天を舞う大嵐、英雄とならん   作:桐谷 アキト

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今回はUSJ襲撃後の話。エピローグ的な話です。


19話 全てが終わった後に

 

白妖達が撤退した直後、教師達を連れた飯田がUSJに到着し、残った敵達を瞬く間に一掃していき事態は解決した。

無事な生徒達は教師達によって、USJの外の出入り口へと集められた。そして程なくして警察が到着して敵達が纏めて連行されていく。

100名以上の敵が手錠をかけられ、連行される中、ベージュの帽子とコートといういかにも刑事らしい格好をした、刑事ー塚内直正は集められた生徒達の数を数えていた。

 

「……16…17…18……19……二人を除いて、ほぼ全員無事か」

 

塚内が人数の確認を終えてそう呟きながら、生徒達を心配そうに見る。脅威が過ぎ去り、安全が確保されたというのに生徒達の表情は誰も喜びの色はなく、誰もが一様に暗い表情のままだったのだ。

 

(……無理もないか。あんなものを、見てしまっては…)

 

塚内はそれを見て仕方ないと思った。

既に緊急搬送されたクラスメイトの一人八雲嵐。彼が瀕死の重傷を負った姿を目の当たりにしてしまったのだから。

 

右腕欠損。胸部に風穴。顔面、頭部負傷、右眼球欠損。全身火傷と裂傷。それに加え、大量出血により全身から血を流し、赤く染める姿は、髪や肌が白い分余計に痛々しい姿であり、瀕死の重傷と言わざるを得なかった。更に聞いた話では、致死性の高い猛毒が彼の肉体を蝕んでいると言う情報もある。

塚内は長年刑事をし、そう言った場面にも立ち会うことがあったため、怪我人の怪我の具合からある程度のことを予想できてしまっていた。その経験則に照らし合わせれば、嵐のあの負傷は生きているのが不思議なほどのレベルであり………正直言って助かる見込みはかなり低いと彼は判断している。たとえ、運良く助かったもしても、怪我の後遺症でヒーローを目指すのは絶望的だろう。

15、16歳のまだまだ子供である彼らにはまだああいった姿は学校内で敵に襲われて命を狙われたと言うイレギュラーな事態も相まって酷なものだ。

 

しかし、塚内は知らないが、彼らが重苦しい雰囲気になっているのは、全員が嵐に関する残酷な事実を知ってしまったのも理由の一つであり、救援を呼びにいった飯田や、散らされた先で助けが来るまでそれぞれのゾーンにいた尾白、常闇、口田、青山は知らないものの、雰囲気の重さから尋ねるのも躊躇うほどだったのだ。

 

「とりあえず、無事な生徒達は教室へ戻ってもらおうか。事情聴取は少し時間とった後に行おう」

 

生徒達の精神状態も考慮して、落ち着かせる時間をとってから事情聴取を行おうと判断した塚内達は教師達にいって教室に帰そうとした時、蛙吹が塚内に近寄って尋ねた。

 

「刑事さん、その、先生達と緑谷ちゃんは…?それに、八雲ちゃんは……?」

「ちょっと待ってくれ。今確認するよ」

 

塚内は一度待ったをかけると、スマホを操作して彼らが搬送された病院先へと電話をかける。程なくして、関係者が対応を始め塚内が事情を話していき、彼らの状態を説明してもらえることになった。

そして、塚内はスピーカーモードにして生徒全員に聞こえるようにさせて聞かせた。

 

『相澤さんは両腕粉砕骨折に顔面骨折です。ですが、顔面の方の骨折は浅いものなので、脳系の損傷は幸いにも見受けられなく、後遺症も残らないでしょう。そして、13号さんは背中から上腕にかけての裂傷が酷いですが命に別状はありません』

「だそうだ。それに、オールマイトも同じく命に別状なし。緑髪の少年も指一本骨折しただけで、二人共リカバリーガールの治癒で十分処置可能なので、保健室に運ばれたよ」

 

関係者と塚内がそう言う。とりあえず、教師陣と緑谷は命に別状はないと言うことが分かって、一瞬彼らは安堵するも残る一人の安否がまだ明らかになっていない。

そして、そんな彼らの疑問を、嵐の怪我の全ての一部始終を間近で見ており、救急車に運ばれる最後まで付き添っていた耳郎が代表で声を震わせながら恐る恐る尋ねた。

彼女は嵐が救急車に乗せられる最後までずっと彼のそばに付き添っており、それまで泣いていたからか、彼女の目元は赤く腫れていた。

 

「八雲は、大丈夫、なんですか?」

『…………』

 

電話口の向こうの関係者は、耳郎の問いかけに長い沈黙の後、絞り出すような声で答えた。

 

『……………………八雲さんは……予断を許さない状況にあります』

『ッッ⁉︎』

 

それを聞いた生徒達の表情が一様に青ざめ強張る。クラスメイトの、頼れる兄貴分である嵐の命が危うい事に衝撃を受け、動揺が走る。

クラスメイト達が絶句する中、担当の者が静かにつづけた。

 

『……現在手術中であり、我々も全力を尽くしていますが……正直、明日を迎えれるかどうかも分かりません……』

「そんなっ……」

「耳郎さんっ‼︎」

「耳郎っ!」

 

耳郎が膝から崩れ落ちて、何度も涙を拭いながら啜り泣く。そばにいた障子と八百万が咄嗟に声を上げて彼女を支えるも、八百万も涙が滲んでおり、障子は悔しそうな表情を浮かべていた。

他の者達も同様であり、事実を聞いてしまった者達は誰もが沈痛な表情を浮かべており、女子達は目元に涙を滲ませていた。

塚内は、彼らの様子を険しい表情で見ると、やがて視線を外して関係者に礼を言って通話を切った。

彼らの関係性を深くは知らない塚内が大丈夫だ、きっと助かると無責任な言葉をかけれるわけもない。

だから、塚内は彼らのメンタルケアは雄英の教師陣に任せて、自分は自分がなすべき仕事をこなす為に動いた。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

場所は変わり、整然に整えられてはいるがどこか怪しげな雰囲気のあるバー。そこに突如黒い靄が発生して、中から死柄木を尻尾で抱えた白妖が姿を表した。

ここは、敵連合のアジトでもあるバーなのだ。

そして、床に下ろされた死柄木は砕かれた両腕を力なく下ろし、太腿からは血を流しながら座り込み憎悪に満ちた声を上げる。

 

「つってぇ、あのクソガキがぁ」

 

両腕の粉砕骨折や、両太腿の裂傷は簡単には治らず数ヶ月は車椅子の生活が続くだろう。

それをした嵐は白妖によって死ぬことは確定していて気分がいいが、それを差し引いてもこの傷の痛みは恨み言を吐かずにはいられなかった。

そして、そんな彼の恨み言に答えたのは白妖でも黒霧でもなく、

 

『どうだったんだい?雄英襲撃の結果は。教えてくれないか?弔』

 

バーのカウンターテーブルの端に設置されたテレビ、そこから聞こえてきた謎の音声だった。

その声は、吐き気を催すほどの凄絶な悪意を宿しており、聞くものによっては己の死すら錯覚させてしまうのではないかと思うほどの、恐怖と不快感を放っていた。

だが、死柄木達にとっては慣れ親しんだものであり、彼は痛そうに呻きながらも答える。

 

「………失敗だ。脳無は吹っ飛ばされて、オールマイトも殺せなかったっ。話が違うぞ。オールマイトは弱ってなんかなかったじゃねぇか、先生」

 

嵐との戦闘中にも出ていた『先生』と呼ばれる存在。それがあの声の主らしく、その『先生』とやらは死柄木の言葉に少し残念そうに答える。

 

『……違わないよ。ただ見通しが甘かっただけだね。……しかし、ふぅむ、脳無が吹き飛ばされたか……まぁ、仕方ないか…‥残念だったね、ドクター』

『せっかくオールマイト並みのパワーにしたというのに、ワシと先生の共作が……』

 

『先生』とは別に聞こえて来たのはしわがれた老人の声だ。『ドクター』と呼ばれた存在もいるらしく、脳無を回収できなかったことに残念そうにしていた。

そして、『先生』は不意に死柄木に尋ねた。

 

『………でも、失敗したという割には、少し声が弾んでいるようだね弔。何か面白いことでもあったかい?』

 

声の弾みから何かを察したのか、そう尋ねる『先生』に死柄木は手の下で狂気に歪んだ笑みを浮かべ、楽しそうに報告する。

 

「………ああ、そうだ、聞いてくれよ。実はな、オールマイト並みに強い子供が一人いたんだよ。脳無もそいつにボコボコにされて、俺らも散々にやられてた」

『…………へぇ、それは興味深いな』

「だろ?正直、先生があの時白妖を送ってくれなきゃ脳無も俺らもあのガキに殺されてだろうな。間違いなく断言できるよ」

「私も同意です。白妖の助けがなければ、我々はあの若鳥に完敗するところでした。いえ、事実、完敗でした。オールマイトが到着する前に、我々はあの少年の圧倒的なまでの力に敗北しました。脳無も圧倒され、あのまま戦い続けていれば敗北は間違いなかったと思います。白妖が来なければ、今頃私達は死体になっていたことでしょう」

 

直接その強さに圧倒され蹂躙された死柄木と黒霧がそう言う。彼らをしてそうまで言わせた生徒がいることに俄然興味が湧いたのか、『先生』は笑いながら尋ねる。

 

『まさか、あの脳無も倒せるほどの子供がいるとはねぇ。二人がそこまで言うってことは、間違いなくその生徒は強いのだろう。……でも、おかしいなぁ。そこまで圧倒されて怪我も負わされたと言うのに、どうしてそこまで笑えてるんだい?』

 

脳無をも圧倒する生徒の存在に興味が湧いたのは確かだが、今の話ではなぜ死柄木の声が弾んでいるのはわからなかった。

当然の疑問に、死柄木は待ってましたと言わんばかりに答える。

 

「ああっ、傑作だったのは白妖がきてからさっ‼︎俺らを殺そうとしていたオールマイト並みの強さのバケモンのクソガキは、なんと白妖の弟だったんだよっ‼︎‼︎」

『…………へぇっ』

 

死柄木の無邪気な報告に『先生』は少しの間をおくと、そう短く答えた。しかし、その声音は明らかに弾んでおり、声の主が不気味な笑みを浮かべてるのは間違いないと判断できるものだった。

それからも、死柄木は笑いながら話す。

 

「まさしく運命の再会ってやつだ。今でも思い出すと笑えるぜ。オールマイトが脳無を引き受けて、あのガキが白妖と戦ってたんだが、途中までは互角に戦えていたのに、仮面を剥ぎ取って顔を見た瞬間、明らかに動揺してさぁっ‼︎そっからはまともに戦えなくて白妖にボッコボコにされたんだからなぁっ‼︎‼︎」

 

座り込みながら肩を揺らして不気味に笑う死柄木の姿は、あまりにも不気味であった。

『先生』は死柄木の笑い声を聞きながら、カウンターの椅子に座り仮面を被り直した白妖に尋ねる。

 

『………白妖、その生徒はどうしたんだい?』

「とどめはさせなかったが、すぐに死ぬだろう。右腕と右目を切って、胸には風穴を空けたんだ。それだけでも致命傷なのに、その上私の毒を大量に流し込んだ。再生能力があって、毒の耐性が高かろうと関係ない」

『そうかそうか、確かに君の毒ならあり得るね。何せ、解毒剤も僕の手元にしか存在しないんだ。どうあろうと生き延びるのは不可能だ』

『そうじゃな。間違いなくその生徒は死ぬじゃろう。オールマイトは殺せなかったが、オールマイト並みの力を持つ子供を殺せたのなら、今回の襲撃の成果としては重畳じゃないかね?』

 

白妖が持つ個性の一つ『狂血(きょうけつ)』。

致死性の猛毒を含んだ血を操る個性の殺傷力を誰よりも知っている二人でも、その生徒は間違いなく死ぬということになり、オールマイトを殺さずとも彼並みの力を持つ生徒を殺せたと言う功績は大きいと彼らは判断した。

 

『ああそうだね。今回のは決して無駄ではない。オールマイトを殺せずとも、オールマイトが生徒を一人守れなかった、というダメージを与えることができた‼︎これだけでも敵連合の存在はアピールできた。だが、まだ足りない。

もっとだ、もっと凄惨な事件を起こしてこそ、君の名は知れ渡る‼︎』

 

『先生』はそう大仰に言うと、更なる悪行を促す。

 

『我々は自由に動けないからね。君と言う“シンボル”が必要なんだ。死柄木弔‼︎君と言う恐怖を世に知らしめるんだ‼︎‼︎』

 

悪行を促された死柄木が次なる悪行に備えて、怪我の手当てをする為に別室に移動した後、テレビの向こう側で『先生』とやらは一人物思いに耽る。

 

(白妖に弟、ねぇ。……そんな子供なんて一人しか、あの一族の長男しかいないわけなんだけど……あぁ、確かに()()()()()()今はちょうど高校一年生か)

 

白妖……否、紅葉の弟を、八雲嵐の存在を奇しくも彼は知っていた。

知らないはずがない。なぜなら、彼は自分が思い通りにならなかった存在の一人なのだから。

しかし、自分の記憶が正しければ、彼は7年前のあの時に紅葉と同じように()()()はずなのだ。だが、どう言うわけか、彼は生きていた。それが疑問で仕方がなかった。

 

『まさか、生きていたとはねぇ。でも、おかしいなぁ。僕は死んだって聞いたんだけど、どうして君は生きてたんだい?ねぇ』

 

そして、『先生』と呼ばれた男は、浮かんだ疑問のままその名を呟いた。

 

 

 

『———出雲(いずも)翠風(みかぜ)君』

 

 

 

それは彼自身がかつて名乗っていた苗字だ。

この日本に存在する特殊な一族であり、自分とも因縁のある一族だ。嵐はその一族の生まれだった。

しかし、今はその姓を名乗ることは許されず、出雲本家から追放され『八雲』を名乗っている。

それを知る者は、ごく一部の人間のみ。だと言うのに、この者はあろうことかその事実は知らずとも、彼の本名だけは知っていた。そして、嵐の正体に気づくと同時に、今回の襲撃は死柄木が思うようにはならないことも予想できてしまった。

 

(………弔や白妖には悪いが、彼はおそらく死なないだろうね。何せ、()()()()を持っているんだ。驚異的な生命力で解毒してしまうだろう)

 

彼は自分の考えを改める。

『先生』は嵐の存在を、彼が隠している個性の詳細を知っている。それ故に、おそらく嵐は一命を取り留めると密かに考えていたのだ。

『先生』はテレビの前で不気味に口を歪めると、内心で期待にほくそ笑んだ。

 

(ああ、早くもう一度君に会いたいな。なにせ君はこの世で最も異質で、特異で、素晴らしい可能性を秘めた個性を有する———《未知の存在(エクストラ・ピース)》なんだから)

 

 

巨悪は嗤い、闇から悪意の凶手を伸ばす。

 

 

今は闇に潜み力を蓄えているが、いつかその悪意で平和を壊す為に。

 

 

そして、今度こそ己の野望を果たす為に。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

生徒達の事情聴取が終わった頃には、すっかり空も夕焼けの橙に染まっていた。

警察の人達や教師達、飯田の話を聞いた限りでは、自分達がUSJの中にいた際、外では大嵐が突然発生して、突然消えると言う不可解な気象変動が発生したらしいが、空を見ればそんなことがあったとは思えないほどに雲が少ない清々しい夕焼け空が広がっている。

そんな夕焼けに照らされた雄英高校の校舎の廊下を、耳郎、八百万、障子の三人がゆっくりとした足取りで歩く。彼らは事情聴取の順番が最後であり、障子が先に、耳郎に付き添った八百万が二人で聴取を受けていて今しがた終わったばかりなのだ。

そして、沈痛な面持ちで力なく廊下を歩く耳郎に八百万が気遣うように声をかける。

 

「………耳郎さん、大丈夫ですか?」

「………うん、少し落ち着いた……ありがとう、ヤオモモ……」

「いえ、大丈夫ですわ」

 

そう答える八百万や隣を歩く障子の表情も耳郎ほどではないが暗かった。彼らは全員が嵐に関する衝撃的な事実を知ってしまったからだ。

 

今日USJを襲撃した敵連合の一人白妖が7年前に嵐のせいで死んだとされる姉であり、嵐が憧れ目標としている狐火ヒーロー“クレハ”その人でもあり、そんな彼女が敵の悪意によって遺体を化け物に改造され、今日嵐を殺そうとしたこと。

 

それは、それはあまりにも、

 

(惨すぎる……っ‼︎)

 

障子は込み上げる怒りのままに拳を強く握りしめる。彼の脳裏に嵐の姿が思い起こされていた。

敵の正体が自分を守って死んだ姉だと分かってからの、あまりにも弱々しく悲痛な表情。

姉を傷つけることなどできずにまともに戦うことができずに彼女に殺されかけたこと。

最後に、去ろうとする彼女の背中に手を伸ばして、それでも届かずに心が引き裂かれるような慟哭を上げ、気絶する姿。

 

流れる血が止まらず、毒に体を蝕まれ、か細くなっていく呼吸。顔色がだんだん悪くなり、体が次第に冷たくなっていき、雪の中にいるのではないかと錯覚してしまうほどに冷たくなっていた体温。

 

憧れた友が絶望に心を折られ、刻一刻と確実に死へと追い込まれているその姿を前に、障子はただ見ていることしかできなかった。

 

(悔しいな。…何もできず、見ていることしかできなかった自分を……初めて憎らしいと思った……)

 

今日ほど自分の無力を呪った日はなかった。

自分達ではまだ彼を支えれるほど強くはないが、いつか憧れた彼の背中に追いつき、友として支えられればいいと思っていた。

だが、今日自分達と嵐との距離の遠さを実感し、友の危機に見ていることしかできないことに、自分達の無力さを酷く痛感させられた。

 

初めてだった。何もできなかったことをここまで恨んだのは。

 

「………ッッ」

 

自分の無力さに打ちひしがれ、悔しさにマスクの下でギリッと歯を噛み締めていた時、ふと耳郎が口を開いた。

 

「ねぇ……ヤオモモ、障子」

「なんでしょう?」

「………」

 

八百万と障子が反応し、続きの言葉を待つ中、耳郎はか細い声で呟く。

 

「ウチ……強くなりたい」

 

何の為にとは聞かなくても二人には手にとるようにわかった。

彼女は、今回の事件で誰よりも苦しんだ嵐の力になりたいと言っているのだ。

そして、耳郎はスカートの裾を強く掴み涙をポタポタと流すと、震える声で言葉を紡ぎ始める。

 

「……もう、八雲が一人で抱え込まなくてもいいように……もうこれ以上苦しまなくていいように。早くあいつを支えれるぐらい、強くなりたいっ」

 

嗚咽混じりに紡がれた言葉には彼の力になりたいという強い想いが込められていた。

彼との間に天と地ほどに大きな力の差があるのかも。どれだけその目標が遠く険しい道のりなのかも、彼女はこの数日で酷く痛感した。

それでも、自分は彼の隣で戦えれるくらいに強くなりたいと。

そんな想いが込められていたのだ。

 

耳郎の涙ながらの言葉に八百万が穏やかな微笑を浮かべ、障子が決意に満ちた表情を浮かべ頷く。

 

「………ええ、そうですわね。大切なお友達が一人苦しんでいるのに、何もできないままでどうしてお友達と呼べるでしょうか」

「……ああ、全く以ってその通りだな。苦しむ友を捨て置く人間にはなりたくない。それに、次を望むわけではないが、それでも何もできずに終わるのは、もうごめんだ。だから、共に強くなろう」

 

二人も想いは同じだった。

大切な友であり、頼れる兄貴分でもある彼を支えれるように、彼が一人で背負わずに弱音を吐けるほど信頼してもらえるように強くなろうと。

 

「……二人共、ありがとう…」

 

そう誓った二人に耳郎は涙を滲ませながらも笑みを浮かべて感謝の言葉を送る。それに対して、二人は首を横に振った。

 

「いや、友ならば抱く気持ちは皆同じだ」

「ええ、皆八雲さんが大切なんですよ」

「………うん」

 

そう耳郎が小さく頷いた時だ。

 

「響香‼︎障子っ‼︎‼︎」

 

自分達を呼ぶ切羽詰まった声が聞こえてきた。

そちらに視線を向ければ、自分達の進行方向の先の廊下から、拳藤と取陰が血相を変えてこちらへと駆け寄ってきていた。

 

「先生から話聞いたんだけど、怪我はない⁉︎」

「皆大丈夫だった⁉︎」

「一佳……切奈……」

 

USJが襲撃されたことを知った彼女らは、耳郎達に近づくと心底心配そうな声で尋ねながら、怪我がないか全身を見渡す。

耳郎が彼女らの名を呼ぶ中、障子と八百万が目を伏せながら静かに答えた。

 

「俺達は無事だ。怪我もない。だが……」

「八雲さんが、病院に運ばれましたわ……」

「「ッッ‼︎」」

 

二人よりもたらされた事実に二人は息が詰まる。病院に運ばれたということは、この襲撃事件で大怪我をしたということだ。

拳藤が震える声で尋ねる。

 

「……八雲は……大丈夫、なの?」

 

心のどこかで彼なら大丈夫だと思いそう尋ねたものの、帰ってきた返事は彼女の予想を裏切るものだった。

障子は少し沈黙すると、悔しさを堪えた声音でその事実を告げた。

 

「………危篤状態だ。……医者が言うには、明日を迎えれるかもわからない、と」

「……嘘……」

「そんなっ……」

 

二人は驚愕する。特に拳藤に至っては、入試で彼の実力を見ていたこともあって、彼を危篤状態にまで追い詰めるほどの敵がいたこと。そして、大切な友人が命の危機にあることに大きな衝撃を受けた。

 

「………敵は、そんなに強かったのか?」

 

拳藤が拳を強く握りしめながら怒りに震える声で尋ねる。嵐の命が危ないことにショックを受けたのは確かだが、その後に彼をそこまで傷つけた敵に怒りの感情が湧きあがったのだ。

障子が暗い顔を浮かべながら、静かに答える。

 

「………ああ、強かった。詳しいことは緘口令を敷かれているから話せないが、八雲が戦った敵達はオールマイトですら苦戦するほどの強敵だった。八雲は俺達を守る為にそれほどの強敵と戦い、そして重傷を負った。ただ……」

「ただ?」

 

続きを言いかけて口をつぐんだ障子の様子に取陰が首を傾げる。

障子は「八雲は身体だけでなく心にも大きな傷を負った」と言いかけて止めたのだ。こればかりは、彼自身の口から話すべきものだ。深く知らない自分が話していいことではない。

そう思い、障子は訝しむ二人に首を横に振りながら言葉をつなげた。

 

「すまない。これ以上は話せない。あの時、あいつを守ることも、共に戦うこともできなかった俺達は……ただあいつの無事を祈ることしか、できないんだ……」

「……そっ、か………」

 

拳を強く握りしめながら言った障子の言葉に拳藤は力無く腕を下ろし顔を俯かせると悔しさや悲しみが混ざったような表情を浮かべて小さく呟いた。

 

「何もできないのって……こんなに、きついんだね……」

「一佳……」

 

詳しい事情は知らない。だが、彼らの様子から深い後悔が伺えたからこそ、彼らの気持ちを推し量れてしまったのだ。

後から話を聞いただけでもこんなにも悔しい気持ちになるのだ。それを目の当たりにしていた彼らはもっと悔しいことだろう。

そして、悲しそうに呟く拳藤の様子に取陰が心配そうに彼女の名を呼ぶ中、耳郎が頷いた。

 

「……うん、だからウチらはもっと強くならないといけない…」

「響香……」

 

顔を上げた拳藤は決意に満ちた表情を浮かべる耳郎の姿を視界に収めて僅かに瞠目した。

 

「……ウチらは八雲に守られていて何もできなかった。だから、次はもう後悔したくない。次こそ八雲を支えれるようにウチらは強くなるよ」

「………」

 

目を赤く泣き腫らしながらも、確かな覚悟に満ちた表情で耳郎は先ほど言った誓いを改めて口にした。

友として嵐が寄り添っていいと思えるぐらいに強くなりたい。そんな彼女達の決意を前に………拳藤は静かに笑った。

 

「……そうだね。響香の言う通りだ」

 

耳郎の言う通りだ。

今ここでうじうじ悔しんだり、悲しんだところで状況が好転するわけではないのだ。嵐の無事は祈ることしかできないし、何もできなかった自分の無力さに打ちのめされたのなら、前に進むしか道はないのだ。

 

今日目の当たりにしてしまったプロの世界。

それを前にして彼らの心は一度は無力に打ちひしがれたものの、そこから彼らは友の為にと諦めずに立ち上がったのだ。

ならば、自分もそうあろう。彼の友達として、そして、彼に憧れた者として。

 

「なら、私も強くならないとな」

 

拳藤はニッと笑みを浮かべながらそう言うと次いで凛とした表情を浮かべて続ける。

 

「私も八雲が頼れるぐらいに強くなるよ。あいつが一人で背負い込まなくていいようにね。大事な友達だもん。なら、迷う理由なんてないでしょ」

 

さも当然であるかのように言い放たれた言葉に、耳郎達は揃って笑みを浮かべる。取陰も一瞬呆気に取られたものの、すぐに仕方ないなぁと呆れ混じりの笑みを浮かべると彼女の肩に手を置く。

 

「全く一佳はもぅ……ま、ここまで話聞いちゃアタシも黙ってるわけにはいかないよね。私にとっても八雲は友達だし、ね」

「切奈……私らに合わせなくてもいいんだよ?」

「そんなこと思ってないって、純粋な本心だよ」

「ならいいけど」

 

そんなことを言い合う二人に耳郎達も表情を綻ばせると、二言三言話した後、新たな決意を胸に秘め嵐の無事を祈りつつそれぞれ教室に戻っていった。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

…………気づけば、嵐は深い暗闇の中にいた。

 

 

重力の束縛から解放され、ふわふわと漂うように浮かぶ嵐の視界には黒一色しかなく、他の色は一切ない。

 

温度は感じられず、音も聞こえない。

 

身体の感覚はなく、動いているのか止まっているのかもわからない。

 

そんな暗闇の中で、突如一つの紅蓮の炎が生まれる。

炎は次第に大きくなると、人の形を取り始める。人型を形作り、姿を表したのは、九つの尾に獣の耳を持つ一人の金髪紅眼の女性ー紅葉姉がいた。

 

『紅葉、姉……?』

 

現れた彼女の姿に、嵐は戸惑いの声をあげる。

無言で佇み、こちらを見る彼女の視線は、彼女を知っているものからすれば予想できないほどに酷く冷たいものだったのだ。

 

そう、まるで、嵐を殺そうとした敵ー白妖のように。

 

『………っ⁉︎』

 

彼女の冷酷な様子に嵐が戸惑う中、彼女に変化が起きる。

彼女の鮮やかな真紅の瞳からどろりと赤黒い血が流れ始め、口の端からも血を溢れ始めたのだ。それはまるで、あの日の再現のようで、嵐は悲鳴じみた声をあげる。

 

『紅葉姉っ⁉︎』

 

身体を動かすこともできない嵐は、その場で叫ぶことしかできなかった。

やがて、全身から血を流し始めた彼女の肉体から悍ましい漆黒の炎が放たれると瞬く間に彼女の体を覆い尽くす。

そして、黒炎が晴れたとき、露わになった姿は、もう嵐が知る金髪紅眼の紅葉の姿ではなく、USJを襲撃し嵐を殺そうとした敵ー白髪紅眼の白妖の姿だった。

 

姿を変貌させた彼女は嵐を殺気や憎悪に視線を鋭くさせ嵐を睨むと、静かに口を開き、

 

 

 

——————この、人殺しめ。

 

 

 

怨嗟に満ちた声でそう言った。

 

 

その声は、恨むような、責めるような、そんな負の感情に満ちた声だった。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

「……………………ぅ、ぁ…?」

 

 

ピッ、ピッ、と無機質な電子音が響く中、嵐は呻き声を上げながらゆっくりと瞼を開けた。

 

(……こ、こは……びょう……いん……か…?)

 

視界に広がる白い天井に、隣から聞こえる心電図らしき電子音。口と鼻を覆う呼吸器、そして、ベッドらしき柔らかいものに寝かされている感覚で、嵐が今いるのが病院だということが分かった。

 

(俺は………生きてる………のか………?)

 

息ができている。鼓動の音が聞こえる。

自分の体内から感じる生きてる証に、自分が生き延びたことを実感した。

 

「あ、嵐さんっ…私のことがわかりますかっ?」

 

切羽詰まった声が左側から聞こえてくる。

聞き慣れた声に嵐は視線だけ動かして、左を見ればそこには巴が心配そうに嵐の顔を覗き込んでいるのが見えた。嵐は掠れた声で力無く彼女を呼んだ。

 

「……とも、え、…さん……?」

「はいっ、巴です。本当に目を覚ましてくれてよかったっ。貴方が目覚めなかったら、私はっ」

 

そう言って、巴は嵐の左手を掴んだまま涙を流し嗚咽を漏らす。嵐は泣く彼女を落ち着かせようと頭を撫でる為に、右腕を伸ばそうとして、肘から先の感覚がないことに気づき自分の右腕が斬り落とされた事を思い出した。

 

(……あぁ……右手、斬られたんだった。……それに、右目も、か……)

 

それに視界が右半分暗いままであるのも、右目が切られたからというのも思い出す。そして、二つの欠損を含めて、全身の傷が全て……他ならぬ白妖ー姉紅葉の手によるものだということも思い出したのだ。

嵐は天井を見上げながら、悲痛な声でポツポツと呟き始める。

 

「巴、さん‥‥紅葉姉、がいた……」

「……はい。話は聞いています」

「化け物に、改造、されて……敵に、なって………俺が、戦ったんだ………」

「…………はい」

 

次第に嵐は左目からとめどなく涙を流し始める。右からも流しているのか、包帯に涙が滲んでいた。

 

「俺が、暴走したから…‥俺があの時、あんなことになったから………あの人は、死んで………化け物に……俺のせいでっ……」

「……………」

 

後悔が、苦悩が、悲哀が、胸の内から溢れ出て止まらない。罪悪感が心を埋め尽くして消えない。

大好きな姉の未来を奪ったのも。姉を人外の怪物に変えてしまったのも。全ては、自分があの時暴走してしまったせいなのだから。自分が招いてしまった事なのだ。

 

「……戦えなかったっ……俺は、あの敵が……白妖が、紅葉姉だって分かった時から…‥俺は、あの人と戦えなくなっていたっ……」

 

白妖が紅葉だと分かった瞬間、嵐は彼女に剣を向けることができなくなっていた。

自分のせいで化け物にされた彼女を、また自分が殺すのかという、強迫観念に駆られて動けなかったのだ。

まだ信じたくない気持ちはある。夢であってほしいと願う気持ちも。だが、こうして重傷を負い病院のベッドで寝かされていることが、あれが夢ではなく、認めざるを得ない現実だと言うことを明確にしていた。

嵐は天井を見上げ、涙を流しながら震える声で嗚咽を漏らす。

 

「巴さん……俺は、どうすればいいっ?……紅葉姉の想いを無駄にしない為にヒーローを、目指したのに………俺のせいで、あの人は化け物にされたっ……俺が悪いんだっ。俺のせいで、ああなったっ………くそっ、くそぉっ……どうすればいいんだよっ……」

「……嵐さん………」

 

涙を止める方法がわからず、泣きながらひたすら悔やむように自分を責め続ける嵐を見て巴は悲痛な表情を浮かべながら、彼の名を小さく呼ぶ。

 

(……誰よりも慕っていたお嬢様が、自分を守るために死んだだけでも辛いのに……まさか、お嬢様の遺体を改造して殺戮兵器に改造するなんて……しかも、そんな彼女自身の手で殺されかけたとは………)

 

考えただけでもゾッとするほどにあまりにも酷い仕打ちだ。おそらく、主犯の背後にいた者は今回のような事態は予想外だったはずだ。だが、偶然だったとしても死んだ姉が改造され化け物にされて、あろうことか弟の前に敵として現れ彼を殺そうとしたなど、聞くだけでも喜ぶような事態だろう。

 

(なぜ……この人が、ここまで苦しまなくてはいけないんですかっ)

 

巴の内から怒りが燃え上がる炎のように溢れてくる。彼女は嵐の従者として、それこそ彼が生まれた時から知っている。当然、姉の紅葉や青葉との関わりも知っており、幼少の頃の彼の姿も、本家から追放され家族から拒絶されてしまった時のことも、それからヒーローになるためにずっと努力してきた姿も知っている。誰よりも近くで見てきたのだ。

巴にとって嵐は仕えるべき主君であり、また守るべき弟同然の家族であり、まだ未熟な弟子でもある。

だからこそ、これほどまでに優しく、家族想いの彼には苦しんでほしくない。いつの日か心の底から笑えるように幸せになってほしいと願っていた。それ程までに嵐のことを大切に思う彼女がこんな仕打ちをした醜悪な敵に怒りの感情を抱かないわけがなかったのだ。

巴は、その怒りに一瞬表情を歪めたものの、悲痛な表情へと戻しながら、左手で彼の手を握りながら、右手を伸ばして彼の頭を昔からしているように優しく撫でると優しく言った。

 

「………今は、気が済むまで泣いてください。辛かったら抱え込まずに吐き出していいんです。外では抱え込んでしまうのだとしても、今ここにいるのは私だけですから」

「……巴、さん……うぁ、……あぁ……ああぁぁ………」

 

嵐は巴の言葉に箍が外れたのか、巴の手を握り返しながら、声を上げてまるで子供のように声を上げて泣いた。

昔からそうだった。彼は幼少の事件のせいで、同年代の子供よりも大人びてしまい、多くを抱え込めるようになってしまった。

しかし、それは裏を返せば心の傷の許容量が人よりも多い事になる。それを隠すのも上手くなってしまった彼は、人前で泣く事をしなくなった。子供にとっての当たり前のことができなくなっていた。だから、こうして昔から深い関わりのある巴の前でしか彼は弱さを見せなくなったのだ。

そうしてしばらく、嵐は巴が見守る中、泣き続けた。

 

しばらくして、ようやく落ち着きを取り戻した嵐はすんと鼻を鳴らすと、恥ずかしそうに顔を若干赤くしながら巴に詫びる。

 

「…‥その、ごめん……巴さん……」

「いいえ、大丈夫ですよ。気持ちは分かりますから。落ち着いたようですので、看護師の方呼びますね。あと、雄英の方にも連絡しておきます」

「………ありがとう……あ、巴さん……」

 

そして巴はベッド脇にあるナースコールボタンを押して看護師達を呼ぶとスマホを片手に持ちながら廊下へと出ようとする、だがすんでのところで嵐が彼女を呼び止めた。

 

「どうされました?」

「……皆はどうなったんだ?それに、あれからどれくらい経った?」

 

嵐の問いかけに巴はクスリと微笑むと嵐の奮闘の結果を伝えた。

 

「皆さんご無事ですよ。先生方は確かに大怪我を負いましたが、皆さん命に別状はありません。嵐さん、貴方は見事に護りきったんです。あの場にいたクラスメイト達と先生達を。叱るべきところもあります。それでも、貴方は確かに今度こそ護り抜いたんです。その行動、その成果はヒーローというべき誇らしいものですよ」

「………そうか……今度は、護れたのか……よかった……」

「ええ」

 

嵐はそう言ってあからさまに安堵する。

自分が瀕死の重傷を負ったり、衝撃的な事実を知り傷心になっていたのだとしても、相澤や13号含めた皆が無事である事実が、嵐の心を少し軽くさせてくれた。

 

「あと、今日は事件があった翌日の昼ですよ」

「………まだ、1日しか経ってないのか」

「ええ、今日は事件があったので学校の方は臨時休校になったそうです。一応、明日から授業を再開させると言ってましたよ」

「そうか、分かった。ありがとう」

「ええ、では少々席を外しますね」

 

そして、巴が部屋を出て完全に病室に一人になった嵐は、今度は窓の外へと視線を向ける。

空は憎らしいほどに清々しい青空で、新緑の若葉が揺れて青空に緑が映えていた。

嵐はそれを見ながら、小さくつぶやく。

 

「………心配かけてんだろうな」

 

脳裏に浮かぶのは耳郎や八百万、上鳴のあの時嵐の背中を押してくれたもの達をはじめとした、クラスメイト達の顔だ。

彼ら傷だらけの姿だけでなく、自分が泣き叫び、意識を失った醜態も見てたはず。きっと怖い思いをしたことだろう。

耳郎なんてあんなに信頼して送り出してくれたのに、結局瀕死の重傷を負ってしまったのだ。かなり心配していることだろう。

 

「……皆、護れたのは良かったが……こんなザマだと満足に護れたとは言えねぇよな……」

 

嵐は自嘲気味にそう呟く。

確かにクラスメイトや教師達の命は護ることはできた。だが、それと引き換えに自分が死にかけていては完璧に護ったとは言い切れない。

全員を護れたという安堵と心配をかけているという罪悪感が彼の胸中にじんわりと広がっていった。

 

「………あぁ、くっそ、まだまだだな。俺も」

 

自分の未熟さを呪い、嵐は恨みがましく呟いた。そのつぶやきは誰の耳にも届かずに、静かに消えていった。

 

 





嵐君の実家のお話はおいおい明かしていくつもりです。

嵐のイメージCV誰がいいと思いますか?

  • 小野大輔
  • 諏訪部順一
  • 細谷佳正
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