ヒロアカ、完結しましたね(泣)。
唯一人じゃなくて誰もが誰かのヒーローになれる皆が主人公の最高の物語、私の学生時代の青春だったと過言ではない最高の物語でした。
今や社会人となり仕事で忙しくなり、進行ペースも少し落ちてしまいましたが、それでも合間の時間でこれからも書いていこうと思います!
『さぁさぁ皆楽しく競えよレクリエーション!それが終われば、最終種目。進出四チーム総勢16名からなるトーナメント形式‼︎一対一のガチバトルだ‼︎‼︎』
プレゼントマイクによる最終種目の宣言で、会場のボルテージは更なる高まりを見せる。
それは、観客達に限らず、出場する生徒達もまた同じだった。
「トーナメントか!毎年テレビで見てた舞台に立つんだあ!」
「去年トーナメントだっけ?」
「形式は違ったりするけど、例年サシで競ってるよ。去年は確かスポーツチャンバラしてたハズ」
生徒達が各々喜びやら語り合う中、ミッドナイトが『Lots』と書かれたボックスを持ちながら壇上に上がる。
「それじゃあ組み合わせ決めのくじ引きしちゃうわよ。組が決まったら、レクリエーションを挟んで開始になります!!」
雄英体育祭の最終種目である一対一のガチバトルは、形式こそ違えど例年くじ引きなどで組み合わせを決めている。そして、決めてからレクリエーションを挟み最終種目を始めるという流れになる。
「レクに関して進出者16人は参加するもしないも個人の判断に任せるわ。息抜きしたい人も、温存したい人もいるしね」
ミッドナイトのいう通り最終種目に出場する嵐達16名は自由参加だ。理由は温存だったり、コンディションを整えたりと様々だ。
「八雲はどうするの?」
「俺は不参加かな。少しのんびりしたい」
耳郎に問われた嵐はそう答える。
彼はレクリエーションは不参加の方向で行くようだ。先ほど急いで昼食を食べたというのもあるのだろう。ちょっとした腹休めをしたいようだ。
「それじゃあ一位チームから順に引いていってちょうだい」
そうして嵐達一位チームから順に箱からそれぞれくじを引いて組み合わせが決まり、ステージの大型モニターに映される。
その組み合わせは、
第一回戦:心操VS緑谷
第二回戦:轟VS瀬呂
第三回戦:八雲VS八百万
第四回戦:拳藤VS切島
第五回戦:常闇VS芦戸
第六回戦:取陰VS上鳴
第七回戦:発目VS飯田
第八回戦:麗日VS爆豪
このようになった。
嵐は初戦の相手である八百万の方に振り向きながら、声をかける。
「俺の相手は八百万か。よろしくな」
「……正直、気は重いですが、正々堂々行かせてもらいますわ」
「おう、全力で来い」
八百万は騎馬戦で散々辛酸を舐めさせられた上に、嵐の実力をクラスメイトとして知っているからこそ、嵐と初戦でぶつかってしまったことに表情は自然と険しくなるが、もう決まった以上はやるしかないと腹を括る。その様子に嵐は満足そうに笑いながら自然体で応えると、再び組み合わせ表に視線を戻し改めて組み合わせを見る。
(心操に緑谷か………それに、轟と瀬呂か……お互い勝てば……もう……)
仮に緑谷が心操に、轟が瀬呂に勝利した場合二人は二回戦まで激突することになる。嵐が願った組み合わせが早々に実現すると思う反面、彼は騎馬戦でチームメイトだった心操も気にかける。
(緑谷相手に心操がどう戦うかだな……心操の個性の発動条件は現状バレてないはず。それならば、やりようはあるが……緑谷も緑谷で厄介だからなぁ)
心操の個性を知っている嵐は、緑谷との戦いをシミュレートする。
返事をすれば操れる洗脳の個性。初見殺しではあるが、発動条件がバレたら確実に対策されてしまう諸刃の剣だ。
そして、緑谷は観察し思考することに長けたタイプの人間だ。心操のような見ただけでは個性の詳細がわからない相手では特に注意深く観察し対抗策を模索していくことだろう。
それに加え、フィジカルの面でも心操は緑谷に勝つことは厳しい。先程の騎馬戦でも彼が武術に精通したものではない上に、肉体もそこまで鍛えているというわけではないのは把握している。対して、緑谷は心操と同じく武術に精通してはいないが、肉体はある程度出来上がっていた。
(現状では、心操が不利か……)
故に、総合的に判断して心操と緑谷では緑谷に分があると嵐は考えた。
共に騎馬戦を勝ち抜いた者に対して冷たいかもしれないが、客観的に判断した上であり、勝負の世界はどんな想いがあろうとも勝ち負けが決まってしまうものだ。
(心操に勝機があるとすれば……)
おそらく、その唯一の勝機は彼自身もわかっているはずだ。だからこそ、それを狙ってくるのは明白。それにどう緑谷が対応するかによって二人の試合は決着がつくだろう。
(まぁ、二人の結果はすぐに分かるか)
嵐はそこで思考を切り上げると、モニターから視線を外すと入場口の方へと一人歩く。
周囲ではレクリエーションに参加する面子がそれぞれ集まっていたり、トーナメントに参加する面々が各々の時間を過ごすために各自行動していた。
『よーしそれじゃあトーナメントはひとまず置いといてイッツ束の間、楽しく遊ぶぞレクリエーション!!』
後ろから聞こえてくるプレゼントマイクのアナウンスを聞きながら、嵐はただ一人一年ステージを後にした。
▼△▼△▼△
レクリエーション終了後、セメントを操る個性を持つ教員セメントスが、トーナメント用の決戦リングを作り上げる事で準備が終わり、いよいよトーナメントが始まろうとしていた。
『ヘイガイズアァユゥレディ!?色々やってきましたが!!結局これだぜ、ガチンコ勝負!!』
プレゼントマイクのアナウンスに観客は一気に沸き立つ。
『頼れるのは己のみ!ヒーローでなくても、そんな場面ばっかりだ!わかるよな!!心技体に知恵知識!!総動員して駆け上がれ!!そんじゃあ早速一回戦始めるぞぉぉ!!』
とうとう始まったトーナメント。それに合わせて、向かい合わせの入場口からそれぞれ二人の少年が歩み出てきた。
『まずは成績の割になんだその顔!!個性を見せずに障害物競走騎馬戦2位の成績で突破した男ぉ!!ヒーロー科緑谷出久ゥ!!』
緑谷は緊張に顔をこわばらせながら手をほぐしながらリングに上がる。遠目から見ても緊張しているのは明らかだった。
『バーサス!!普通科唯一のトーナメント出場者!騎馬戦八雲チームで勝利に貢献した普通科からの刺客‼︎心操人使ィ!!』
「刺客、か。まぁ間違いではないな」
対するは、緑谷とは違い不適な様子の心操。緊張した様子はなく、堂々とした姿でリングに上がり、プレゼントマイクの紹介に苦笑いを浮かべる。
そうして二人は向かい合う。
『ルールは簡単!相手を場外に落とすか、行動不能にする。あとは「参った」とか言わせても勝ちのガチンコだ!!ケガ上等!!こちら我らがリカバリーガールが待機してっから!!道徳倫理は一旦捨ておけ!!』
「道徳倫理は捨ておけって……まぁそれぐらいの気概でやれって事なんだろうなぁ」
物騒なアナウンスにまたしても苦笑いを浮かべた心操は五メートルほどの距離を空けている自身の対戦相手である緑谷へと視線を向けると声をかける。
「宜しく緑谷」
「うん!よろしく」
『そんじゃ早速始めようか!!レディィィィイ!!』
心操の言葉に純粋に応じる緑谷だったが、彼の個性を知る者からすればこれは悪手だ。
表面上はスポーツマンシップに則った対戦相手への敬意を示す言葉だが、今回に限っては心操が張った罠だ。
そして、
「お互い正々堂々やろう」
「うん、全力でや……」
“洗脳”は見事にかかった。
その様子を生徒用の客席に座って見ていた嵐は小さな笑みを浮かべる。
「……かかったな」
『START‼︎‼︎』
彼の呟きと同時にプレゼントマイクが開始の号令をかけるものの、緑谷は微動だにしない。
『オイオイどうした緑谷ぁ!?開始早々、完全停止しやがったぞぉ!?』
『心操、早速仕掛けたな』
プレゼントマイクの驚愕の声と、相澤の納得の声がマイクによって会場に響く。そんな中、心操は無慈悲に緑谷に命令を下した。
「悪いな緑谷。お前に恨みはないが……勝つためだ。『振り向いてそのまま、場外まで歩いていけ』」
「………………」
虚な目で棒立ちだった緑谷は心操の命令に従順に従い、彼に背を向けて自らの足で場外に向けてとぼとぼと歩いて行く。
「ねぇ、八雲。結局心操の個性ってなんなの?」
嵐の隣に座る耳郎が嵐に心操の個性について尋ねる。嵐の反対側には障子が座っており、彼も心操の個性の詳細に興味深そうにしている。
嵐はリングの二人を見下ろしながら、それに答えた。
「……あいつの個性は“洗脳”。自分の問いかけに答えた者を洗脳し自分の言いなりにする個性だ。その間洗脳をかけられた相手は意識が朧げになる。解除条件は何らかの衝撃がかかること。だから、この一対一の場合はほぼ確実に洗脳は解けない」
「洗脳⁉︎しかも、返事しただけでかかるのかよっ⁉︎」
「最強の初見殺しじゃねぇかっ‼︎」
「なにっ?それを使えばっ、もしやっ!!」
上鳴、切島が驚愕の声をあげ峰田がブレずにズレた発言をする中、実際に彼の個性にかけられた者達はそれに待ったをかける。
「待て。返事をするだけだと?触れてから発動させるのではないのか?」
「うちらの時も触れてたけど……もしかして、触れる必要がないの?」
「えっ、それじゃあ、緑谷君が立てた作戦って失敗だったんじゃ……」
緑谷は自分なりに心操の個性を推測し作戦立てていた。それは、『彼に触れられないようにすること』。障子や耳郎、葉隠などあの時の騎馬戦で嵐チームによって無力化させられた3人から話を聞き、自分なりの道筋を立てていたのだ。
だが、その作戦は前提から崩れており、嵐が立てた罠にものの見事にハマったことに嵐は意地悪な笑みを浮かべた。
「ああ、葉隠の言うとおりだ。触れる工程なんて必要ねぇ。心操の洗脳は返事をするだけで発動できる」
「じゃあ、あの時触れてたのは……」
「俺がそうするよう指示した。競技を跨いでブラフを仕掛けて、個性の発動条件を誤認させたんだよ。対策されないようにな」
「うっわ、マジで?」
「俺達はまんまと騙されたわけか」
「そうなるな。緑谷には悪いが、俺はあいつを気に入ってるし、ヒーロー科に上がってくることを期待しているんだ。だから、ほんの少しアドバイスをした」
嵐は心操にシンパシーを感じたからこそ、気に入っていてヒーロー科に上がってくるのを期待している。その為に手助けが必要であれば、手を貸すのもやぶさかではなかった。
だかは、あの作戦を伝えた。上にのしあがるために、確実に一回戦を突破する為には必要不可欠なものだと判断したから。
「ともあれ、これはもう心操の勝ちで確定だろうな。こっから緑谷が逆転する手は……」
『ない』。そう言い切ろうとした瞬間、ズドォォンと音が響き、リングでは風が吹き荒れた。
「……は……?」
心操の勝ちが確定したと思い、背凭れに完全にもたれかかろうと脱力した瞬間だった嵐は動きを止めると、そんな声を上げながらその音の元凶へと視線を向ける。
『緑谷止まったぁぁぁぁ⁉︎』
プレゼントマイクが言ったとおり、なんと緑谷はリングのラインを超える直前で足を止めており、心操へと振り向いていたのだ。
それは心操の洗脳を自力で解いたというほかならぬ証左。
(どういうことだ?どうやって洗脳を解除したっ?)
完全に予想外だった嵐は驚愕に僅かに目を見開いて緑谷の様子を観察する。そして、気づいた。左手の人差し指と中指が個性を使った反動の時のように腫れていることを。
(個性を暴発させて自力で衝撃を与えて、洗脳を解除した、のか?)
嵐はそう結論づける。確かに緑谷の個性ならば、指だけ暴発させた場合の衝撃で洗脳は解けるだろう。
だが、その原理はわかってもどうしても疑問が残ってしまう。
(だが、どうやって暴発させた?意識してやったわけじゃねぇだろう。それならば、無意識下だが……
嵐の個性はイレギュラーなケースだ。《嵐龍》という未知の生物をその身に宿しており、たとえ嵐自身が洗脳をかけられようとも、この身に宿る《嵐龍》が干渉し彼の洗脳状態を打ち消すことができる。
だが、これは内部に自分自身とは別の存在を宿していることであり、それは通常の個性、ましてや動物系の個性を宿す者であっても該当しない。
つまり、《嵐龍》のように特殊なケースでない限りは、彼の洗脳にかかった時点で自力での解除は不可能なはずなのだ。
そう考えていたのに、あろうことか緑谷は自力で解除した。それが意味するところは、彼がオールマイトから授かった個性には、緑谷自身とは別の何かがいるということだ。
そう己の持論に基づき結論を出した嵐は、目を鋭く細め、リング上の緑谷を見据えながら小さく呟いた。
「………お前の中には、
▼△▼△▼△
「何が、起きたんだっ?」
心操は訳がわからなかった。
洗脳を一瞬でも解除した覚えはない。それどころか、ラインを踏む最後まで気を抜かずに意識を集中させてた。
にも関わらず、洗脳が解けた。
突然、緑谷の左手が動いたかと思えば、次の瞬間には轟音と衝撃による暴風が吹いたのだ。
そうして気づけば、緑谷がこちらを見ていたのだ。
(まさか、こいつも八雲と同じ、特別なのか?)
嵐の個性が特別なのはなんとなく分かっていた。
まず洗脳が一瞬で打ち消されたのもそうだし、騎馬戦や障害物競走での戦いぶりから、彼自身の経験値が凄まじいだけでなく、その個性が異質な何かを秘めているということは。
だからこそ、緑谷の個性もそれと同じ類なのではと思ったのだ。
「〜〜〜っっ、指を動かしただけでその威力か、羨ましいよ緑谷!!お誂え向きで派手な個性ならさぞプロの目にも止まるだろうよ!!」
「……っ‼︎」
緑谷は何も答えない。おそらくは、発動条件がばれたのだろう。一か八かで開幕速攻での洗脳をかけたのが仇になってしまったようだ。
とはいえ、仮に速攻しなかった場合、取っ組み合いになったところであれだけの威力を出せる個性の緑谷相手には勝ち目はないだろう。
結局のところ、彼には二つの選択肢しかなく、勝率が高い方の作戦をとったのだ。だが、それも失敗に終わった。
正面からの殴り合いしか選択肢がなくなった心操は腹を括り自ら前進して緑谷に殴りかかった。
「本当にいい個性だな!!俺のは
心操は右腕を振りかぶり緑谷の顔面に向けて右ストレートを放つも、それは容易く避けられ反撃で無事な左手でのストレートが迫ってきて、それを心操は間一髪でかわすと、今度は左足での蹴りを放ちながら叫ぶ。
「自分でもわかってたさ!!こんな個性はヒーローには向いてないって!!ただ害をもたらすだけの個性だって!!」
「…………っっ」
左足の蹴りは緑谷の横っ腹に当たる直前に腕を間に挟まれて防がれてしまった。緑谷はその足を掴んで場外に投げ飛ばそうと腕を伸ばすものの、心操は緑谷が掴んでくる前に間一髪足をおろし距離を取り、つかみかかろうとしてくる緑谷に合わせて再び前に駆け出し、殴り掛かる。
「それでも!!」
「……っっ⁉︎」
バキッと音を立てながら今度は緑谷の左頬に拳が当たった。遂に入った一撃に緑谷の動きが一瞬鈍る。心操人使はチャンスだと判断して追撃を仕掛けた。
「こんな俺でもヒーローになれるって、ヒーロー科に上がってくれるのを期待してるって言ってくれたやつがいたっ!!」
「〜〜〜っっ!?」
「だからこんなとこで負けるわけにはいかねぇんだ!!あいつの背中を追いかけんなら、もっと上に上がらないといけねぇんだよっ!!」
そうして思いの丈を叫んだ彼は更なる一撃を見舞おうと右手を振りかぶるも、その右腕を取られ、更には体操服の胸ぐらも捕まれ、勢いよく背負い投げをされてしまい場外へと投げ飛ばされてしまう。
一瞬の浮遊感ののちに、背中と尻に鈍い痛みが響き、直後審判を務めるミッドナイトの声が無慈悲に響く。
「心操君場外!!緑谷君、2回戦進出!!」
「………くそっ」
背中から伝わる痛みに悶えながら、心操は敗北してしまったことに悔しそうにする。
『IYAHA‼︎初戦にしちゃ地味な戦いだったが、とりあえず両者の健闘を讃えてクラッシュアップユアハンズ!!』
『心操は自分の個性をよく理解した上での作戦だったが、洗脳を破られた後の詰めが甘かったな。……ったく、だからあの入試は非合理的だと言ったんだ』
(すまん、八雲。……あんたの、期待に応えられなかった)
せっかく自身の個性を誤認させる作戦を教えてくれたというのに、その彼の期待に答えられずに負けてしまった。それに対し謝罪をしながら起きあがろうとした時だ。
「………僕も、君と同じ、なんだ」
緑谷が心操へと手を伸ばしながらそう言ったのだ。
「僕は、個性の発現が遅くて、少し前まで無個性だった。……何度も、羨んでは、卑屈になって、自分には叶わないんだと諦めていたんだ……」
「…………」
「でも、ある日、誰よりも偉大な人がこう言ってくれたんだ」
心操の手を取り立たせた緑谷はおずおずとしながらも、それをはっきりと言った。
『君はヒーローになれる』って。
自分と同じ言葉を言われていたことに心操は僅かに目を見開く。
「彼のおかげで、僕はこの場に立てている……だから、えっと……君の想いは、よく分かるよ」
ヒーロー科のお前に何がわかると普通なら言うだろう。しかし、それはできなかった。
だって、彼が向けてくる眼差しがあまりにも真剣だったから。本心からそう思っていて、かつて彼も自分と同じ想いを抱いているというのがよくわかってしまったから。
「ハハっ……お前も同じかよ」
「心操君……」
「今回は負けた。だが、俺は諦めない。必ず、ヒーロー科に入って、あいつに胸を張れるようなヒーローになってやる」
一度の敗北がどうした。それは挫折にならない。
諦めない限り、可能性は存在する。そして、その先で自分の存在を認めてくれた彼に胸を張れるヒーローになるために、心操人使は覚悟をここに宣言した。
「っ‼︎うんっ‼︎僕も待ってるよ」
「ハッ」
緑谷なりの激励に思わず笑ってしまった心操は、最後に短く笑うと彼に背を向けてリングから降りる。
そうして入場口をくぐり客席に戻ろうとした時。
「かっこよかったぞ!!心操!!」
そんな声が上から聞こえてきた。
何事かと顔を上げれば、そこにいたのはクラスメイト達だった。
彼らは客席から身を乗り出し、こちらに手を振っていた。
「正直びびったよ!!」
「俺ら普通科の星だな!!」
「障害物2位の奴といい勝負してんじゃねーよ!!」
彼らの口から飛び出すのはいずれも労いの言葉だった。ヒーロー科の引き立て役だと諦めていた者達にとって、天上の存在だったヒーロー科とやり合った心操の姿は眩しく写ったのだ。
さらには、
「あの個性、対敵に関しちゃかなり有効だぜ。欲しいな」
「雄英もバカだなー。あれ普通科か?」
「まぁ受験人数ハンパないから、仕方ない部分もあるけどな」
「戦闘経験の差はな……どうしても、出ちまうもんな、勿体ねぇ」
なんとスカウトのために見にきていたプロヒーロー達からも彼を称賛する声が上がっていたのだ。
嵐だけでなく、プロにすらも認めてもらえたことに心操が唖然とする中、同じように聞いていたクラスメイトが笑いながら言った。
「聞こえるか。心操、お前、すげぇぞ」
純粋な称賛の声に心操は自然と後ろへと振り向き、ある方向を見る。その視線の先には、A組の席があり、その最後列に座る白髪の青年ー八雲嵐がいた。
彼もこちらを見ていたのか、すぐに二人の目が合い、一拍ののちに嵐は小さく笑みを浮かべながら頷くと、ぐっとサムズアップをしたのだ。
それはまるで、『よく頑張った』と言っているようで、心操は目頭が熱くなるのを感じた。
(ありがとう、八雲)
本当に彼には感謝しかない。
あの時の彼の言葉があったから、今この場に自分は立てた。彼のおかげで自分はヒーローへの可能性を捨てなくて済んだ。
ならば、ここから始めよう。
今日が心操人使の
自分の夢を叶える為に、今日の敗北の悔しさを原動力に変えて、死ぬ気で這い上がって、その先で最初に自分を認めてくれた憧れのヒーローに胸を張れるプロヒーローになろう。
それが、彼にできる最高の恩返しだ。
▼△▼△▼△
「心操の奴、頑張ったな」
入場口の奥へと姿を消した心操を見送った嵐は、感嘆の声を上げる。それを見ていた耳郎は隣で呟く。
「お気に入りが負けたのに、あまり悲しまないんだね。気に入ってるんじゃないの?」
「まぁ、負けちまったもんは仕方ねぇ。それに、一回負けたぐらいで諦めるような奴じゃないってのは知ってるからな。なら、次に期待するさ。筋トレやら武術とか教えられるもんなら、教えてもいいしな」
「本当に彼のことを買っているんだな。今日知り合ったばかりとは思えん」
心操の為に手助けを厭わない彼の姿勢に障子は少し驚く。今日、しかも騎馬戦で共に戦ったぐらいしかないのに、ここまで気にいるとは思ってもいなかった。だが、そんな彼の言葉に嵐は首を横に振る。
「いや、ただの口先だけなら俺だってどうでもいい。だが、あいつは騎馬戦まで上がってきて、その上で勝ち抜くために俺を利用するって俺の目の前で言ったんだぜ?そんな度胸あるやつ気に入らない理由がねぇよ」
ただ宣うだけじゃない。勝つために自分すらも利用するとはっきりと言い放った心操の瞳に宿る強い決意と覚悟を見て嵐は彼のことを気に入ったのだ。
だから、彼は認めた。
力は到底及ばずとも、自分に立ち向かうに値する心の強さを持つ者だと。
そんな強者独特の考え方を示し、楽しそうに笑う嵐の姿に、二人は目を合わせると小さく息をついた。
「なんというかあいつも苦労しそうだね」
「だな。いいこともあるだろうが、相当険しい道のりを歩むだろうな」
「ね、ラスボスに気に入られちゃったもん。とんでもない強化されそう」
まだ一ヶ月ぐらいの付き合いしかないが、濃密だったからこそ彼の人柄を二人ともよく知っており、いいこともあるだろうけど、これから苦労しそうだなと心操に密かにエールを送った。
そうして次に始まった2回戦。
轟と瀬呂の試合だったのだったが………結果は一瞬だった。瀬呂が不意打ち気味にテープで轟を拘束して場外に投げ出そうとしたものの、轟が一瞬でアリーナの屋根すら超えるほどの大氷塊を生み出して瀬呂ごと凍らせて轟の勝利に終わった。
あまりにも圧倒的かつ哀れな結末に会場中からはドンマイコールが巻き起こるほどだった。
その時の轟の顔はいつにも増して怒りに満ちており、嵐にはそれがとても辛いものに映ってしまっていた。
そして、轟が生み出した大氷塊の撤去が終わり、セメントスによってフィールドは整えられいよいよ3回戦、嵐と八百万の試合の順番が回ってきた。
▼△▼△▼△
『さぁ、行くぜ3回戦‼︎続いてはこの二人だ‼︎‼︎万能個性で成績上位‼︎才色兼備とはまさに彼女のこと‼︎ヒーロー科八百万百‼︎‼︎』
大歓声の中、八百万は険しい表情を浮かべ、真っ直ぐに眼前の対戦相手を見据えている。目線を離さずに相対する者を真っ直ぐにみている彼女の眼差しは真剣そのものだった。
更に言えば、既に上着の前を開き、いつでも創造物を出せるようにスタンバイしており、この戦いに対する意気込みがあらわれていた。
そして、そんな彼女に相対するのは、
『対するはぁ‼︎前哨戦二つとも一位で通過‼︎文句なしの最強‼︎吹き荒れる暴風は誰にも止められねぇ‼︎‼︎同じくヒーロー科八雲嵐‼︎‼︎』
腕組みをし仁王立ちする嵐だ。
彼は不適な笑みを浮かべながら、対戦相手である八百万を真っ直ぐに見据えている。そして、彼も同じく上着を肩に羽織るだけでありいつでも龍人化できるようにしていたが、それでも気負いせず自然体で佇んでいた。
その余裕綽々たる様子に八百万は流石にプライドを刺激されたのか、キッと睨みつける。
(確かに貴方程の実力ならば私など歯牙にかけないでしょう。だからこそ、一泡吹かせてみせますわ)
実力差を考えれば自分など相手にもならないのは明白だ。だが、それでも何もせずに負けを認めるなどありえない。
その余裕を崩すために一矢報いようと密かに奮起し、両手を軽く上げながら試合開始の合図を待つ。
『さぁ、Startォォッ‼︎‼︎』
「先手必勝ですわっ!!」
試合開始の合図が出た瞬間、八百万は早速あるものを創造するとすぐさま嵐に向けて投げた。
黒光りする小さな円筒状の物体が多数放物線を描き、開幕と同時にゆっくりと歩み始めた嵐の数メートル手前の地面に落ちようとする。
(あれは、まさか………)
形状からソレが何かをある程度予測したと同時に、物体からカッと光が溢れ嵐の視界を閃光で埋め尽くした。
「っっ‼︎」
『うぉっ⁉︎まさかの、閃光弾かっ⁉︎八百万、開幕速攻で目潰しかぁっ⁉︎』
『創造の個性の八百万ならではの策だな。初手で八雲の視界を潰して、時間を稼ぐつもりか』
相澤の言う通り、八百万は閃光弾で嵐の視界を一時的に制限して想像の時間を稼ぎをするつもりだったのだ。
サングラスを装着していた八百万は間髪入れずに次の創造を行いつつ嵐の動きを注視する。彼女の視線の先、無防備に閃光を直視してしまった嵐はというと、
「………」
片腕のみだが一瞬にして変化を済ませており、飛膜を広げて自らの視界を覆って閃光を凌いでいたのだ。
それは、指の隙間から覗く炯々と輝く橙色の眼光が自分をまっすぐ捉えていることから見てとれた。
だが、そんなことわかりきったこと。たかが閃光弾如きで嵐の動きが止められるわけがない。
だからこそ、次の一手を打つ。
(ええ、分かってましたわっ。あなたがこの程度で怯むわけがないことなどっ!!だからっ!!)
そうして今度はテニスボールサイズの黒い球を数個創造すると、それを嵐の周囲へと再び投げる。同時に、自分の周囲にもそれを叩きつけた。
地面に叩きつけられ割れた球の中からは黒い煙が濛々と立ち込め、あっという間に二人の姿を隠しリングの大半を黒煙で飲み込んだ。
『こ、これはっ、煙幕ぅっ⁉︎八百万、閃光に続いて煙幕を駆使して八雲の視界を制限するぅぅ‼︎‼︎』
『閃光に続いて煙幕か。あらかじめ閃光が塞がれると分かっていたのだろう。更なる時間稼ぎをするためのいい判断だ。だが……』
「たかが煙幕……こんなもの、大した時間稼ぎにもならねぇぞ」
音を立てながら完全に龍人化を遂げた嵐が、自身の視界を埋め尽くす黒い煙を見回しながらそう呟くと、無造作に腕を振るう。
暴風が吹き荒れ、嵐の視界を埋め尽くしていた黒煙を上空へと巻き上げてリング全体が見渡せるようになる。
『八雲は風を操れる。密室状態ならともかく、こうも開けた場所では、あの程度の煙幕など5秒も時間稼ぎにはならない』
髭による空間感知によって八百万の居場所をすでに把握していた嵐は、開始位置とは大きく離れた場所に移動した彼女の方へと振り向き…………僅かに瞠目した。
『えっ?はぁっ⁉︎マジかよっ⁉︎』
『……ほぉ』
プレゼントマイクの驚愕の声と、相澤の感心の声が響く。続いて、観客席のあちこちからも声が上がる。
「おいおい、八百万の奴正気かっ⁉︎」
「あんなの創造するってっ」
「あそこまでやるのかよっ⁉︎」
瀬呂、葉隠、砂藤が驚愕の声を上げる。それだけ八百万が創造したものが驚くべきものだったからだ。凡そ、一対一に使っていいものではないことを分かっているし、最悪命を奪えるような代物だったのだから。
黒煙が巻き上げられ、露わになったリング。
嵐と限界まで距離を取り後退した場所にいた八百万はあるものを創造し構えていたのだ。
それは、黒光りする円筒状の物体だ。サイズは八百万よりも大きく、先端に穴が空いた細長い黒い鉄の棒のようなものが円環状に並んでおり、後部には別の円筒の何かが備え付けられている。そして、三脚を備え取っ手を掴み構えられた漆黒の金属の物体ーーー否、その兵器の名はーーー。
『が、ガトリングゥゥ⁉︎んなもん、人に向けて撃っていいものじゃねぇぞぉっ⁉︎』
プレゼントマイクが思わず身を乗り出しながらマイクを片手に驚愕の声を上げる。
何と彼女が創造した兵器とは『ガトリング』だったのだ。しかも正確に言えば生み出されたガトリングはミニガン。ガトリング砲の中で最強と言われており、毎分3900発、銃口初速は秒速1067m、それはおおよそ人に向けていいものではない。まさにオーバーキルといえよう。観客達には明らかに殺す気だとしか思えなかった。
だが、一部の者達はそうは思わなかった。
「ヤオモモ、本気で八雲に勝ちに行こうとしてるんだね」
「ああ、あいつに本気で挑むのなら、あれくらいはしなくては足らないだろうな」
耳郎、障子は彼女の意気込みを理解していた。
彼を殺そうとしているのではない。殺す気でいかなければ彼と戦うことはできないと八百万は理解していたからこそ、ガトリングなどという殺傷兵器の想像を躊躇わなかったのだ。
それだけ自分と嵐の間に大きすぎる差があるからと分かっているからだ。
それぞれが様々な感情を抱く中、嵐は足を止め笑みを浮かべる。
「………ガトリングか。本気で俺に勝とうとしてるんだな」
「ええ、私のできる限りのことをやり尽くして貴方に挑戦します」
八百万の挑戦に嵐は口唇を裂き牙を剥き出しに獰猛に笑うと、右手を胸の高さまで上げて指をくいっと曲げながらその挑戦を受けて立つ。
「いいぜ、来いよ」
「いきますわよっ、八雲さんっ‼︎‼︎」
そして、八百万はガトリングのトリガーを引き、刹那轟音を奏でながら無数の弾丸が一直線に嵐へと襲い掛かる。それに対し、嵐は両手を下ろした自然体な姿勢で回避の素振りを見せることすらしなかった。
凶弾が嵐の肉体を穿つ光景を想像し、観客席からは悲鳴や驚愕の声が上がり、中には目を瞑ってしまう者もいた。
このままでは雄英体育祭始まって以来の大惨事になるだろう。一人の生徒が凶弾に穿たれ死ぬ光景が地上波で全国に放送されてしまう。
そのはずだった。
『……………うそん』
『お、おいおい、マジかよ……』
『め、滅茶苦茶すぎる……』
プレゼントマイクの思わずといった発言を皮切りに、あちこちから戸惑いの声が聞こえてくる。
それもそのはず。
ドゥルルルルと耳を劈くような発射の轟音の中に、キンキンキンと硬質な何かがぶつかるような甲高い音が響いている。
その音の発生源は…………今もなおガトリングの弾丸の驟雨に晒されている嵐からだった。
彼の肉体に確かな凶弾は直撃している。だが、彼の体から溢れるのは赤い鮮血ではなく、橙黄色の火花だ。
それが意味するのはつまりーーー
『ま、マジかよ、ガトリングだぞ?……八雲の奴、銃弾弾くとか、どんな体してんだっ⁉︎』
プレゼントマイクのいう通り、彼の龍の肉体はガトリングの弾丸を悉く弾いているのだ。
多少は傷を与えられると踏んでいた八百万は、この予想外の結果に引き金を引く指を緩めないまま愕然とする。
「嘘、でしょ……」
「八百万、一つ言い忘れていたが……」
嵐は弾丸の驟雨に晒されながら、軽く身を屈め足に力を込めると、
「俺に銃弾は通用しない」
そう告げるや小さいクレーターを生み出すほどの力強い踏み込みで自身の体を前へと押し出し銃弾を真っ向から弾きながら八百万との距離を瞬く間に詰める。
二人の距離は15メートル程。その距離ならば風を纏わずとも、彼の脅威的な身体能力によってすぐに埋めることができる。実際、彼が八百万の眼前に到着するのに2秒もかからなかった。
甲高い音を立てながら着弾の衝撃を物ともせずに疾走すると、回転している六つの銃口を正面から握りつぶし、更には砲身の中程に噛みつきバギィと噛み砕いたのだ。
『八雲なんつー顎してんだっ⁉︎ガトリング噛み砕きやがったぁっ⁉︎』
『………八雲の身体能力の高さはすでに知ってるが、咬合力もそれに伴っているのか。にしても、正面からガトリングを止めに行くとはな』
「作戦は良かった。だが、相手が悪かったな」
「っっ‼︎ぐっ⁉︎」
咄嗟に横に回避しようとした八百万だったが、それよりも早く彼女の腹部に右手の掌底が突き刺さり、彼女の体は軽々と宙を舞いステージ外へと弾き出された。そのまま地面に落ちるかと思いきや、落ちる直前でふわっと彼女の体は浮き上がり、ゆっくりと地面に落ちる。
「八百万さん場外‼︎八雲君、2回戦進出‼︎」
『ご、豪快な掌底炸裂っ‼︎着地はともかく、八百万は大丈夫かっ⁉︎』
『今、スローで確認したが接触の瞬間、同時に風で八百万を持ち上げているな。派手な吹っ飛び方をしたが見た目程の大きなダメージはない。多少の痛みはあるだろうが、大事にはなってないな』
相澤の言う通り嵐はインパクトの瞬間に、暴風で八百万の身体を浮かばせており、掌底を叩き込むと同時に後方に飛ばしたのだ。
吹き飛び方は派手だったが、彼女の腹部に走った衝撃はそれほどでもなく、担架で運ぶ必要もない程度だった。とはいえ、普通に痛いのは変わらない為、彼女は腹部を押さえながら咳き込んでいたが。
『八百万の作戦自体は悪くなかった。八雲相手に長期戦では戦えないと判断したからこそ、閃光と煙幕の連続の目眩しで時間を稼ぎ、その短時間で創造できる最高火力の兵器を創造した。現時点で八百万ができる最短最高の作戦ではあったはずだ。だが、相手が悪すぎたな』
『だよなぁ。誰がガトリングを正面から耐え切るなんて思うよ。なんなら、ガトリングも噛み砕いちまったし』
『あいつの個性による身体能力の高さと肉体の頑丈さが八百万の想定を軽く上回っていたのが今回の敗因だろう。他の生徒相手ならばもっとやりようもあったろうな』
八百万の作戦も決して悪くはなかった。むしろ、彼女ができる範囲で最良の選択とも言える。
彼女の作戦の失敗の最大の要因は嵐の強さを見誤ったことだろう。一応、USJの戦いで彼の強さを肌で感じてはいたが、遠くから見るのと実際に体感するのでは話が違う。その差が敗因とも言える。
決して八百万が弱いのではないことを相澤は解説した上で、今の嵐の動きを思い返した。
(初動で何もしなかったのは、正面から八百万の策を受け止めるつもりだったのだろう。だが、あの戦い方は、危険だな)
相澤は嵐の先ほどの動きを危険と判断する。
己の肉体の頑強さによる絶対の自信から、あるいは再生能力があるから、ガトリングの掃射を無防備に受け止めたのだろうが、実戦で敵が使う個性はどんなものかはわからない。
とはいえ、嵐もそこまで考えなしの馬鹿ではないはずだ。今回も八百万の活躍の場を見せるためにあえて受け止めたということも考えられる。だが、ああいう戦法を選択肢の中に入れておくといざという時に致命傷を負いかねないだろう。
これには、試合を観戦していた巴も少しみかねていて、後日反省会でも開こうかと密かに思っていたりする。
相澤がそんなことを考えているとはつゆ知らず、嵐は八百万に駆け寄ると背中を撫でて介抱する。
「八百万、立てそうか?無理なら手を貸すぞ」
「ゲホッ、ゴホッ……だ、大丈夫ですわ…八雲、さん。…じ、自力で、歩けますわ…」
「無理はするなよ。なるべく痛みが少ないようにしたが、多少の痛みはあるはずだ」
「ええ、ですが…耐えられる、痛み…ですわ」
「それならいいんだが……」
「それよりも、八雲さん…完敗、ですわ。……手も、足も出ませんでした。せっかくのチャンスを、モノにできず……情けないですわね」
「相性が悪かった、といえばそれまでだが……正直なところ、いい作戦だったし動きも良かった。決して恥じるものじゃなかったぞ」
「あ、ありがとうございます……そう、言っていただけると、幸いですわ」
敗北に悔やんでいた八百万は嵐の賞賛に笑みを浮かべると彼に手を引かれながらゆっくりと立ち上がる。
『八雲圧倒的な実力で勝利‼︎負けちまったが八百万もよく頑張った‼︎両者の健闘を讃えてクラップユアハンズ‼︎‼︎』
プレゼントマイクの声に合わせ観客席から拍手が贈られ、二人の健闘が讃えられる。
嵐はまだ足元がおぼつかない八百万の手を取り支えながら、共にステージを後にした。
このステージにいる大勢が二人の健闘を讃え、素直な称賛の気持ちで拍手を送っていた。
だが、そうではない者が2人いた。
(素晴らしいっ‼︎あれほどの個性ならばっ、更に強力な個性が生まれるっ‼︎そうすれば、俺の野望はさらに盤石なものとなるっ‼︎‼︎)
一人は野心の炎をその瞳に宿しながら狂的な笑みを浮かべるエンデヴァー。
彼は嵐の個性の強さを垣間見て、組み合わせ次第で強力な個性が生まれ、自らの野望の実現がより確実なものになると確信したのだ。
そして、もう一人は………
「…………………フンッ」
エンデヴァーとは別の場所で試合を見ていたヤシャガラス。
嵐の実父である彼は、ステージから去る嵐の背中を見下ろしながら忌々しそうに鼻を鳴らす。握られた拳は、鬱血するほどに強く握られており、翡翠の瞳は鋭く細められ敵意に満ちている。
さらに彼の怒りに呼応するかのように、全身からは翡翠の雷がパリパリと溢れ迸っていた。
「……忌々しい怪物が」
ヤシャガラスはそう吐き捨てると、背を向けて通路の奥へその姿を消した。
心操は騎馬戦で嵐に認められたおかげで、ちょっとだけ前向きになれてます。
そんで、八百万戦では嵐龍のイカれた強さを見せるためにガトリングを真正面から受け止めるという荒技になりましたけど、嵐龍の鱗ならガトリングの掃射程度なら普通に耐えれると思うんですよね。切島の硬化よりも強度は上ですし、ただの銃弾ならばマジで何もしなくても耐えられるはず。
嵐のイメージCV誰がいいと思いますか?
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小野大輔
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諏訪部順一
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細谷佳正