天を舞う大嵐、英雄とならん   作:桐谷 アキト

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11話 講評

 

自分達の勝利を告げるアナウンスが響き、一息つく嵐に葉隠が歓喜の声を上げながら駆け寄る。

 

「やったー‼︎勝ったよー‼︎」

 

元気よく声を上げながら、葉隠は嵐に正面から抱きついた。完全透明かつ、気を緩めたせいで反応が遅れた嵐は鍛えていた体幹のおかげで後ろに倒れはしなかったものの、その分首に腕が絡まる感覚と、胸にあたる柔らかい『ポヨン』の存在を確かに感じ取ってしまい———一瞬思考が停止した。

 

(やわらか…って、いやいやそんな事じゃなくっ)

 

一瞬その感触に浸ったものの、すぐに思考を取り戻した嵐は彼女に触れないように両手を上に上げながら、懇願するように言う。

 

「葉隠ちょっとタンマ。マジでストップ。頼むから、一旦離れてくれ」

「へ?…あ、ごめんねっ八雲君!つい嬉しくて!」

 

嵐の指摘に葉隠はすぐに気づき、慌てて離れる。嵐は葉隠が素直に離れてくれた事に安堵しながら、上着を脱ぐと訓練前の時と同じように彼女に手渡した。

 

「またこれ貸すから着てろ。あと、女の子なんだから、嬉しいからってそう易々と男に抱きつくのはやめておけ」

「んーじゃあこれから気をつけるけど、八雲君は別に変なことしないでしょ?」

「信頼してくれるのはありがたいけど、とにかくやめなさい」

「はーい。って、なんか八雲君、お兄ちゃんみたいだね‼︎」

 

嵐から上着を受け取った葉隠は上着をスポッと被りながら楽しそうに笑った。その様子に、苦笑を浮かべると彼女の肩あたりに手を置いてポンと叩く。

 

「ま、それはそうと、いい動きだったぞ葉隠。よく俺の指示通りに動いてくれた」

「でも、八雲くんの作戦と援護がなかったら、私なんて全然活躍できなかったよ‼︎八雲君のおかげだよ‼︎ありがとね‼︎」

 

手袋がないため何をしてるのかわからないが、前に突き出した腕から察するにサムズアップかピースサインでもしているのだろう。だから、嵐も笑みを浮かべた。

 

「おう」

 

そして、嵐はこの場にはいない敵チームの一人の状態を彼女に尋ねた。

 

「それはそうと、尾白はどうしてる?」

「あっちで横になってるよ。意識はあるけど、しばらく動けなさそうだね」

「結構強めに殴っちまったからなー」

 

嵐はやっちまったと言わんばかりに呟く。

確かにあの筋肉の塊でかなりの硬度がある尻尾で尾白の腹を殴打したのだ。鍛えてはいても、痛みに未だ悶絶するのは仕方ない事だった。

 

「OK、じゃあ、葉隠はブーツと手袋を回収するついでに障子の拘束解きに行ってくれ。もうあいつも歩けるぐらいには回復してるだろうからな。轟と尾白は俺が運ぶよ」

「うん分かった‼︎じゃあ、また後でね‼︎」

 

葉隠はそう答えると、元気に手を振りながらブーツと手袋を置いてある、核を設置した部屋へと向かっていった。そして、彼女が完全に見えなくなる位置に行ったところで、嵐は深く、それはもう深く息をついた。

 

「はぁ〜〜〜〜〜〜」

 

息を吐きながら、ガシガシと頭を掻き乱すと、照れたように顔を赤くさせる。

 

(ヤバかった…っ‼︎女の子の体って、あんなに柔らかいのか⁉︎てか、いい匂いもしてたし……)

 

思い出すのは先程の葉隠が抱きついてきた時のこと。戦闘服一枚隔ててはいたものの、それだけでは彼女の抱きつきの感触を完全に打ち消すことはできずに、彼女の滅茶苦茶柔らかい『ポヨン』の感触が嵐の胸に伝わってきてしまっていたのだ。それに加え、どういうわけかほのかに甘い香りも漂ってきていた。

いくら他よりもしっかりとしていても、嵐もまた年頃の男子なのだ。あんなことがあれば、流石の彼でも意識してしまう。そして、それに伴って色々と思い出してしまった。

 

(………そういえば、試合中もあちこち触ってたな………)

 

そう、試合中も轟の開幕速攻の氷結から始まり、葉隠を守ったりした時には度々手や尻尾で彼女の身体に直に触れていたのだ。

足や腕、そして腰や腹部とそりゃあもう色々と。

その時の感触を今更ながらに思い出してしまっていた。

 

「……ッッ」

 

嵐はボンっと顔の赤みを一層増してしまう。鼓動も心なしか大きく聞こえてしまっている。

試合中は真剣で全く気にならなかったが、今は一息ついて大分落ち着いたせいか、余計に意識してしまう。

 

(……………あとで、謝ろう)

 

下心あって触ったわけではないので、彼女も許してくれるだろうが、嵐の心情的に謝らないと気が済まないので後でこっそり謝ろうと密かに誓った。

そして、何度か深呼吸をして自身の興奮を落ち着かせると、そばで倒れている轟へと視線を向けて呟く。

 

「……取り敢えず、運ぶか」

 

そう言って、嵐は腰から尻尾を生やすと轟の腰に巻き付けてヒョイと軽々と持ち上げる。そして、轟を持ち上げるとスタスタと歩いて行き尾白がいる隣の部屋へ行く。

隣の部屋では、左腕にロープを巻かれている尾白が、葉隠の言った通りぐったりと横になっていた。嵐はそんな彼に近づき声をかける。

 

「尾白ー体は大丈夫か?ヤバいようなら保健室連れて行くぞ」

「……あぁ、八雲か。……うん、体は、まあ少し休めば、大丈夫。……でも、まだ動けそうに、ないよ……」

「‥‥悪りぃ、やりすぎたわ」

「……いや、八雲は、悪くないよ」

 

嵐の謝罪に尾白は力無く返した。

まだまだ動けないのか、未だぐったりとしたままの尾白に嵐はさらに尋ねる。

 

「試合見れる余裕はあるか?」

「……うん、それはまぁ」

「じゃあ、このまま、モニタールームにまで運ぶぞ」

「……うん、ありがとう」

「任せろ」

 

そして、嵐が尾白の腰を掴むとまるで俵を抱えるかのように肩に乗せてそのまま運び始めた。尾白は肩にかけられたタオルのようにぐでーとなった姿勢に弱々しく抗議する。

 

「もう少し、優しい運び方ない?」

「我慢しろ」

「……うぅ」

 

その講義は嵐本人にあっけなく一蹴されてしまい、そのまま嵐は歩き始める。通路に出れば奥の方から葉隠と障子が現れた。

 

「おーい、障子君連れてきたよ——‼︎」

「サンキュー、葉隠」

 

嵐は手を振る葉隠にそう礼をいった。

葉隠の後ろを歩く障子の足取りは少し悪い程度で、試合でのダメージはほとんど回復できたようだ。そして、障子は嵐に運ばれている二人を見て色々と察した。

 

「……どうやら、俺が拘束されてる間に、手ひどくやられたみたいだな」

「あぁまぁ、ちょっとやりすぎたがな。障子は見たところ大丈夫そうだが、体の方は怪我ないか?特に耳と脇腹とか」

 

嵐は気遣うように障子にそう尋ねる。

いくら訓練で試合に勝つためとはいえ、あの大咆哮や脇腹への打撃の威力はまだダメージが残っていてもおかしくないほどだったのだから。

それに対し、障子は静かに頷いた。

 

「………ああ、少し痛むが、打撲程度だろう。授業が終わってから保健室に行くつもりだ。耳も鼓膜が破けたが、全て複製部位だ。リカバリーガールに治して貰えば問題ないだろう」

 

それ以外は特に問題ない、と嵐を安心させるように言った障子。彼も嵐が自分を心配してくれると察したのだろう。

嵐はそれに安堵の息をついた。そして、抱えられている尾白が障子に謝罪する。

 

「……障子、ごめん……ちゃんと、守ることができなかったよ……」

「気にするな。それに、謝るべきは俺だ。俺は今回何もできていなかった。すぐに八雲に捕まって拘束されてしまったからな。本当にすまない」

「……それでも、障子をしっかりと守れていれば、もう少し戦いようはあったと思うんだ……」

「かもしれんな。だから、今回のことを次に活かそう」

「……そうだね」

 

今回の試合を教訓にしようという障子の言葉に尾白は静かに頷いた。暗い雰囲気を漂わせながらも、それでも前向きに捉えている二人を嵐と葉隠が揃って見守る中、障子が嵐へと向き直る。

 

「八雲、今回俺はお前達に完敗してしまった。だから、次だ。次は絶対に負けないぞ」

「上等だ。次も負けねぇからもっと強くなれよ」

「無論だ」

 

再戦を誓う障子に嵐は嬉しそうに笑いながら拳を伸ばしてお互いに拳をコツンとぶつける。

二人の確かな熱い友情が窺える光景に、疎外感を感じてしまったのか葉隠が声を張り上げながら割り込んできた。

 

「私もいるんだから忘れないでよ障子君‼︎次も私達が勝つからね‼︎」

「当然忘れてない。今回は葉隠とは直接闘うことはなかったが、次はきっちりと戦いたいものだ」

「ふっふーん、私と八雲君の無敵のステルストルネードコンビネーションでやっつけてあげるよ‼︎」

 

葉隠は障子に認識されたのが嬉しいのか、胸を張りながらよく分からない技名らしきものを言って、障子の宣戦布告を真っ向から受けて立った。

 

 

「なんだそのネーミングは?」

「私がステルスで八雲君がトルネードだからね‼︎そのままくっつけたんだ‼︎」

「くっつけただけかよ」

「単純だな」

「いいじゃん‼︎強いのには変わりないんだからー‼︎」

 

 

そうして3人は尾白と轟を抱えながら階段を下ってオールマイト達が待つモニタールームへと戻っていったら

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

保健室に運ばれた轟と既に運ばれた緑谷を除いた全員が集まったモニタールームで、オールマイトが未だに驚きが抜け切らないまま、話をしていく。

 

「えーじゃあ、第二回戦の講評を始めていくんだけど、今戦のベストは八雲少年っていうのはいいとして……正直ここまでとは私も予想外でね、実はまだちょっと驚いてるんだよね。……HAHAHA、まあそれはともかく、彼がベストの理由は分かる人いるかな?」

「はい。先生」

 

オールマイトの問いかけに手を挙げたのはまたしても八百万だ。今の数秒で調子を戻したのか、オールマイトがいつもの様子で八百万を当てて説明を促した。

 

「はい、またしても八百万少女だね‼︎では、説明を頼むよ‼︎」

「ええ、ベストはもちろん八雲さんです。そして、今回の試合は敵側、つまり八雲さんと葉隠さんの完全な作戦勝ちと言えるでしょう。お二人はヒーローチームの方々の個性からある程度の予測をして戦法を組み立てていたように見えます。八雲さんが初めに大声を上げたのは索敵要員であった障子さん対策であるのは確かですし、その後の奇襲でも真っ先に障子さんを狙っており索敵要員を叩くと言う戦闘において理に適った行動をとっていました」

 

彼女は嵐の奇襲作戦をそう評価すると共に準備時間中に行われたことも称賛する。

 

「準備前に行っていた各階の部屋の床や天井を切り抜くことでの階段以外の移動ルートの確保は、階段か外からしか移動方法がないという思考を逆手に取ったものであり、ああいった奇襲作戦などを素早く行う為の最短の移動ルートの確保は見事だったと思います」

 

移動ルートは何も階段や外を回り込む方法だけではない。無いのなら作ればいい。嵐はそう考えて、各階のいくつかの部屋の床や天井を切り抜くことで即席の自分専用の移動経路を嵐は構築したのだ。

それを使うことで、階段や外を介さずに各階を移動することができ、予想外の場所からの奇襲攻撃や、障子を確保後の一時退却にも活かしたのである。

 

「最後に、パワー型であろう障子さんをほぼ一撃で行動不能にし、尾白さんや轟さんの二人を同時に相手取りながら圧倒できるほどの高い戦闘力ととても繊細な風の操作です。

八雲さんの風は轟さんの氷結を砕いたり、二人を吹き飛ばすなどの豪快な部分が多く見受けられましたが、そう見えるだけであって実はとても繊細な操作を行なっており、数カ所の壁の破壊や、床や天井を切り抜くこと以外ではさほど建物に影響は出ていませでした。

戦闘能力、状況判断、作戦立案、全ての能力が非常に高い水準にありました。

以上が八雲さんがベストに選ばれた理由です」

 

そうして嵐がベストに選ばれた理由を説明して締め括った彼女は、次いで葉隠の評価へと移る。

 

「次にペアである葉隠さんが行った隠密状態からの一撃離脱も己の特性を最も活かした方法であり、八雲さんという圧倒的脅威と戦うヒーローチームの神経を常にすり減らしており、いつどこからくるか分からなくて、ヒーローの集中を削ぐことで敵を混乱させるという点で賞賛に値しますわ」

「えへへへ」

 

八百万の掛け値ない賞賛に葉隠は思わず緩んだ声を出して、後頭部に手を当てて照れる仕草を見せた。

まぁ透明人間である自分が嵐のおかげで活躍でき、高く評価されたのだから嬉しいに決まっている。

彼女は敵チームの講評ののちに、ヒーローチームの講評に移った。彼女は肩を落とし沈んだ様子になっている障子と尾白に若干憐れむような視線を向けながら話し始める。

 

「そして、ヒーローチームですが、正直これは分が悪かったと言わざるを得ません。

開始直後の轟さんのビルを丸ごと凍結させるという方法は一番被害を出さない方法としてあの場では最適解だったと思います。その後も、敵チームの二人が氷結を回避した事が分かれば、広範囲攻撃ができる轟さんを先頭に、真ん中に索敵要員の障子さん、最後に後方警戒に尾白さんと隊列を組んだのも敵側を警戒していたからこそのものでした」

 

事実、3人の動きは悪くはなかったのだ。

開幕速攻の氷結攻撃も嵐が反応できていなければ、氷攻撃に耐性がなかったら、その時点で勝ててた。その後も、索敵要員を守りながら動くために障子を真ん中に置いて、その前後を轟と尾白で守りながら進むなど戦法としては理に適っていた。

 

「ですが、八雲さんの実力が圧倒的過ぎましたわ。

ただ大声を上げただけであれだけの爆音がだせるなど、今の段階では想定できるわけがありませんし、尾白さんや轟さんを二人同時に相手にできるほどの戦闘力、地の利や仲間の特性を活用した戦法など、あらゆる面において八雲さんの実力が彼らの想定を凌駕していたこと。単純に彼らとの実力差があり過ぎていたこと。

それこそが、今回の敗因と言えるでしょう」

「「………」」

 

ちょっと持ち上げて、一気に叩き落とした八百万の分析力優れた評価に明るくした二人の表情は一瞬明るくなったものの、また暗くなってしまう。

オールマイトもまた、第一試合の時と同じように「また思ってたより言われちゃったよ……」と微妙な表情を浮かべながら顔を引き攣らせそう小さく呟いたのだ。

 

「う、うん、まあ八百万少女の言う通りだよ。引き続き素晴らしい講評ありがとう‼︎そして、一応彼女の講評があったわけだが、君達は具体的にどういう作戦を考えたのか皆にも分かるように話してもらってもいいかな?」

「はい、勿論です」

 

オールマイトの問いかけに頷いた嵐は自分が組み立てた作戦の説明を始める。

 

「まず、俺は八百万が言った通り障子を真っ先に潰すべきだと考えました。だから、障子をいかに早く倒すかを考え、同時に他の二人もどうするべきかということも考えながら作戦を組み立てて行きました。そして、その上でまず厄介になるのが轟の個性です」

 

『半冷半燃』の轟の個性が嵐達にとって最大の脅威であり、索敵要員である障子は勿論の事、火力が一番高い轟が戦闘の際に最も警戒すべきだと判断したのだ。

 

「彼の個性が戦闘においては最も警戒するべきであり、広範囲も攻撃できることも考慮して作戦を組み立てました。規模や実力は未知数でしたが、推薦組である以上高い能力を持っているのは確実。ならば、氷を使った攻撃ならビルごと凍結させることもできるんじゃないかとも予想し、実際にあいつは開幕速攻ビルを丸ごと凍結して見せました」

 

そう言うと嵐は自身の顔面の一部だけを変化させ、長い髭を生やしてそれを指差しながら続ける。

 

「俺の髭は空気の振動や温度変化を感知することができます。空気の振動とは、すなわち音。耳も同様です。俺の個性は五感がかなり研ぎ澄まされていますので、どれだけ微細な音でもあのビル内であれば、どこにいても足音だけでなく呼吸音、果てには心音なども感知することができます。温度変化も同様です。

俺は髭による感知のおかげでビル内の温度の急激な低下にも反応でき、轟の氷結攻撃にも気づくことができました。とはいえ、轟が最初にビルを丸ごと凍らせたことに関しては、俺が同じ個性を持っていたなら必ず同じことをすると断言できていたからです」

 

それが最速かつ安全に終わらせれる方法でしたから。そう付け加えると嵐は髭をしまって、葉隠を庇った理由も話す。

 

「だというのに、なぜ氷漬けにされたかというと単純に言えば葉隠を守る為ですね。彼女の透明化の個性は乱戦にこそ活きます。俺が考えた作戦に葉隠の存在は必要不可欠である為、開始早々に戦闘不能にされると不都合だったから守ったということです」

「でしたら、八雲さんはどうして氷漬けから脱出できたんですか?見たところ風の防御も間に合っていませんでしたが……」

 

そう続けた嵐にすかさず八百万がそう尋ねた。

すると、嵐はなんて事のないような表情を浮かべながら、答えた。

 

「俺には冷気はあまり効かない。俺の鱗ならば氷漬けにされていようと、強引に抜け出すことが可能だ。だから、あの時は葉隠を優先して庇ったんだ。葉隠は俺と違って氷漬けになると動けないからな」

 

轟がビルを丸ごと氷漬けにしようと反応できた嵐は、瞬時に葉隠を庇う為に動き、自分ならば大丈夫と分かっているからこそ彼女を助けたのだ。

そして、話は戻り開始直後の氷漬けを凌いだ後は、手袋だけ外しただけの葉隠を5階の角部屋に設置した核の守備に残して、嵐が障子の拿捕の為に下の階へと動いた。そこで考えたのが大咆哮による障子の索敵潰しだ。

 

「準備時間中に各階の部屋に床と天井に穴を開けることで、専用の移動ルートを作った俺は髭で轟達の動きを捕捉しながら、彼らが3階に上がったと同時に2階へと降りました。そして、彼らが俺の真上に移動したのを見計らって、大声を上げて障子の索敵機能を潰したんです」

 

実はあの時、轟達が2階から3階への階段を上がっている際に、嵐は床穴を使って逆に3階から2階へと移動していたのだ。風で飛翔して移動していた為に障子も気づかなかったのだ。

ちなみに、下の階から吼えたのは、万が一に音による衝撃で核に影響が及ぶかも知れないことを考慮したからである。彼らという遮蔽物を利用することで、少しでも衝撃を減らしたのだ。

 

「俺の師匠曰く、俺の咆哮は単純に耳を塞がなければいけないほどの爆音としてだけでなく、本能的な恐怖を与える威圧のような特性もあると言っていました。

だからこそ、その特性を利用し索敵する為に感覚を強化している障子の耳をつぶすだけでなく、他の二人もその場から動けなくする為に吼えた。そして、硬直した彼らの頭上へと移動した俺はそのまま3人を奇襲しました」

 

巴曰く、嵐の咆哮には馬鹿げた爆音の破壊力だけでなく、相手の本能に直接恐怖を刻み硬直させることが可能らしい。だから、より確実に奇襲を成功させるために使ったのだ。

障子の拿捕を優先した嵐は、まず前後の二人を引き離すべく風で薙ぎ払って強引に距離を取らせた。二人を引き離した嵐は障子が一人立ち向かうことも予想しており、まだ咆哮の衝撃で痛む体を引きずって戦おうとした障子にも難なく対応してみせる。

障子を動けなくさせて拉致した後、上か下のどちらの階に逃げ込むか分からなくさせる為に、嵐は障子を二人が直接見れない場所ーつまり、隣の部屋へと吹き飛ばすことで二人の視界から離脱させて、そのまま動けない彼を尻尾で拘束しながら上階へと素早く撤退。

すかさず、追いかけた尾白は柱を利用した視線誘導で天井ではなく床穴へと視線を向けてしまい、下へ逃げたと推測してしまったのだ。

 

「実際に尾白は俺が下の階に逃げ込んだと思い込んだはずです。そして、障子が確保されたことを知れば、救援ではなく俺が戻ってこないうちに核の奪取に動くのは想定済み。だから、俺はそれを利用させてもらい、核のある部屋で二人を迎え撃つことにしました」

 

嵐の想定通りに、核の奪取に動いた彼らは核を捕捉する術を持っていないので、4階5階の各部屋を慎重かつ素早く確認しながら移動。そして、核のある部屋で悠々と待ち構えていた嵐と対峙することになったのだ。

 

「その時に葉隠の存在が活きます。姿の見えない敵とは厄介であり、捕捉する術を持たない二人は常に神経を尖らせなくてはいけません」

 

ブーツも脱いで完全に隠密に徹した葉隠を捕捉できるのは、障子を除けば嵐のみだ。

捕捉する術を持たない二人は、いつどこから現れるかわからない葉隠に神経をすり減らさなければならなくなる。

それに加え、嵐という最悪の脅威が目の前におり、葉隠の不意打ちと併せて対処せざるを得ない状況を作らせたのだ。

 

「俺が二人を同時に相手取りながら、葉隠が時折不意打ちで二人に攻撃を仕掛ける。それで怯ませその隙を俺が突くのを繰り返しました。

彼女の移動には捕捉できる俺が風で後押しさせたり、危なければ俺が間に入って防ぐことで、彼女を行動不能にはさせなかった。

そうして二人の神経をすり減らしていくことで精神的にも追い詰めていき、とどめを刺した———以上が、俺らの作戦です」

 

そう言って、自分達の作戦の概要説明を締めくくった嵐だが、クラスメイト達を見渡して気づく。多くの生徒が驚いたような表情を浮かべていたのだ。

まさか、あれだけの短時間でここまでの作戦を思いついたのもそうだが、相手チームの個性や心理をよく理解しており、殆ど全てが彼の掌の上だったからだ。

障子と尾白はそれをよく理解しており、完全に踊らされていたのだと悔しさ半分驚愕半分で絶句していた。

オールマイトは皆が驚く様子を見ながら、満足げに頷きながら、嵐にサムズアップする。

 

「うんうん、詳しい説明をサンキューな‼︎八雲少年‼︎……あ、ちなみに、他にも作戦は考えていたりするのかい?」

「えぇ、まぁ。いくつかは考えていましたよ。

途中までの段取りはほぼ同じですが、もしかしたら核よりも先に別室で拘束されていた障子を見つけた場合、轟達はまず拘束を解くために動くでしょうから、3人をまとめて行動不能にしたり、もしもあの時に尾白達が下に向かって居れば、そのまま俺一人で向かって二人を行動不能にするなど、主に3つのパターンは考えていました」

 

指を三本立てながら、そう答えた嵐はさらに自分が後付けで考えた設定のことも話していった。

 

「最後にこれは全ての作戦に共通することですが、今回の試合を実戦と仮定した場合は、敵側はヒーローを戦闘不能にして拘束した後離脱も考慮しなくてはいけません。

最上階に設置したのも、核のタイマーをセットした後に素早く空へと逃げるためです。他の階で窓を破って逃げるのもいいですが、出た瞬間に狙われることも考えれば、天井に穴を作ってそこから素早く離脱した方がまだ安全です。俺の速度ならば葉隠を抱えていたとしても数分で、核の被害範囲からの離脱が可能です。

それで核は爆発。ビル内に囚われたヒーローも、周囲を固めていた警察や他のヒーロー達も皆仲良く爆散して敵側の完全勝利、と言ったところですかね」

「とんでもないことを考えたね。それ世界史に載るほどの完璧な大犯罪になっちゃうよ」

 

ヒーローと戦って勝利した後の展開という嵐が後付けした設定に、オールマイトは多少引き攣った顔を浮かべていたが、クラスメイト達はほぼほぼ唖然としていた。

たかが訓練。しかも、入学して初めての戦闘訓練でそれは考えすぎではないのかと思っていたのだ。実際に、砂藤や瀬呂は呟いていた。

 

「いやいや、そこまで考えなくてもいいんじゃねぇの?」

「……流石にそれは考えすぎだろぉ……」

 

二人の呟きにほぼほぼ全員がそうだと言わんばかりに何度も頷いた。だが、その一方で嵐はというと少し真剣な表情を浮かべ反論する。

 

「かもな。確かに考えすぎと言われちゃそこまでだが、敵との戦いに関しては考えすぎて損はねぇと思っている。

予想よりも弱くて拍子抜けってのはあるが、本当に危険な敵は何をしでかすか分からないからな。さまざまな可能性を考慮して予測を立てるべきだ」

「うん、彼のいう通りだよ」

 

自論を述べた嵐にオールマイトがそう同意すると、彼の肩にポンと手をおきながら真剣な顔つきになると生徒達を見渡しながら続けた。

 

「八雲少年の考えは一理ある。敵の対処法なんていくら考えても尽きることはないんだ。

確かに授業の一環で八雲少年のようにここまで深く考える子はそういないし、考えすぎと言うのも頷ける。でもね、覚えていてほしい。

真に賢しい敵はヒーローの裏をかくことだってある。私達の予想の斜め上をいく事だって少なくはない。単純に手強かったり、姑息だったりで、残酷なようだが、そう言った手合いには綺麗事が通用しないことがほとんどなんだ。

今回の彼の作戦はそう言った実戦を想定した非常に素晴らしいものだった。君達にとって、彼の作戦や戦いは非常に参考になる部分が多かったはずだ」

 

だから、とオールマイトは言うと、最後に言った。

 

「君達はこれからの訓練で、多くの事を学び身につけていってくれ‼︎私達もしっかりと教え導くから安心するといい‼︎‼︎これからの成長を期待しているぞ‼︎少年少女達‼︎‼︎」

 

そう言い切ってオールマイトはサムズアップして高笑いする。

No. 1ヒーローに教えられ、将来を期待されていると言う事実に彼らは誇らしい気持ちになると同時に、訓練だからと甘えるのではなく実戦を想定して動くべきだと、第一試合後の嵐の言葉と交わせるように心を引き締めていった。

 

その後の残り三組の試合は、オールマイト、嵐の両名の言葉の他に前の二つの試合に触発されたのか、誰もが真剣に取り組んでおり、さまざまな戦いを見せた。

各々反省点や、良かった点なども講評しあうことで、最初の訓練は有意義な時間として終わったのだ。そして、授業終わりにグラウンドβの入り口に全員が再び集まる。

 

「皆お疲れさん‼︎緑谷少年と轟少年以外は大きな怪我もなし‼︎しかし真摯に取り組んだ‼︎初めての訓練にしちゃ、皆上出来だったぜ‼︎」

 

オールマイトが訓練の感想を言ったところで、蛙吹がすっと手を上げながら微妙な表情を浮かべ呟く。

 

「相澤先生の後でこんな真っ当な授業…何か、拍子抜けというか……」

(まぁ、最初がインパクト強すぎたもんなぁ)

 

拍子抜けを食らったと言いたげな彼女だが、多くのクラスメイト達が同じ気持ちであり、彼女の言葉に頷いた。

オールマイトはそんな彼女達に笑いながら答える。

 

「真っ当な授業もまた私達の自由さ‼︎それじゃあ私は緑谷少年と轟少年に講評を聞かせねば‼︎」

 

オールマイトはそういうと生徒達に背を向けながら、バッと構えを取り、

 

「じゃ、皆着替えて、教室にお戻りぃぃぃぃぃぃ‼︎‼︎‼︎」

 

颯爽と走り去っていった。

 

「オールマイトスッゲェ!」

「何であんなに急いで……」

「かっけぇなぁ」

 

オールマイトの余りの速度に単純に驚いたり、なぜあんなに急いだのか疑問に思ったら、その後ろ姿にかっこいいと思ったりとオールマイトに対してさまざまな事を思いながら、彼らはゲートを抜けて更衣室へと戻っていく。

 

その道中でも、各々の試合での講評したりなかったことや、もっとこう出来たかもとか反省点や改善点をお互いに話し合いながら和気藹々としていた。嵐も障子や耳郎と共に仲良く話しながら歩いていく。

誰もが初の戦闘訓練に興奮が冷め止まなかったのだ。

 

 

 

———ただ一人、明らかに意気消沈しあれから一言も喋ってすらいない爆豪を除いて。

 

 

 

▼△▼△▼△

 

 

「しっかし、八雲おめぇ本当強ぇなぁ‼︎あんなに圧倒的なの初めて見たぜ‼︎」

「それな。しかも、氷漬けにされてんのに強引に砕いて脱出って、頑丈すぎとかのレベルじゃねぇよ」

 

更衣室で着替える最中、切島、上鳴が感心混じりにそう呟いた。

今回の訓練での見どころは、やはりというか嵐達の試合だ。あそこまで凄まじい戦闘はあまり見たことがない上、同世代であそこまで戦えるものがいた事に驚きを隠せなかったのだ。

それに加え、推薦組という一般通過組とはレベルが違う轟を圧倒したという事実が、尚のこと彼らを湧き上がらせたのだ。

 

「確かになぁ。あんだけ強ぇと本当どんなトレーニングしてんのか気になっちまうぜ」

「……歴戦の猛者の強さの秘密か。確かに興味があるな」

 

砂藤に続も常闇もそう呟いた。そんな中、上着を脱いだ嵐はそれを丁寧に畳みながら答える。

 

「ま、師匠にひたすら実戦訓練でボコられまくって、死ぬほど鍛えられたからなぁ。敵との戦闘経験は()()ゼロだが、経験値はそれなりにあるつもりだ」

 

主に不良達との乱闘で。とは流石に言えないので、心の内のみで呟く。『ほぼ』というワードに反応したものはおらず、その前の所に多くの者が反応した。

 

「ぼ、ボコられたって、あんなに無双してたお前をか?なにもんなんだよお前の師匠」

「それほど強いのか?だとしたら、相当だぞ」

 

瀬呂が衝撃的な事実に眉をひくつかせながら呟き、障子が驚く。だが、嵐は首を横に振った。

 

「ボコられたのは昔の話だ。今はもう一方的にはやられねぇよ。ただ、日頃の鍛錬だと……まだ、勝ち越せてはいねぇんだよなぁ。

ていうか、実戦訓練だとマジでヤバい。相性も悪いし、あっちはあっちで手加減どんどん無くなってきてるしで……何度か、死を覚悟したことあったわ……」

(((……………八雲の師匠やべぇ‼︎)))

 

何かを思い出しながら、少し青ざめた様子で呟く嵐に、それを見ていた男子達の思考が再びシンクロした。

 

この時、顔も知らない男子高校生達に勝手に超スパルタ師匠認定された巴はというと、部屋で格ゲーをやっており、不意にくしゃみをして誰かが噂してるのかなと思っていたりする。

 

そして、全員が驚愕する中、どうにかして話題を転換させようと尾白が強引に切り出す。

 

「な、なぁ、八雲は一体どれだけの武術を身につけているんだ?俺が見た限りだと、鉄扇術に体術、剣術は会得してると思うんだけど……」

「…まぁ、大方その通りだな。つっても、俺の場合は風を併用した技ばかりだ。あぁ、ちなみに薙刀術と弓術とか他にも色々齧ってるぞ」

「十分すぎるじゃないか。しかも、風も使ってるってことは、完全に八雲のオリジナルなんだろ?もう既に自分の形に昇華してるなんて、同じ武道家からしたら、羨ましいしすごいことだよ!」

 

尾白が目を輝かせながら、若干興奮気味に言った。彼は個性の特性上、近接格闘を主としており尻尾を織り交ぜた格闘を得意としている生粋の武道家なのだ。

そんな彼からすれば、体術や剣術だけでなく、扱いが難しい鉄扇術をも使いこなし、さらに風を併用することで自分独自のスタイルとして昇華している嵐の戦いは感嘆の一言に尽きるものだったのだ。

嵐は興奮気味の尾白に、小さく笑みを浮かべると提案する。

 

「……今度、組み手でもするか?同じ武道家同士、いい刺激になるだろうしな」

「それはこっちからも是非頼むよ‼︎‼︎八雲ほどの武道家と組み手できるなんて、またとない機会だからね‼︎それに、尻尾の使い方も参考にしたかったんだ‼︎」

「おう」

 

鍛錬の提案に尾白は更に目を輝かせており、嵐もまた巴以外の武道家との組み手に多少嬉しそうにしていた。その時、思わぬ伏兵が現れる。

 

「それよりも八雲‼︎洗いざらい教えてくれよ‼︎」

 

峰田だ。しかし、彼はどういうわけか、鼻息が荒く、目も血走っていたのどだ。

明らかに興奮している様子に、嵐は面倒臭さを感じながらも峰田に聞き返す。

 

「…………一応聞くが、何をだ?」

「葉隠の感触に決まってんだろうがよぉぉぉ‼︎‼︎全裸JKの腰に尻尾巻きつけたり、抱き抱えたり、訓練にかこつけて、あちこち触ってただろうがぁぁ‼︎‼︎羨ましいにも程があんだろぉぉ‼︎‼︎全裸の感触を洗いざらい吐いてもらわなきゃ割に合わねぇだろうがァァァ‼︎‼︎」

 

嫉妬に狂って血涙を流す奴をまさかリアルで見ようものになるとは、思いもよらなかっただろう。

そして、ほぼ全員が峰田の発言にギョッとする。先程不埒な想像をしたせいで嵐の凄みにビビったというのに、この下種葡萄はなんてことを彼の前で言ってんだと驚愕したのだ。

嵐は峰田の剣幕に、自分の顔を彼から隠すようにふいっと視線を逸らした。

 

「……葉隠の名誉を守る為にも、断固黙秘させてもらう」

 

先程の生々しい感触を思い出してか、若干顔を赤くした嵐は彼女の名誉を守るためにも黙秘を貫が、峰田はその様子に嫉妬でブチギレた。

 

「ハッ‼︎何いい子ぶってんだっ‼︎男はな全員ムッツリかスケベなんだよっ‼︎‼︎一人だけ全裸JKの感触を堪能して記憶に永久保存するつもりかっ⁉︎⁉︎ずりぃだろうがっ‼︎‼︎ただでさえイケメンで最強のくせによぉ‼︎‼︎せめて、オイラ達にも共有させろよォォォ‼︎‼︎」

 

男の嫉妬はここまで醜いものなのかと、殆どの男子が思った。イケメンで最強なのは大いに分かるが、別に葉隠の事に関してはそれは関係しないから、まぁアホな言いがかりだ。

 

『……ッッ‼︎⁉︎』

 

そして、チラリと嵐の顔を見た者達がビクゥッと体を震わせる。

 

「…………」

 

だって、嵐の表情がもう凄かったのだ。

にっこりと笑っているくせに、瞳は一切笑っておらず、ゴゴゴと効果音が聞こえてきそうなほどに嵐の顔の凄みが増しつつあったのだから。

それに気づかず、ギャンギャン騒いでた峰田も漸く気づいたのか、声のトーンがだんだんと落ちていき、やがて完全に消えてサーッと表情を青ざめつつあった。

嵐は笑ってない笑顔を向けると、峰田の顔面をアイアンクローしながら持ち上げる。小柄な峰田はプラーンと宙にぶら下がった。

 

「ハハハ、おい、峰田。テメェマジでいい加減にしろよ」

「……あ……はい………」

「つか、もし女子達にセクハラなんてしてみろ。したら……」

「し、したら?」

 

震えながら問いかけた峰田に、嵐はにっこりと笑うと、片手で鋏の形を取り、チョキンと切る仕草をしながら告げる。

 

「豚箱ぶち込む前にテメェの切り落とす」

「ひぃっ⁉︎⁉︎」

『『『ッッ⁉︎⁉︎』』』

 

男にとって死刑宣告と同義であることを言った嵐に峰田は反射的に股間を押さえて悲鳴をあげる。他の男子達も、ビクゥッと体を震わせた。

 

「分かったなら、もう懲りろよ」

「は、はい」

 

峰田を下ろした嵐は低い声音でそう言う。男としての死刑宣告を下された峰田はというと、ガチガチに震えながら着替えに戻った。

そうして、全員が着替え終わり、とっとと出て行った爆豪を除き全員が更衣室を出た時、ちょうど保健室から戻ってきたものが一人。轟だ。

ちょうど、目が覚めてこちらに戻ってきたらしい。

嵐は轟が口を開くよりも先に彼に話しかけた。

 

「轟、悪ぃな。少しやりすぎちまった。体の方は大丈夫か?」

「ああ、リカバリガールのおかげで問題ねぇ。試合の方も俺が弱かったからああなっただけだ。それよりも八雲」

「なんだ?」

 

轟は試合前と同じ、氷のような冷たい表情とずっと誰かを憎む眼差しを浮かべながら静かに言う。

 

「今回は完敗だった。だが、次は負けねぇ。必ず俺が勝つ」

 

それはリベンジ宣言だ。だが、嵐には果たさなくちゃいけない目的のために何がなんでもお前には勝たなくちゃいけないという、焦燥や怒りのような物が感じられた。

正直、聞いていて気分は良くなかったが、嵐はそんな様子を見せず僅かに目を細め口の端を釣り上げた。

 

「……いいや、次も俺が勝つ」

「………そうか」

 

轟は嵐に一言だけ返すと、そそくさと更衣室の中へと消えていった。その彼らの一連の様子に切島は若干興奮しながら言う。

 

「リベンジ宣言か‼︎漢らしいじゃねぇか‼︎」

「どうやら、ライバル認定されたみたいだな」

「………いや、そんな大したもんじゃねぇよ」

 

心配した障子の言葉に嵐はそう返すと、そのまま教室へと歩き出す。教室へと向かう最中、嵐は先程の轟の視線の理由について少し考えていた。

 

(あの瞳を俺は知っている。まさか、雄英で見る事になるとは思わなかったがな。……あれは誰かを憎んでいる瞳だ)

 

彼が抱く何かを恨む憎悪と憤怒が入り混じる、瞋恚の炎を宿すあの瞳を、嵐はよく知っていた。

 

 

知らないはずがなかった。

 

 

だって、あの瞳は———かつての自分が抱いていたものでもあったから。

 

 

(なぁ轟、何がお前をそうまでして固執させているんだ?たとえ果たせたとしても、その先には、虚しさしかねぇぞ)

 

 

今日初めて戦い、今日初めて会話したクラスメイト。だが、嵐は既に彼を気にかけつつあった。

 

 




…………嵐君も健全な男子高校生なんです。全裸のJKに抱きつかれたら、そりゃ意識しちまうよ。

ちなみに、嵐の武術ですが、鉄扇術以外は全て巴から学んでいます。元々、彼女はゲームでもある通り、武芸百般を得意としているため、嵐にさまざまな武術を叩き込んでいます。

そして、勿論彼女はゲーマーです。噂されていた時に遊んでいたのはスマ◯ラですよ。

嵐のイメージCV誰がいいと思いますか?

  • 小野大輔
  • 諏訪部順一
  • 細谷佳正
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