Fate/Viridian of Vampire 作:一般フェアリー
プロローグ《始まりの漂流》
金色に輝く陽の朝日。それによって黄昏色に澄み渡る空。
その下に広がるは深い深い蒼の海、そしてその中に一つだけ浮かぶ鮮やかな緑と街に彩られた一個の
ここはブリテン島、妖精という純粋無垢な生き物と人間が共存している神秘に溢れた秘境である。
しかしこのブリテン島―――否、それを含めた世界は我々の知るブリテンとは全く事情が異なる。
少し説明するとこの世界は我々の歩んできた本来あるべき歴史―――――通称《汎人類史》と違う流れを辿った末に、人理から排除されるべき不要な可能性として剪定された世界線―――――その名も《
そしてこの異聞帯のブリテンを治めているのは彼のアーサー王ではなく、悪の魔女と名高いあのモルガンが自身を絶対の女王とした妖精國ブリテンを築き2000年以上に渡って今なお支配し続けている。加えて島の神秘自体も衰退することなく殆ど当時と変わらぬ濃度を維持し続けているので、神秘の塊たる妖精とそうでない人間との大きな格差が生じている。
そんな歴史も秩序も常識も法則も違うブリテンだが……この日、
実はこのブリテンには我々の世界のブリテンに無い特徴がもう一つある。
それは
そして、此度流れ着いたその“漂流物”は奇しくもこの土地と縁深い存在だった。
打ち上げられて十数分ほど経った辺りでソレは目を覚まし、ゆっくりと上体を持ち上げる。それから目の前の光景の異常さに気が付き、周囲を見回して状況を確認するもイマイチ理解が及ばないと言った感じで呆気に取られていた。
「…いや、なんなのこれ。私ついさっきまで森で気分転換に昼寝していたはずよね?一体全体何がどうしてこんな得体の知れない場所にいるの?ううん、それもそうだけどさっきから遠くに見えているアレは何?…光の、壁?……駄目、まるでわからないわ」
少し悩んだ末、ひとまずここは身体に異常が無いかの確認をするべきだと判断したソレは自身に目を向ける。
視界に写るは少しだけ不健康な色合いで、しかし艶のある色白の肌に愛らしいフリルの付いた自慢の鮮やかな緑のドレス。毎日欠かさず磨いていた、これまた緑を基調とした蹄の様なデザインの靴。
そして―――まるで血染めに塗れているが如く真っ赤な色彩を持つ巻き毛の長い髪。
「うーん、取り敢えず怪我とかは無い様ね。ドレスは砂で所々汚れちゃってるし、髪も少し荒れてしまっているけど…」
ここまでの詳細を述べた時点でソレが何なのか、我々の世界のブリテンのとある民話、そしてこのブリテンの物語を知っている者は察しただろう。
そう、“ソレ”が―――“彼女”が何者なのかを。
彼女は――その“妖精”は汎人類史においては『男を誘惑し血の一滴までも文字通り吸い尽くす吸血鬼』としてスコットランドの伝承にその存在を記され、方やこの世界の彼女は冷酷な冬の女王の愛娘として悪逆の限りを尽くし、その名を知らしめている『悲しみの子』。
「…さてこれからどうしようかしら。どうやらここは私が元いた所より神秘に満ち溢れているみたいだけど…」
これより紡がれるは
しかし結論を言ってしまうなら例えこのイレギュラーが入った所で所詮は一妖精、この世界が滅ぶことに変わり無し。
されとて、この妖精がもたらすものは決して小さきに非ず。
「取り敢えずここから動きましょうか。右も左もわからない以上、下手は起こしたくないけど…せめて何が危険で何が大丈夫なのかくらいは知っておきたいしね」
時は
今よりこの
「よーし、頑張れ私!……なんて言ったけど。うん、本当何でこんなことになったの??」
名をバーヴァン・シー。異聞帯のそれとは似て非なる“汎人類史”の吸血妖精である。
「…それにしても本当に濃いわね、この辺りに漂う神秘は。これ程の濃度は私の故郷でも滅多に無いし、もしかしたら私以外の妖精に会えるかも……」
妖精國ブリテン。その最終的な滅びは必定なれど、彼の妖精が関わることでそこに至るまでの過程にどう言った変化を展開してゆくのか。
もしかしたら本来の流れよりは大分幸せな結果になるかもしれないし、或いは更なる混沌と絶望をもたらす
いずれにしろ言えるのは彼女がこの
それでは傍観者の皆々様、どうか彼女の“