天を舞う大嵐、英雄とならん   作:桐谷 アキト

22 / 29

つい先日、アイスボーンの設定資料集を買いました。

もう情報量がとてつもないし、色々と詳細な情報も知れてほくほくです。読んでて楽しい。マジ最高ですっ‼︎


22話 天高く舞い上がれ

 

 

 

嵐が復帰してから2週間が過ぎ、ついに体育祭当日を迎えた。

当日は雄英高校にはかなりの人が集まり、露店が多く展開されている。特ダネを取るべく集まった報道陣も多く、また敵襲撃があり警備を厳重にしたことで大勢のヒーローに警備依頼を出したことでトータルの人数は数万人を超えていた。

そして、生徒達は体操着に着替えてそれぞれクラスごとに割り当てられた控室で待機して入場の時を待っていた。

精神統一をする者もいたり、談笑するものもいたりなど各々の時間を過ごしている。

 

「あー、コスチューム着たかったなー」

「公平を期すために着用不可なんだよ」

 

愚痴る芦戸に尾白がそう言って宥める。

この雄英体育祭ではヒーロー科の生徒達はコスチュームの着用は禁止となっている。尾白の言う通り、各々の力を活かすために公平性をとってのことのようだ。

例外があるのがサポート科が自分で作ったサポートアイテムのみだ。もしくは個性の性質上、必要と判断され着用を認められた場合ぐらいだ。

 

「八雲はどうしたの?アンタ個性使うと服破れるじゃん。上着だけ脱いで戦う感じ?」

「一応コスチューム用に使ってる下着だけ申請出してるから、最悪の事態にはならなくて済む」

 

右腕と右目が完全に元通りに再生し、毒も抜けて完全回復を遂げた嵐は耳郎の問いかけにそう答える。

嵐の個性的にコスチュームなしで変身したら、服は破れたままだ。最悪下着まで破れて使い物にならなくなって仕舞えば、目も当てられない放送事故になるだろう。

 

「確かにな。入試の時のように袴も着れんからな。下着だけでもあった方が妥当だな」

「ん〜でも、八雲君裸になっても需要ありそうだけどね〜」

 

障子に続き葉隠がカラカラと笑いながらそんなことを言う。だが、それに嵐がげんなりとした表情を浮かべる。

 

「勘弁してくれ。俺はそう言う路線ではヒーローやりたくない」

「いやいや〜八雲君ほどの、細マッチョイケメンならモデルとかやれるでしょ。その肉体美を全国放送しちゃいなよ」

「やめろ。それに、確か去年の2年ステージで全裸になった生徒がいて、かなり苦情がきたらしいからその辺りのことはしっかりするつもりらしいぞ」

 

実は去年、2年生のステージで個性のせいか競技中に全裸になってしまった生徒がいたのだ。

その時の時間をリアルタイムで見ていた嵐は、顔を顰めながらそう言う。

申請を出す際にもミッドナイトに気をつけなさいと言われたのでなおのことだ。

 

「でも、どうせ戦う時は変身するし上着脱ぐでしょ?なら、今更じゃない?」

「………それを言うな、耳郎」

「あはは、ごめんごめん」

 

そうして嵐が耳郎や障子、葉隠と談笑している時、一人緊張に精神を落ち着かせようとしている緑谷に轟が近づいた。

 

「緑谷」

「轟くん……何?」

 

高鳴る心臓を落ち着かせながら恐る恐ると轟に振り向くと、轟はいきなり言った。

 

「客観的に見ても、実力は俺の方が上だと思う」

「へ⁉︎うっうん……」

「でも、お前オールマイトに目ぇかけられてるよな?別にそこ詮索するつもりはねぇが……お前には勝つぞ」

 

大胆に轟は宣戦布告をする。

今まで誰とも馴れ合わなかった彼が、いきなり格下である緑谷に対抗心をむき出しにして宣戦布告する様子に一同は驚愕する。

 

「おぉ⁉︎クラスナンバーツーが宣戦布告!!?」

「急に喧嘩腰でどうした⁉︎直前にやめろって……」

 

ピリつく空気に上鳴が驚きの声を上げて、切島が思わず止めに入るも、轟は肩に添えられた手を肘で跳ね除ける。

 

「別に仲良しごっこじゃねえんだ。何だっていいだろ」

 

切島を見ずに突き放すようにそう言った轟に、緑谷は下を見ながらもオドオドとした様子で答え始める。

 

「轟くんが何を思って僕に勝つって言ってんのか……は、わかんないけど……そりゃ君の方が上だよ……実力なんて大半の人に敵わないと思う……客観的に見ても……」

「緑谷もそーゆーネガティブな事言わねえ方が……」

「でも…‼︎」

 

ネガティブなことを言った緑谷にそう切島がいうものの、続いて出た言葉に止めようとした言葉が止まった。 

 

「皆……他の科の人も本気でトップを狙ってるんだ。僕だって……遅れをとるわけにはいかないんだ。……だから、僕も本気で獲りに行く‼︎」

 

今までにないはっきりとした声で、強い意志が込められた宣言をした緑谷に、クラスメイト達が各々反応を見せる中、轟は「……おお」とだけ答えて緑谷から視線を外すと、今度は静観していた嵐に振り向く。

 

「八雲、お前にもだ」

「……訓練でのリベンジってか?」

「それもある。だが、1番の理由はお前がこの中で1番強いからだ。お前はオールマイトが共闘を認めるほどに強い。そんなのプロの中でもほんの一握りなはずだ。

それほどに強いお前に勝つのは俺にとって意味がある。だから、緑谷だけじゃねぇ。お前にも勝つぞ」

「いいぜ。好きにかかってこいよ。けど、一言言わせてもらうとな…」

 

轟の真っ向からの宣戦布告に嵐は不敵に笑みを浮かべて席から立つと轟を見下ろしながら、静かに告げる。

 

「初めから全力を出す気がねぇ奴に負けるつもりは毛頭ねぇぞ」

「何だと?」

 

その言葉にピクリと轟が反応して、自然と表情が険しくなり殺気が滲んだ視線へと変わった。

 

「お前に関係があんのかよ」

 

轟の声音が低くなり、苛立ちを含んだものへと変わる。ピリつくどころか殺気立った空気にクラスメイト達が冷や汗を流す中、嵐は尚も笑みを浮かべていた。

 

「いいや?関係ねぇよ。ただ、あのレベルの俺に完敗したお前が、氷だけで俺に勝てると本気で思ってるのか?」

「戦闘において熱は使わねぇ。右の氷だけでテメェに勝つっ。次はあんなヘマはしねぇよ」

 

轟は一層不機嫌になり、開会式前なのにもはや一触即発の空気に耳郎や障子が慌てて止めに入ろうとした瞬間、嵐はフゥと息をつくと肩をすくめる。

 

「お前にも何か事情があんのはわかったよ。

なら、お前のやり方で俺にかかってくるといいさ。ただな……」

 

嵐は轟を真っ直ぐに見返すと、黄金色の瞳に冷徹な眼光を宿してはっきりと告げる。

 

「……あまり、俺をナメるなよ」

「ッッ」

 

そう言った瞬間、ゾワリと轟は悪寒が駆け抜けたのを感じてピクッと反応した。

轟だけじゃない。突如として放たれた嵐の威圧。それは控室に一気に充満してクラスメイト達の体をも強ばらせたのだ。

しかし、それは一瞬のこと。すぐにその威圧は霧散した。嵐は、轟の横を通り過ぎると控室の扉に手をかけながらクラスメイト達に振り向いて言う。

 

「そろそろ入場の時間だ。行くぞお前ら」

 

そう言って嵐はさっさと外に出ていった。

他の者達もそれに追従するように出ていく中、轟だけが一人控室に取り残される。

 

「‥‥今…‥俺は、ビビってたのか……」

 

轟はいつの間にか握りしめられていた拳を開いて掌を見る。掌には汗がびっしりと浮かんであり濡れていた。

 

「……くそっ……やっぱり、テメェは越えなくちゃいけねぇんだよっ」

 

轟は自分に言い聞かせるように怨嗟のこもった言葉を吐くと自分も控室を出る。

 

「お母さんの力だけでテメェを超えて……クソ親父を否定しなくちゃいけねぇんだっ」

 

最後にそう呟いて控室から出て行ったのだが………その時の彼の背中は、とても悲しそうだった。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

雄英高校体育祭一年生ステージ観客席では、多くの観客が開幕を心待ちにしている。

 

「お二人共、お飲み物とお食事買ってきましたよ」

 

短く切り揃えた黒髪に、背中に自分の体を覆い隠せるほどの艶やかな濡れ羽色の黒い翼を生やす女性がドリンクを三つトレーに乗せて観客席の一角ー最後列に座る女性達に声をかけた。

 

「うん、ありがとう黒羽ちゃん」

「ありがとう、黒羽」

 

黒羽。黒翼を生やした女性をそう呼んだのは、二人の女性。片方は、白髪に所々赤が混ざる髪が特徴の、眼鏡をかけた青い瞳の女性であり、もう一人は小麦色のような金髪に翡翠色の瞳、そして腰から生える()()()()()()()が特徴の女性だ。彼女は変装でもしているのか髪を結んで帽子を深く被り、サングラスをかけている。

二人とも若く、歳の頃は二十代前半だ。

二人に礼を言われた黒羽は、軽く頭を下げてドリンクをそれぞれ渡すと、金髪の女性の隣に座る。

 

「……出店は少し混んでましたが、開会式の前に戻れて良かったです」

「うん、テレビでは何度も見てたけど、実際に行くと人の数すごいね」

 

黒羽の言葉に金髪の女性が同意する。

雄英体育祭がオリンピックに代わる一大イベントとして有名である為、来場人数が凄まじいことは知っていたが、実際目にするとこれほどなのかと驚いていたのだ。

 

「まぁ、今年はいきなり大事件があったしね。皆注目してるんだよ。特に一年生に」

 

もう一人眼鏡の女性がそう呟く。例年ならばラストチャンスにかける熱と経験値から成る戦略などでメインは3年ステージなのだが、今年は彼女達がちょうどいる一年生が最も注目を浴びた。

それもそのはず、今年の一年生のヒーロー科A組が敵の襲撃を受けながらもそれを見事耐え抜き生還して見せたのだ。否が応でも注目度は高まる。

 

「二人共、今日はせっかくのオフだったのに急に誘っちゃってごめんね」

「ううん、私の方こそ。実は一度はちゃんと見に行きたかったの。だからありがとうね。冬美ちゃん」

「そう?それなら良かった」

 

どうやら眼鏡の女性がこの二人を誘って雄英体育祭を観に来たらしい。金髪の女性の言葉に、眼鏡の女性は朗らかに笑うと視線を観客席下の入場ゲートに向けると、暗い表情を浮かべてしまう。

 

「大丈夫?冬美ちゃん」

「……うん、大丈夫だよ。そろそろ私もちゃんと向き合わないといけないからね」

「……弟さんのことよね?この前の襲撃事件では大丈夫だった?」

「うん、焦凍は怪我はなかったみたいだよ。ただ、クラスメイトが一人瀕死の重傷を負ったって」

 

彼女らがこの一年ステージにいる理由。

それはひとえに冬美と呼ばれた女性の弟が一年A組ヒーロー科に所属しているからだ。

彼女の名前は轟冬美。轟焦凍の姉である。

そして、冬美から一人重傷者が出たと言う話を聞き、金髪の女性は心配そうな表情を浮かべながら尋ねる。

 

「瀕死って……その子は大丈夫なの?」

「うん、個性のおかげで完全回復したって。今回の雄英体育祭にも問題なく出れるって言ってたよ」

「……そう。良かった」

 

顔も名前も知らないが重傷だった生徒が無事に回復したことに心から安堵する女性。

そんな時だ。

 

『さぁさぁさぁ、始めていくぜェェ‼︎‼︎群がれマスメディア‼︎今年もお前らが大好きな高校生達の青春暴れ馬……雄英体育祭が始まディアビバディアァユウレディ!!??』

 

実況担当のプレゼントマイクの声が響き渡る。

いよいよ雄英体育祭が始まろうとしていた。観衆達は一気に沸き立つ、まさしく祭り騒ぎのように今か今かと待ち侘びる。

 

『雄英体育祭‼︎ヒーローの卵達が我こそはとシノギを削る年に一度の大バトル‼︎‼︎どうせてめーらアレだろ、コイツらだろ!!?

敵の襲撃を受けたにも拘らず鋼の精神で乗り越えた奇跡の新星‼︎‼︎‼︎』

 

その言葉と共に、入場ゲートの奥から人影が大勢現れ、プレゼントマイクがその行進に合わせるように声を一層張り上げて最初の入場者達の存在を告げる。

 

 

『ヒーロー科‼︎‼︎1年‼︎‼︎A組だろぉお‼︎⁉︎』

 

 

プレゼントマイクの声に合わせて、クラスのリーダーである嵐を先頭にA組の面々が姿を現した。

すると、観衆が一気に大歓声を上げて報道陣がカメラを一斉に向けて凄まじいフラッシュを鳴らし続ける。そんな中、金髪の女性は勢いよく立ち上がった。

 

「………嘘……」

 

愕然と呟く彼女の表情は驚愕の一言につき、信じられないものを見ているかのようだった。

隣に座る黒羽も立ち上がりこそしなかったものの、同様の視線を浮かべておりその切れ長の瞳を大きく見開いていた。

そんな彼女らの様子に冬美は困惑し恐る恐る尋ねる。

 

「ど、どうしたの?()()ちゃん。それに黒羽ちゃんも」

「そんな……まさか……どうしてっ貴方がっ」

 

冬美の問いかけにも答えずに金髪の女性ー否、『青葉』。確かにそう呼ばれた女性は、現れた1年A組の集団。その先頭を歩く嵐を見ており、震える声で()()()()()()()()()()()()()()()()()()()を呟いた。

 

 

 

「………………翠風?」

 

 

 

嵐の本名を呼ぶ女性の名はー出雲青葉。

 

出雲本家の長女にして、出雲紅葉の双子の妹であり、八雲嵐ー出雲翠風の実の姉その人である。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

「うわぁ、こうも大勢に見られると緊張するね」

「あぁ、流石にこれだけ注目されるのは初めてだ」

 

大勢の観衆達が歓声をあげる中、耳郎は緊張で少しハラハラし、障子も耳郎ほどではないが緊張している。

 

「お前ら今からそれだと、本選まで保たねぇんじゃねぇか?」

 

緊張する友人二人を揶揄うようにそう言う首だけを振り向かせる嵐。彼は普段通りの堂々とした姿であり大勢の観衆を前に微塵も気負いしていなかった。彼以外に普段通りなのは爆豪ぐらいだ。

 

「あんたが普通すぎんの」

「よく平常運転で行けるな。お前は」

「別に気負う理由もないしなぁ。むしろ、楽しいぜ。こう言うお祭り騒ぎは俺大好きだからな」

 

ニッと笑いながら嵐は答えると、自分の後ろを歩くクラスメイト達の様子を見る。

 

(緊張こそしているが…誰も萎縮していない。やっぱあの経験は大きかったな)

 

嵐は一人静かにほくそ笑む。

後ろを歩くクラスメイト達は緊張こそすれど誰一人として萎縮しているものがいないのだ。あの襲撃事件の経験が彼らの心を強くしたのだろう。

そして、プレゼントマイクの紹介に合わせて次々と他クラスの生徒達も入場してくる。自分達と同じヒーロー科であるB組にも気圧されているような者は一人もいない。拳藤なんかは嵐と視線があって手を振ってくるぐらいの余裕っぷりだ。サポート科や経営科も各々のやりたいことが定まっているためか、特に気負った様子はない。しかし、普通科は違った。

 

「俺らって完全に引き立て役だよな……」

「だるいよねー……」

 

普通科の生徒達から聞こえたそんな発言を、嵐の耳は拾った。

やはりというか、普通科の生徒達にやる気はあまりなかった。それどころか諦めており自分達がヒーロー科の生徒達が目立つための当て馬のような扱いだと言ってしまっているほどだ。

嵐はそんな生徒達を冷めた目でみる。最初からやる気がなく惰性で参加している彼らに嫌気がさしたのだ。

しかし、彼だけは別だった。

 

(あいつだけは別か)

 

嵐の視線の先にいる普通科の生徒。それは、前に嵐達に宣戦布告をした大胆な少年だ。

彼だけは、嵐含めたヒーロー科の生徒達をまっすぐと見据えており、瞳にはのしあがってやるという強い意地の炎が宿っているのを確かに見た。

 

(あいつは確実に上がってくるな。面白ぇ)

 

ああいう目をした奴は強い。その事を知っている嵐は口の端を吊り上げて好戦的に笑うと前を向いた。

そして、生徒達が全員出揃ったのにあわせて壇上に体のラインがはっきり出て見事なプロポーションが惜しげもなく主張されている過激なコスチュームを着用した18禁ヒーロー・ミッドナイトが登壇して、鞭を打ち鳴らしながら最初のプログラムを宣言した。

 

「選手宣誓‼︎‼︎」

 

ミッドナイトの美貌に会場中の男性が魅了されあっという間に頬を染めて、鼻の下を伸ばしてしまう。

それは生徒達も例外ではない。

 

「ミッドナイト先生、なんちゅう格好だよ…!」

「18禁なのに高校にいていいものか?」

「いい‼︎」

「峰田黙れー」

 

ミッドナイトの格好にA組生徒達も顔を赤らめたり、疑問を感じたり、むしろバッチコイとかぬかす葡萄だったりと生徒達が雑談する中、ミッドナイトは再び鞭を振るった。

 

「静かにしなさい‼︎選手代表!———1-A八雲嵐‼︎‼︎」

「はい」

 

ミッドナイトの言葉に嵐は頷き、周りからの様々な感情が込められた視線を一心に受けながら、最後尾から生徒達をかき分けて壇上に上がった。

 

「晴れ舞台ね。ガツンといいの言っちゃいなさい。八雲君」

「はい」

 

ミッドナイトにそう言われてマイクを受け取ると、嵐は一度ステージを見渡してから選手宣誓を始めた。

 

「宣誓。我ら選手一同。ヒーローマンシップに則り、正々堂々戦い抜くことをここに誓います。選手代表1-A八雲嵐」

 

選手宣誓はどこにでもあるようなありきたりなものだ。だが、問題発言をしないあたりは好感を持てたらしく拍手が起きた。

 

「素晴らしいぞ八雲君‼︎ブラボー‼︎」

「まぁ、普通すぎるけど……問題起こすよりはましかね?」

「だなぁ。八雲が問題発言するとは思わねぇけどよ」

「ケッ、つまんねぇ宣誓すんじゃねぇよっ。クソ白髪がっ」

「かっ、かっちゃん!やめなよ!」

 

飯田が感激し、切島が苦笑を浮かべ砂藤が同意する中、爆豪は心底つまらなそうに吐き捨てて緑谷が宥めようとする。

 

「八雲?」

 

だが、これで宣誓は終わりかと思っていたが、嵐はマイクを戻すことも壇上から降りることもせずその場で立ったままであり耳郎が怪訝そうに思った瞬間、嵐は再び口を開いた。

 

「前置きの堅苦しい挨拶はこれで終了だ。こっからは、俺自身の言葉で言わせてもらう」

『??』

 

これで終わりだと思っていた観客、生徒達が嵐が再び話し始めたことに首を傾げる。A組メンバーですらこれ以上何を言うんだ?と首を傾げてざわつき始めた。

何人かは止めないのかと口々に言うものの、雄英の校風は自由が売りだ。誰も止めない。

そして、誰の制止もないまま嵐は話を続ける。

 

「…‥二週間前、俺達A組は敵の襲撃を受けた」

『ッッ‼︎』

 

話し始めたのは今最も話題を集めている襲撃事件のことだ。この一年ステージにいる多くの者達があの事件を耐え抜いたA組を見にきたからこそ、今の彼の言葉にこぞって反応する。

 

「本物の悪意に、本物の殺意に晒され命を狙われた俺達は生き残る為に必死に戦って各々その場を切り抜けた。だが、中にはどうしようもなく強い敵もいた。オールマイトがいなかったら、全滅もあり得ただろう。それほどまでに危険な状況を俺達はなんとか生き抜いた」

『…………』

 

事件の話を他ならぬ当事者から聞かされたことに、上っ面の情報しか知らなかった観客や生徒達は黙って耳を傾ける。

 

「つい1ヶ月前までは中学生だった俺達が、敵の襲撃を受けて全員無事に生き残ったことが十分に注目を集めるのは当然だ。

だが、それをよく思わない人達もいる。そんな人達は、事件を乗り越えた俺達に注目が集まってることに対して、注目されていない自分達は所詮は引き立て役だと卑下し諦め惰性で参加している」

 

その言葉に普通科の生徒達が冷や汗を流しながら露骨に視線を逸らす。それを確かに見た嵐は表情を冷徹なものへと変えて、彼らを睥睨しながらはっきりと告げた。

 

 

「———アホか」

 

 

瞬間、場の空気が凍りつく。

選手宣誓からの言葉に続いた思い切った罵倒の言葉に、観衆、生徒含めた大部分が絶句し普通科の生徒達はあまりの物言いに怒ることすら忘れて唖然としている。

嵐は静かな怒りを滲ませた言葉で更に続けた。

 

「引き立て役?自分達は注目されていない?

当然だろ。お前らが何か人々の記憶に残るような事件に巻き込まれたか?何か大きなことを成し遂げたのか?いいや、何一つない。お前らは人々から注目されるようなことをしていない。だから、今注目されていない。それだけの話だ。……別に事件にあったからどうこうと言うわけじゃねぇ。注目されたいなら敵に襲われろと言うわけでもねぇ。敵に襲われるなんざいいことじゃねぇからな。なら、どうしても俺達A組よりも注目度が劣るお前らはどうすればこの体育祭で注目されると思う?」

 

簡単なことだろ。そう言って、嵐は怒りを一転させて不敵に笑うとはっきりと告げる。

 

「決して諦めずに自分の強さを示せ。

己の実力を示し死ぬ気で天辺を目指して這い上がれ。そうして予選を勝ち進めば否が応でも注目されることになる。

むしろ、ヒーロー科の生徒を押し退けて上に上がったんなら、そいつはヒーロー科(俺達)よりも注目されることになるぞ」

 

そんな言葉に唖然としていた普通科の生徒の何人かがピクリと反応し嵐を見上げる。以前宣戦布告してきた少年は、その瞳に戦意の炎を一層激しく燃え上がらせていた。

嵐は一瞬合った彼の視線に笑みを浮かべた。

 

「ヒーロー科も、普通科も、経営科も、サポート科も関係ねぇ。この体育祭では全員に平等にチャンスが与えられている。

それをいかにものにするかが重要なんだ。誰よりも早くチャンスを掴み取って上に行ったやつが天辺を取れる。誰よりも多くのチャンスを物にしたやつが優勝だ。な?簡単な話だろ?」

 

そう不敵に笑うと、その上で一つ宣言をする。

 

「その上で宣言する。この体育祭——俺が優勝する」

『ッッ‼︎‼︎』

 

嵐の大胆な優勝宣言に生徒達が揃って驚く中、嵐は腕を見下ろして拳を強く握りしめる。

 

「俺はヒーロー科の入試という狭き門へと挑み、障害を潜り抜けて主席で突破した。全員が各々憧れたヒーローに近づく為に、なりたいヒーローになる為に努力してきた。

俺もだ。俺もある人から受け継いだ想いを無駄にしない為に必死に努力して主席という結果を勝ち取り、今この場に選手代表として立っている」

 

嵐は顔を上げて、自分を見上げる生徒達を見渡す。

 

「積み重ねてきた努力に、抱く想いに優劣はない。皆やれるだけのことをやってこの場にいる。だが、それでも代表としてこの場に立っているのはこの俺だ」

 

だから。

 

「俺がこの場にいる誰よりも強い」

 

そう言い放つと同時に、興奮によって瞳が橙色に輝くと強烈な威圧感が放たれる。優勝宣言に続く全員への宣戦布告に向けられた生徒達全員が息を呑む。

通常ならば野次の一つや二つは飛ぶはずだ。だが、誰も何も言わない。言えないのだ。多くの者が嵐が放つ威圧感に完全に呑まれていた。

それは、この体育祭という戦いの篩から落とされた者達だ。頂点をかけた戦いは既に始まっている。嵐は、この選手宣誓の場を利用して生徒達を選別したのだ。

 

そして、彼の選別に残った者。つまり、今の言葉に闘志を燃やす者達に向けて拳を突き出して不敵な笑みを浮かべると、

 

「さぁ‼︎頂点をかけて戦おうぜっ‼︎‼︎」

 

高らかに宣言したのだ。

そうすれば、多くの生徒達が盛り上がり闘志をむき出しにした。

 

「ハッ、上等ダァっ‼︎テメェを捩じ伏せて上に行ってやらぁ‼︎」

「うおぉぉぉ‼︎八雲の奴、粋なことしてくれるじゃねぇかっ‼︎」

「ああっ、滾って来たぜっ‼︎」

 

爆豪は昂ぶる戦意のままに獰猛に笑い、切島や砂藤が粋な計らいに闘志を迸らせる。

 

(すごいっ八雲くんっ。こうも皆を燃えさせるなんてっ‼︎‼︎)

(テメェを倒してこそ意味がある。何がなんでも勝つからなっ)

 

緑谷や轟が嵐の真っ向からの宣戦布告に静かに闘争心に火をつける。

 

「………いいね、超ロックじゃん。ウチも燃えてきたよ」

「ああ。俺も本気でお前に挑むぞ。八雲」

 

耳郎や障子も笑みを浮かべて、覚悟とやる気に満ちた表情を浮かべて意気込む。

他の者達も上等だと言わんばかりに闘争心に満ちた笑みを浮かべる。

 

「はははっ、やってくれるなぁ!八雲の奴。でも、やっぱりお前はそうだよなっ。皆を焚きつけるのが上手いよほんとに」

「ねぇ。これは俄然やる気が出てくるってもんだよ」

 

拳藤も取陰も闘争心を燃え上がらせて笑った。

 

「真っ向からの宣戦布告か‼︎上等だっ‼︎やってやらぁ‼︎」

「……ふん、まぁ不快じゃない分まだマシか」

 

他のB組生徒達も各々やる気に満ちた表情を浮かべており、闘志に満ちていた。

普通科も同様だ。何人かの生徒が、嵐が放った熱に当てられたのかやる気に満ちた表情を浮かべている。恐らく、いや、確実にこれからの戦いは予選から熾烈なものになるだろう。そう思わせるほどに多くの生徒がやる気に満ちていたのだ。

 

そして、選手達を焚きつけた張本人である嵐は大きく両腕を広げて、高まった熱量のまま雄英体育祭開幕を告げた。

 

「雄英体育祭——開幕だッッ‼︎‼︎」

 

嵐の熱は観客達にも伝わったのか、観客達も凄まじい大歓声を上げて、会場中のボルテージをこれでもかと際限なく上げていった。

プレゼントマイクやミッドナイトも同様だった。

 

『YEAHHHHHHHHHH!!!!!!!やってくれるじゃねぇかっ八雲ぉ‼︎‼︎とんでもねぇエンターティナーだぜ‼︎‼︎こりゃ早速燃える展開になるんじゃねぇかぁっ!!?』

「もうっサイッコウよっ八雲君ッッ‼︎‼︎私、こういうのすっごい好みだわっ‼︎‼︎じゃあ、この熱がまだあるうちに早速第一種目行くわよっ‼︎‼︎」

 

歓声を上げるプレゼントマイクに続いて、恍惚とした笑みを浮かべ満足そうにするミッドナイトが嵐に勢いよくサムズアップをすると、早速と言わんばかりにモニターに視線を向ける。

 

「さぁ第一種目‼︎‼︎今年は………コレよ‼︎‼︎」

 

そしてモニターに表示されたのは『障害物競走』の文字。

 

運命の第1種目はー『障害物競走』に決まった。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

モニターに障害物競走の文字が出ると、ミッドナイトは早速ルール説明をしていく。

 

「運命の第一種目は『障害物競走』よ‼︎計11クラスでの総当たりレースよ‼︎コースはスタジアムの外周約4km‼︎我が校は自由さが売り文句‼︎ウフフ……コースを守れば()()()()()()構わないわ‼︎さぁさぁ位置につきまくりなさい‼︎‼︎」

 

足早に説明された生徒達はミッドナイトにそう言われ、一早くいい場所に立とうと出発ゲート前に殺到する。あっという間に人が集まり、スタート地点のゲート前は早くも満員電車のようなすし詰めのような状態になっていた。

そして、位置につくとすぐにゲート上のスタートランプの一つの光が消えて。二つ目が消えて、三つ目が消えた瞬間、

 

『スタ—————————トッッ‼︎‼︎』

 

ミッドナイトの声が響いて、生徒達が一斉に飛び出した。

しかしだ。数百名の生徒に対してゲートはあまりにも狭い。スタートダッシュを決めようとした生徒達は揃いも揃って詰まり前に進めなくなった。何とかしてこの渋滞から脱しようと生徒達が押し合う。

 

『さーて実況してくぜ‼︎解説アーユーレディー⁉︎ミイラマン‼︎』

『無理やり呼んだんだろうが』

 

早速実況を始めていくプレゼントマイクに彼に無理やり呼ばれたであろうミイラマン状態の相澤が不機嫌な声を出す。しかし、プレゼントマイクはそれをあっさりと無視する。

 

『早速だが序盤の見どころはっ?』

『…………今だよ』

 

相澤がそう呟いた直後、地を這う氷結がゲートを駆け抜けた。立ち込める冷気がゲートから溢れてゲート周辺すらも凍らせる。

 

「ってぇー‼︎何だ⁉︎凍った⁉︎」

「動けねぇっ‼︎」

「さみー‼︎」

「んのヤロォォォォッ‼︎‼︎」

 

氷結に足を凍らされた生徒達が恨み言を吐く中、凍って動けない生徒達の間をかき分けて一人の生徒が遂に群衆を抜け出した。

紅白の髪の少年ー1年A組轟焦凍だ。氷結の妨害を成したのは何を隠そうこの男だ。彼はいきなり仕掛けた。

そして、多くの生徒達をその場に拘束して置き去りにした彼だったが、喰らいつく者達が早速轟に追従した。

 

「甘いわ!轟さん‼︎」

「そううまく行かせねぇよ‼︎半分野郎‼︎」

 

八百万と爆豪を筆頭にA組メンバーは轟の妨害に足止めを喰らうことなく突破して轟を追いかけ始めたのだ。他にもB組の生徒や普通科の生徒も何人かは氷結を何とか凌いでいた。

 

「クラス連中は当然として、思ったよりも抜けられたか……」

 

轟は走る速度を維持しながらも、後ろを振り返り次々と突破する面々を見る。

そんな彼に、峰田が頭部のもぎもぎを凍結した地面に次々と放ってその上をトランポリンのように器用に跳ね回りながら接近する。

 

「へへ、轟の裏の裏をかいてやったぜ‼︎ざまあねぇってんだ‼︎喰らえ‼︎オイラの必殺……GRAPE…へぶぅっ⁉︎」

 

峰田が轟に接近しつつ、もぎもぎを手に取り地面に拘束しようと腕を振り上げた瞬間、横から何かに突き飛ばされ吹っ飛んだ。

いくらなんでもありとはいえ、選手を殴り飛ばすのはアリなのかと誰が吹き飛ばしたのかとそちらを見れば、峰田を吹き飛ばしたのは選手ではなく、

 

『ターゲット、大量‼︎』

『ブッコロォス‼︎』

 

人工音声で叫ぶロボットだった。それは、ヒーロー科の入試で出てきた仮想敵だ。それが数十体もいる。しかも、その背後には数体の0P巨大仮想敵までいた。

 

「入試の仮想敵!!?」

「ッッ‼︎」

『さぁ早速障害物だ‼︎‼︎まずは手始め……』

 

これこそ、この障害物競走の第一の障害。

 

『第一関門 ロボ・インフェルノ‼︎‼︎』

 

プレゼントマイクの声が響き渡る。

突如現れた無数の仮想敵が道を埋め尽くしているせいで生徒達は揃いも揃って足を止めてしまう。

 

「入試ン時の0P敵じゃねぇかっ⁉︎」

「マジか‼︎ヒーロー科あんなのと戦ったの⁉︎」

「多すぎて通れねぇっ‼︎」

 

足止めを食らった生徒達は口々に声を上げる。先頭を走っていた轟も足を止めて群がる0Pを見上げる。

 

「一般入試用の仮想敵ってやつか」

「どこからお金出てくるのかしら……」

 

轟がそう呟き、少し後方で八百万がそんな発言をする。金額に関しては……雄英だからとしかいえないだろう。

そして、多くの生徒がこの仮想敵の群れにどうすればいいと立ち往生する中、轟は全く動じずに屈んで右手の指先で地面に軽く触れると冷気を這わせる。

 

「せっかくなら、もっとすげえの用意してもらいてえもんだな」

 

そして轟は右半身を起点に周囲を凍り付かせるほどの冷気を放ちながら低く冷たい声音で呟く。

 

「クソ親父が見てるんだから」

 

右手を振り上げる。

そうすれば、冷気がまさしく津波の如く前方へと解き放たれ目の前にいた0Pの仮想敵を一体完全に凍り付かせた。

 

「しめた‼︎あいつが止めたぞ‼︎あの隙間だ‼︎通れるぞ‼︎」

「私らも急ごう‼︎」

 

0Pの脚の間を抜ける轟を見て、抜け道を見つけた生徒達もそこに殺到しようとする。だが、それを他ならぬ轟が止めた。

 

「やめとけ。不安定な体勢ん時に凍らしたから……」

 

頭上の0Pがグラリと揺れて氷の破片を撒き散らしながら大きく傾き始めたのだ。そして、

 

「———倒れるぞ」

 

遂に0Pは轟音を鳴らしながら倒れてしまい、轟後方の道を塞いでしまった。

 

『1-A 轟‼︎攻略と妨害を一度に‼︎こいつぁシヴィー‼︎‼︎すげぇな‼︎一抜けだ‼︎アレだな。もうなんか……ズリィな‼︎』

『ズルくはねぇだろ。それに、そろそろもっと滅茶苦茶な奴が動くぞ』

 

轟の瞬殺劇にプレゼントマイクが誉めてんのか貶してんのかどっちかわからない発言をして、それに相澤がそう答えた。

轟よりも滅茶苦茶な奴がいる。

観衆達は誰のことがわからずに首を捻っているが、A組メンバーとB組2名はソレが誰なのかをはっきりと理解していた。

そして、件の男はというと、

 

「おーおー、早速やってんなぁ」

 

スタジアムでコース各所に設置されたカメラロボが映し出した激戦の様子が映し出されたモニターを見ながら呑気にそう呟いていた。

誰もがゲートへと殺到し外へと駆け出していく中、ただ一人、その男だけはー選手代表1-A八雲嵐だけは走り出してすらいなかったのだ。

 

『へ?おいおい、何やってんだ八雲っ‼︎お前まだスタートすらしてねぇじゃねぇかっ‼︎‼︎』

 

コース上の熾烈な争いを実況していたプレゼントマイクが漸くソレに気づき声を張り上げた。

そう、嵐がいるのは一年生スタジアムの中、しかもスタート地点であるゲートの向かい側のゲート脇で呑気に観客席前の壁に背中を預けてモニターを見ていたのだ。

 

『おいっ‼︎さっきの優勝宣言はどうしたんだっ‼︎』

『真面目にやれ‼︎』

 

先ほど大胆な優勝宣言して全員を盛り上げさせたというのに、走り出すことすらしないやる気ゼロな態度に観衆達からは野次が飛ぶ。

嵐はそれに反応せずに、涼しい顔を浮かべていた。そんな彼に、相澤が声をかける。

 

『八雲、そろそろいい感じに捌けた頃合いだろ。もう行ったらどうだ?』

「了解」

 

相澤の言葉に嵐は口の端を吊り上げながらそう答えると壁から背を離して徐にシャツを脱ぎ始めた。

 

『『『はぁっ⁉︎⁉︎』』』

 

突然服を脱ぎ出すという奇行に観衆達が目を丸くする中、嵐は脱いだシャツを地面に放り投げスニーカーと靴下すらも脱いで半裸裸足になる。

露わになった鍛え抜かれた肉体に観客の中の女性達が若干頬を赤らめる中、嵐は髪を束ねていた紐も解いてシャツのポケットに仕舞うと早速己の肉体を変化させていく。

硬質な音を響かせて皮膚を全て漆黒の鱗へと変えて、背中や腕から純白の飛膜や鰭を、腰からは長い尻尾を生やして指先も全て鉤爪へと変えた嵐は、最後に天高く伸びる黄金の角を生やし龍人へ変身する。

 

『八雲が服を脱いだのは個性を使うためだ。あいつの個性だと服着たままじゃ破けちまうからな』

『そりゃ放送事故になっちまうぜミイラマン‼︎さぁて八雲、準備は整ったみてぇだなっ‼︎‼︎』

 

相澤がそう説明した後、準備を終えた嵐の様子を見計らってかプレゼントマイクが興奮気味に声を張り上げた。

 

『さぁ目を反らさずにしっかり見とけよオーディエンスッッ‼︎‼︎ハリケーンがっ‼︎‼︎トルネードがっ‼︎‼︎いよいよ解き放たれるぜぇ‼︎‼︎

HEY!!八雲‼︎テイクオフのカウントは必要かぁ!!?』

 

プレゼントマイクの提案に嵐は牙を剥き出しにして獰猛に笑うと三本指を立てる。

 

「スリーカウントで」

『OK任せときな‼︎‼︎なら、早速オンユアマークだぜ‼︎‼︎』

 

プレゼントマイクのノリノリな合図に嵐は腕を更に変化させて巨大な翼へと変化させると先端の鉤爪を地面に添えて低く屈む。

 

『3ィィッ!!!』

(紅葉姉…青葉姉……たくさんの人が俺を、この体育祭を見ているのだろう……)

 

プレゼントマイクのカウントが始まると同時に、嵐は小さく息を吐くと瞳を静かに閉じる。

 

『2ゥッッ!!!!』

(その中にはあの人達もいるはずだ。きっと良くは思っていないだろうな。でも、だからこそだ……)

 

集中しているからか、嵐の耳にはプレゼントマイクの以外の声が聞こえなくなる。同時に、嵐の周囲を風が吹いて、陽光に照らされて煌めく飛膜を、髪を靡かせる。

 

『1ッッ!!!!!!』

(この場で示す。俺がヒーローを目指すのを諦めていないことを)

 

最後のカウントが聞こえ、嵐は瞳を開くとゲートの奥に見える光をまっすぐ見据える。

ゲートではまだ轟の氷結妨害により大勢が停滞したり、『ロボ・インフェルノ』を突破しようとする生徒達の姿がある。だが、そんなことはどうでもいい。

 

 

ただ、自分の可能性をあの人達に見せつけるだけだ。

 

 

そして、遂に二度目の始まりの合図が響いた。

 

 

『テイクオ——————フッッ!!!!!!ぶっ飛んでいきやがれェェッッ‼︎‼︎』

「———ッッ‼︎‼︎」

 

 

刹那、嵐は暴風の矢へと転じる。

全身に纏った豪風が激しく吹き荒れ、地面を掴む両足にあらんかぎりの力を込めて踏み込めば、地面は踏み砕かれ小さなクレーターを生み出し、嵐の体は勢いよく前方へと弾かれて大空へと飛び上がる。

 

 

 

 

暴風纏いし嵐の龍は今、澄み渡る蒼穹を天高く舞い上がった。

 

 

 





こう言う選手宣誓もあっていいと思うんだよね。
ちなみに、轟の姉の冬美さんと嵐の姉の青葉さんは同い年の友人です。とても仲のいい親友と呼べる間柄です。

嵐のイメージCV誰がいいと思いますか?

  • 小野大輔
  • 諏訪部順一
  • 細谷佳正
  1. 目次
  2. 小説情報
  3. 縦書き
  4. しおりを挟む
  5. お気に入り登録
  6. 評価
  7. 感想
  8. ここすき
  9. 誤字
  10. よみあげ
  11. 閲覧設定

▲ページの一番上に飛ぶ
X(Twitter)で読了報告
感想を書く ※感想一覧 ※ログインせずに感想を書き込みたい場合はこちら
内容
0文字 10~5000文字
感想を書き込む前に 感想を投稿する際のガイドライン に違反していないか確認して下さい。
※展開予想はネタ潰しになるだけですので、感想欄ではご遠慮ください。