Fate/Viridian of Vampire 作:一般フェアリー
スピネルとガーネット
鐘撞き堂のオークション会場にメリュジーヌたちが密かに侵入する約10分前。
場の中心にて二つの赤き華―――妖精騎士トリスタン、妖精騎士ユーウェインは対峙していた。
「…貴方が、この世界のバーヴァン・シーですか」
「おい、当然の様に本名を口にすんじゃねぇよ。お母様からの
いきなり口悪く罵られる形で注意を受けたが、ユーウェインも妖精騎士である以上
「ん…申し訳ありません。動揺のあまりつい口走ってしまいました。何卒ご容赦頂けると幸いです」
「ハッ、ご丁寧に謝ってくんのは良いけどよ。私が容赦なんかしてこないのはここに至るまでの流れでテメェも既にわかってんだろ?」
それはそうだ。態々ムリアンと共謀してこちらを誘い出して強引にこの状況に持ち込んだのだから、戦闘は避けられるものではないだろう。
そう思うユーウェインの通り、彼女は既に臨戦態勢に入り殺気を滲ませていた。
トリスタンに取ってユーウェインは母の許しさえあれば今すぐにでも抹殺したいほどの目の上のたん瘤である。
何故なら自身と同じ容姿をしているだけでなく、就任してから僅か一年で小規模のモースの群れを単独で殲滅可能なまでになる成長性があり、このまま放っておくと新人の分際で自身を実力で超えてしまうかもしれないからだ。
何よりそうなってしまえば、その容姿もあって母に大いに気に入られてしまうだろう。
ならば自分はどうなるか?可愛がられるどころか気に掛けられることさえ無くなり、段々と見捨てられてしまうのではないか?
(―――ふざけんじゃねぇ。そんな可能性なんか断じて認めるか。だからこそ今ここでコイツを下し、私の方が強いって証明してその可能性をブッ潰してやる…!!)
母に愛想尽かされる
「………なるほど。そういう理由があってこんな企てを実行したんですね」
「は…?突然何言ってるんだお前……?」
一方、ユーウェインはそんなトリスタンの思考を視て何とも言えない気持ちになった。
確かに突然現れた何処の馬の骨とも知れない奴が、短期間でみるみる頭角を出してくれば不安を感じても仕方がないし、その点はまだ理解できる。
だがそこから膨張し母であるモルガンに見捨てられるかもなどとまで考えているのは、はっきり言って完全な被害妄想だ。
況してこちらの意見も聞かずに勝手に裏で準備を進めて勝手に戦いを仕掛けてくる辺り、彼女は余程の“臆病者”らしい。
……ただ、臆病者は臆病者でも『母を愛し、心酔しているが故に母に嫌われる可能性を極度に忌避する臆病者』の様だが。
「おい、突然何かに納得したかの様な物言いをしたと思ったら途端に黙りこくるとかワケわかんねぇ態度取んじゃねぇよ。テメェ自分の今の状況把握してんのか?」
「…ええ、わかっていますよ。上下関係の程を私にわからせるんですよね?ならばどうぞ、貴方のお好きにされて構いませんよ」
それならばと、ユーウェインは敢えてトリスタンを煽ってやることにした。
この世の何よりも大切に思える存在がいる―――それは自身とて同じこと。
しかし対話で穏便に済ませようと試みたところで彼女は聞く耳を持たず、或いは聞いたとしてもその上で無理やりにでも襲い掛かって来るだろう。
ならいっそトリスタンを煽動し、苛立ちを募らせることで冷静さを削ぎ落として優位に立とうという細やかな“悪巧み”を彼女は考えついた。
「あ?なに余裕ぶって他人事みたいに言ってんだよ、まさかとは思うけどテメェ私を相手に五体満足で済むと考えてんじゃねぇだろうな?」
「いえいえとんでもない、自分が今誰を前にしてるかくらいは理解していますとも。この國において随一の美しさと残酷さを併せ持つ、モルガン陛下の唯一の愛娘。それが貴方ですよね」
余裕を持った態度を崩さず、落ち着いた口調で淡々と話し、相手の苛立ちが程よく募っているの見計らい―――追撃を言いかます。
「フン、よくわかってんじゃねぇか。でもそれはそれとして、その余裕ぶった口調で話すのはちょっと気に入ら…」
「あ、でも―――母たるモルガン陛下を愛するあまり、少しでも嫌われる可能性を見つけたら必死になって空回りな行動ばかりしてしまう『不器用な臆病者』でもあるわよね!」
――――――ピシリ。
一瞬、本当にそう音を立てて響いたのではと錯覚するほど、瞬時にその場が静寂に包まれた。
「…………今、何つった…?」
それまで不満気にしかめていたトリスタンであったが、今は能面の如き表情で、奈落から響いてるんじゃないかと思うほど低い声でそう聞いた。
その様は最早妖精眼を使わずとも容易に察せた。
ああ―――目に見えてブチギレる寸前だな、と。
「…いや、だからね?『不器用な臆び」
瞬間、それを言い切る前に飛んできた赤黒い弾丸を寸でのところで剣で弾く。
「―――殺す。さっきまでは最悪でも四肢のどれか一本程度で許してやろうかなと考えてたけど気が変わった」
それを見た彼女は刺々しく禍々しい色合いの弓を召喚すると、そこに再度魔力を装填し―――。
「お母様には悪いけど―――テメェはここで潰れた芋虫みてぇな
煮え滾る激情に任せて放たれた弾丸の雨を剣で弾き、いなしていく。
感情任せの攻撃故に一つ一つの威力は籠っているものの、肝心の狙いが若干ながら甘い。
(ただ流石妖精騎士とだけあって、何発かは正確にこちらの急所目掛けて襲ってくるわね。…これも殺し続けてきた賜物ってワケ?)
ユーウェイン自身も薄々ながら勘づいているが、この時トリスタンは急所を狙って撃っているつもりは全く無かった。
だが妖精騎士に就任してからのここ70年以上の間、彼女は多くの妖精を多くの殺り方で虐殺してきたことで自然と“殺しの技術”が上達していった。
そしてその結果、例え感情任せの攻撃だろうと無意識に相手の急所を突ける技能が当人も気づかぬ内に半端ながら出来る様になったのである。
「チッ、鬱陶しく抵抗しやがって。だったらコイツはどうだ!?」
早くも痺れを切らしたトリスタンは次の手段に出る。
妖弦の糸を奏でると、神秘で構成された切れ味抜群のワイヤーが細切れにせんと四方からユーウェインに襲い来る!
「っ!来なさい、貴方たち!!」
これにユーウェインは咄嗟に20羽程度のカラスを召喚し、神秘を纏わせた上で周囲を高速で飛び回させる形で対処。
カラスに被弾した妖弦の糸はその悉くが軌道をずらされる、ないしは切断されていく。
「ハハ、少し舐められたからって随分と必死ね!ていうか話は変わるけど、妖精騎士のシステムを考えたら私を殺すのは貴方に取っても大変不味い状況になりますよねぇー?」
「~~~~~っっ!!るっせぇんだよ新参のジャリガキがぁっ!!!」
ズケズケと正論を言うユーウェインに腸が殺意で煮え繰り返そうになるのをギリギリのところで抑えつつ、今度は目の前まで近づき、そのまま接近戦に持ち込もうと試みる。
「オラッ、邪魔だクソ鳥どもっ!!!」
眼前を阻むカラスたちを爪と糸で切り刻んでいく。
その勢いのままユーウェインの喉元を剣で防がれるより早く切り裂かんと爪を振るうが、寸でのところで彼女が伸ばした
「っ…流石は先輩の妖精騎士と言ったところかしら。これで周りからの評価は“実力だけで言えば妖精騎士最弱”って言うんだから末恐ろしいものだわ」
「~~~っ…口を開けば煽ることばっか言いやがって…!!」
しばし拮抗状態に陥るが、このままでは埒が明かないと判断した両者は互いを弾き飛ばす形で距離を取り―――直後、間髪入れずに紅き弾丸と黒き弾丸の撃ち合いを始める。
その応酬を観客席にて見ているホープとエインセルは、それぞれ焦燥と緊迫感に苛まれていた。
「ちょ…ちょっと!大丈夫ですかアレ!?トリスタンは知っての通り妖精殺しで有名ですし、もしユーウェインさんが負ける様なことがあったら……!!」
「ホープちゃん。気持ちはわかるけどどうか落ち着いて。確かにトリスタン卿はあの妖弦の権能もあって決して油断できない手合いです。しかしユーウェイン卿とてこの國の象徴たる妖精騎士の一角、そう易々と敗北などしませんよ」
現にエインセルの視点では若干ユーウェインの方が防戦気味に見受けられるが、その一方で向かってきた攻撃の全てを軌道を反らすなり相殺するなりして退けているのだ。
(それどころか―――よく見ると徐々に動きが慣れ始めてきている…?)
それはまだ誤差と言うべき程度の変化であるが、ユーウェインの表情が最初と比べて多少ながら余裕が感じられる様な雰囲気を出し、それに合わせてカラスたちを指揮する手の動きと剣捌きにもキレが生じてきている。
(まだ闘り始めて5分と経っていないのにこの対応の早さ。これもウッドワス公の下で修行したことで身に付いたであろう戦闘技能の成せる
彼女が妖精騎士に就任してからの間、ウッドワスの下で厳しいトレーニングを重ねていた事はエインセルも知っていた。
その中で実力だけでなく戦闘センス自体も鍛えられていったのだろうが、そもそも就任したその日の時点で向こうが超が付くほど手加減していたとはいえ、他ならぬモルガンの一撃を防ぎ切ってさえいるのだ。
それを考えると言い方はアレだがトリスタン
「…ホープちゃん、今の私たちはこうして傍観に徹する他ありません。ですが―――いえ、だからこそ彼女を、ユーウェイン卿を信じましょう。こう言う時こそ仲間を信じて祈る思いが肝心になってくるのです」
「…!」
エインセルの言葉にホープはハッとする。
確かに彼女の言う通り、ここはただ不安がるより仲間を信じて見守る方がずっと賢明だ。
「そう、ですね。今の私たちにはそれくらいしか出来ませんよね…」
「ええ。歯痒さを感じるでしょうが、今はそうしましょう」
頭では理解していても、それでもホープの不安と焦燥が晴れることはない。
当然と言えば当然だ。何しろ自身に取って大切な者が一歩間違えたら死ぬかもしれない状況に立たされているにも関わらず、助けに行くことも出来ずに事の成り行きを見守るしかないのだから。
そんな彼女の拭いきれない不安を少しでも和らげるべく、肩に手を置き『大丈夫です、彼女を信じましょう』とエインセルは優しく言い聞かせた。
そしてそんな彼女たちが見守る一方、ユーウェインとトリスタンの闘いも徐々にヒートアップしていた。
「チィッ!!」
舌打ちと共に周りのカラスを糸で一蹴しながら疾駆し、そのまま回し蹴りに繋げる。
ユーウェインはそれを右腕で防ぐともう片方の腕で剣を横凪ぎに振るい、それが弓自体を盾に防がれると剣を消失させ、爪を瞬時に伸ばしてトリスタンに刺突する!
「ガッ―――!?」
思わぬ二段攻撃の前に虚を突かれ、被弾した衝撃で大きく後退させられたトリスタンだが、無論この程度で慌てふためく彼女ではない。
追撃のカラスたちを退けつつ爪による刺し傷がそこまで深くないことを確認すると、すぐに意識をユーウェインに向けて次の行動に出る。
「っ…しゃしゃり出てんじゃねぇ!!」
再びユーウェインの方へと疾駆するトリスタン。
そのまま再度白兵戦に持ち込むかと思いきや、ある程度近づいたところで不意に足を振るう形で何かをバラ撒いた。
地べたに張りついたソレをよく見ると魔力で構成された血溜まりであった。
(―――っっ!!)
「そら、蜂の巣になりなッ!!」
それを確認したユーウェインはコレが何なのかを瞬時に察し魔力障壁を展開―――と同時に血溜まりから何本もの鋭利なトゲが彼女に襲い来る!
「痛っ―――ぎッ…!!?」
それは自身もこれまで散々やってきた攻撃の一つ。
咄嗟に障壁を張れたのは幸運だが、一部は障壁の範囲外よりユーウェインの体に突き刺さっていた。
「は―――あっはははははは!!どうだクソザコ!!痛い?苦しい?ええそうよね。でも私がテメェの煽りで味わった屈辱を返すにはまだまだそんなもんじゃ釣り合わねぇ!精々そこから更に虐めて苛め抜いて殺してやるよ!!」
散々に怒りによる罵詈雑言を吐き散らすとトリスタンはユーウェインの周囲を駆け回り、360度全方位に血溜まりを撒き散らした。
(ぐぎっ…クソ、思ったより深く刺さってないか……!?)
一方のユーウェインは刺さったトゲの所為で磔の様に固定されてしまっており、その場から動くことが出来なかった。
「―――さ、じゃあ宣言通り今から一本ずつ刺していって、テメェが涙と汗で顔面を汚しながら“殺して”と私に懇願するまで虐めていきまーす♡」
嗜虐的な笑みを浮かべるトリスタン。その残忍かつ狂喜的な表情は正しく『妖精殺し』のソレであった。
「ほぅら、まず一本目ぇ!」
「がっ…!?」
彼女の掛け声と同時に激痛が走る。そこからはほぼ一方的な
「フー…フー…ッ…」
「あはははは!最初の勢いがウソみたいだなぁオイ!テメェ今とっても無様な姿になってるぜー?」
自分が優位になったのを良いことに明らかに調子に乗り出しているトリスタンであるが、ユーウェインは彼女の言葉を否定できなかった。
何しろ最初に自分から煽っておきながら一瞬の油断を犯した結果、先ほどよりも余計に痛々しく磔らしい有り様になってしまっているのだ。
全身を走る激痛と失血により徐々に意識が朦朧とし始めたこともあって、かなり不味い状況になっているのは考えるまでもなかった。
「あ…あぁ……そん、な…」
ざわめく会場の中、信じていた友の無惨な姿に青ざめた顔で言葉を漏らすしかないホープ。
(…まだ、貴方はこんなところで終わりじゃない筈です。情報が本当なら例の“アレ”が使えるのでしょう…?)
一方のエインセルは多少焦りを覚えているものの絶望してはいなかった。
何故ならこの状況でも逆転できる可能性がある手札をユーウェインが持っている事を予め情報として知っていたからだ。
そして彼女の考えている通り―――ユーウェインにはまだ一つの勝ち筋が残されていた。
「ふ、フフ…ええ、返す言葉も無いわ。けど、まだ私は…倒れては、ないわよ?」
「はははは、流石この私を煽るだけあってそんなザマでもまだ軽口を叩けるんだな!自分が死の淵の手前に立たされてるって自覚が無ぇのかぁ?」
確かに彼女の言う通り、このままでは良い様に嬲り殺しにされて哀れな屍を晒すことになるだろう。
そう―――
(うーん…ちょっと、出し惜しみし過ぎたか。こうなる前に『発動』させておくべき、だったわ)
…実を言うとここまでの間、ユーウェインにはまだトリスタンに明かしていない『切り札』があった。
まずは瞼を閉じ、精神を落ち着かせ、それを発動させるに当たって必要な魔力を補充する。
「スゥ―――――……」
「……あ?何やってんだテメェ?」
突然の行動に訝しむトリスタンを他所に思いきり深呼吸をし、取り込んだ空気中の微細なマナを変換・増幅させ体内に行き届かせる。
それに伴い朦朧としていた意識が明瞭になり、段々と活力が沸き出ていく。
「……ふぅ。それじゃ、今度はこっちが反撃する番よ」
磔同然の状態にされているにも関わらず、妙に落ち着いた声でトリスタンへ宣言するユーウェイン。
閉じていた瞼をゆっくりと開くと―――果たしてその下の瞳は、深紅の色に耀いていた。
「―――!!?」
その様相を見た瞬間、理由はわからないが今すぐに勝負を着けないととても嫌な展開になると直感したトリスタン。
一瞬の間にあれこれ考えるより早く体を動かし、残りの血溜まり全てからトゲを射出するが―――。
「無駄よ」
全身を刺し貫かんとユーウェインに迫り来ていた血のトゲは、その悉くが彼女の張った魔力障壁によって当たった側から貫通すること叶わずに砕け散った。
既に刺さっていた分も障壁の範囲内と外部とで見事に分断されており、それによってユーウェインも拘束から解放され身動きが自由になった。
肉体に直接刺さっている部分も霧状に飛散し、そのままユーウェインの魔力として変換・補充され、その際に傷も少しずつ癒えていった。
「あーあ。折角ウッドワス殿から賜った特注のドレスが台無しになってしまったわ。血塗れに穴だらけで最悪じゃない」
見るも無惨な状態になってしまった黒のドレスに嘆きつつ、障壁を解いてトリスタンに視線と戦意を向ける。
「よくもお気に入りのドレスを私の
「―――は。は…ははは!歯ァ食い縛れだぁ?」
その気迫に少し気圧されるも、すぐに平静を取り繕いトリスタンは指に魔力をこれまで以上に集中させる。
「上等だジャリガキが!!すぐにその薄氷みてぇなバリアも何もかもテメェの命もろともグシャグシャにしてやる!!!」
そう言うなり赤く明滅する糸をユーウェインにけしかけるも、彼女はこれを先ほどより段違いの速度で余裕を見せながら回避する。
「なっ!?テメ…くっ!!」
それに一瞬の驚愕と動揺を覚えるも、ならばと糸に混じって魔力弾も乱射し接近されない様に対処する。
「――『
しかしそれも彼女が召喚した剣で軒並み斬られて薙ぎ払われた上に、密かに死角から放っておいた糸も即座に反応されて振り向き様に斬り伏せられた。
「―――クソっ、すばしっこく動くんじゃねぇよ新参者のザコがッ!!!」
「―――ハッ、申し訳ないけど動くなと言われて動かないほど
手には弓と剣。繰り出すは死の糸に赤黒い弾丸、剣擊とカラスに魔力障壁。
一方は一時期な力の恩恵を存分に活用し、もう一方は今まで以上に奮起になって勝利に手を伸ばさんとする。
この時、会場にいる者は
(クソが…!!こうなったらとっておきの大技を使ってやる!!)
自分が矢継ぎ早に繰り出す攻撃にこうも対応するユーウェインに痺れを切らしたトリスタンは、奥の手を使うことを選択した。
(『
『
(コイツを発動させんのに物理的な距離は関係ねぇ。そして私には―――トゲを通して回収したアイツの血液がある)
実は共鳴を発動させたユーウェインとの戦闘をする中で、どさくさ紛れに彼女の血が染み込んだトゲの一部を事前に回収していたのだ。
(クク、コイツを使って今度こそテメェの命を終わらせてやる!)
そしてまずは分身体を作り出すべくトリスタンは血に魔力を注ぎ始める。
(…?何だ?何をやっているの?)
その行動に気付いたユーウェインは攻撃をいなしつつトリスタンの手元を注視する。
よく見ると小さなトゲの欠片を持っており、更に付着している血痕からは微かに自分の魔力が感じられた。
(まさか、あれって私に刺さってたトゲの一部?いつの間に拾ってたんだ…。いや待て、何で
突然の不可解な行動に猛烈に嫌な予感を覚えたユーウェイン。もしかすると今彼女がやろうとしているのは自分が扱う
「悪いけど、そう都合よく行かせないわよ!」
そうはさせまいと物理的に殴って阻止するべく、共鳴の力で強化された脚力でトリスタンの方へ疾駆する。
「はっはははは!そう簡単に捕まってやるワケねーだろ馬鹿が!冥土の土産に良いコト教えてやるよ。あと10数える間にテメェは内側からグシャグシャに爆散されちまいまーす♡」
「なっ…!?」
今の発言が本当ならすぐに、すぐに一秒でも早く阻止しなければならない。
しかし当然ながらトリスタンも抵抗し、ギリギリのところで逃げ回って必殺技の準備を加速度的に進めている。
「ほぅら、もうおしまい。テメェの
気がつけばトゲは自分に似たシルエットの小さな魔力体に変化しており、トリスタンも得物を弓から五寸釘とハートの装飾が施されている槌へと変えた。
それらを用いて何をする気かは、最早考える間でも無かった。
(あ、ああクソ!間に合え、間に合え――――――!!)
彼女の行動の意図が真にわかった今、脇目も振らずに全力疾走するも残っていた数本の糸が襲い掛かり、それを払うのにほんの一瞬遅れてしまった。
(あ―――)
「さ、これ以上なく無様に死ね。これが
『■■■■■■■■■■!!!』
「――――――は?」
今まさに釘を打ち込もうとした時、不意に
その際に釘が手元から突き離れ、明後日の方向に飛んでいってしまった。
「~~~~!!こんのクソど…」
「―――ああ、感謝するわ」
「!?」
直ぐ様邪魔をした不敬者を八つ裂きにしようとしたが、不意に聞こえた声に眼前の存在を思い出し注意を向けた瞬間。
「次からはもう少し
―――共鳴によって強化された