スライムですが、なにか?   作:転生したい人A

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魔族領に到着

「よし、白ちゃんたち、探しに行くよ!」

 

 アリエルさんが、アエルたちに指示を出し、雪崩が向かっていった先に視線を向ける。

 

『急ぎかえ?』

 

 頭上から念話が飛んできたので、見上げれば氷龍が飛んでいた。

 氷龍は私たちの近くに舞い降りた。

 

「何?今急いでるんだけど?」

 

 アリエルさんは不機嫌そうに氷龍に問いかける。

 

『ご機嫌斜めと見えるのう』

「用がないならもう行くよ?」

『用がなければその方の前に姿を現そうとは思わんよ』

 

 険呑な雰囲気ではあるが、この氷龍もアリエルさんの知り合い見たいだし任せて問題ないでしょう。

 それより氷龍とは初めて会ったな。

 出来れば食べてみたいけど、流石に食べたらアリエルさんに怒られるだろうし、今の私だと抵抗する龍を捕らえるのは無理だし諦めるか。

 氷龍ってくらいだし、冷たいのかな。

 冷たいなら焼くより、肉刺しとかが合うかな。

 

「これ以上私の機嫌を損ねるなら、本気で潰すよ?」

 

 あら?

 もしかして、氷龍食べれる?

 氷龍の食べ方を考えている間に、アリエルさんの機嫌を損ねたらしい氷龍が殺されそうになっている。

 どこぞの風龍なら機嫌をさらに損ねてくれるだろうけど、こいつはどうかな?

 

『我が悪かった!』

 

 アリエルさんが地龍を殺した話をしたせいで、氷龍は本当に殺されると思ったのかあっさりと謝罪した。

 残念ながら食べれそうにないわね。

 

 その後はオーガのことなどを話した後、情報量として酒樽を渡して白ちゃん達を探しに動き始める。

 

 

 

 しばらくして、白ちゃん達は見つかった。

 アリエルさんの予感が的中し、白ちゃん達は例のオーガに襲われたらしい。

 オーガは私達と同じ転生者の笹島くんだったらしい。

 憤怒のスキルにより理性を失って暴れまわっていたため、同じ転生者とか関係なく襲われたとのこと。

 

 笹島くんのことはどうでもいいが、この広い雪山でそんな危険なオーガに遭遇する白ちゃんには少し同情する。

 窮地に陥ったことで糸を出せるようになったことが、唯一の収穫だね。

 

「私もあの後、襲い掛かってきた猿にイラっとしてキレたらスキル使えるようになったよ」

 

 左手に腐蝕の黒い靄を纏わせ、右手をスライムにして形を変えて見せる。

 大鎌の刃で確認した虹彩の色だけではよくわからなかったが、スライム状態の色が光を一切反射してないんじゃないかと思えるほど真っ黒で青系統のグラデーションも薄くなり、これが深淵だと言われれば納得してしまう程度には禍々しい。

 

「使えるようになったのは、腐蝕とスライムとしての力だね。形変えたり取り込んだものを消化して食べたりするくらいなら出来るようになったよ」

「……格差酷くない?」

 

 白ちゃんから恨めしいそうな目で見られて、私は苦笑以外返せなかった。

 これに関しては正直どうしようもない。

 白ちゃんにとっての糸のように、私が無意識に引きずり出せるほど魂に染み付いた力が腐蝕とスライムの性質ということなんでしょう。

 

 白ちゃんはオーガに襲われて疲れていた上に、やっと使えるようになったスキルも私と比べて微妙だったため、私の膝を枕に不貞寝してしまった。

 白ちゃんの頭を軽くなでた後、アリエルさんと雑談しているとソフィアが目を覚ました。

 

「ん?起きたかい?」

「はい、おはようございます」

「うん、おはよう」

「おはよう」

 

 目を覚ましたソフィアに挨拶を返して、ソフィアを見れば体調はまだ万全ではなさそう。

 

「大丈夫?もう少し寝てたら?」

「いえ、大丈夫です」

 

 アリエルさんの体調を気にかけた提案を断り、ソフィアは起き上がり周囲を見回す。

 オーガに襲われたメンバーが全員無事なことを確認して安心したような顔をする。

 そんなソフィアにアリエルさんが温かいお茶を用意し、ついでに私の分も用意してくれた。

 ソフィアは布団から出て、アリエルさんの向かい側の椅子に座りお茶を飲むが、私は白ちゃんの枕にされていて動けないため、アリエルさんから手渡しでもらう。

 白ちゃんから大雑把にしか聞けなかったため、ソフィアから何があったか詳しい話を聞く。

 ソフィアに詳しい話は聞けたけど、ソフィアはオーガ改め鬼人が笹島くんであるかはわからないとのこと。

 まあ、興味のなかった相手の顔を覚えていないのはしかたないよね。

 

「じゃあ、暫定笹島くんだとするけど、どうする?」

「どうするとは?」

「だから、生かすか殺すか。もし生きていた場合、どうするのかって話」

 

 相手が転生者だから気を使って対応を私たちに任せようとしているのかな。

 

「もちろん、ぶっ殺します」

「ぶふっ!」

 

 あまりにも容赦ないソフィアの言葉にアリエルさんが吹きだす。

 私が言えたことではないけど、こいつも容赦ないな。

 

「なんですか?私が殺さないでくださいとでも言うと思いました?」

「うん。まあ、そうだね」

「論外ですね」

「論外かー」

 

 アリエルさんは、ソフィアの言葉に天を仰ぎ見た。

 

「日本生まれ日本育ちだったら殺人に忌避感覚えるのって当然じゃん?しかも相手は同郷の日本人だし、しかも笹島君って憤怒のスキルで理性飛んでたんでしょ?本人の意志じゃないじゃん、情状酌量の余地ありだよ?」

「日本生まれ日本育ちといいますけど、今の私はサリエーラ国生まれ世界中育ちですし、日本の倫理観なんて故郷を滅ぼした時に置いてきました。そもそも私前世には未練とかありませんし、同郷?顔もろくに覚えてない相手に親近感なんてありません」

 

 ソフィアの言葉にまた天を仰ぎ見たアリエルさんは、私に視線を向けて問いかけてくる。

 

「もしかして青ちゃんも?」

「私は状況次第ですね。敵対するなら殺すし、味方になるなら生かします」

「憤怒のスキルで理性が飛んでたら敵味方関係なく襲ってくると思うけど?」

「助ける方法がないなら殺してあげるのも優しさですよ」

 

 治す方法を探すなんて面倒だし、数回殴って理性が戻らないなら殺してあげた方がいいでしょ。

 

「仮に理性があったとしてもまともとは限らないわ。血縁喰ライなんておぞましい称号もあったし」

「えっ!?」

 

 アリエルさんは驚いたような顔をするが、白ちゃんだって持ってたし驚くほどのものではないでしょ。

 

「氷龍ニーアが言っていたのはそういうことか。むごいことをする」

 

 称号に驚いていたというより、何か称号を得るに至った背景に心当たりがあるのか。

 氷龍の話はほとんど聞き流してたから、よくわからないけど何か知ってたのかな。

 

「そして何よりも!あのクソ野郎メラゾフィスのこと殺しかけたのよ!万死に値するわ!」

 

 そんなことだろうと思っていたが、結局メラゾフィスをやられたことが原因なのね。

 ソフィアが何か喚いているが、聞くに堪えないのでアリエルさんに任せて放置する。

 そんなことをしていると、アエルたちが戻ってきた。

 アリエルさんは、アエルたちから状況を確認して私たちに教えてくれる。

 

「どうも戦いの場になった氷河だけど、完全に砕け散って雪崩みたいに山の斜面を下って行っちゃったらしい。それに巻き込まれた笹島君の捜索は、ちょっと難しそうだね。こうなると死んでるかもなー」

「いえ、生きてますよ。だって、私のレベルが上がってませんから」

 

 なるほど、ソフィアのレベルが上がっていないのなら笹島君は生きていそうね。

 ソフィアは笹島君へのリベンジを誓っているし、ソフィアも生きていると確信しているようね。

 

「……また、助けられちゃったわ」

 

 ソフィアは寝ている白ちゃんを見てそうこぼした。

 

「ああ、糸が出せるようになったんだってね。火事場の馬鹿力ってやつかな?」

 

 アリエルさんはちょっとずれたことを言っているが、ソフィアが言いたいのはそういうことではないでしょう。

 ソフィアから見れば同じ転生者であるはずの私たちは強すぎて、守られる立場にしかなれなかったことに思うところがあるのでしょうね。

 私たちが弱体化して今度は私が守る側だとでも思っていたのでしょうけど、ソフィアが知らないだけで白ちゃんはずっと弱い側だった。

 自分よりずっと強い相手と戦い続けてきた白ちゃんが、弱体化したくらいで守らなきゃいけない存在になるわけがない。

 私も白ちゃんもアリエルさんの優しさに甘えていただけで、あのまま荒野に放り出されたとしても二人で生きて行けたでしょうね。

 それこそずっと早く力を取り戻して、神として力を扱えるようになっていてもおかしくない。

 

「ソフィア、私達が現状に甘えている間に強くならないと、一生追い付けないわよ」

「……わかってるわ。もっともっと強くなって、次は守ってもらわなくてもいいようになる」

「そう、頑張ってね」

「明日から訓練を増やすわ!見てなさいよ!」

 

 ソフィアはやる気のようだけど、アリエルさんは呆れている。

 まあ、これまで虐待のような訓練してきたのに、さらに増やすなんて言えば普通は呆れるか。

 

 

 

 まともに整備されていないデコボコの道を地竜二匹が引く馬車で移動する。

 当然乗り心地は悪く、白ちゃんはダウンして私の膝を枕に気絶している。

 白ちゃんが気を失っている間に、馬車は目的地に到着した。

 

「思ってたのと違うわ」

 

 魔族領で初めて訪れた街の宿屋で、ソフィアが愚痴りだした。

 ソフィアはファンタジー世界の魔族でも想像していたのだろうけど、残念ながらそんなことはない。

 魔族の見た目は人族と変わらず、人族領の帝国と似たような街並みだ。

 それにここに来る途中でアリエルさんから魔族語を教えてもらっている時に、魔族の文化や外見なんかの気を付けることは何も教えてくれなかった。

 私達を驚かそうと思ってあえて黙っていたのだろうけど、不自然なくらいに触れられないので予想するのは簡単だった。

 

「驚いたかい?魔族って言っても見た目は人族とまったく変わらないんだよー」

 

 案の定、ソファーに座ったアリエルさんがワイングラスを揺らしながら、してやったりといった顔をしている。

 そこからソフィアの疑問に答えるようにアリエルさんが人族と魔族の違いを説明してくれる。

 まあ、寿命とステータスの伸びやすさ、出生率以外に大した違いはないようだ。

 出生率が低いせいで人口が減って戦争どころじゃないらしい。

 まあ、アリエルさんは容赦なく戦争する気満々だし、魔族の滅亡も近そうだね。

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