この中二病少女に祝福を!   作:猿野ただすみ

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4期決定! なので、とりあえずプロローグだけでも投稿します。……本当は先週のうちに投稿したかったけど無理だった。


第4章 アルカンレティアの大事にて
プロローグ


雪解けの季節、春。とは言え雪解けとは名ばかりで、さすがにまだ雪は残り、まだまだ寒い日は続いていた。

 

「いやー! 嫌よ! だって、外はまだ寒いんだもの! 三人はバカなの? 三人とも、外で遊びたがる子供と同じレベルなの?」

 

和真さんパーティーの私達いつものグループは、年明け後からクエストを受ける量を減らしている。冬に受けられるクエストで私達の手に負えるものとなると、一撃熊の討伐が殆どになってしまうのだが、さすがに討伐し過ぎると生態系に影響が出かねない。熊撃ちを含み猟が出来るちょい悪の叔父も、頭数調整ということは常に言っていた。……学者が言うほど熊の頭数は少なくないんじゃないか、とか愚痴をこぼしていたが、これは熊撃ちしたくて言ってたのだろう。

 

「誰が子供ですか。今のアクアの方が子供みたいですよ」

「さすがに今のアクアさんは自堕落だと思います」

 

話が逸れたが、そういった理由で私は、朝の鍛練と魔法の研究、後は定期的な実験もしくはテイラー先生との稽古があるくらいで、結構暇を持て余す時間が増えてしまった。ロゼやゆんゆんも同じみたいだ。かといって、外出自体が前述のとおりなので、女子会やパジャマパーティーしたところで話す会話も限られてくる。

 

「街の外ではモンスターが活性化し始めて、様々な被害がもたらされているらしい。いい加減冒険者としての活動を再開するべきだ。さもないと…」

 

だから、今のこの状況は仕方のないことだろう。

 

「「「あんな風になるぞ(なりますよ)?」」」

 

めぐみん、ゆんゆん、ダクネスさんの三人が、こちらを見て言った。

 

「さすがに、私だってああはなりたくないけど。でも、それなら私を説得する前に、あっちのダメ人間ズを何とかしてよ」

 

ダメ人間ズとは酷いですね。

 

「おい、お前ら。温厚な俺でも、怒るときは怒るぞ」

 

和真さんが温厚かどうかは、この際は置いておくとして。

 

「和真さんがダメ人間なのは認めますが」

「おいこら」

「私とロゼは、やる事はやってますよ」

「うん。和真さんはダメ人間だけど、私とめぐみは、鍛練と家事くらいは済ませてるからね」

「……」

 

ロゼにも言われた和真さんは黙ってしまった。

 

「……いえ。どう見ても、あなた達の格好はダメ人間ですよ?」

「カズマさんが作ったその暖房器具…こたつは確かに優れてると思うけど」

「カズマはコタツムリしてるし、メグミとナオミはモコモコの袢纏(はんてん)着て、着ぐるみみたいだものねー。オマケにこたつの上には、ざるに乗せたミカンまで置いてあるし」

 

……く。アクア様が真っ当な意見を。だが、ここで退くわけにはいかぬ。ジッちゃんの名にかけて!

 

「……めぐみがまた変なこと考えてるみたいだけど、今回は見逃すわ」

 

利害が一致したと見たか、ロゼからのツッコミは無い。

 

「何を言ってるのですか、アクア様。確かに和真さんは酷すぎですが」

「おま、今日は毒舌が過ぎないか!?」

 

和真さんの意見は当然無視。

 

「私とロゼの姿は、我らが祖国日本での伝統的な姿です。それを馬鹿にするということは、我が祖国をも馬鹿にするのと等しい行為。その報いを甘んじて受ける覚悟が、あなた方にはおありですか?」

 

そう言って私、そしてロゼがガンを飛ばすと、アクア様とゆんゆんがたじろいた。だが、めぐみんとダクネスさんは動じる様子もない。というか、ダクネスさんにはご褒美だったかも知れない。

 

「……ふっ。その様な言い逃れに、惑わされる私ではありませんよ。それがニホンでの伝統的な姿というのは本当のことなのでしょう。ですが、それとクエストを受けないことには何の因果関係もありません。その姿はあくまで、室内でのんびりまったりするための衣装であるはず。ならば、それを言い訳にこたつから出ないのは、やはりダメ人間であることの証明にすぎません!」

「「ぐっ」」

 

私とロゼは、短く声を漏らす。まさか私の理論武装が、めぐみんに論破されるとは。

 

「……やれやれ」

「仕方がないわね」

 

私達は渋々と、こたつから離れた。

 

「さあ、後はカズマだけですよ。あなたの国の暖房器具が優秀なのは理解しました。ですがもう、雪解けの季節です。そろそろ活動を再開しましょう?」

「そうだぞ、カズマ。もういいだろう。さあ一緒に…」

 

そう言ってダクネスさんが布団をめくろうとした、その時。

 

「『フリーズ』」

「わきゃああ!?」

 

手を伸ばして、ダクネスさんのうなじに氷結魔法を当てる和真さん。

 

「この男、反撃してきましたよ! カズマ、いい加減にしてください! 借金がなくなったとはいえ、だらけ過ぎですよ!」

 

と、今度はめぐみんが引っ張り出そうとするが、和真さんはその手を取り。

 

「『ドレインタッチ』」

「あああああああっ!」

 

相変わらず、こういった戦い方にはめっぽう強い。

 

「メグミとナオミも見ていないで、加勢してくれ!」

 

ダクネスさんは私達に向けてそんなことを言うが。

 

「いえ。私達は先程までダメ人間ズだったので、和真さんをとやかく言う資格がありません」

 

私はキッパリと答え、ロゼも隣でうんうんと頷いている。

 

「く!? まさか根に持っているのか!?」

「いえいえ、掌返しでそちらに付くなんて恥ずかしい事、出来ないってだけですよ。まあ、中立といったところですね」

 

再びの私の返答に、やはりロゼはうんうんと頷いた。

因みに、確かに根に持ってはいるが、手を貸さない理由は私が今言ったとおりである。私もロゼも、この程度のわだかまりでどうこう言う気は、全く…は言い過ぎだが、ともかく言う気はないのだ。

……まあ、そもそも私達が屁理屈こねて動こうとしなかったのは事実なのだし、どの面下げて和真さんを説得しろというのか。

 

「フハハハ! 当てが外れたようだな。この俺を甘く見るなよ。これでも、数多の大物と渡り合ったカズマさんだぞ?」

 

いやそれは、アンナとちょむすけを除いたここに居る全員に当て嵌まるのでは。

 

「……カズマさんが小技を駆使して、どんどん厄介になっていってるんですけど。まあ私としては、カズマがこのまま引きこもっていてくれると、ここの取り合いにならないからありがたいのだけれど」

 

暖炉前のソファを占拠したまま、アクア様は言う。先程、私達のことをダメ人間ズと言っていたが、アクア様も充分ダメ人間ズのひとりのような気が…ああ、アクア様は駄女神でした。

 

「……おい。マズいことになった」

 

おや? どうしたというのだろう。

 

「緊急事態だ。トイレに行きたくなった」

 

……ああ。

 

「虫がいいのはわかっているが、少し休戦しよう。悪いんだが、こたつの下のマットを持って、トイレの前まで運んでくれないか?」

 

この男、どこまでずぼらなのか。いや、熱源となる鉱石は魔力を注ぐことで暖かくなるのは知っているし、トイレのために抜け出してこたつが冷えるのが嫌なのも、わからなくはない。わからなくはないが、賛同は出来ない。私は、こたつを出るときは電源を切る派なのだ。

 

「……その気持ちは、すごくわかる」

「……ロゼは、普段はストイックなのに、こたつに対してはかなり弱かったですからね」

 

今でこそ自制できているが、数年前まではコタツムリで引き籠もるのはしょっちゅうだった。別に私がロゼの家に暮らしていたとかではなく、私の家や祖父の家に来たロゼが、こたつから出たがらずなかなか帰ろうとしなかったのだ。なのでいつからか、ロゼが来るときはこたつのスイッチは切るのが通例になってたものだ。

私とロゼがそんな短い会話を交わしてる中、めぐみんとダクネスさんは左右に分かれてこたつの下のマットを掴む。だがその表情から、単純に和真さんの意見を受け入れたわけではないことを読み取り、私は素早く、みかんを籠ごと取り除いた。

 

「この男は、このまま外へ捨ててしまいましょう」

「そうしよう。メグミとナオミ…は中立だったな。アクア、玄関の扉を開けるだけでいい。手伝ってくれないか」

 

なるほど、粗大ゴミ認定か。

 

「や、やめろ! お前らには人の心がないのか! それ以上やるならスティールするぞ!」

 

うわ、最低ですね。

 

「既に一緒にお風呂に入った仲ではありませんか。今更スティールごときで、何を恥ずかしがることがあるのです」

 

な、めぐみん!? よ、よくそんなことを平然と言えますね!?

 

「めぐみ、顔が赤いよ?」

 

ロゼは、ニヤつきながらそんなこと言わないでください!

 

「わ、私も裸を見られ、背中を流したくらいだ。い、今更スティールくらい…、スティールくら、い…」

 

打って変わって、恥ずかしそうに言うダクネスさん。普通なら、こちらでも私は恥ずかしくなってしょうがないハズなのだが、ダクネスさんが必要以上に恥ずかしがっているので、ある意味冷静になっていた。

 

「は、話をしよう! そうだ! もう少し暖かくなったら、1日2爆裂しよう! アクアやめぐみから魔力をもらって日に2回、爆裂魔法を撃たせてやる!」

「嫌よ! 神聖で大切な私の魔力を、何でそんなバカなことのために分け与えなきゃなんないのよ!」

「同感です。緊急時ならいざ知らず、そんな下らない理由で魔力を分け与える気など、毛頭ありませんよ」

 

和真さんの取引内容を聞き、アクア様と私は当然猛反発する。

 

「あいつらはあんなこと言ってるが、ちゃんと責任を持って魔力を奪ってやるから」

 

ほう? 奇策ならまだしも真っ向勝負なら、多少のレベル差があろうとも負ける気はしないのですが?

 

「尚美も俺の手助けをしてくれたら、専用のこたつを作ってやる」

「専用のこたつ!?」

 

な! まさかロゼを仲間に引き入れる気か!?

 

「うう、1日2爆裂…、2爆裂…」

「うう、スティール…。いやしかし、1発で下着を剥がれると決まったわけでは…。ハッ!? 焦らしプレイ、焦らしプレイなのか!?」

「うう、専用こたつ…。自室でまったりとコタツムリ出来る…」

 

な、何ということだ。みんな和真さんの甘言に、完全に心揺さぶられているではないか。

徐々に外堀を埋めていこうとする和真さんによって、少しずつ不利になってゆく私とアクア様。しかし、その救い手は意外なところから現れる。

 

「サトウカズマさん、サトウカズマさんはいらっしゃいますか!」

 

嫌疑が晴れて以降、和真さんへの当たりが随分と軟らかくなった、検察官のセナさんであった。




なお、めぐみのちょい悪の叔父は、先見の明があった模様(現在の熊騒動)。
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