拍手×殺人事件
見てるから×花言葉
の二本立てでお送りします
フォロワー企画も三回目ってことで。今回は二人に参加して頂きました。
一応、別媒体なので名前は伏せますが、テーマとしては、
拍手×殺人事件「残響喝采」
と
見てるから×花言葉「オキナグサ・ラストウィーク」
の二つのジャンルで書いてみました。
今回も短編集(2つ)みたいな扱いにはなるんですが、ぜひ楽しんで頂けると嬉しいです。
それでは、いつものごとく。
至らぬ点多々あると思いますが、生暖かい目で読み進めて頂けると幸いです。
「残響喝采」
「賞賛」
この言葉が私は嫌いだ。
賛美、礼讃、感賞、感嘆、褒美。どの言葉に言い換えてもいい。私の人生にはこれらの単語が有する意味を受け取ったことがない。
みんなの前でおどけてみせたり、劇場で演じてみせたりなんでもやった。でも、ダメだったんだ。
それ故に、それらを安易に手に入れる人間が許せない。
大したことをしてないのに簡単にもらえる人間が許せない。
貰えることが当たり前だと思ってる人間が許せない。
やってやるんだ。この手で。世間が黙っていられないそんな功績を。
「昨日午前、市内にあるホテルで行われたパーティ中に主催者である宝生昭夫氏が呼吸困難を訴え救急車に運ばれましたが死亡しました。検視の結果、トリカブトが検出され、毒物による殺人と断定されました。引き続き捜査が続けられています」
「なるほど、ありがとう。手塚くん」
私は今回の事件に頭を悩ませていた。パーティ中の毒殺。その場に監視カメラはなく、毒を盛るチャンスは誰にでもあった。
つまり、参加者全員が容疑者であり、地道な聞き込みによって絞っていくしかなかった。
「にしても京寺さん、こっからどう絞っていくんですか?」
「まずはパーティに参加していた方とホテル従業員すべてに聞き込みし、当日犯行ができそうな人間を片っ端から洗い出す。参加者名簿と当日のシフトから該当者をリストアップして聞き込みを開始してくれ」
「わかりました」
聞き込みは思ったよりすんなりと進み、すぐに容疑者が洗い出された。
「京寺さん、当日の接触者のリストアップが完了しました。疑わしい人物は次の3人です。」
「一人目は持金グループCEO、持金卓。毒による呼吸困難に陥る直前に主催者への挨拶として接触した模様です」
「二人目はホテルシェフ、、照本椎夫。こちらは、宝生氏が最後に口にした料理を調理したということで名前が挙がっています」
「三人目は宝生氏お抱えのメイド、道木芽衣。先程紹介した照本シェフの料理を運んだのが道木さんということで名前が挙がりました」
「それ以前の接触はトリカブトの即時性を考えると犯行は不可能だと考えられます」
確かに犯行に使われた毒物がトリカブトだとすると症状が出る10分以前の接触は関係ないと断定していいだろう。直近10分の行動から3人の容疑者が浮かんでくるのは当然とも言えた。
「よし、これからはこの3人の身辺調査を行い、宝生氏に対する恨みがないか調べろ。必ず犯人を捕まえるぞ!」
「はい!」
「今回、みなさんに集まってもらったのは他でもありません。今回の宝生氏パーティ毒殺事件の犯人がわかったからです」
「それはいいですけど刑事さん。どうして僕が呼ばれてるんですか!僕は何もしてませんよ!」
「右に同じです。私だって暇じゃないんです。今だってお客様が入ってるんですよ。料理長として現場を離れるわけにはいかないんですが」
「も、もしかしてわたしたちが疑われてるんですか、、?」
「みなさん落ち着いてください。これからゆっくり話しますので」
やっとのこと静寂を取り戻した空間に満を持して言葉を投げる
「ありがとう手塚君。ここから引き継がせて頂きます。今回の事件担当刑事の京寺です」
「まずはこの事件について。先日この場所で行われたパーティにて、宝生氏が毒殺されました。詳しい死因はトリカブトによる心停止です」
「トリカブトは有名なので詳しい説明は省きますが、強力な毒で経口摂取だとものの数分で死に至ります。つまり、その即時性から倒れ込む数分の間にトリカブトを経口摂取してる可能性が高い」
「聞き込みの結果、この3人が犯人である可能性が高いと断定され、集まってもらっています。」
「刑事さんはこの中に犯人がいる可能性が高いって言うんですか!!」
「端的に言うとその通りです。そして、その犯人も目星がついています」
「!?!?」
「そう、その犯人はあなたですね。道木さん」
「え!?わたしですか!?」
「あなたは、宝生氏に親の会社をダシに使われ、性的な要求を強引に迫られてましたね。それらを理由に宝生氏に恨みを持っていることも他のメイドから情報が取れました。」
「今回の事件、恨みと殺せる状況を持っている人はあなたしかいないんです。あなたが宝生氏パーティ毒殺事件の犯人ですよね」
じっと道木さんを射すくめる。
「くくくく、、、くふふふふふ、、、くっふふふふ、はははは、、はーっはっはっはーー」
後ろからの不快な声に怪訝な顔で振り返る
「誰ですか。関係者以外立ち入り禁止ですよ」
清掃員らしき風貌の男に制止を促す
「関係者であれば問題ないんだな」
男は懐から何重にも袋に入れられている小さな小瓶を取り出す。
ラベルには『トリカブト』と記載されていた。
毒殺されたことはもちろん、トリカブトを使われたことも警察と今ここで聞いた3人以外に知ることはできないはずだ。
この状況こそが男を真犯人として断定しきっていた。
「ほら、警察さんよ!!犯人は誰だって?w日本警察の目を欺けたんだ!!!今まで誰もできなかったことをやったんだ!!拍手の一つもないのかよ!!」
その場は静粛に包まれていた。
「午後3時25分犯人と思わしき清掃員を逮捕します」
「おい!なんでだよ!!賞賛をよこせ!拍手をよこせ!!」
パーティ会場には手錠によって不自由な手から生み出される力ない拍手だけが残響していた。
「オキナグサ・ラストウィーク」
ねえ知ってる?ツルニチニチソウの花言葉
いつだったか、菜々香ちゃんが教えてくれた花言葉。
あの時の私は今よりもっともっと幼くて、菜々香ちゃんだってうんとうんと幼かったのにたくさんのことを教えてくれた。
そんな菜々香ちゃんが大好きで、だからこそ、今のままじゃダメだと思う。
私は鳴らせないホオズキを口に含んだ。
菜々香ちゃんはいつだって私の隣にいてくれた。
「里奈!倒れたって聞いたけど大丈夫?」
「ただの貧血だよ。菜々香ちゃんは心配しすぎなんだって。それより、前から言ってたパン屋の1日限定メロンパンって今日だったよね?買った?」
「そんなのどうでもいいよ!!里奈が倒れたって聞いて真っ先に来たから買ってない」
「だって菜々香昨日も楽しみに話してたから。。また、私のせいで、、」
「そんな、、里奈のせいじゃないよ。私は里奈を見守るって決めてるんだから」
「そんなの、、そんなの私は頼んでない!!なんでいっつも私のことを優先するの!!!」
違う。そうじゃない。
「そんなに私の惨めな姿が見たいの??もうほっといてよ!!」
溢れ出す涙に押し出されるまま言いたくない言葉が次々と口から出て行った。
このいら立ちは菜々香ちゃんに向けたものでは決してない。
ずっと隣に居てくれるのに、ずっと見守ってくれるのに、何もできない自分に対してだ。それなのに、未完成な私は無遠慮に菜々香ちゃんに投げつける。
「ごめんね。そんなつもりじゃなかったんだ。里奈に嫌な思いさせちゃったね。でも、私はずっと里奈の隣に居るから。今日はもう帰るね。また明日行けそうなら一緒に学校行こうね」
それでも菜々香はぐちゃぐちゃな私をまるごと受け止め、このままの関係をよしとしている。
体が弱くていつも心配をかけ、菜々香ちゃんの時間を奪ってしまっている。
何も出来ない自分が憎い。何も返せない自分が憎い。そんな憎い私に何も求めず隣にいる菜々香ちゃんが・・・
病室から見える花壇ではトリトマが風に揺らめいていた。
いつかの私はこの時間がいつまでも続くものだと思っていた。
いつもとは違う痛みが私を襲った。持病である心不全の経過があまり良くないらしい。
病気の進行は薬では止められない段階に達しており、すぐに緊急入院がなされた。
「あと1か月持つかどうか」
私の体は自分が思っている以上に危険な状態、いや、もう終わりに向かっていた。
ほんとにこのまま終わっていいのか。
菜々香ちゃんがお土産に持ってきてくれた花瓶に入ったブーゲンビリアに目を向ける。
脳裏にチラつくのは菜々香ちゃんに当たってしまった先週のあの会話。
あれから一緒に過ごしてはいるものの、謝りの一つもしていない。
私は何も伝えず菜々香とお別れしていいのか。ダメに決まっている。次に会った時、今日にでも伝えるんだ。
私の時間は長くない。今のうちに伝えられるうちに全部を・・
「なに!?適合者が見つかった?はい、今すぐ向かわせます」
先ほどまで重苦しい空気をまとっていた空間が慌ただしく動き出す。
「今すぐ手術を開始します。お母さんはここでお待ちください」
麻酔が回りはじめ、少しずつ意識を手放す
先生からの説明を受けているお母さんの驚き、泣いている姿がやけに目に焼き付いた。
これでハッピーエンド…のはずだった。
端的に言うのであれば、手術は成功した。医者からもこれからは快方に向かうだろうというお話も聞いた。
これで、これでようやく菜々香ちゃんにお返しできる!!私は希望とやっと返せる嬉しさと、そして何よりこれからも菜々香ちゃんと一緒に居られる嬉しさでいっぱいだった。
「お母さん、菜々香ちゃん次いつ来るか知らない?早くこのこと知らせなきゃ!」
その瞬間、お母さんの顔が一気に歪む。そして、何度かためらった後、言葉を紡ぐ。
「実は、菜々香ちゃんはもう来ないの。病院に向かう途中にトラックにはねられて。即死だったらしい。そして、菜々香ちゃんの心臓が奇跡的に里奈とマッチしてドナーになってくれたの。今、里奈が生きていられるのは菜々香ちゃんの心臓のおかげなんだよ」
何を言っているのかわからなかった。
菜々香ちゃんが死んだ?嘘に決まっている。
私をずっと見守ってくれるって言ってたのに。ずっと隣に居てくれるって。そんなわけがない。嘘つき。
今度は私がたくさん見てあげなきゃいけなかったのに。裏切りだ。菜々香ちゃん、、菜々香ちゃん、、、
結局私は何も返せず、何も伝えられなかった。拭えたはずの無力感はより一層深く心に刻み込まれた。
すべてが終わった日から一週間。私は自室の鏡を見つめている。
そうしていると、少しだけ心臓が高鳴る気がしてくる。
私の中にいる菜々香ちゃんが喜んでいるのか、あの時のように見守られていることに私が喜んでいるのか今ではもうどうでもいい。
毎日毎日最後の先週へと想いを馳せ、何度でも何度でも言葉を紡ぐはずだった言葉を反芻する。
「今度は私が菜々香ちゃんを見てるから。ずっとずっと見てるから。だから、だからずっと一緒にいてほしかった、、、」
涙で滲む視界にはオキナグサだけがゆっくり揺らめいていた。
ということで、いかがだったでしょうか。
拍手×殺人事件で、探偵の働きに拍手する犯人が一瞬でチラつきましたが、安易すぎたのでやめちゃいましたね。
あ、それと二つ目の見てるから×花言葉で出てくる花の花言葉置いときますね。
「あなたしか見えない」 ブーゲンビリア
「幼なじみ」 ツルニチニチソウ
「あなたを思うと胸が痛む」 トリトマ
「偽り」 ユリ(黄) / ホオズキ
「清純な心」「告げられぬ恋」「何も求めない」「裏切りの恋」 オキナグサ
これを踏まえて改めて読んでみるとまた面白いかもしれません。
と言ったところで、今回はこの辺で終わっときます。
今回は色々行事が重なってバタバタしちゃいましたが、なんとか完成させることができたので良かったです。
また、第四弾があるのかはわかりませんが、その時があれば宜しくお願いします!!