皆さん、マジでお久しぶりです。
そして、半年以上期間を空けてしまい本当に申し訳ございませんでしたっ!!!
言い訳にはなりますが、現在たりふれの二次に没頭していたり、ISの2次も始めて色んなことに手を突っ込んでたから、回らなくなった訳なんです。………本当、言い訳ですね、ハイ。
ですがまあ、なぜ投稿を再開したかと言うと、それはズバリ、
モンハンサンブレイクでアマツマガツチ様が復活なされたのでモチベーションも復活したからです!!
アマツ様のご降臨にテンションが爆上がりしたので、そのテンションの勢いで投稿を再開させたと言う訳です。
しっかしねぇ。アマツ様のグラフィックマジで美しすぎですよ。動画見た時は思わずアマツ様!!と叫んでしまったほどです。
その後も、アマツ様の戦闘は3rd時代の演出を使ったものであり、最後の討伐後の演出も当時の感動を思い出させてくれる素晴らしいものでした。戦闘の方も魔改造されていて、激流3連ブレスがないのは惜しいですが、それを補って余りあるほどの大技の連続!!もう素晴らしすぎて、涙が止まりませんでしたよっ!!
さて、アマツ様の感動語りはこれくらいにして、今回はいよいよ騎馬戦終盤の話です。
早速どうぞ!!
『さぁ騎馬戦もラスト5分‼︎いよいよ終盤に差しかかったところで八雲と轟チームがついに激突ぅ‼︎入試主席と推薦入学者っつぅ文字通りの実力者同士のぶつかり合いだぜぇ‼︎‼︎‼︎』
遂に対峙を果たした嵐と轟。
真紅の龍眼と銀と青の双眸が一つの動きも見逃さないと言わんばかりにお互いを見据えている。
ピリピリと空気が殺気立つ中、両チームのリーダーである2人がほぼ同時に口を開く。
「残り時間5分。後には引かねぇ」
「全員気を抜くな。完勝するぞ」
お互いのリーダーの指示に各々が頷く中、轟チームが動く。
「飯田、前進だ」
「ああ!」
轟の合図に従い飯田がエンジンを駆動させながら嵐達へと駆ける。八百万が創造したのだろう。八百万と上鳴はローラーシューズを履いているため、飯田の加速に問題なく追いつけていた。
嵐も飯田が走り出すのに合わせて風を纏い彼と一定の距離を保ちながら後退する。
「八雲!全方位から残りの騎馬全部向かってきてるよ‼︎」
周りに視線を配っていた拳藤が声を張り上げる。一瞬で周囲に視線を張り巡らせば、確かに自分達と轟チームを囲うように残りの騎馬ほぼ全てが一斉に襲いかかってきていた。
(空へと飛び上がるか?いや、待て、轟のやつ何かを言って……っっ)
一瞬飛翔による上空退避を考えた嵐は、轟が小声で八百万と上鳴に何か指示を出していたのを聞き逃さなかった。
(まずいっ‼︎)
彼の声を拾った嵐は、刹那の内に轟の企みを看破して声を張り上げすぐさま行動に移す。
「お前ら全員構えろっ‼︎‼︎」
「えっ、どういう…うわっ⁉︎」
「へっ、ちょっ⁉︎」
「嘘だろっ⁉︎」
嵐が尻尾と手を緩め声を張り上げるも、状況が掴めない拳藤達は首を傾げる。しかし、そんな彼らはその直後何か答える前に空へと打ち上げられたのだ。
(私ら、八雲の風で飛ばされたのっ⁉︎)
高々と宙を舞う拳藤は、自分達がフィールドを見下ろせるほどの高さまで飛ばされたことにすぐに嵐の風で飛ばされたと理解する。
一体何故?そう思った直後、その答えはすぐに明かされた。
「無差別放電‼︎130万V‼︎‼︎‼︎」
フィールドに上鳴の大放電が炸裂し、拳藤達の視界を黄金に染め上げたからだ。視界が染め上げられた直前、嵐が咄嗟に後退していたものの間に合わず、周囲の騎馬同様電撃に巻き込まれた光景を見たのだ。
「八雲っ‼︎」
拳藤は焦燥を滲ませて彼の名を呼ぶ。
いくら並外れた耐久を持っていたとしても電撃は別のはずだ。彼であっても麻痺は避けられない。
『おーっと‼︎ここで電撃に続いて氷結も放って騎馬を一蹴したぁぁ‼︎‼︎八雲も拘束されちまったぞ‼︎‼︎』
それだけに終わらず、轟がすかさず八百万が創造した棒を手に取り、氷を伝わせ周囲を氷漬けにして周辺騎馬の足を一斉に凍らせたのだ。
その中には当然嵐も含まれている。
下半身が氷漬けにされてしまっていた。電撃で体が麻痺してる上に追い討ちの氷結による拘束。これには流石の嵐も動くのに時間を要してしまうだろう。
彼が動けない今、空中に浮かぶ自分達は風の補助があってもいい的だ。敵につけ入れられる致命的な隙となる。
どうやってこの場を切り抜けるべきか、必死に拳藤は思考を巡らせていたが、その予測は大咆哮によって裏切られる。
ガアアァァァァァァ————————————ッッッ‼︎‼︎‼︎
ドガァァァァァンンンッッ‼︎‼︎
本日三度目の大咆哮が炸裂し、何度目かわからぬ激震が響き暴風が吹き荒れる。その激震と暴風によって轟が生み出した氷の一部が粉々に砕ける。
「なっ」
ダイヤモンドダストが舞い上がる中、轟は突然のことに顔を腕で覆いながら驚愕に目を見開く。
「な、何が起こったんですのっ⁉︎」
「こんなことできるのは1人しかいないだろう」
八百万の驚愕に飯田が正面から視線を外さないまま苦々しく呟き元凶へと視線を向ける。轟も彼へと視線を向けると忌々しげに呟いた。
「この、バケモンがっ」
その先にいたのは、両腕を地面に振り下ろしている嵐だ。彼は電撃を見事耐え抜き、その直後自身を覆った氷を周辺の氷諸共拳の振り下ろしの衝撃波と暴風で粉砕してみせたのだ。
他の騎馬はまだいくつかは身動きは取れていないものの、嵐は完全に拘束を粉砕した。
自由の身となった嵐は、冷徹な瞳で轟を睨み返す。
「拳藤達ならともかく、この程度で俺を足止めとは舐められたものだな。俺は電気にも耐性があんだよ」
「うっそぉぉ⁉︎アイツ耐えやがったっ‼︎‼︎」
大放電が直撃したにもかかわらず平然としている嵐に上鳴が目を剥き驚愕の声を上げる。
彼としては確実に足止めできたと思っていたのだろう。だが、それがあっさりと裏切られたのだ。驚愕するのも無理はない。
嵐は驚愕する彼らを他所に後方へと飛び上がるとちょうど落ちてきた拳藤達を受け止める。
取陰と心操を尻尾で巻き取り、拳藤を両腕で抱えたのだ。
「お前ら怪我はないか?」
「う、うん、私らは大丈夫」
「アンタのおかげで私らは無事だよ」
「ああ、正直助かった」
「なら良かった」
「そ、そうなんだけどさ、八雲…」
「ん?」
三人の無事を確認でき安堵する嵐に拳藤が少し恥ずかしそうにか細い声で呟く。
「その、この体勢は、ちょっと恥ずかしいかな……」
「……あー、すまん、すぐに変える」
「う、うん、ありがと」
拳藤は嵐に両腕で抱き抱えられている。彼の両腕は彼女の膝裏と背中を支えているため、横抱きの姿勢になっていた。
つまりはそう、お姫様抱っこの体勢だったのだ。
この体勢には流石に拳藤も恥ずかしく、なんとか背中に行こうとしていた。嵐も少し気まずそうにしつつすぐさま彼女を背中に背負う体勢に変える。
「なんかごめんね、八雲」
「いや、いい、気にするな」
少し申し訳なさそうにする拳藤に嵐はそう答えるとふわりと轟達の眼前に着地する。嵐はこちらを睨む轟を挑発する。
「さて、氷も効かない。電撃も効かない。残るは炎熱だけだが、お前はまだ使わないのか?」
「うるせえっ。戦闘において熱は使わねぇっていったはずだっ‼︎」
「ああ言ってたな。けど、勝てない相手にいつまでも手札を封じんのもどうかと思うがなっ‼︎」
そう言いながら嵐は風を纏い轟達との距離を詰める。しかも、丁寧に左側へと回り込みつつだ。
「拳藤‼︎轟の左側を中心に狙え‼︎右側には触れるなよ⁉︎」
「うん‼︎」
的確に、素早く指示を出した嵐は早速轟達に肉薄する。距離を詰めると拳藤が右拳を巨大化しながら振りかぶった。
「八百万‼︎」
しかし、轟も無防備で受けるわけがない。八百万の右腕から創造されつつある盾を掴むと腕から引き抜き間一髪で構えて拳藤の拳を防いだのだ。
「…っ‼︎八百万さんの創造、厄介だね‼︎」
「今に始まったことじゃない。攻撃を続けろ」
「ああ‼︎」
拳を防がれたことに呻く拳藤に嵐はそう指示すると、素早く彼らの背後へと回り込む。だが、これには轟も素早く反応する。
「上鳴‼︎」
「おうよ‼︎」
後ろに振り向きつつ声を上げて上鳴に指示。それに合わせて上鳴が先程の大放電には到底及ばないものの電撃を一瞬だけ放出したのだ。
「あぐっ⁉︎」
「拳藤っ⁉︎」
それは、拳藤を完全に痺れさせるには及ばなかったものの腕を弾いて少し動きを止めるには十分だった。拳藤は電撃の痛みに顔を歪めて反射的に腕を引っ込めてしまう。
「もらったっ‼︎」
「まだだっ」
一瞬の硬直の隙をつき、轟はすぐさま反転して拳藤へと右腕を伸ばすも、嵐が素早く回避しバックステップしながら取陰に指示を出す。
「取陰‼︎牽制‼︎」
「任せて‼︎」
取陰がすぐさま上半身を十数個に分裂させて轟達の周囲を旋回するように動きながら牽制する。
「チッ、鬱陶しいなっ」
轟達はその牽制の前に足を止めざるを得なくなり、嵐達の離脱を許してしまう。
轟達から離れ、3メートルほどの高さで留まりながら周囲を見渡す。
「………大半が凍りついたままか。動けているのはほぼポイント持ちだけだな」
「だね。凍ったままなのは全員ハチマキがないね。そんで、動けるのは—」
嵐の呟きに拳藤が答え、動ける者達を探した時だ。
「“黒影”‼︎」
『アイヨ‼︎』
「白髪野郎ぉぉぉぉ!!」
三つの声が聞こえてきた。
その声はどれもが聞き覚えのあるものであり、次の瞬間には、黒影と爆豪が左右から挟み撃ちするように襲いかかってきた。
「《天嵐羽衣》」
両者の接近を把握していた嵐は冷静に対処し、素早く風の防壁を展開。黒影の腕はあっさりと弾かれ、爆豪の爆破も掻き消される。
『カッテェっ⁉︎』
「チィっ、またかよっ!」
腕を弾かれた黒影は悪態をつきながらも、眼下の地面で走っている常闇の元へと素早く戻っていった。
爆豪も再び弾かれたことに舌打ちしながら地面へと落ちていくが、直後に瀬呂のテープで回収された。
嵐は中空に佇み風を纏いながら、自分達を見上げている三組の騎馬を睥睨する。
「くっ、今のもダメかっ‼︎」
「大丈夫!落ち着いていこうっ‼︎」
「くっそガァ。あんの野郎っ叩き落としてやるっ‼︎」
「だから突っ走んなって言ってるだろっ‼︎」
「チッ、緑谷に爆豪か。面倒な奴らまで来やがったか」
「轟さん冷静に!まだ時間はありますわ!」
緑谷、爆豪、轟の三チームの騎馬。
現状彼らが嵐達に次ぐポイントを持っており、今満足に動ける騎馬達。他の騎馬達は必死に氷から抜け出そうともがいている途中で、各々の個性で脱出を試みていた最中だ。
『あーーーっと‼︎ここで、上位四チームが睨み合いを始めたぞぉぉ‼︎‼︎』
三竦みならぬ四竦みの状況にプレゼントマイクが声を張り上げ、観客達が沸き立つ中、嵐が三チームを見下ろしながら、淡々と呟く。
「…………やっぱお前らが来るか。実力的にお前らが残ると思ってたよ」
「ごっちゃごちゃウルセェんだよ白髪野郎っ‼︎テメェは俺がぶっ潰すっ‼︎‼︎」
「まだ時間はあるっ‼︎何度でも挑戦させてもらうよっ‼︎八雲君っ‼︎」
「テメェは俺が倒すっ‼︎空から引き摺り落としてやるよっ‼︎」
三者三様にやる気に満ちた言葉に嵐は眉一つ変えずに赤い眼光を炯々と輝かせながら静かに返す。
「…………そうか。なら、精々足掻いてみせろ。だが、その前に」
嵐はそう呟くと未だに凍らされている者達を見渡す。今凍らされている騎馬は全員ハチマキがない状態だ。殆ど嵐達が奪ってしまっている。
そして、今なんとか脱出しようともがいており、そう時間もかからずに氷を砕いて襲ってくることだろう。
だが、その展開を嵐は望まなかった。
「———お前らは、邪魔だな」
そう小さく呟くと、一言呪いを唱えて静かに呟いた。
「———全てを閉ざせ。《
『『『『『ッッッ⁉︎』』』』』
刹那、暴風が吹き荒れ自分達四組の騎馬を囲むように渦巻く風の結界が展開された。
激しく吹き荒れる風は生半可な力では突破することが叶わない程であり、高さも3メートルほどだから、登って乗り込むこともできない。
それが意味するところはつまり。
『ま、マジかっ‼︎残り時間約三分‼︎八雲、フィールド内に風の結界を展開して決戦フィールドを作りやがったっ‼︎』
これからの騎馬戦は風の結界内部にいる四組の騎馬での戦いになるということ。嵐は一瞬にして外界と隔絶した決戦場を作り上げたのだ。
『そんで中にいるのはぁぁ‼︎八雲、轟、緑谷、爆豪の上位四チームだぁぁっっ‼︎‼︎これは面白ぇことになるぞォォォォ!!』
終盤にして熱い展開となったことにプレゼントマイクはマイクを掴んで立ち上がるほど興奮しており、それに伴って観客達のボルテージも際限なく上がっていっていた。
嵐は中空からゆっくりと降り立つと結界内に閉じ込められた三組の騎馬達に冷酷な笑みを浮かべ告げる。
「さぁ、始めようか」
残り時間約3分。
騎馬戦は最後の戦いへと突入した。
▼△▼△▼△
『八雲が作り上げた風の決戦フィールド‼︎全体のフィールドよりもはるかに狭い領域で四組の騎馬が激しくぶつかり合うっ‼︎混戦に次ぐ混戦‼︎三つ巴ならぬ四つ巴の戦いっ‼︎いや、ほんとマジですげぇなっ⁉︎お前のクラスマジでどうなってんだよっ‼︎あの連中ほぼお前んとこの生徒だぞっイレイザー‼︎』
『知るか。あいつらが勝手に火を付け合ってるだけだ』
四組の騎馬の戦いに興奮を隠さずに立ち上がったまま実況するプレゼントマイクに相澤が冷静に返した。
彼の言う通り、現在嵐が作り出した風の結界内部では現在ハチマキを保有している四組の騎馬が鎬を削りあっている。
八雲、轟、緑谷、爆豪。それぞれが率いる騎馬達が結界内を目まぐるしく動きながら、ポイントを奪おうと戦っているのだ。とはいえ、その実態は1000万を狙う三組が嵐達を狙うと言う構図であり、共闘こそしていないものの嵐チームVS轟、緑谷、爆豪チームという状況になっている。
そして、絶賛三組から狙われている嵐達はと言うと、
「取陰、分散撹乱っ‼︎拳藤は防御に専念しろっ‼︎」
「任せてっ‼︎」
「わかってるっ‼︎」
嵐の激声に応えて取陰は体を分裂させて自分たちの周囲を旋回させながら周囲から襲いかかる敵を近寄らせないようにし、拳藤が手を巨大化させて片方を盾のように構え、もう片方を迎撃のために振るう。
「こんの一々うざっテェなぁぁっっ‼︎」
「黒影‼︎攻撃を続けろ‼︎」
『アイヨっ‼︎』
爆豪がまたもや独断専行して爆破で空を飛びながら攻撃を仕掛けてきており、取陰の攻撃を巧みに交わしつつ拳藤へと攻撃を仕掛けている。常闇が従える黒影もまた取陰の攻撃を受けながらも引かずに攻撃を続けていた。
「上鳴‼︎八百万‼︎」
「おうよ!」
「はい!」
轟チームも上鳴の放電や八百万が創造した道具などを駆使して嵐達を麻痺させるか凍らせるかを何度も試みている。飯田のエンジンにより嵐に次ぐ機動力を駆使し様々な角度から攻撃を仕掛けてきていた。
それらの攻撃を嵐は風を纏うことで塞ぎつつ、三人を抱えながら目まぐるしく駆け回り、常に距離を保っていた。
これは彼だからこそ出来る芸当であり、彼なしで実力派の三組の猛攻を凌ぐのは不可能だろう。
そんな攻防が約2分間ずっと続いていたのだが、結果は……、
『残り時間一分‼︎八雲チーム、轟、緑谷、爆豪からの集中砲火を受けても尚、揺るがないっ‼︎‼︎ハチマキを一つも奪われることなく全部死守してやがるぜっ‼︎なんつー野郎だよぉっ‼︎‼︎』
プレゼントマイクの言うとおり、嵐はハチマキを一つも奪われることなく死守してのけたのだ。
自分自身で範囲を狭めてはいるものの、それでも実力者三組の騎馬の猛攻を全て退けてのけた技量は驚嘆に値するもの。無論、嵐だけの功績ではなく、拳藤や取陰、そして個性こそ使用していないものの心操達もここに判断して対応しており、全員の動きがうまく噛み合って連携ができたからこそ成せた功績だ。
その功績に多くのプロヒーロー達が嵐は当然として他三名も注目されつつあった。
そして、不本意ながらも他チームと連携をして嵐の1000万を奪取しようとしてできないでいる現状に、轟、爆豪、緑谷はそれぞれ歯噛みしたり、悔しそうに、あるいは感心したりしている。
(この野郎……どこまで見えてやがる。ここまでやって掠りもしねぇのかよ)
(クソガッ白髪野郎だけじゃねぇっ。他のモブ共も目障りなことしやがるっ)
(八雲君が三人を信頼して動いてるから、連携に無駄がないっ。すごいな、八雲君っ)
三者三様の反応を見せる中、轟チームの前騎馬飯田が何か覚悟を決めたのか決心に満ちた様子で口を開いた。
「皆、残り一分、俺は賭けに出る。この後使えなくなるが、頼んだぞ」
「飯田?」
何かしている飯田にチームメイトの轟が思わず呟いてしまう中、飯田は続ける。
「しっかり掴まっていろ。奪れよ‼︎轟君‼︎‼︎」
そう言って飯田は片脚を前に出して強く踏み込み構える。
「トルクオーバー……レシプロッッ」
ボッ、ボボッと彼の脹脛から生えるマフラーからは煙に続き赤い炎までもが断続的に吹き始めた。そして、
「バーストッッ‼︎‼︎‼︎‼︎」
マフラーからは青白い炎が勢いよく噴き出したのだ。そして、限界を超えたエンジンの加速により、騎馬を前へと押し出し超速の突貫が始まる。
「———やっ」
ただでさえエンジンという個性により速度には定評がある彼の限界を超えた桁外れの速度。常人ならば急激な加速に目では追えても体が動くことは難しいだろう。
事実、取陰や心操もその速度の前に対応できずに驚いたそぶりしか見せない。唯一、拳藤が動いているものの、速度的に間に合わないだろう。このままではハチマキがあっさりと取られてしまう。
しかし、ソレが叶うことはない。
なぜなら、このチームには———彼がいる。
「……………」
「……ガッ、ハッ、そ、そんなっ」
ドォォンンという鈍い音が響いた直後、聞こえてきたのは苦悶と驚愕の声。その声は突撃をしたはずの飯田から聞こえた。
見れば、飯田の胸部には誰かの足がめり込んでいた。その足は、黒い鱗に覆われ翡翠の鉤爪と純白の飛膜を有する龍の脚。嵐の脚だ。
彼は受け止めたのだ。あの飯田の超加速の突貫を。
片脚を上げてもう片脚で踏ん張ることによって嵐は飯田の突貫を真っ向から受け止めてみせた。
嵐の足元を見れば踏ん張る足は微塵も後退しておらず、真っ向から受け止めて平然と耐えきっていた。
これには当人である飯田だけでなく同チームの轟達や、嵐のチームメイトであるはずの拳藤達も目を丸くしていた。
「賭けはお前の負けだな」
「……う、嘘だろっ」
彼らの驚愕を他所に脚を下ろしながらいい放った嵐の冷徹な言葉に対し、飯田は自身の突進の衝撃がそのまま返ってきてしまい胸部から伝わる鈍痛に苦悶の声を上げながら後ろに蹌踉めいてついには膝をついてしまう。その光景にプレゼントマイクが声を張り上げる。
『うっそぉぉぉッ⁉︎⁉︎八雲、飯田チームの超速突撃を正面から受け止めやがった‼︎‼︎矛盾勝負は八雲が制したぞッッ‼︎‼︎』
『飯田のあの加速は確かに速い。普通なら反応させずにハチマキを奪うことも可能だっただろう。だが、相手が悪すぎた。八雲は素の身体能力がずば抜けて高い。動体視力も同様だ。50mを0.2秒で走破できるアイツにとっては飯田の超加速も普通に見えたんだろう。だから対応できた。それだけの話だ。……まぁ八雲よりも受け止められた飯田の肋が砕けてないか気掛かりだな』
プレゼントマイクの絶叫に近い声に冷静に解説をした相澤は、最後に飯田の安否を案じる。
ちなみに、飯田の肋に関しては砕けるどころか罅も入っていない。それは嵐が受け止める際に脚を接触の瞬間に合わせて曲げることで飯田との衝突の際の力を全て吸収し踏ん張る脚へと受け流したからだ。青痣はできているかもしれないが、この後の競技は続行可能なはずだ。
もっとも、そんな芸当は人外の動体視力を持つ嵐だからこそできるのだが。他はオールマイトぐらいだろう。
相澤の解説に観客達は揃いも揃って動揺する。並外れた身体能力で突進を真っ向から受け止めたこともそうだが、何より『50mを0.2秒で走破』したことは少なくない衝撃を与えた。
『50mを0.2秒だって⁉︎』
『そんな超速移動できんの、オールマイトぐらいなんじゃ……』
『いったいどんな個性なんだっ』
観客達が嵐の身体能力に驚き、どんな個性なのかと口々に疑問の声を上げる中、距離を取った嵐は片膝を突いて悔しそうにしている飯田に淡々と告げる。
「今の加速はお前の隠し技なんだろう。確かに凄まじい加速だ。普通なら反応することは難しい。だが、俺からすればソレはまだ遅いな」
「くっ、これでもまだ届かないのかっ!?」
今の超加速。レシプロバーストは飯田のとっておきと言ってもいい秘策中の秘策だった。
トルクと回転数を無理やり上げることで爆発的な加速を生み出す秘策。一度使用すれば反動でしばらくするとエンストしてしまうというデメリットを抱えてはいるものの、速度に関してはまさに必殺とも言える裏技なのだ。
だが、その秘策を以てしても嵐には届かない。何故ならば、彼の速度は飯田のソレを軽く凌駕しており、そのおかげで目も超速の動きを追えるようになっているのだから。
格の違いを見せつけられ悔しそうに呻く飯田に轟が声を張り上げる。
「飯田左に避けろっ‼︎‼︎」
「うおっと」
轟の言葉に飯田がすかさず左に動いたと同時に、轟が地面に突き立てた棒に冷気を伝わせて、地面を凍らせて氷結の波を嵐へと放つ。
しかし、それは容易く回避され上空への退避を許してしまった。そして、上空へと退避する嵐達に眦を釣り上げた爆豪が怒号の如き雄叫びを上げながら襲いかかる。
「俺を無視すんじゃねぇぇぇぇっっ‼︎」
「無視はしてねぇよ」
火花を散らしながら振り上げた右手を前に嵐は風の防壁で対抗。風の防壁に爆破が叩きつけられるものの、それはもう何度も繰り返されたやり取り。先の結果と変わらず爆豪の爆破は嵐の防壁を突破することは叶わなかった。
「いい加減学習しろ。お前の爆破じゃ俺の風は突破できねぇよ」
「うるっせぇっ‼︎テメェの風は俺がぜってぇぶっ壊してやるっ‼︎」
「はぁ、マジで狂犬だな」
力の差を知りながらもなおも攻撃を諦めずに風を突破しようと何度も爆破を叩きつける爆豪に、嵐は若干呆れてしまう。
そして、そろそろ爆豪が鬱陶しく感じた嵐は残り時間も考慮し次の行動へと移った。
「そうだな。まずはお前からにしようか」
「あぁ?……ぐぉっ⁉︎」
何をする気だと訝しんだ爆豪は直後、苦悶の声を上げて一瞬威力が強まった風に弾かれ飛ばされた。
吹っ飛び錐揉みしながらなんとか体勢を立て直そうとしている爆豪に嵐は一瞬で肉薄する。
一瞬で接近した嵐に爆豪が驚きに目を見張りながら何とか迎撃しようと体を動かしたが、それよりも早く嵐は拳藤に素早く指示を出す。
「拳藤、掴め」
「ああっ‼︎」
「ぐぁっ、てめっ…このっ」
拳藤が巨大化した両手で爆豪を掴んでスッポリと体を覆ったのだ。頭だけが外に出てる状態で首から下を完全に拘束された爆豪は抜け出そうともがくものの、手の締め付けが強く抜け出せない。
「取陰」
「はいよ」
その間に取陰が後ろから分裂させた手を操作して爆豪の首に巻かれていたハチマキをあっさりと奪ってしまったのだ。
『おーーーっと!ここで八雲チーム取陰と拳藤の連携によってハチマキ奪取‼︎これで爆豪チームも0ポイントだぁ!』
『勝負を決めにきたな。八雲の奴本気で全員からポイントを根こそぎ奪う気か』
ついに崩れた均衡にプレゼントマイクや観客達がワァァ!と歓声を上げる。そんな中、ポイントを取られ悔しそうにする爆豪に嵐は冷徹に言い放った。
「安心しろ。時間的にどうせ最終種目には上がれるだろう」
「このっ、てめぇ返しやがれぇっ‼︎‼︎」
「返す訳ねぇだろ。お前らはそこで黙ってみてろ」
「それじゃあ、お疲れさんっ!」
そう告げるや否や拳藤が両手を振るい爆豪を下へと投げ捨てる。
「白髪野郎ぉぉっっ‼︎…っがぁっ⁉︎」
拘束から解放された爆豪はなんとか体勢を立て直して再び嵐達に襲い掛かろうとするものの、嵐の風の追撃を受け切島達がいるところへと叩きつけるように落とされた。
「うぉっ⁉︎爆豪っ、無事かっ⁉︎」
「ってて……おい、爆豪っ‼︎」
「………ぐっ……あんのっ、野郎っ」
先程と同じように辛うじて受け止めた切島達は体制を崩しながらも爆豪の身を案じる。再び一蹴されてしまったことに爆豪は恨みがましそうに無念の声を上げて再び立ち上がり嵐達を追いかけようとした時、彼らは気づいた。
「う、嘘。これって……」
「さっき皆を分断した風の壁かっ」
「つぅことは、俺らも追い出されたのかっ⁉︎」
彼らの目の前には先ほどまでなかったはずの風の防壁があったのだ。それは先程ハチマキを持っている者だけを囲うように展開された暴風の結界だ。
それは嵐が用意した決戦場から弾かれたということになる。先ほどよりもより範囲を狭めて自分達も入れないようにしたことを理解した切島達は悔しそうに歯を噛み締めることしかできなかった。
そして、爆豪も組み直された騎馬の上で風の防壁を見上げながら悔しそうにしていた。行き場のない怒りと屈辱に体が震えている。
自分一人ならばこんな防壁など爆破で飛べば突破できる。だが、万が一その先で地面に落とされて仕舞えば失格になってしまう。そうしたら何もかもが無駄になる。それが分かってるからこそ、その場で動けずに悔しそうにするしかなかった。そして、怒りと屈辱に震える爆豪は、防壁の先にいるであろう嵐を睨むと、
「くっそがぁぁぁぉぁぁぁ!!」
そう怒号をあげることしかできなかった。
そして、爆豪が結界の外で叫ぶ中、爆豪からポイントを奪い一蹴した嵐達はすでに次の獲物に狙いを定めていた。
「次だ。行くぞ!」
嵐は眼下で戦っている緑谷と轟チームへと視線を向けると、二組に突撃する。
飯田がまともに動けなくなり速度によるアドバンテージがなくなった轟チームに緑谷チームが果敢に襲い掛かろうとしている中、嵐はその間に凄まじい勢いで着地した。
「割り込ませてもらうぞ」
「八雲君っ⁉︎」
「八雲っ⁉︎」
突如乱入してきた嵐達に緑谷達は驚きを隠せない。だが、そんな驚愕に構わずに嵐達はすかさず襲いかかる。
「まずは轟からだ。取陰、常闇の黒影を牽制し続けろ。近づけさせるな」
「了解っ‼︎」
まずは、機動力が格段に落ちてしまった轟達へと。それと同時に取陰が体を分裂させて緑谷達へと仕向けて、黒影を重点的に狙って近づかないようにする。
「くっ、上鳴っ‼︎」
「任せろっ‼︎」
飯田のエンジンでの回避が出来ないため、轟は上鳴に放電での迎撃を指示する。上鳴はすかさず応えて、放電するものの嵐はそれを喰らうよりも先にあっさりと退がったのだ。
放電を回避した嵐はニヤリと笑うとガパッと口を開き、水の塊を口から吐き出すとそれを地面に叩きつけた。
バシャァァァン!と地面に広がる水は轟チームだけでなく緑谷チーム達の足をも濡らしていく。
『ここで八雲、地面に水の塊をぶちまけたぁぁ!!地面が水浸しになったぞぉ‼︎何が狙いだぁっ⁉︎』
『………ほぉ』
プレゼントマイクが嵐の狙いがわからずに声を張り上げる傍らで、相澤が嵐の目的に気づき関心の声を上げる中、嵐は再び轟達へと肉薄する。
轟は再び放電で迎え撃とうと上鳴に指示を出そうとするが、
「っ、上なっ」
「いいのか?放電なんかして。確かに足止めはできるだろうが、仲間も巻き込むぞ?」
「轟すまねぇっ!完全に八雲にやられたっ‼︎」
「待ってください轟さん!今上鳴さんが放電してしまったら、私達までやられますわっ‼︎」
「っっ⁉︎チッ、くそっ」
嵐と上鳴、八百万にそう指摘され、轟も現状を理解したのか忌々しげに舌打ちすると、指示を中断する。これこそが嵐の狙いだった。
『八雲の奴考えたな。水は電気をよく通す。胴体を絶縁体シートで覆っても、地面が水浸しで足が濡れている以上、足元から感電してしまう。そうなればただでさえ機動力が落ちているのに、今度こそ動けなくなるだろう。上鳴はもう大規模な電気を放つことはできない。しかも、その上轟の氷結も八雲の風には通用しない。見事な手際だな』
『そこまで考えてたのかよっ八雲の奴っ‼︎ともかく、これで轟チームはだいぶ手札が制限されちまったんじゃねぇかぁっ⁉︎』
嵐は何も無策で水の塊を地面にぶちまけた訳じゃない。相澤が言った通り、上鳴封じの為に行ったのだ。絶縁体シートで上鳴の放電を防いできてはいたが、それはあくまで接触面の肩や胴体のみ。足元に関してはノーガードだった。
それに気づいた嵐は足元を地面で濡らすことで、たとえ仲間達を巻き込まずに放電したとしても、地面の水から足へと伝わり足元から感電させるようにしたのだ。
これで上鳴は大規模どころか小規模な放電であっても使うことが厳しい状況になってしまった。それに加えて、轟の氷結は初めから通用せず飯田の機動力もない。残っている手札として、八百万の創造と轟の炎熱だけだが、八百万の創造は嵐に対抗できるような武器を作るには時間が足りず、轟は炎を使うことを躊躇っている。
つまりだ、轟が炎を使わない限り、もう詰んでしまっていると言うことだ。
(……くそっ、やられたっ。本当にどこまで状況が見えてやがるんだよっテメェはっ‼︎)
轟は歯をギリッと噛み締める。これまでの策何もかもが嵐が描いた通りならば、自分達はまさに掌の上で踊らされているようなものだ。
このままでは勝てない。何も出来ずに負けてしまう。しかし、どう考えてもこの状況を打開する方法が見つからなかった。
(左を使うべきかっ?……いや、だがっ……)
攻撃には使わないと決めていた左の炎熱。それを使うべきかを迷っていた。炎熱ならばこの状況を打開できるかもしれない。だが、それは轟のプライドに反する行為だ。
プライドを優先するか、勝つ為にプライドを捨てるか。その二つで迷う轟に嵐は真紅の眼光を炯々と輝かせながら冷徹に告げる。
「速度で圧倒するってのはな、こういうことを言うんだよ」
「っっ⁉︎」
刹那、嵐達の姿が轟達の眼前から消えて、気づいた時には自分の目の前に彼はいた。
自分の視界に映る真紅の龍眼と目があった轟は、ゾクリと言いようのしれない悪寒を感じ気圧された。
その本能の警鐘に従い、反射的に轟は動こうとしたものの、もうその時には既に遅く、ハチマキを拳藤によって奪われてしまった。
「とった!とったよ!!」
『拳藤、轟からハチマキを奪取‼︎本当にお前の速度どうなってんだ八雲っ⁉︎さっきの飯田より速ぇっ‼︎速すぎんぞぉっ‼︎てか、拳藤もよく反応したなぁっ‼︎』
先程の飯田のレシプロ・バーストよりも疾い速度で接近した嵐とそんな速度下で必死に動きなんとかハチマキを強奪してのけた拳藤二人にプレゼントマイクが思わずと言った様子で声を張り上げる。
『そんで残り30秒‼︎爆豪チームに続き轟チームもポイント0っ‼︎これで現状ポイント持ってるのは八雲と緑谷チームだけだぁぁっ‼︎‼︎』
爆豪だけでなく轟からもポイントを奪った嵐達に観客達が一際大きな歓声を上がる中、嵐は素早く風を操作して轟達も結界の範囲外に追い出した。
『そんで八雲、風を操作して轟チームを追い出して決戦場をサシ仕様にしやがったっ‼︎トドメを刺す気だぁぁっ‼︎‼︎』
「くそ……」
一瞬でハチマキを奪われ、何も反撃できずに結界の外へと追いやられた轟は悔しそうに呟きながら顔を俯かせて項垂れることしかできなかった。
そして、轟達をも風の結界の外に追いやった嵐は内部に残った最後の獲物へと視線を向ける。
どうやら取陰が見事押さえ込んでくれていたらしく、こちらに来る余裕はなかったらしく、先ほど見た位置から余り移動していなかった。
「取陰、よくやった」
「そっちこそ。轟からもハチマキ奪えたんだね」
バラバラの体をくっつけながらこちらへと戻ってきた取陰を労った嵐は、険しい表情をしている緑谷達を視界に収めると牙を剥き出しに獰猛に嗤う。
「後はお前らだけだな。そのポイントも奪わせてもらうぞ」
「くっ、緑谷どうするっ⁉︎もう後がないぞっ‼︎」
絶対強者たる嵐と逃げ場のない状況で一対一の戦いを強いられているこの状況に常闇が騎手の緑谷に焦燥に満ちた声で叫んだ。
「もう逃げれないなら、攻めるしかないっ‼︎皆突っ込んで‼︎」
「よっしゃ!行こう‼︎」
「仕方ありませんね!」
「黒影!一つでもいいからハチマキを奪えっ‼︎」
『オウヨっ‼︎』
緑谷は腹を決めたのか決死の覚悟で常闇達に突撃を指示して、麗日が気合い十分な様子で応えて駆け出し、他の二人もそれに応じ嵐達へと突っ込んでくる。常闇が黒影に素早く指示を出して、黒影が素早い動きで嵐達からハチマキを一本でもいいから奪い取ろうと襲いかかる。
それを前に、拳藤は両手を巨大化させ構えながら嵐に冷静に問うた。
「八雲どう攻める?もう時間ないよ」
「真正面から最速で俺が獲る。掴まってろ」
「うんっ‼︎」
嵐の意図を理解した拳藤が手の大きさを元に戻して、慌てて首にギュッと抱きしめた瞬間、嵐は拳藤の両足から手を離すと地面を踏み砕いて突進する。
風を纏い驀進する嵐は右拳に風を纏わせながら、緑谷達よりも早く迫ってくる黒影に狙いを定め、拳を放つ。
「テメェは邪魔だっ‼︎」
『グゥオっ⁉︎』
風纏う右拳を振り抜き黒影の顔面を殴り飛ばす。あまりの破壊力に再び大きく弾かれた黒影は常闇の元まで飛ばされてしまう。
その隙に更に一歩踏み込んだ嵐は緑谷達との距離を一気に詰めた。眼前に迫った嵐に緑谷は予測していたのか、右手を引き絞って何かをしようとしていた。
しかし、緑谷が右手を突き出すよりも早く、嵐は彼らの目の前で顎門を大きく開くと、牙を剥き出しにして大咆哮を放つ。
ガアアァァァ——————ァァァァアアッッ‼︎‼︎‼︎
超至近距離で炸裂したノーモーションからの大咆哮に緑谷達は原始的恐怖を喚起させられ反射的に身を竦ませてしまう。
「「「「〜〜〜〜〜〜っっ⁉︎⁉︎」」」」
『〜〜〜ッ⁉︎』
緑谷は引き絞っていた右手の構えを解いて両手で耳を塞ぎ身を屈めてしまい、騎馬の三人は苦悶に顔を歪めて膝を突いてしまう。常闇が従える黒影すらもその身を硬直させてしまうほどだ。
それが明暗を分けた。
「これで終わりだな」
その言葉と共に嵐は手を伸ばすと膝をつき程よい高さにある緑谷の頭に巻かれているハチマキをあっさりと奪い取った。
『八雲、緑谷からもハチマキを強奪っ‼︎これで八雲チームが全チームのハチマキを掻っ攫ったぁっ‼︎マジでやりやがったぜぇっ‼︎‼︎』
緑谷からもハチマキを奪い取った嵐はすかさず上空へと飛び上がり結界を解除した。
パチンと指を鳴らす音が小さく響き、内部を映さないほどに激しく吹き荒れていた風が次第に勢いを失い、宙に溶けるように消える中、全ての選手が諦めるように嵐達を見上げていた。
それはまるで彼が自分達よりも圧倒的な格上の存在であることを暗に認めてしまったようにも感じられた。
対する嵐も生徒達を真紅の眼光で見下ろしており、その鋭い眼光に見据えられた彼らは一様に圧倒的な実力差に騎馬を組んで反撃しようという気概すらわかなかったのだ。
そして、刻一刻と時間は過ぎていき、
『TIME UP‼︎試合終了だぁぁぁ‼︎』
試合終了の合図がプレゼントマイクより告げられた。それを聞いた嵐はふわりと地面に着地して騎馬を解く。取陰と心操をまず下ろして、その後拳藤を下ろすと変身を解除した。飛膜や鱗、尾、角が引っ込み、瞳も黄金色に戻る。
そんな彼の名を拳藤が呼んだ。
「八雲」
「ああ」
振り返れば、三人とも一様に笑みを浮かべて嵐を見ており、拳藤が全チームのハチマキを握る拳を前に突き出していた。そして、一拍遅れてそれに合わせるように取陰と心操も拳を突き出してとり、最後にその意図を察した嵐も笑みを浮かべると拳を彼らに倣って前に突き出す。
それと同時にプレゼントマイクの声が響き、
『そんじゃあ早速結果発表をすっぞ‼︎まず1位は勿論、全部のハチマキを奪って完全勝利した八雲チームだぁぁ‼︎‼︎』
『八雲の単体としての強さもそうだが、他の三人との連携が上手い。各々できることを把握した上で最適なタイミングで活かし連携に繋げた。今回のは完全に八雲の作戦勝ちだったな』
「よっしゃぁぁぁ!!」
「アタシらの完全勝利だっ!」
「ああっ‼︎」
「お前らのおかげだ。よくやってくれた」
プレゼントマイクの完全勝利を告げる声と同時に拳藤達は拳をガツンと突き合わせて、天高く拳を掲げながら歓喜の声を上げてハイタッチで喜びを分かち合っていく。
『そんで2位からはポイント総取りされたから最後にキープしてた順に行くぞっ‼︎まず2位緑谷チーム‼︎3位轟チーム‼︎4位爆豪チーム‼︎以上四組が最終種目へ……進出だぁぁぁぁ‼︎‼︎』
2位以降はポイントがないため、最後にキープしてた順ということにより、緑谷、轟、爆豪の3チームが進出決定した。
しかし、最終種目に進めたとはいえ、嵐に完敗した事実は変わらないため、安堵はしていたものの悔しさは隠しきれていなかった。轟は顔を俯かせて自分の左手を見下ろし、爆豪は悔しさと屈辱にわなわなと震えていた。
そんな中、拳藤と取陰はこれでもかと喜びながら嵐に感謝を示す。
「本当お前と組んで良かったよ!八雲っ‼︎」
「本当だよ!八雲のおかげでアタシら圧勝できたしね!」
「お前が誘ってくれたからだろ?お前らのおかげだよ」
「そう言ってくれると嬉しいよ」
感謝してくる女子二人に嵐が元は二人が選んだお陰だと返せば、拳藤は照れ笑いを浮かべる。
嵐はそんな彼女に笑みを浮かべると、もう一人の立役者へと視線を向ける。
「心操、お前もありがとうな。よくやってくれた」
「こちらこそ。あんたのチームに入ったから、ここまで来れた」
「はは、まだ終わってねぇぞ?こっからが本番だ」
「分かってる。だから、最終種目のトーナメントでもしぶつかったら、タダで負けるつもりはない」
不敵な笑みを浮かべてそう言い放った心操に嵐は一瞬目を丸くするも、すぐに挑戦的な笑みを浮かべながらその挑戦に応じる。
「いいぜ。ぶつかったら正々堂々戦おう」
「あんたが認めてくれたんだ。だから、あんたのところに辿り着けるまで諦める気はないからな」
「いい目だ。なら頑張れよ。お前には悪いが俺は待つ気はねぇ、先に行ってるからな」
「ああ」
男らしく拳をコツンとぶつけると心操は一足先に戻っていってしまう。普通科のクラスメイト達のところだろう。心操を見送った後、拳藤や取陰は嵐へと向き直ると申し訳なさそうな表情を浮かべた。
「その、さっきはうちの馬鹿が本当にごめんな。あとでキツく叱っておく」
「アタシからも本当ごめんね」
そう言って頭を下げて先ほどの物間の醜態をクラスメイトとして謝罪する二人。その謝罪にうんざりした様子で嵐は呟く。
「……その話か。それについてはお前らは悪くないって言っただろ」
「うん分かってる。でも、このままじゃ私らが納得できないんだ。だから、何か償いをさせて欲しい」
嵐の言い分もわかるが、クラスメイトが友を傷つけた事実には彼女達は本気で胸を痛めており、断られると分かってても何か償いをしたかったのだ。
断固として償いをさせて欲しいという訴える彼女達に嵐は一つため息をつくと、
「あーもう分かった分かった。けじめつけてぇなら、今度飯でも奢ってくれ。それでチャラだ。これでいいだろ?」
「っっ、うんっ、食べたいもんなんでも言ってよ!」
「はいはい」
嵐の譲歩に露骨に嬉しそうな表情を浮かべる彼女に嵐は思わず苦笑いしてしまう。
「じゃ、私らもそろそろクラスのところ行くよ。お互い最終種目頑張ろうな!」
「ああ、当たったら容赦しねぇからな」
「こっちのセリフだっつの。本気でお前に挑むつもりなんだから、覚悟しときなよ」
「分かってるよ」
「それじゃあまた後でねぇ」
「ああ」
そうして二人もB組の方へと戻っていった。そして、それを見計らったかのようにA組メンバーが嵐の元へと集まってきた。
「八雲君おめでとう‼︎総取りってすごいねっ‼︎」
「ケロ、おめでとう、八雲ちゃん」
「八雲お前スッゲェなっ‼︎まさかあの状況で1000万守るどころか、全部ハチマキ奪うなんてよっ‼︎」
葉隠や蛙吹、砂藤が口々に嵐の勝利を賞賛していく。
「完敗ですわ、八雲さん」
「氷だけじゃなくて電気もきかねぇとかどういう体してんだよ⁉︎チートかよっ⁉︎」
「八雲君あそこで咆哮ってズルすぎひんっ⁉︎あんなん食らったら動けるわけないやんっ‼︎」
「まさか黒影まで硬直してしまうとは。恐るべき力だな、八雲」
「あの風の結界はズリィよっ‼︎中入れねぇよっ‼︎」
「てか、俺何も出来なかったぜ。せっかく爆豪の爆破に耐えられる前騎馬だっつぅのに……」
「それいうなら、私もだよ。轟対策に入れられてただけで、何も活躍できなかったし……」
最後の最後で嵐の結界内部で戦った三組の騎馬のメンバー達が先程の敗戦に各々文句を言ったり、悔しそうな表情を浮かべている。
「まぁ最終種目進んだ奴らはそこで活躍すればいいだろ」
そんな彼らに嵐は笑みを浮かべると慰めるように言うと、次いで飯田へと視線を向けた。
「飯田、胸は大丈夫か?衝撃は一応流したが、怪我してんならリカバリーガールに見てもらえよ」
「それについては問題ない。むしろ、まさかあんな止め方をされるとは思わなかったよ!流石だな八雲君!」
「怪我が無いんならいいよ」
一応受け止めた時にできる限り衝撃は逃して飯田の身体に負担がないようにしたが、あの速度での突進だ。どうしても懸念は残ってしまう。だが、彼の様子からして本当にこの後に支障はなさそうなため、安堵する嵐。
飯田の無事を確認し安堵する嵐に、今度は耳郎と障子が近づき尋ねた。
「ねぇ、ウチら途中の記憶がなかったんだけど、あんたのチームの、心操、だっけ?あの時ウチらに何したの?」
「ああ、あいつの声を聞いた直後に意識が飛んだ。俺達は何をされたんだ?」
心操の洗脳を喰らってしまった二人は、少しした後に意識を取り戻したらしく、その間に何が起きたのか訳が分からないようで、同じチームメイトであった嵐ならば何か知ってるはずだと尋ねてきたのだ。
当然、指示したのは嵐であるため、知ってはいる。だが、
「それに関しては最終種目でのあいつの一戦目の時に教えてやるよ。今話すと対策されてあいつに悪いからな。ただ、悪いようにはしてないからその点については安心してくれ」
心操の為を思いここで彼の個性をネタバラシするのはしない。それは彼の努力に対する裏切りだからだ。
その意図まではわからなかったものの、彼の言葉が心操を気遣ってのものだと気づいた二人はあっさりと納得する。
「………まあ、確かに何も身体に異常はないしね」
「……お前の言い分も一理あるな。分かった。それならば、後で改めて教えてくれ」
「ああ、もちろんだ。それより、そろそろ飯食いに行こうぜ」
「ああ」
「うん」
そうしていざ二人と共に昼食を食べに食堂へ向かおうとした時だ。
「八雲」
嵐を呼び止める者がいた。何者かと振り返ってみれば、そこには険しい表情をした轟がいて、彼の後ろには少し緊張している緑谷もいた。
「どうした?轟」
「お前と緑谷に話がある。これから少し時間取れるか?」
「…………」
轟の様子に嵐はしばし無言で観察するように見ていたがやがて頷く。
「…構わねぇよ。ただ、俺も腹減ってるから手短に終わらせてくれよ?」
「……あぁ。そんなに時間は掛けねぇ」
「OK。なら行こうか。お前ら、悪いが席だけ確保しといてくれ」
「うん」
「分かった」
耳郎と障子にそう言って了承を貰った嵐は一つ頷くと、轟達に向き直る。
「それじゃあ、案内してくれ」
「ああ」
そうして三人は他のクラスメイト達が昼休憩の為に食堂に向かう中、外につながる通路の一つ、人気のない薄暗い通路に移動した。
壁に背を預ける轟と向かい合うように横並びで立つ嵐と緑谷。嵐が腕を組み轟が口を開くのを待つ中、緑谷が恐る恐ると口を開き尋ねた。
「その、轟君…話って……何?」
緑谷の問いかけに冷たい威圧感を漂わせていた轟がついに口を開き、
「なぁ、緑谷。………お前、オールマイトの隠し子かなんかか?」
そんなことをいきなり尋ねたのだ。あまりにも予想外な問いかけに身構えていた二人は唖然とし、
「えっ?」
「は?」
それぞれそんなふうに小さい声をあげてしまった。
▼△▼△▼△
嵐、緑谷、轟。一年生の中でもトータルの成績でトップスリーの生徒達が薄暗い通路に移動した時、別の場所でもある者達が一堂に介そうとしていた。
場所は変わり、一年ステージの別の通路では警備に呼ばれたプロヒーロー達が通路を行き交っており、その中を一人の大柄な男が歩いていた。
「…………」
炎に身を包むその男の名はエンデヴァー。
No.2ヒーローにして轟焦凍の父でもある男。そんな彼はどこかへと向かっており、階段を降りようとした時、誰かに呼び止められた。
「よっ、久しぶり」
陽気な声で止められたエンデヴァーは、声だけで誰かわかったのか顔の炎を一層強く燃え上がらせながら、眼光を鋭くしながら後ろへ振り向く。
そこにいたのは、彼の予想通り、
「お茶しよ。エンデヴァー」
「オールマイト……」
黒いスーツに身を包んだ筋骨隆々の大男オールマイトだった。実に気さくな感じでエンデヴァーを呼び止めたオールマイトはお茶に誘ったのだ。
そして、オールマイトが久々の再会にさらに話しをしようとした時だ。
「……む、久しいな。オールマイト、エンデヴァー」
更にもう一人彼らの介入する者がいた。
濡羽色の黒翼を背に鳥の嘴型の仮面を被る着物と武者鎧が一体化したコスチュームに身を包んだ男。
オールマイトやエンデヴァーに比べると細身で引き締まってはいるが、背丈はエンデヴァーに引けを取らないほどの大柄な男。
エンデヴァーが炎を纏うならば、こちらは夜を纏ったかのような出立ちの男は、二人の姿を見るやそう言ったのだ。
新たに現れた男を二人は知っているらしく、それぞれ彼の名を呼ぶ。
「ヤシャガラスじゃないか。君も久しぶりだね」
「……ヤシャガラス、久しいな」
オールマイトはエンデヴァーの時のように気さくに応え、エンデヴァーは幾分か棘の取れた声で彼にそう返した。
彼は『天狗ヒーロー・ヤシャガラス』。
オールマイト、エンデヴァーに次ぐ日本のヒーローランキングNo.3のヒーロー。
異形型、変身型のサイドキックの保有数が日本最多という、多くの異形型、変身型の個性持ちが憧れるヒーローでもあるのだ。
No.1『ナチュラルボーンヒーロー・オールマイト』。
No.2『フレイムヒーロー・エンデヴァー』。
No.3『天狗ヒーロー・ヤシャガラス』。
今ここに一年生の現トップ3が揃うと同時に、日本のトップ3のヒーロー達もまた一堂に介していた。
どうでしたか?
結果は嵐がポイント総取りしたことで2位以下は最後にキープしてた順という事になりました。
今話では心操の活躍が出せませんでしたけど、仮に出すとなると個性の条件など観察されてしまうので、対策されないために使わないようにさせてたんですよ。
そして、ラスト!嵐、轟、緑谷が薄暗い通路で話をする中、一方プロヒーローの方でもエンデヴァーとオールマイトに加えて『ヤシャガラス」というオリヒーローが出てきましたねっ!一体話し合いはどうなることになるのやらです。あ、ちなみに、『ヤシャガラス』さんは以前嵐が体育祭に出ているのを見て恨むような発言をしていたあの黒翼のお方ですよ。一応、補足です。
では、また次回お会いいたしましょう!さよなら!!
私はまたアマツ様を拝みに行ってきます!!
嵐のイメージCV誰がいいと思いますか?
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小野大輔
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諏訪部順一
-
細谷佳正