Fate/Viridian of Vampire   作:一般フェアリー

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黒波の厄災【Ⅰ】

ユーウェインが勤務活動を再開して三週間。今日も彼女は仕事終わりの昼食として行きつけのレストランに赴く。

 

「いらっしゃいませ。いつものですか?」

 

「ええ、よろしくね」

 

いつもの事ながらワイン片手にパイの味を楽しむ。

やはりこの組み合わせは良い。何度口に入れても飽きが来ないし、何より口に運ぶ際に鼻に入ってくる上品かつ芳醇なチェリーの匂いが食欲を増長させる。

 

(でもデザートと言える様な物がコレしかないのはちょっとねぇ…。まぁ菜食主義のウッドワス殿の事だし甘い物に関心が無いのは仕方ないのかもしれないけど、だからってレパートリーがコレだけってのは正直いただけないわ)

 

この店の、ひいては彼の甘味に対する意識の薄さに不服を覚える。

そう言う訳で今度彼に会ったらデザート類のレシピを増やす様に頼んでおこう、言うまでもないが彼の戒める肉類などではないので少なくとも意見を聞き入れる程度はしてくれるだろう。

パイの風味を楽しみつつユーウェインはそんな事を考えた。

 

(肝心の追加してほしいデザートは何にしようかしら。アップルパイにスポンジケーキに……あぁ!スコーンも悪くな―――)

 

 

 

「―――お食事中のところ失礼致します。妖精騎士ユーウェイン様ですね?」

 

 

 

と、そんな様子でユーウェインが呑気に食事を堪能していると突然何者かに横から声を掛けられる。

顔を向けるとそこに立っていたのは面識の無い牙の妖精だった。

 

「…?そうだけど、貴方は誰かしら?」

 

「私はウッドワス様率いる隊の一爪です。この度はあの方からの言伝を預かっておりまして、それを貴方様に伝えるべく使者として参った次第にございます」

 

「使者…?」

 

どうやらこの者はウッドワスからの使者らしいが、ユーウェインは若干困惑の意を示す。

 

彼女は彼の下で生活して約3年ほどになるがこんな風に使者を、それも自領内で寄越されるなど初めてであるからだ。

 

普通なら風の報せでも使って呼びつける筈なのだが、態々こうして使者を送りつけるとはどういう事なのか。

 

「…言伝がある、と言ったわね。貴方という使者を送りつけてくるって事はつまり余程の速急な案件だったりする訳?」

 

「は、左様に御座います。然るに内容が内容故にこの様な公の場で口にするのは致しかねます。ですので恐れ入りますがなるべく御早めに済ませていただければ幸いです」

 

ユーウェインの問いに使者は肯定する。人がいる前では話せない内容なのはそもそもこの状況の時点で何となく察してはいたが、あのウッドワスがそこまで急く程の案件が何なのかが今一ピンと来なかった。

 

「…ふん、わかったわ。3分ほど外で待機してくれる?」

 

「承知致しました、では仰せの通りに」

 

そして食事を済ませて店を出た彼女はさっそく馬車の中で話を詳細を聞いた。

 

「それで何の言伝なのかしら?緊急の事態でも起きた?」

 

「はい。担当直入に申し上げますと―――」

 

彼は一つ間を置き、それを重々しい口調で告げる。

 

「―――“厄災の兆し”が、モルガン陛下より確認されたとの事です」

 

 

 

 

 

◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈

 

 

「―――で、詳細は概ね聞きましたけど……それは本当なのですねウッドワス殿?」

 

「冗談でこの様な事を私が言うと思うか?とにかく言伝の通り今日の早朝より陛下から『厄災の兆しあり』との報せが入ったのだ。これについての緊急の対策会議の召集命令が掛かった」

 

事の始まりはユーウェインがレストランへ足を運ぶ少し前。

ウッドワスがいつもの様に身だしなみのチェックをしていると突如としてモルガンより伝言が入り、何事かと話を聞いてみれば“厄災の兆しあり”と彼女は告げる。

それを聞いた彼はすぐさま使者を呼び、自身がモルガンと話している間ユーウェインを連れてくる様に命令を寄越した次第であった。

 

「そして陛下との話も先ほど終え、後は貴様が来るのを待っていたのだ。そういう事ですぐに準備しろ、キャメロットへ行くぞ」

 

彼のその言葉に従い、ユーウェインも早急に支度をし馬車へと乗り込む。

 

そして約一時間後―――キャメロットの門前に着いた彼らは早足で城内の玉座の間へと駆け上がり、モルガン及び緊急会議の面々と対面した。

 

「遅ればせながら只今より馳せ参じました、陛下。既に他の氏族長と妖精騎士らも集まっている様ですね」

 

ウッドワスの言う様に既に場には彼とユーウェイン以外の全氏族長と妖精騎士が集合していた。……風と鏡と王は遠隔式の立体映像だったが。

 

「ああ、後は貴様とユーウェインが来るのを待っていた。では疾く席に着くがいい、始めるぞ」

 

そしてウッドワスも着席し、ユーウェインも彼の側に立つ形で会議の体制が整ったところでモルガンは事の本題へと入った。

 

「前置きは既に前もって貴様らに伝えている故に省く。これより話すのは例の兆しが『何処に、何時、如何なる形で厄災として顕れるのか』、という事だ」

 

モルガンが重要視しているのは兆しそのものではない。どういう形で何時何処に顕れても迅速に対応できる様、正確に予測しておく事であった。

 

「これまでも厄災は様々な形となってこの國に脅威をもらたしてきたが、その度に私やウッドワス、妖精騎士や牙の氏族たちが対処し大事に至る前に解決してきた。――今回の様に私が事前に予測する事でな」

 

数千年もの間で多種多様な厄災を経験してきたモルガンからすれば、兆しを察知した時点でそこから厄災がどう出てくるかを予測する事も容易い。現に彼女のこのずば抜けた推察能力のおかげでこれまでに起こった数々の厄災を早期解決に導く事が出来た。

 

「確かに!ですが――はて?私の記憶が正しければ陛下は『蘇りの厄災』に関しては完全に後手に回られてしまっていたのですがね?」

 

しかし、ここで彼女の発言にわざとらしく異を唱えるは土の氏族長スプリガン。

彼が言及したのはかつて旧ダーリントン街で発生した、領主グレイマルキンが首謀者とされる『蘇りの厄災』の時に対処が遅れたせいで結果的に町の壊滅に繋がってしまった件についてだった。

 

「おいスプリガン、貴様何だその物言いは?まさかとは思うがあの厄災に関して陛下が無能だったとでもほざきたいのか?」

 

「よいウッドワス。確かにスプリガンが申す通り、ダーリントンでの蘇りの厄災については私は対処に遅れて後手に回らざるを得なかった。もう少しその兆候を早くに察知していればあの様な見るに堪えん死屍累々の有り様を生み出さずに済んだのだがな」

 

微かに憂いている様な声でモルガンはそう溢すも、実際は対処に遅れた自身の不手際を省みているだけであり当時に亡くなった住民たちへの憐れみなど更々なかった。

 

「しかし今重要なのは過去の失態を省みる事ではなく、現状の迫り来る厄災を如何にして対処しこれを潰すかだ。まずは―――」

 

そこから彼女はこれから起こり得るだろう厄災についての分析・見解を皆に説明し始める。

曰く、ここ数ヶ月の間で各地でのモースの自然発生の頻度が異様に高くなりつつあるらしく、直近の事例だとエディンバラ付近の森林地帯に100体近くも突発的に出現したらしい。

 

「そしてそれはユーウェイン、貴様にも覚えがある筈であろう?」

 

「! ……ええ、そうですね。私が所属しているオックスフォード近辺にもその手の事例がつい最近になって頻発しています」

 

実はこの会議の約二ヶ月前、緊急の案件でユーウェインの下に『オックスフォード近隣の草原域にて数十体ほどのモースが突発的に発生。在籍している妖精騎士は直ちに出動しこれを殲滅せよ』との報せが届いた事があったのだ。

唐突な大量発生の掃討任務に小さくない疑問を抱いたものの、その時はすぐに任務遂行に切り替え問題なく駆除作業を完了。

だがそれ以降もちょくちょく何件か同様の任務が通達され続け、昨日遂行した分でかれこれ50回以上に達していた。

 

「他にも一週間前なんかは80以上もの数が出現して、しかもその大半が10mは下らない規模の大型のタイプで構成されていました。無論こちらも早急に片付ける事は出来ましたが……それらも含めて全ては今回の厄災の兆しであったと言う事なのでしょうか?」

 

「恐らくな。初めは何時もの様に発生する頻度が一時的に高くなっているのみですぐに収まるだろうと私は見込んでいた。だがこの短期間で発生件数が10を超えた時点で些か不可解に感じ、そこから更に50辺りを超えてから確信に至った」

 

妖精國の歴史においてモースの発生率が一時的に高くなる事自体はそこまで珍しくもない。

汎人類史でも昆虫や鳥、蟹や魚が時期によって大量発生してきた様に、この國においてもそう言う小さな現象は度々発生し、そしてあくまで一時的なので一定期間を過ぎればすぐに自然収着を繰り返してきた。

 

今回もそのパターンだろうと最初はモルガンもそこまで気に留めはしなかった。が、そこから僅か数日で発生件数が10に到達し、更に一週間、二週間と経つごとに加速度的に件数が増加。

当人が述べた様に元々50件を超えた辺りでモルガン自身は確信に至っていたが、現在では総件数は何と200件を優に超えていた。

 

「そしてこれまでの事例からおおよその発生率・パターンを纏めた結果、エディンバラとオックスフォード近辺での発生件数が他の地域と比較して多くを占めていた。特にエディンバラは発生率だけを見ればオックスフォードと比較しても約3倍近くもの差を付けている。従って貴様の方は今も対応に追われてさぞ大変だろうな、ノクナレア?」

 

『ええそうですわね。尤も、私の方には貴女に仕える妖精騎士たちに勝るとも劣らない優秀な盟友が駆除任務に大いに貢献くれているお陰でかなり負担を減らす事が出来ていますけど……逆を言えば彼女が居なければこうして緊急の会議に出席する余裕も無かったでしょう』

 

本当に彼女には足を向けて寝られないわ、と自慢気に言うノクナレアだが実際にこの数ヶ月に及ぶモース出現の対応にはその殆どを盟友兼臣下である存在―――汎人類史のメリュジーヌに助けられていた。

 

無論その中にはユーウェインがこれまで駆除してきた様な大型のタイプが大半を占めているパターンもあったが、元々半端ながらも竜種の力も備えている事もあってその場合も特に問題なく対応・鎮圧に導く事が出来た。

 

それ故にノクナレアの管理する軍事部隊・及び町の民衆からは全面的に信頼を寄せられ、特に業務上共に活動する機会が多い軍事部隊はその殆どがメリュジーヌを彼女の盟友として相応しいと真に認めている現状だ。

 

「優秀な盟友……汎人類史のメリュジーヌか。既にランスロットから聞き及んではいるが竜種の力を備えているのであれば、なるほど問題なく駆除活動に対応出来ていても可笑しくはないな。仮に一翅で100体ほど相手に回したとしても殲滅には造作もあるまいだろう」

 

『ええ、こういう現状もあって今や私にとってもエディンバラにとっても無くてはならない最優にして最大の戦力です。……それで、()()はどの程度の規模になるとお思いで?少なくとも数十体や100体などでは利かないでしょう?』

 

ここでノクナレアはその時に襲い来るであろう脅威について問い掛ける。

対してそれを受けたモルガンの返答は―――こうだった。

 

「ふむ、そうだな。これまでの事例から考えると今回の厄災はエディンバラとオックスフォードに集中して発生するだろうと見ている。そして各地に一斉に顕れると仮定してその2つを除いた町の近隣には最低でも約100体以上は下らない数が襲い来るだろうと想定している。そしてエディンバラとオックスフォードは―――」

 

次にモルガンが述べるであろうその推定規模にノクナレア、ウッドワス、そしてユーウェインは一言一句聞き逃さぬ様に神経を尖らせる。

そしてモルガンが告げたその見解は、ユーウェインの予想と希望を大きく裏切るものであった。

 

「少なく見積もってオックスフォードが2000、エディンバラは3000―――否、4000は下らぬだろうな」

 

「―――は……?よん、せん?」

 

聞き間違いだと思いたかった。しかし悲しいかな、聞き逃さぬ様に神経を集中させていた故にバッチリとモルガンの発したその言葉を捉え、そして理解した。してしまった。

 

「ああ。それも少なく見積もってな?だがこの程度の規模なぞあの忌まわしいモース戦役の時と比べれば寧ろ拍子抜けとさえ評していい。ユーウェイン、貴様はこうして厄災と直面するのは初めて故に信じられんだろうが実際はこれより更に倍以上は迫り来ると想定しておけ」

 

「陛下の仰る通りだユーウェインよ。大厄災……モース戦役の時は数えるのも馬鹿らしくなるほどの、それこそ『黒い海』と見紛うばかりの規模だったのだ。それに比べればたかが数千規模なぞ大したことはない……が、貴様はまだ新参だ。常油断は晒すなよ?」

 

「――――――」

 

モルガンに便乗する形でウッドワスも続けて肯定し、呆然とするユーウェインに説明する。

とはいえこの数に少なくない動揺をしているのは何も彼女だけではない。

 

(え、えぇ……?多くて1000或いはそれ以上と見積もっていたんだけど……大厄災でもないのにそれほどの規模なの!?)

 

ここに一人、もとい一翅……ノクナレアもまた、内心かなり驚愕していた。

直近の規模が100体近く程度という事、そして前身であるマヴの記憶があるとはいえ彼女自身は大厄災どころか厄災そのものを今回で初めて相対する事、この2つの要因のせいで自身が想定していた数を大きく見誤っていた。

 

(クソ……甘く見ていたわ!まさかそれほどまでの数で侵攻してくるなんて想像すらしていなかった。これは会議が終わり次第、盟友(メリュジーヌ)や部隊の皆を集めてから改めて作戦を一から練り直さないとね)

 

己の想定の甘さと未熟さを思い知らされた事に歯噛みするノクナレアだが、それをモルガンに悟られない様にすぐに思考を切り替える。

 

「…………。では、ここからは此度に起こるであろう厄災に対しての貴様らの各自意見・及びそれらを踏まえた上での対策の議論に入る」

 

尤も当のモルガンはそんなノクナレアの思考も把握しているのだが、今はそれに対して突っ込む必要性も意味もないので何食わぬ顔で会議を進める事にした。

 

「尚、それにあたって以降はこの厄災を『モースによる物量侵攻型で顕れる』と予測される事と先にウッドワスが例えた『黒い海』の2つから取り、『黒波の厄災』と呼称する。それではまずは―――」

 

 

 

 

 

 

◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈◈

 

 

 

「―――そう言えばウッドワス殿」

 

あれから数時間。会議を終えて馬車に乗り込み、キャメロットを離れたウッドワスとユーウェインだったがその道すがらでユーウェインがある事を思い出し彼に尋ねた。

 

「何だ」

 

「いや……一つ気になったのですが、大分前に私に厄災についてのご説明をしてくださったではないですか。その中で厄災の例の一つとして数百体ほどの大型モースが現れた事もあったと仰った事をお覚えでしょうか?」

 

それは1年以上前に彼が妖精騎士となったユーウェインに初めて厄災に関しての説明をした際に挙げた事例についてだった。

 

「……ああ、確かにそんな事もあったな。して、それがどうした?」

 

「いえですね、当時の私はその説明を受けて随分と驚かされた訳なのですが……此度に起こるとされている黒波の厄災と比べると滅茶苦茶に規模に差がございませんか?」

 

彼女が疑問に思ったのはその時のと今回のとでモースの規模が十倍近くかそれ以上もの差が開いている事であった。

もしかしたら偶々ウッドワスが厄災の脅威を解りやすく伝える為に敢えて大型モースの頭数だけを口にしていただけで実際はもっといたのかもしれないが、それを考慮しても数千という規模はユーウェインからすればあまりに異常に思えてならなかったのだ。

 

「ふん、そうだな。会議の時は陛下に合わせる形でああ言ったが、実は私も今回の厄災はその時と比較して随分と規模が大きくなっているなと思っていたのだ」

 

そしてどうやら只事ではないと感じていたのはウッドワスも同様らしい。そこから彼が言うにはその当時の厄災に発生したモースは今回と比べてかなり規模が小さく、総計しても約2000~3000体程度であり大型の個体もユーウェインに説明した様に数百体ほどしか確認されなかったという。

 

「それだけに今回の陛下の見立てを聞いた時は私も僅かながらに驚かされたよ。何せ私と貴様の護るオックスフォードだけでも当時の総数とほぼ同等、エディンバラに至ってはともすれば倍以上になるやもしれぬのだからな」

 

外の方を眺めながら彼は自身に取っても想定以上だったと本音を漏らした。

そんな彼を見てユーウェインはある懸念を連想し口にする。

 

「…………まさかこれも、大厄災がすぐそこまで近づいて来ている事の影響によるものだったりするのでしょうか?」

 

「可能性はあるだろうな。いや、寧ろほぼそれで間違いないとさえ言っていい。恐らくは……仮にこれを乗り越えられたとしてもそう遠くない内に再び今回と同規模、或いはそれ以上の厄災が起こると私は見立てている」

 

「……そう、ですか……」

 

彼のその言葉に酷く憂鬱な気分に沈む。数千、或いはそれ以上の規模のモースの大波が自分やホープたち、そしてルーアンを呑み込まんとする様を想像すると奮起の気持ち以上に絶望が先に出てしまうのだ。

 

(仮に今回の厄災を生き延びる事が出来たとして、その後も研鑽を怠らずに更なる努力を積み重ねていけば今よりもっと強くなれるだろう)

 

(しかしそれでも不安が拭えない、とてもじゃないけど守り切れる気がしない。そんな何千、いや何万かもしれない様なスケールが幾度となく、しかも襲い来る度にどんどん脅威を増していく可能性さえあるなんて……どうすれば良いの?)

 

先の事を考えれば考えるほどに内に生まれた不安と懸念は大きくなっていく。それは駄目だと頭ではわかっているが、心はそれに反して憂いを募らせていく。

 

(………………いや、何を弱気になってるの。深く考えすぎよ、(バーヴァン・シー)。今の私は決して一人なんかじゃない。ウッドワス殿が、エインセル殿が、モルガン陛下が、ランスロット殿がいるじゃない。何でもかんでも一人で全部守り切ろうなんて思い込むな)

 

しかし何とか冷静さを取り戻し、己は一人ではないと自身に発破を掛けた上で思考を前向きにさせた。

そういう意味でも今の妖精騎士という立場に至れているのは本当に幸運だなと、ユーウェインはしみじみに感じた。

 

(今注視すべきは先の事ではなく目の前の黒波の厄災(脅威)をどう乗り越えるか、よ。……ルーアンの事も護らないといけないし、私が倒れる事だけは何としても避けないとね)

 

 

 

窓縁に肘をついて黄昏色の空を見つめながら、彼女は白髪の妖精を思い浮かべ、改めて決意と覚悟を固める。

 

 

 

獅子の加護を持つ吸血鬼の辿る道筋(うんめい)は、未だに不明瞭で―――そして言い様のない不穏に包まれていた。

 

 




お久しぶりです!また少しずつモチベーションが出てきたので再び投稿を再開します
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