリエルさん、そういうのに弱そうだしねぇ。

 アリエルさんは何か考えていたようだが、この廃村で一泊することは変わらないようで安心した。

 スキルを使えていたころならともかく、かよわい人の身で野宿とかしたくないしね。

 

 

 

 廃村で一夜を明かした私たちは、魔の山脈へ向けて出発した。

 まあ、私と白ちゃんは馬車の中で待機しているだけで、別に歩いて登るわけではないけどね。

 寒さを凌ぐために白ちゃんは毛布にくるまっているが、私は和服以外に何も着ていない。

 この和服は、私と繋がっているためか、神化の際に膨大なエネルギーが流れ込んだ影響で特殊な能力が付いている。

 そうでなくても、元々は私の最高傑作をどこかの邪神が勝手に改造して変な能力を持っていたのが、神化の影響で更に強力になっていることもあり、どんな環境だろうと快適に過ごせるとても便利な和服だ。

 スキルが使えなくなったかよわい人の身である今はとても重宝する能力である。

 私と違って虚弱といっていいレベルの白ちゃんは、かなり羨ましそうに見てくる程度には重宝している。

 もしこの和服がなければ、今頃は白ちゃんと同じように毛布にくるまって熱を発する魔石を抱えて凍えることになっていただろうからね。

 いやはや、スキルのありがたみがよくわかる場所だねぇ。

 

 まあ、寒さは和服のおかげで何とかなるのだが、問題は馬車の揺れ。

 整備されていない山道を馬車が通れるわけもないので、この馬車はアエルが背負って歩いている。

 万越えのステータスを誇るアエルたちなら、私たちが乗った馬車程度軽く持ち上げられる。

 軽く持ち上げられるからといって揺らさずに運べるわけもなく、さらに整備もされてない山道。

 つまり、揺れる揺れる、整備されてないデコボコの道なんて可愛いものだね。

 アエルが気を使って歩いてくれていなければ、流石の私でも酔っていたでしょうね。

 私でもギリギリということは、虚弱な白ちゃんが耐えられるわけもない。

 馬車酔いと寒さの両方に苦しめられる白ちゃんには、同情するがしてあげられることは何もない。

 だから、せめてもの気休めに白ちゃんを抱きしめて少しでも私の和服の恩恵を受けられるようにしてあげることだけ。

 

 

 

 魔の山脈に入ってから数日、順調に進むにつれて寒さがどんどん増していく。

 これがこの山の普通なんて流石にありえないでしょ。

 魔石を複数個抱えて毛布にくるまっている白ちゃんが、寒そうにしているだけでもおかしいのに、毛布の外側は凍っている。

 これは、和服がなければ私も白ちゃんと同じようになることは確定ね。

 どう考えてもステータスのない人の身で耐えられる寒さじゃない。

 アリエルさんによると、この山は氷龍の住処で、氷龍たちが常に冷気を放っているのが原因らしい。

 環境的な寒さならともかく、氷龍の冷気が原因だと白ちゃんが魔族領まで持たないかも……

 

 アリエルさんの話では、魔の山脈に逃げ込んだ件のオーガが関係しているかもとのこと。

 件のオーガはどれだけ問題を起こせば気が済むんでしょうね。

 

「うげぇっ!」

 

 オーガに呆れていると、魔王のなんとも乙女らしくない叫びが聞こえてきた。

 魔王が変な叫び声を上げるとは珍しいと、白ちゃんと一緒に外を覗いてみれば納得。

 猿の群れ、それも大量の猿の群れがこちらに向かって来ている。

 あまりの光景にアリエルさんはテンパってるし、ソフィアとメラはフリーズしている。

 

「ええい、仕方がない!」

 

 テンパっていたアリエルさんが猿の群れに手を向ける。

 それだけでアリエルさんが魔法で猿の群れを一掃しようとしていることはわかった。

 しかし、ここは雪山で、ここ数日雪は降りっぱなしだった。

 そんな場所で広範囲の攻撃魔法を使うと……

 

「くらえ!」

 

 この後の展開を察しても、アリエルさんを止める暇なんてあるわけもなく、アリエルさんの手から暗黒の奔流が放たれる。

 アリエルさんのステータスによる暗黒魔法は、巨大な爆発を引き起こし猿の群れを一掃する。

 しかし、その後の結果なんて冷静に考えれば誰でもわかる……雪崩。

 

「退避!」

 

 アリエルさんが雪崩の轟音に負けない大声を張り上げる。

 その声を受けて、全員が空高くジャンプする。

 私もアリエルさんの声が聞こえる前に、しっかりと馬車に掴まっていた。

 あまりに急なことだったし、ここ最近はアリエルさん達を頼り切っていた。

 だから、反応が遅れたし、対策を立てることが出来なかった。

 

 毛布にくるまり馬車に掴まれていなかった白ちゃんが、馬車から放り出される瞬間を見るまで何も出来なかった。

 雪崩に向かって一直線に落ちていく白ちゃんを、今の私が助ける手立てはない。

 白ちゃんと一緒に雪崩にダイブするくらいは出来るけど、無意味でアリエルさん達に余計な手間を取らせるだけ。

 

「サエル!カバー!」

 

 アリエルさんの指示で迅速に動いたサエルが白ちゃんをキャッチするが、一瞬遅く二人まとめて雪崩に飲まれる。

 サエルが白ちゃんの腕を引っ張りながら、力任せに雪崩をかき分けて出てきた。

 そこに遅れてソフィアとメラが救援に向かい何とかなったと思ったその時、雪崩に流されてきた猿がソフィアの身体にぶつかった。

 

「は?」

 

 ソフィアの手を握っていたサエルとメラを巻き込んで雪崩に飲まれる。

 アリエルさんは……大量の猿に飛び掛かられている途中ですか…………救援は無理そうですね

 

 あのクソ猿、食料の分際で余計な邪魔を……

 

 

 

 アリエル視点

 

 猿の大群のせいで白ちゃんたちの救援に向かえない。

 

「青ちゃん、危ないから馬車の中にかくれて……」

 

 現状、スキルが使えなく無力な青ちゃんに警告しようと猿に襲われながら視線を向けて言葉を失った。

 今の青ちゃんはスキルが使えなくて無力なはずなのに、目をそらすことも、身体を動かすことも出来ないほどの圧を感じる。

 普段の超然とした雰囲気が嘘のように消えて、死が形を持ってそこにあるような、決して触れてはならない、決して怒らせてはならない何かを怒らせてしまった。

 そんな恐怖が、心の底から湧き上がって身体を強張らせる。

 指一本動かすことも出来ず、過ぎ去るのを待てと本能が全力で訴えかけてくる。

 

 私が恐怖で動けなくなっていると、数匹の猿が馬車から身体をのぞかせている青ちゃんに飛び掛かった。

 

「あっ!あ……」

 

 何とか捻りだした声も時すでに遅く、猿の手が青ちゃんに触れようとしている。

 スキルの使えない青ちゃんでは、猿の一匹でも危険であるはずだ。

 急いで助けないといけないのに身体が動かない。

 

 私が恐怖と戦い必死に身体を動かそうとしている間に、猿の手が青ちゃんに届く。

 その瞬間に猿の手が塵となって崩れていく。

 自身の腕が塵になっていくのを見た猿の動きが止まる。

 

「邪魔」

 

 青ちゃんの呟くような声が、対して大きくもないのに周囲に響く。

 呟いた青ちゃんが猿の頭に手を伸ばせば、猿の頭は青ちゃんの手が触れた場所が消滅したように、手形の穴が出来る。

 その手形の穴から猿の身体は塵となって崩れて消えていく。

 仲間をやられた猿たちは、次々と青ちゃんに襲い掛かるが触れた瞬間に塵と化し、青ちゃんの手で触れられた場所は抉られたように消滅する。

 虐殺なんて可愛いものじゃない、猿たちが自分の意志で地獄の穴に飛び込んでいるような異常な光景。

 

 

 

 

 猿が絶滅するころには、雪崩はおさまっており無事に地面に降りる。

 馬車から降りてきた青ちゃんに近づいて恐る恐る問いかける。

 

「青ちゃん……もしかして、スキル戻ったの?」

 

 私の問いに対して青ちゃんが顔をこちらに向けてくるが、先ほどまでの死のような雰囲気はなく、いつもの青ちゃんに戻っていて安心してため息がでる。

 

「全部が戻ったわけじゃないですね。腐食攻撃とスライムとしての力くらいで、身体強化や他のスキルはまだです」

「腐食攻撃は見ててわかったけど、スライムの力っていうのは?」

「猿の身体を抉り取っていた力ですよ。こんな風に身体の形を変えたり、呑み込んだものを消化したりですね」

 

 青ちゃんは私に見せるように手をスライムのようにして形を変えながら教えてくれる。

 さっき猿の身体が抉られてたのは、青ちゃんの手が猿の身体を食べていたってことね。

 

「神化した影響でどちらも強化されているようですけど、身体強化や空間魔法が使えないとまだ不便ですね。探知も使えないので流された白ちゃん達の居場所もわかりませんし」

「不便って……」

 

 現状の青ちゃんがどの程度腐食攻撃とスライムの力を使えるのかわからないけど、触れた瞬間に猿が塵になっていたのを見るにそこらの魔物は青ちゃんに傷一つ付けられないのは間違いない。

 神化前の腐食攻撃でもかなりやばかったのに、神化の影響で強化された腐食攻撃は私を含めてシステム内の存在に防ぐ手段なんてないはずだ。

 触らぬ神に祟りなしとはまさにこのことだね。

 早く白ちゃんの救助に動かないと、本当に命の危機かもしれない、私の。

 今回のは私の判断ミスだし、その上救助が遅れて白ちゃんが死んじゃったら、確実に私も消される。

 

「よし、急いで白ちゃんの救助に動こう!」

「ソフィアたちが付いてるから、そんなに慌てなくても大丈夫だと思いますけど、何かあるんですか?」

 

 慌てている私に青ちゃんが首を傾げて問いかけてくる。

 

「何かあるわけじゃないけど、この吹雪に加えて件のオーガも気になるしさ。ほら、白ちゃんだったら、件のオーガに襲われてたりしそうじゃない」

「……確かにありそうですね、急ぎましょうか」

 

 結構適当なことを言ったんだけど、思いのほか納得してくれたようで何よりだよ。

 まあ、流石の白ちゃんでも件のオーガに襲われてるなんてことはないだろうけど、この吹雪は白ちゃんにはきついだろうし救助は急ぐべきだね。

 白ちゃんに何かあった時、青ちゃんがどう動くのか全く予想できない以上、少しでも早く白ちゃんを救助する必要がある。

 

 お願いだから無事でいてね、白ちゃん。

 本当に、マジで、青ちゃんが怖いから、絶対に無事でいて!

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