天を舞う大嵐、英雄とならん   作:桐谷 アキト

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最近、百竜災禍秘録をようやく買うことができました。
思ったよりも分厚くて驚きましたね。そして、やはりその分厚さだけ内容も充実していて素晴らしかったです‼︎‼︎
各モンスターやエリアの設定やキャラデザなど事細かくモンハン好きにはたまらない本ですね‼︎‼︎

そして、本当に本当に、次のサンブレイクでアマツマガツチが出てきてほしい‼︎‼︎
ユクモ村とカムラの里が近隣ならあり得なくはない話でしょうし‼︎‼︎

あと、最後にちょぼにーさんのモンハン考察動画がマジでなるほどと思う部分が多くて、見応えがありすぎる。




8話 戦闘訓練

 

翌日から雄英高校の授業は始まった。

 

雄英高校ヒーロー科。日本一のヒーロー科だが、何もヒーローになる為の特別授業だけをしているわけではない。午前中は他の一般高校同様に英語や国語、数学などの必修科目の授業を行う。

いくら『力』があれど、『学』を疎かにしていては話にならない。『文武両道』こそヒーローに求められているものだ。

そして、雄英はそもそもの偏差値が全国の名門私立高校と比べても高く、屈指の最難関高と呼ばれているため、授業内容自体普通ではあるが、難易度が高く進行スピードが違く、余裕な者、やる気に満ちた者、何とかついていける者、既にヤバイ者など多種多様な反応を見せた。ちなみに、嵐は真面目に授業を受けていた。

強いて何か違うことがあるとすれば、それは各授業をプロヒーローがおこなっていることぐらいだろう。

例えば、英語の担当教員はプレゼント・マイクだ。

 

「えーんじゃ、次の英文のうち間違っているのは?」

 

教壇に立つプレゼント・マイクが教科書を片手に黒板に数個の英文を書いて生徒達にそう尋ねた。しかし、やはり2日目ということもあって全く授業は盛り上がっていない。

 

「おらエヴィバディヘンズアップ‼︎‼︎盛り上がれ———‼︎‼︎」

 

その空気に授業を盛り上げようとプレゼント・マイクは持ちネタを披露するも、あまり変化はなかった。というより、生徒達は授業の普通さに若干拍子抜けなところがあったのだ。

 

((((((普通だ))))))

(関係詞の位置が違うから、4番!)

(……くそ、つまんねぇ)

(4だな。てか、思ったよりも普通だった……)

 

生徒達が一般科目の授業に拍子抜けになりながらも午前は問題なく終えた。

ただし、初日から上鳴や芦戸が苦戦しており、先日に多少打ち解けつつあった嵐と八百万がその頭の良さ故に縋りつかれたことは余談だ。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

午前の一般科目の授業を終えて昼休みを迎えた。

雄英には大食堂があり、プロヒーローであるクックヒーロー・ランチラッシュの一流の絶品料理を安価でいただけるのだ。教師だけでなく厨房に立つ者もプロヒーローなのである。

そして、嵐は耳郎、障子と3人で大食堂を訪れ昼食を共にしていた。

出汁の効いたきつねうどんをすすり、嵐は舌鼓を打つ。

 

「んー、うまっ。流石はランチラッシュの料理」

「しかも、安いからほんとありがたいよね」

「全くだな」

 

耳郎がハンバーグ定食を、障子が焼き鯖定食を食べながら応える。

耳郎は普通に食べているが、障子は口元のマスクをずらさずに左腕の複製腕を口に変えてそこに食事を運んで食べているが、何か事情があってのことだろうと嵐と耳郎は気にしつつも尋ねはしなかった。

ちなみに、席は嵐の隣に耳郎が座り嵐と向かい合わせで障子が座っている配置だ。

そして、耳郎が再び口を開く。

 

「そういえば、午前の授業は思ったよりも普通だったね」

「そーだな。まぁ一般科目だしあれぐらいなんじゃねぇの?」

「というより、一般科目で何か捻りがある方がおかしくないか?」

「「確かに」」

 

障子の言葉に二人は揃って同意する。全くもってその通りだ。嵐はうどんに七味を足しながら更に呟く。

 

「午前が普通だった分、午後のヒーロー基礎学がどんなものになるのか気になるな」

「ね。今から楽しみだよ」

「ヒーロー科ならではの授業だからな」

 

ヒーロー科ならではの授業『ヒーロー基礎学』。

その名の通り、ヒーローの素地を作り立派なヒーローになるための様々な訓練を行う科目のことだ。

当然、ヒーローの卵である嵐達は興奮と期待に胸を躍らせていたのだ。

そして、彼らが次の授業に期待を寄せていた時、彼らに声がかけられる。

 

「お、いたいた」

 

聞き覚えのある声に3人揃ってそちらに振り向けば、

 

「よっ、3人とも」

 

拳藤がいた。親子丼が乗ったトレイを持っており、彼女の後ろにはクラスメイトであろう女子もいた。

 

「おお拳藤か」

「そこ座っていいか?他空いてなくてさ」

「いいぜ」

 

快く了承した嵐達は二人に促すと、二人は軽く会釈しながら障子の隣に座り拳藤が耳郎と向かい合わせの位置になった。

 

「ありがとうな、この時間どこも席埋まってるらしくてさ、知ってる奴がいてくれて助かったよ」

「まあランチラッシュの飯だしな。人気があんだろ。それで、隣の子は?確か昨日一緒にいたよな?」

 

嵐はそう尋ねながら、拳藤と共にきた女子に視線を向ける。

肩より長いウェーブのかかった黒髪に尖った目つきが特徴の彼女は、にっと笑ってギザギザに尖った歯を見せながら自己紹介する。

 

「アタシは取陰切奈だよ。よろしくねぇ、八雲嵐くんに、耳郎響香さんと障子目蔵くん」

「俺らのこと知ってるのか?」

 

所謂、ギャル系口調で自己紹介して自分達の名前を言い当てた彼女に疑問を浮かべる3人に、彼女は答える。

 

「一佳から聞いてたのよ。入試の時に一緒に戦ったって。特に八雲のことはベタ褒めしてたよ。『同年代にあんなに戦える凄い奴がいるなんて知らなかった』って、それはもうめちゃくちゃ褒めちぎってたな」

「ちょっ、切奈っ‼︎それは言わないって」

 

面白そうに話す取陰に拳藤が慌てながら止める。どうやら、取陰が言うには昨日廊下であった後、嵐達の話を拳藤がしており、その際に嵐のことを褒めちぎっていたそうだ。

言わないって約束していたはずなのに、あっさりと暴露されたのだ。慌てるのも無理はない。

ただし、既に暴露されそれを聞いてしまった嵐は、若干照れくさそうにする。

 

「あー、なんか、その、ありがとな」

「い、いや、私がそう思ったのは事実だし……」

 

拳藤も嵐に釣られてか照れ臭そうにしながらそう返した。それを取陰がニヤニヤと見ているのに気づくと、慌てた様子で話題を変える。

 

「そっ、そうだっ!そんなことよりっ、昨日の個性把握テストのこと聞かせてよっ」

「お、おう」

 

強引に切り替えた拳藤の勢いに若干驚いた嵐は、驚きつつも彼女の頼み通りにA組の個性把握テストの話をしていく。

やがて、話を聞き終えた拳藤と取陰は揃って目を丸くした。

 

「ボール投げ7キロ超えって、マジ?」

「それに握力計握り潰して、50mはスタートミスって0.2秒………お前のことだからどれだけ凄い記録を出したかと思えば、滅茶苦茶すぎるな」

 

取陰は目元をひくつかせて引き攣った笑みを浮かべ、拳藤は分かっていたが予想以上の記録だったと素直に驚く。

 

「別にそんなに滅茶苦茶な記録ではないだろ?」

「……それを素で言えるお前がすごいよ」

 

平然とそんな事を言った嵐に拳藤は多少の呆れと共にそう返す他なかった。それを見ていた取陰はケタケタと笑う。

 

「いやぁ八雲あんたぶっ飛んでるとは聞いてたけど、ホントにぶっ飛んでるねぇ、そんな記録、プロでも出せる人はオールマイトぐらいじゃない?」

「もうちょいいるだろ」

「それでももうちょい程度なんだ……八雲、あんた、面白いねぇ」

 

興味深そうに言う取陰は観察するように嵐をじっと見つめる。嵐も視線を逸らさずに見つめ返す。しばらく、二人の視線が交差していたが、取陰が小さく笑みを浮かべて視線を外すとスマホを取り出した。

 

「ねぇ、あたしとも連絡先交換しようよ。あんたと仲良くしてると、いいことありそうだし」

「何がいいことあんのか知らねぇが、まぁいいぞ」

「ありがと、そっちの二人もいいかな?」

「いいよ」

「ああ」

 

耳郎と障子の承諾を得て二人とも連絡先を交換した取陰は満足そうにスマホをしまった。

 

「ところで、耳郎さ」

「なに?拳藤」

「耳郎のこと名前で呼んでいいかな?友達だしもっと仲良くなりたいからさ。勿論、私らも名前で呼んでいいよ」

「お、いいね。じゃああたしもー」

 

拳藤の申し出とそれに乗っかる取陰に耳郎は笑みを浮かべると快く頷いた。

 

「全然いいよ。よろしくね、一佳、切奈」

「うん、よろしく、響香」

「よろしくねー響香」

 

その後は、女子3人の友情が深まった様子をそばで黙って見ていた男子二人も会話に参加して、和気藹々と他愛のない会話をしながら昼休みを過ごした。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

そうして昼休みを挟んで午後、待ちに待ったヒーロー基礎学の授業が始まる。

今日の担当は———

 

 

「わーたーしーがぁ‼︎普通にドアから来たぁ‼︎‼︎」

 

 

赤い生地に白いラインのあるスーツと赤い裏地の青いマントが特徴的なコスチュームを纏った、画風が違う筋骨隆々の大男ーNo. 1ヒーローオールマイトが笑い声を上げながらそう言って教室に入って来た。

そう、今日のヒーロー基礎学の担当はオールマイトなのだ。平和の象徴と謳われ、多くの人から慕われ称えられるまさに生きる伝説。そんな彼の登場にクラスの雰囲気は一気に上がる。

 

「オールマイトだ…‼︎すげぇや、本当に先生やってるんだな…‼︎」

「銀時代のコスチュームだ……‼︎」

「画風違いすぎて鳥肌が……」

 

クラスメイト達が興奮する中、嵐も興味津々とオールマイトを見ている。

何しろ、あの誰もが憧れるNo. 1ヒーローが教壇に立って教鞭を振るうのだ。ヒーローを目指す者ならば誰だって嬉しいに違いない。

だが、そこで嵐だけ違和感を覚えた。

 

(………気のせいか?何か、オールマイトが………()()()()()………)

 

オールマイトの姿に、嵐はどうしてかそれほど強くないと思ってしまったのだ。昔、一度だけ彼の活躍を見たことがあったが、その時に感じた絶対強者の威圧がどうも感じられないのだ。

 

「さぁ皆‼︎この授業で行うのはヒーロー基礎学‼︎ヒーローの素地を作るため、さまざまな訓練を行う科目だ‼︎…あっ、単位数は最も多いから気をつけてね‼︎」

 

早口で授業の説明をし、最後に重要な単位のことも話した彼は、ボディービルダーのようなポージングを取りながら『BATTLE』と書かれた白いカードを掲げた。

 

「早速だが今日はコレだ‼︎戦闘訓練‼︎」

『ッッ‼︎』

 

『戦闘訓練』、その響きに誰もが反応しある者はもはや敵のような獰猛な笑みを浮かべ、ある者は緊張し表情をこわばらせる。

 

「そして、そいつに伴って………こちら‼︎入学前に送ってもらった「個性届」と「要望」に沿ってあつらえた……戦闘服(コスチューム)だ‼︎」

『おおお‼︎‼︎』

 

オールマイトがいつのまにか持っていたリモコンのスイッチを押すと、嵐側の壁がスライドして、中にはコスチュームがある番号が書かれたケースが置かれている棚が複数現れた。

 

ヒーローがまず必要とするもの、それこそが戦闘服だ。

己の“個性”を最大限に活かす為の格好であり、ヒーローをヒーローたらしめる為のもの。

単純に戦闘服を着たヒーローが敵を倒す姿に惹かれ憧れたと言うものも少なくはない。

そして、自分達もいよいよ、戦闘服を纏って活躍できるヒーローへの第一歩を歩めることにクラスメイト達は誰もが興奮していた。

 

そんな中、嵐だけはただ一人表情を引き締める。確かに戦闘服を着れると言うことは心躍るだろう。だが、嵐はこの場にいるクラスメイト達よりも敵の恐ろしさや非道さを知っている。

 

戦闘訓練が始まると言うことは、すなわち敵に対する対処法を学んでいかなければいけないと言うこと。

訓練を訓練と思っていては出来ないことで、訓練であっても実戦と変わりはないことを意識した上で、凡ゆる全てを糧にして強くなるのだと気を引き締め直したのだ。

 

「さあ、着替えたらグラウンド・βに集まるんだ‼︎」

『はーい‼︎』

 

オールマイトの指示に従って戦闘服を収めたケースをそれぞれ手にしたクラスメイト達は各々の思いを抱きながら、更衣室に向かった。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

「要望通り。しっくりくるな」

 

 

更衣室で戦闘服に着替えた嵐は満足げにつぶやく。

嵐の戦闘服ーそれは一言で言えば神官が着るような和装に近かった。全身を純白を基調とし、山吹色の模様が浮かんでおり、端は淡い橙色に染まっている。そして、各部には縫うのに使われたと思われる赤い紐が際立っている。

靴の類は履いておらず、入試の時同様既に黒い鱗に覆われている。

両腕は袖口がない代わりに袂の部分がヒラヒラとした鰭をイメージしたものがあしらわれている。それは、帯も同様であり、後部にも鰭のようなものが伸びていた。

背中には肩甲骨から頭上を回るように天女の羽衣か、神の後光を模したであろう、白い布で作られた円形の装飾があしらわれている。

袴は足首あたりで裾が赤い紐で縛られていた。

 

これらの生地は全て嵐が提供した自身の毛髪と飛膜を織り込んで作られているため、戦闘の際に個性を使い変化しても肉体と同化するので破ける心配もないのだ。そして、嵐の飛膜はそこらの布とは強度が比較にならず、高い防弾、防刃、更には耐衝撃性能も備えている。

両耳には、右に赤の、左に緑の勾玉の形のイヤリングが下げられている。

 

和の要素が全面的に押し出され、利便性も考慮された戦闘服だが、サポートアイテムも嵐にはある。

まず腰の背部に差されているのは畳まれた一対の扇だ。自身の角や鉤爪を削って骨組みを作り、扇面に白い飛膜があしらわれた金緑の骨組みに、橙色の紅葉の模様がある扇子だ。

並はずれた強度を持つだけの扇子だが、紙で作られてはいない為、刃物にもなり得る切れ味を有しており、打撃だけでなく斬撃にも使用することができる代物だ。名を『龍扇・黒風白雨』だ。

 

更にもう一つサポートアイテムがあり、それが左腰に提げられている、翡翠の風車模様がある白金の鞘に収められた日本刀だ。こちらは完全な斬撃武器である為、鞘から刀が抜けないように赤紐できつく縛り打撃専用の武器になっている。名を『龍刀・催花雨』だ。

どちらも大部分を嵐の肉体を素材としている為、基本的に()()()()()()()()()()()()()()()ようになっている。これで、万が一の時に紛失しなくて済むようになった。

最後に帯にはいくつかのポーチが縫い付けられており、そこには入試の時同様竹筒の水筒が数本と、医療器具などが入っている。

ちなみに、これらは全てプロヒーローである巴からの助言も受けて決まったものである。

流石は本職の人間だと、嵐は助言をくれた彼女に感謝する。

そして、要望通りの出来に満足げにしている嵐に紺や水色を基調としたシンプルで性能を重視したデザインの戦闘服に着替えた障子が話しかけた。

 

「……凄いな。八雲の戦闘服は。まるで神官を思わせる格好だ。入試の時も思ったんだが、八雲には和装がしっくり似合うな」

 

障子に戦闘服だけでなく格好が似合っていることも言われ嵐は嬉しそうに微笑んだ。

 

「ありがとな。障子も似合ってるぞ。マスクも相まって忍者みてぇだな」

「……忍者か………初めて言われたな」

「まぁ戦闘服の見た目だし、ガタイも大きいからな」

「ガタイなら、お前もだがな」

 

体格が大きいもの同士、他愛もない会話をしながら、通路を歩き出口を出てグラウンド・βの入り口に向かう。そして待っていると続々とクラスメイト達が集まってきた。

皆が己の個性を活かせる最適な格好をしており嵐のようにサポートアイテムを身につけているもの達もいる。

その中には耳郎もいて、二人の姿を見つけると早速近づいて来た。

 

「二人とも早いね。……てか、八雲の戦闘服、超ロックじゃん」

「耳郎も似合ってるな。それに、そのブーツは……もしかして、スピーカーか?」

 

嵐は彼女のブーツを見ながらそう尋ねる。ブーツ以外は動きやすい格好をしているが、ブーツだけが普通のものよりも分厚くスピーカーのようなものがついていたからこそ、それが気になった。その気づきに耳郎はそうと頷く。

 

「そ、これで爆音を飛ばして遠距離にも対応できるようにしたの」

「……なるほど。よく考えられてるな」

 

障子も耳郎の戦闘服の性能に感心の声を上げる。確かに耳郎の戦闘服は己の個性の特性をよく考えられて作られていたのだ。

そして、クラスメイトも着々と集まり各々の戦闘服のここがいいだの、もっとこうして欲しかったなどの話をしていく中、嵐に声をかける者が二人。

 

「八雲の格好ザ・和だねー」

「ねー、神主さんみたいで似合ってるねー」

「おー、ありがとな。芦戸、葉がく…っっ⁉︎」

 

二人の賞賛の声に振り向きながら答えた嵐は葉隠の格好を見た瞬間、絶句して固まる。

 

「ん?どしたの、八雲くん。おーい」

 

目の前で硬直した状態の嵐の目の前で、空中に浮かぶ手袋が嵐の眼前で振られる。

声からして目の前の浮かぶ手袋と一人でに動くブーツの持ち主が葉隠であることがわかった嵐は嫌な予感がしながらも恐る恐ると尋ねる。

 

「………なぁ、葉隠。一応聞くが、それ、光学迷彩を施した戦闘服、なんだよな?」

「へ?」

 

彼女は手袋やブーツ以外の部分が全て透明なのだ。透明人間だからこそのものなんだろうが、嵐は自身と同じく繊維に頭髪を混ぜて光学迷彩を施しているだろうと考え尋ねたのだ。

しかし、葉隠は呆けた声をあげると次の瞬間には、とんでもない爆弾発言をかます。

 

「ううん、違うよ!私の戦闘服はこのブーツと手袋だけなの‼︎他は何も着てないよ‼︎‼︎」

(((((な、なん…だと…っ⁉︎⁉︎)))))

 

天真爛漫な声に反してとんでもない爆弾発言をかました葉隠に男子の殆どが漏れなく反応した。

思春期男子達には今の魅力的なワードに抗えるはずもなく、首をへし折る勢いで振り向いた彼等は葉隠に釘付けになっていた。とある葡萄に至っては目が血走っており、今にも飛び掛かろうとしているヤバい状態になっている。

 

「………はぁ〜〜〜〜〜〜」

 

嵐は嫌な予感が当たったことと、花の女子高生が個性の特性とはいえ全裸で外にいることに、目を手で押さえながら、盛大な深いため息をついてしまう。

 

「………うわ、八雲君のため息ながっ」

「…‥まあ、気持ちはわかるよ。ウチも同じこと思ったし」

「ケロ。仕方ないわね」

 

八雲の様子に意外そうにする麗日と、納得する耳郎と蛙吹。彼女らが呟く傍らで嵐は徐に上着を脱ぐと葉隠の頭の上からスポッと被せながら、困惑気味に呟く。

 

「とにかく、女の子が肌を易々と晒すな。倫理的にアウトだから。とりあえず、これでも羽織ってろ」

「へ?でも、これ八雲君の戦闘服でしょ?着なくていいの?」

「必要になったら返してもらうから、その時までは着てな。それと、サポート会社に戦闘服作り直してもらえ。

俺の戦闘服もそうだが、毛髪とかを繊維に混ぜておけば個性発動の際に戦闘服は同化するように出来ている。そのおかげで、変身してもいちいち服が破けない仕様にしてもらってるんだ。

葉隠は髪の毛も透明みたいだから、それを繊維に混ぜれば、服にも透明化を適用できるはずだ」

 

こんなふうにな、と嵐は右腕を変化させて戻して元通りになった姿を実演してみせて、戦闘服の改良を彼女に提案する。

すると、葉隠は名案と言わんばかりに嵐の手を握った。

 

「そんなこと思いもつかなかったよ‼︎さすが八雲君頼りになるね‼︎ありがとう‼︎うん、帰ったら早速考えてみるよ‼︎」

「おう、どういたしまして。それと、八百万も気をつけとけよ」

「え?どういうことですか?どこか、私の戦闘服におかしな点でも…?」

 

突然話題を振られた八百万は自分の戦闘服を見ながら、そう首を傾げ不思議そうに尋ね返した。

彼女の戦闘服とぶっちゃけアウトだったのだ。

赤のレオタード生地に、腰回りに厚いベルトを巻いているのだが、胸元から臍にかけて大きく開けており、彼女の同年代女子よりも豊かに発達したプロポーションも合わさると男子高校生にとっては毒でしかないのだ。

それでも、彼女は露出が高い格好に羞恥心がなく不思議そうに首を傾げる彼女に、嵐はなんとも言えないような表情を浮かべる。

 

「………まぁ、葉隠同様個性の特性上、そういう仕様になっているってのは、納得いくんだが……それでも、八百万の格好も、少しな」

「それは、どういう意味で?」

「………すまんが、それ以上は俺の口からは言えねぇ。強いて言えることと言えば、思春期男子を甘くみるなってことだ。葉隠も含めてな」

「え“っ」

「?」

 

葉隠は嵐の言葉の意味を正確に理解して、ビクッと体を硬直させていたが、八百万はそれでもわからないのか首を傾げてしまっている。

嵐はその様子に苦笑を浮かべながら言う。

 

「……とにかく、変なことされたら言えよ。それに、女の子なんだから肌は当然として、身体は大事にしとけ」

「うん、ありがとうね‼︎」

「え、ええ、ありがとうございます?」

 

嵐の助言は葉隠は素直にそう感謝するが、未だに疑問が残る八百万は疑問符をつけたお礼をする。しかし、八百万を除く他の女子四人は嵐の言葉に大いに頷いており、彼の評価を密かに数段階引き上げていた。

男子の輪に戻った嵐は、無駄に爽やかだが一切笑っていない笑みを浮かべながら、拳を鳴らして、若干冷や汗をかいている男子達を見下ろすと釘を刺す。

 

「さぁて、さっきの葉隠の言葉に反応した奴ら……俺が言いてぇことは分かってるな?特にそこの下種葡萄」

『う、ウスッ‼︎‼︎分かってます‼︎』

「下種葡萄って俺のことぉ⁉︎」

 

男子達は嵐の凄みに背後に般若‥‥ではなく、どう言うわけか、龍のような幻影を見てしまい、不良の舎弟のように思わず姿勢を正して返事をした程だ。

ちなみに、この後男子達の間では嵐の前では不埒な想像はしないでおこうと言う誓いがなされていたりする。

そして、罵倒混じりの名指しをされた峰田は悲鳴じみた声を上げた。

 

「たりめぇだ。テメェ、さっき麗日の格好見てクソみてぇな発言してただろうが。バッチリ聞こえてたからな」

「嘘だろぉ⁉︎地獄耳にも程があるだろっ⁉︎」

「とにかくそこに正座」

「あ、はい」

 

嵐の凄みに峰田が抗えるはずもなく、あっさりと峰田は屈した。

 

全員が揃った頃を見計らってグラウンドβに訪れたオールマイトは仁王立ちする嵐と彼に説教をされている正座している峰田という、謎の光景が広がっていた。左右からは、明らかにオールマイトを模したであろう緑のコスチュームを身を纏った緑谷と、白いフルアーマーを着込んだ飯田が必死に宥めようとオドオドしている光景だった。

 

「えーと、これはどう言う状況だい?」

 

新米ゆえにどうすればいいか分からないオールマイトは、このちょっとカオスな状況にそんな困惑の声を上げるしかなかった。

 

 

▼△▼△▼△

 

 

「さて、ちょっと何かあったみたいだけど……始めようか有精卵共‼︎戦闘訓練のお時間だ‼︎‼︎」

 

開始前から一悶着あったが、どうにか説明できるところまで持って行ったオールマイトはようやく授業を始める。

 

「うーん、いいじゃないか皆。カッコいいぜ‼︎」

 

そして、白い歯を見せて生徒達の戦闘服姿に素直な感想を言ったオールマイトに、飯田がさっそくビシッと挙手をして尋ねる。

 

「先生‼︎ここは入試の演習場ですが、また市街地演習を行うのでしょうか?」

「いいや‼︎もう二歩先に踏み込む‼︎…‥今日やるのは、屋内での対人戦闘訓練さ‼︎」

 

飯田に指をピースして二歩ということを示しながら答えると、そのまま説明を続ける。

 

曰く、敵退治は主に屋外で見られるが、統計で言えば実は屋内の方が凶悪敵出現率は高い。

監禁・軟禁・裏商売・エトセトラ……このヒーロー飽和社会において、真に賢しい敵は屋内に潜むらしい。

 

「そこで!君らにはこれから『敵組』と『ヒーロー組』に分かれての、2対2の屋内戦を行なってもらう‼︎」

「基礎訓練もなしに?」

「その基礎を知る為の実践さ‼︎ただし、今度はぶっ壊せばOKなロボじゃないのがミソだぜ‼︎」

 

蛙吹の質問にそう答えたオールマイトに今度は、クラスメイト達が一斉に質問する。

 

「勝敗のシステムはどうなりますか?」

「ぶっ飛ばしてもいいんすか」

「また相澤先生みたいな除籍とかあるんですか……?」

「分かれるとはどのような分かれ方をすればよろしいですか?」

「このマントやばくない?」

 

3名がまともで、2名がまともじゃない質問をしていたが、オールマイトは全てをいっぺんに聞いて全てに返事するような聖徳太子じみた行動はできず、懐からカンペを取り出してガッツリ見ながら説明を始めた。

その一連の動きを見ていた嵐は、この人凄いけど教師には向いてねぇな、と密かに思っていたりする。

そう思いつつも、嵐はオールマイトの説明に耳を傾けた。

 

「いいかい⁉︎状況設定は敵がアジトに「核兵器」を隠していて、ヒーローはそれを処理しようとしている‼︎

ヒーローは制限時間内に敵を捕まえるか『核兵器』を回収すること。

敵は制限時間まで『核兵器』を守るかヒーローを捕まえることだ‼︎‼︎」

 

設定がアメリカンだが、つまりはヒーローは敵を捕縛か核に接触すること、敵はヒーローの捕縛か核を守り切ること、と言うシンプルな内容だった。

 

「コンビ及び対戦相手はくじだ‼︎ちなみに、1チームだけ3人になるけど、そのチームは他よりも採点厳しめでいくからよろしく‼︎」

「まさか適当なのですか⁉︎」

 

訓練相手をくじで決めることに、真面目すぎる飯田がそう反論するも、緑谷がすかさずフォローに入った。

 

「プロは他事務所のヒーローと急造のチームアップすることが多いし、そう言うことを予想してのことなんじゃないかな……?」

「そうか…!先を見据えた計らい…失礼致しました‼︎」

「いいよ‼︎早くやろう‼︎」

(飯田は真面目すぎんだなぁ。もう少し柔軟になってもいいと思うんだがな……)

 

飯田の様子に彼は真面目すぎるがゆえに、入試の時は柔軟な対応ができていなかったのだろうと嵐は判断した。

そうしてオールマイト自らが引いたくじの結果は、

 

Aチーム:緑谷・麗日

Bチーム:轟・障子・尾白

Cチーム:八百万・峰田

Dチーム:爆豪・飯田

Eチーム:芦戸・青山

Fチーム:砂藤・口田

Gチーム:耳郎・上鳴

Hチーム:蛙吹・常闇

Iチーム:八雲・葉隠

Jチーム:切島・瀬呂

 

以上のチーム分けになった。

 

「葉隠か、よろしくな」

「うん‼︎八雲くんよろしくね‼︎」

 

嵐のペアは葉隠になった。

対人戦闘は巴との訓練で散々こなしてきたが、こういう誰かと組んで共闘した経験はない嵐は、チーム戦に新鮮な感覚を覚えていた。

そして、全員がチームごとに分かれた事を確認したオールマイトは、『VILLAN』と『HERO』と書かれた二つの黒白の箱に両手を突っ込んで、アルファベットが書かれたボールを一つずつ取り出した。

 

「続いて最初の対戦相手はコイツらだ‼︎Aチームがヒーロー‼︎Dチームが敵だ‼︎」

 

緑谷と爆豪のチームが初戦から戦うことに嵐は険しい面持ちになる。

個性把握テストの時点で気づいていたが、緑谷と爆豪は昔からの仲であり、二人の関係はかなり悪いのだろう。と言うよりは、爆豪が一方的に嫌っているように見える。

 

(爆豪の個性は見る限り、掌からの爆破。まぁ、周りからチヤホヤされて生きてきたタイプなんだろうな。プライドが肥大化しすぎて暴力で解決しようとする精神年齢が幼ぇクソガキ。特に緑谷が相手だと何しでかすか分からねぇな)

 

個性把握テストのソフトボール投げでは個性を使った自分の記録を僅差で超えた時は緑谷に襲い掛かろうとしていたぐらいだ。この戦闘訓練なら、目的すら無視して緑谷を潰すためだけに暴れかねない。

感情のままに暴れており、心の制御がまるでできていないのだ。

しかし、対する緑谷にも嵐は懸念事項があった。

 

(緑谷は個性の扱いが不十分。そんなハンデを抱えた状態で爆豪達と戦うわけなんだが………あいつもあいつで爆豪には何かしらの思いがあるから、自己犠牲覚悟で個性を使いかねない。自分の体ぶっ壊してでも勝ちに行くんだろうな)

 

緑谷は自己犠牲の精神が強いと、嵐は入学2日目にして彼の本質を見抜いており、このままなら間違いなく自分の体をぶっ壊すと予想できてしまったのだ。

 

(初っ端から、一波乱ありそうだな)

 

この組み合わせに危機感を感じる嵐は試合の一部始終を見逃さないように時を引き締めながら、自分を呼ぶ葉隠についていき、他のクラスメイト達と共にモニタールームに向かった。

 

 




嵐の戦闘服はダブルクロスのアマツ防具の荒天亜流をベースにしています。
頭装備はなしで、脚は草履などを履いておらず素足です。ゲームでの二の腕部分にある鎖帷子を思わせる灰色の部分は皮膚が見えてる感じでイメージしてます。

サポートアイテムですが、名前でお察しの通りアマツの双剣と太刀をモデルにしています。
双剣の形は元のゲームと同じで、扇面に紅葉の模様があり、骨が緑がところどころ混じっている感じです。
太刀は少しイメージを変えており、見た目はタマミツネの太刀に近いシンプルな日本刀の形状です。鞘は白と金色でそこに翡翠の風車の模様があります。鍔は金色で、柄糸は白く、金の菱形模様が並んでいます。
ほぼほぼ嵐の肉体素材を使っています。

こちらでの設定ですが、嵐の角や飛膜、鉤爪は再生可能だということにしているため、幾ら千切っても折っても、再生はします。なので、いくらでも嵐は自分の素材を提供できるというわけです。
古龍としての並外れた生命力ならば、肉体は当然として角も再生できるんじゃないかと個人的に思っています。

そして、今回はもう1話も書き上がりましたので、今日か明日にでも続きを投稿しますので、お楽しみにしててください。









嵐のイメージCV誰がいいと思いますか?

  • 小野大輔
  • 諏訪部順一
  • 細谷佳正
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