白鷺と鴉   作:オクシモロン

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地の文多めです。そして短めです。
どうしても綾華様を登場させたくて突っ込みました。

誤字脱字等ありましたらご指摘いただけると嬉しいです


幕間 「手紙」

「お嬢、来ましたよ」

 

良く晴れた日の昼下がり。屋敷の庭から稲妻城を眺めていると、家司であるトーマが私に声をかける。

 

鎧と外国の衣服が混じり合ったような服装をしていて、彼が持つ炎元素の神の目を表したような赤が目立つ。そして、稲妻では珍しい金髪を持っている。何を隠そう、彼は稲妻出身ではなくモンド出身なのだ。

 

「ありがとうございます、トーマ」

 

そんな彼が右腕につけている籠手には、ここ数年で特に見慣れた少し体格の大きい鴉がとまっている。

 

その鴉の足に括り付けられている手紙を片手で器用に外し、渡してくれた。

 

「そら、いい子だ。ちょうど採れたてのスミレウリがあるんだ、一緒に取りに行こうか」

 

なぜだか人の言葉を理解できる蒼という鴉は、トーマの肩に飛び移るとそのまま大人しくついていった。その光景を微笑ましく眺めたあと、手元の手紙に目を落とす。

 

 

” 綾華へ

 

これだけやり取りしていると、段々と書くことが無くなっていくものだとたったいま痛感してる

 

日常のことを書いてもありきたりだし、かといって奇怪な出来事が日常茶飯事で起きても困るんだけどさ

 

そういえば、そっちは目狩り令が撤回されたって聞いたよ。みんな色々奔走したみたいで、とりあえずお疲れ様

 

私の方は相も変わらず、璃月とモンドで仕事の毎日。平凡なのがいいのか悪いのか...って感じ

 

あと、今お世話になってるところに「写真機」っていうのがあるから、今度写真撮って一緒に送るね

 

それじゃあ、また会えるときまでどうか元気で  千鶴より ”

 

 

読み終わり、一息つく。

 

わざわざ手紙で送るような内容ではないけれど、それが書けるということは平穏無事に過ごせているということの証。それを思えばつい笑みがこぼれてしまうというもの。

 

ただ、最後の一文を見て少し溜息も出てしまう。

 

”また会えるときまで”

 

それはいつになるのだろう、その時は訪れるのだろうか。稲妻は鎖国を取りやめ、開国へ向けて動こうとしている。もうあの時の稲妻ではないのだ。あなたを追い詰めた稲妻は、安心して帰ってこられる故郷へとなっている。

 

父親の事件のことも全て調べはついているし、今の稲妻にはあなたをどうこう言う人はいない。そのことを一刻も早く伝えたいところではあるけれど、お兄様はそれを許してはくれない。

 

曰く、『真に千鶴と共に歩んでいくのなら、千鶴自身の決意でもって稲妻に帰ってくるべきだ』と。私と同じようにお兄様も千鶴とは旧知の仲で、事の顛末も当然知っている。

 

ここでこちらから手を差し伸べてしまえば、千鶴の心の成長には繋がらないということなのだろう。千鶴が心配なのはお兄様も同じだけれど、だからこそ今はじっと待つべきなのだ。

 

千鶴が稲妻に帰ってきたとき、心から迎えられるように。

 

...頭ではわかっていても、やはり会いたい気持ちは日を重ねるごとに膨らんでいく。手紙でのやり取りだけでは、そろそろ満足できなくなってきているし。

 

だから、早く帰ってきて。元気な姿を、あの弾けるような眩しい笑顔を、もう一度私に見せて、千鶴...。

 

「まだここにいたんですか?お嬢。なにか考え事でも?」

 

蒼のお世話を一旦終えたであろうトーマが帰ってくる。彼の口ぶりから察するに、自分で思っている以上の時間をここで過ごしていたらしい。

 

「...いえ、手紙の返事をどうしようかと考えていたところです。最近の稲妻は色々ありましたから、書くことがたくさんありそう。ふふっ、今回はどのくらいの量になってしまうのかしら」

 

 

 

屋敷の中へと戻っていく綾華を見送りながら、トーマは思う。考え事の内容は、十中八九例の少女のことであろうと。

 

会ったことはないが、綾華の口から頻繁に出てくる”千鶴”という名前。数年前に稲妻から去っているということや、その他に多少の事情も聞いている。

 

蒼という鴉が運んでくる手紙を中継する役を担っているが、手紙の内容までは知り得ていない。

 

千鶴という少女が稲妻に帰ってきたときは、是非とも話してみたいものだとトーマは少しばかり口角を上げる。

 

「お嬢のマル秘エピソードとか、あわよくば聞いてみたいね」

 

呟きながら自らの仕事に戻る。

 

 

こうして今日も、平和な日常が過ぎていく。

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