東方誘我道   作:レガシィ

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はい!二つ目のシリーズ物の投稿です!
東方は解釈や複雑な設定が多く、作者もまぁまぁファンな自身はありますが、きっと万人受けはしないと思うし矛盾や違うところも多々ありますので苦手な方は読むのをあまりオススメしかねます。
それでも大丈夫という方はどうぞ楽しく閲覧ください!!


第一歩 幻想入り

 ピィーチチチ 

 

「、、、、、、、、、、、、、、、」

 

 小鳥の囀りが、澄み渡る水のように耳を吹き抜けていく。

 

 少年は見知らぬ森の中で、さながら白雪姫のように静かな寝息を立てて眠っていた。

 

「、、、、、、、、、?」

 

 目を覚まし、体を起こして周りを見渡す。全く見覚えのない光景と、あらゆる植物の匂いが鼻を刺激し、一瞬夢かと見紛い、目を擦る。しかしその"夢"は覚める気配は無く、反対に意識のみが鮮明になっていく。そしてその過程であることに気付く。

 

「ここどこ? てか、、、、、、、、、ん? おろろ?」

 

 少年は、記憶を失っていた。

 

「いや待って待って、状況を整理しよう。異世界転生ものの小説でもこんな展開は多分そう無いよ、記憶くらいはあるでしょ」

 

 少年は自身に言い聞かせて状況を整理する。

 

「、、、、、、記憶はやっぱり無し、なにかのショックで飛んだ? 、、、まぁ、無いなら仕方ないよね、とりあえず、持ち物は財布とライト、趣味とロマンで買った警棒、服装はジーパンとパーカーにコートか、、、寒さくらいは凌げるかね」

 

 対してお洒落に興味もないため、適当な服を着ている。外は秋が終わる頃だったのか服を着込んでいたが現在は寒いという感覚は無く、コートを脱いで手に持つ。

 

「日は高いし、取り敢えず歩いて人を見つけるか」

 

 少年は鬱蒼とした森を、地図もコンパスも土地勘も無く歩いていく。

 

 ザッザッザッザッ

 

(これ別に僕が方向音痴なの関係ないよね?)

 

 歩いても歩いても大して変わらない光景に疑問が浮かぶがその疑問は次の瞬間には無くなる。

 

 フッ

 

「?」

 

 突如として視界が暗転する、フラフラと歩き、近くの木を背にする。

 

(急な視界の暗転、、、、、、毒でも吸ったかな?)

 

 フッ

 

 急に視界が晴れると目の前には金髪で黒いワンピースを着た少女がフワフワと浮かんでいる。

 

 そう、浮かんでいる。

 

「お前は取って食べれる人類?」

 

「んー、ありきたりな台詞だけど、食べても美味しくないと思うよ? ほら、ガリガリだし」

 

「でも大きいのだー、食いでがあるかもしれないのだー」

 

 少女はニコニコと嬉しそうに嗤いながら舌舐めずりをして少年を見つめる。

 

「、、、、、、あっ! UFO!」

 

 バサァッ! 

 

 ダッ! 

 

 少年は突拍子もない場所を指さして気を逸らすと、地面の葉っぱを舞い上げて視界を防ぎ、全力でその場を離脱する。少女の目をくらます為になるべく木が多い場所で視界を切りながら走り抜けていく。

 

「うーん、逃げられちゃった、、、まぁいいのだー、チルノのところに行こーっと」

 

 金髪の少女は追いかける気力がわかず、その場を後にする。

 

 少年は暫く走って草原、というより、何もない原っぱにたどり着く。

 

「はぁ、追っかけて来なかったのか。助かった」

 

 かなりの距離を走ったあとに後ろを確認し、無事を喜ぶ。しかし、日が落ち始めていることに気付き落胆する。

 

「うっわぁ、やらかしたなぁ。どっか野宿できそうな場所ないかな」

 

 見渡す限りの草原に失望し、その場で横になる。

 

「まーいいか、生きてるだけ儲けものってやつでしょ」

 

 少年はそのまま無防備に眠りにつく。

 

 ──

 

 ムクリ

 

「やーっば、寝ちゃった」

 

 辺りは完璧に暗くなり、天然のプラネタリウムの元で少年は目を覚ます。そして横になったまま先程のことを考える。

 

「んー、今にして思うとあの女の子何だったんだろうなぁ。浮いてたし、幽霊か? それとも精霊? まさか妖怪とか? 、、、考えたら興味が尽きないなぁ」

 

 リーロリーロ、コロコロコロ、ジリリリ、、、

 

 コオロギやキリギリスが鳴き、静かな夜に開催されるオーケストラ。その音に耳を傾けつつやるべきことを考える。

 

「まずは空腹問題、次に寝床、それからここは何処なのかの情報収集かな。これらの為には人と会わなきゃ、でもその前に自分の身の証明を、、、、、、あ~あこんなことになるんならラノベとか読み漁っとくべきだったかなー」

 

 ふと空を見上げると、特大の満月が雲の陰から姿を表す。

 

「良い月だなぁ、別に風流人を気取るつもりはないけど、、、」

 

 ぐぅ~〜〜っ、、、

 

「、、、お団子が欲しくなってくるね」

 

 風流とはおよそ無縁の願望、夕暮れの全力疾走で腹の虫が鳴いていた。

 

「あら、だったら私と一緒にお月見でもいかが?」

 

「いやーそれは、、、おぅッ!?」

 

 ガバッ、バッ! 

 

 どこからともなくその人物は急に現れ、横になる少年を見下ろす。少年は驚いて寝た状態から横に跳ね起きる。

 

「あらあら、外の人間にしては大した運動能力ねぇ、魔力も中々高いし」

 

「、、、驚いたなぁ、周りを気にしてるつもりではあったんだけど」

 

「私にはそんなの関係ないもの」

 

 空間の裂け目のような所から、半身を顕にしてクスクス笑う目の前の美しい女性は話を続ける。

 

「今日はよくよく不思議なことに出会う日だ」

 

「それで、お月見はしてくれるのかしら?」

 

「、、、いやぁ、お姉さんのお誘いはありがたいんですけどね、ちょーっと怪しすぎるっていうか、、、ね?」

 

「それが妖怪の本質だもの」

 

「あ、やっぱり人間ではないんですね」

 

「貴方が知りたいこと、少し付き合ってくれたら気まぐれに教えてあげるわよ」

 

 少年は少しだけ考えるポーズを取るが、すぐに誘いを快諾する。

 

「そのほうが得か。お姉さん、名前聞いてもいいですか?」

 

「ふふふ、やっと乗り気になったわね。

 

 私は八雲紫、ちょっと偉い妖怪よ。貴方は?」

 

「生憎と、記憶がすっぽ抜けていましてね。人間関係とか自分の記憶が全く無いんですよ」

 

 少年は紫が用意していた団子を食べる。そうして月見という名の質問、あるいは尋問が始まり、全てを明け透けに話した。反対に紫はある程度のことを少年に話した。

 

「まとめると、ここは紫さんの結界の中の幻想郷という場所で、妖怪や神様やその他諸々の色んな人? がいる場所ってことですか」

 

「概ねその認識で構わないわ。ここに来るには全ての人に忘れられなければならないのだけど、本人が忘れてしまっているのは初めてね」

 

「ちょっとどころか神レベルじゃないですか、、、」

 

 紫はクスクス笑いながらお酒を口にする。

 

「さっきの話に出てきた、博麗神社? に行けばいいんですね?」

 

「えぇ、先に言っておくけれど私は関与しないわ、そこにいくまでに死んだら所詮その程度ということだもの」

 

 紫は笑顔を崩すことなくそう言い放つ。

 

「流石は妖怪、僕の命さえも玩具の一つみたいな認識だなぁ」

 

「そんなに心配しなくとも大丈夫よ。貴方にはさっき言った通り、どういうものか分からないけど能力がついている。この場所に偶然にも適応した結果だけれどね。貴方、これまでの人間に比べると相当幸運よ?」

 

「自分でもそう思うけど、これだけ幸運が来ると不幸もきっと来るんだろうなと思うね」

 

「あら、随分悲観的ね? もっと前向きに考えなさいな」

 

「常に万物において天秤は釣り合うものだと思って生きてるからね、幸運が来れば不幸も同じように来るものだと思っているよ」

 

 ザッ

 

「それじゃ、お団子ご馳走さまでした。僕はもう行くのでまた何処かで会いましょう」

 

「はぁい、頑張ってねー」

 

 少年はその場で立ち上がり会釈とお礼をして。歩き出す。

 

 それを紫は手をヒラヒラと振って見送る。

 

(まさか能力を持っているなんて、、、全てに言えるけれど、使い方を間違えれば異変へと昇華してしまう、、、)

 

「まぁ、それも面白そうね♪ 、、、方向逆だけど大丈夫かしら?」

 

 ヴゥンッ

 

 紫はスキマへと消えていった。

 

 ──約一週間後──

 

 紫は博麗神社へと無断で侵入していた。

 

「れーいむ♡」

 

「うわっ、アンタはいつも唐突なのよ」

 

 博麗霊夢、幻想郷を守る博麗の巫女。

 

 妖怪退治以外は普通の巫女と変わりはなく、今日も境内の掃除をこなしていた。

 

「最近変わったことはないかしら?」

 

「変わったこと? いえ別にないけど」

 

「あら? 、、、ほら、黒髪で少し白髪が混じってる子とか参拝に来たりしてないの?」

 

「やけに具体的ね? でもまぁ、そんな奴は知らないわよ、参拝に来たら多分少しくらい覚えてるもの」

 

「、、、、、、死んだかしら?」

 

「は? 誰が?」

 

「いえ、こちらの話よ」

 

 扇子を口に当ててオホホとわざとらしく笑い、紫はスキマに消えていく。

 

「一体何だったのかしら、、、」

 

 霊夢が掃きぼうきを持ったまま空を見つめているとその方向から箒にのった白黒の魔法使いがやって来る。

 

「霊夢ー!!」

 

「そんなに大声出さなくても聞こえてるわよ、魔理沙」

 

 掃除を再開する霊夢の横に魔理沙が着地する。

 

「なぁなぁ! 聞いたか!?」

 

「聞いてない」

 

「せめて用件くらい聞いてから答えろよ、、、」

 

 素っ気なく返事をする霊夢に拍子抜けする魔理沙。

 

「あんたもその箒でたまには掃除を手伝いなさいよ」

 

「いや、そんなこと言ってる場合じゃないんだって! これ見ろよ!」

 

 そう言って魔理沙は文々。新聞と書かれた新聞を霊夢に見せる。

 

「ん、、、?『悪人、妖怪激減、ついに博麗の巫女が本格活動の兆しか!?』、、、なによこれ」

 

「やっぱり身に覚えはないよな?」

 

「あるわけないじゃないの」

 

「そうハッキリ言うあたりやっぱり霊夢は霊夢だぜ、、、」

 

 キッパリ言い放つ霊夢に魔理沙は再びがっくりと肩を落とす。二人で話していると、そこに人影が二人、近付いてくる。

 

「あー! 霊夢さん! なんですかこれ!」

 

「あやややや、これはこれは魔理沙さん、当社の新聞をお手にしていかがしましたか?」

 

「げ、早苗に文」

 

 あからさまに嫌そうな顔をする霊夢に構うことなく早苗は近付いていく。

 

「この新聞!もしかして霊夢さんもついに信仰集めに出たんですか!?」

 

「いやー、感心感心、先代のような貫禄が出始める頃ですかねぇ」

 

 キラキラした目で霊夢を見つめる早苗と、腕を組んで頷く文に魔理沙が説明する。

 

「いや〜今回霊夢は無関係らしいぜ?」

 

「そうよ、また変な新聞でっち上げてくれちゃって」

 

「へ? 違うんですか?」

 

「違うに決まってるじゃないの」

 

「なんだ、、、これを機に取材しようと思ってたのに、、、」

 

 二人は明らかに期待外れの態度をする。

 

「悪かったわね。ていうかどこからそんな話が出たのよ?」

 

「いやー、色んな妖怪が最近ボロボロな姿で見つかるんですよ。聞いてみたら、皆口を揃えて人間にやられたって言うものですから」

 

「へぇ、確かに人間で妖怪退治なんて私か霊夢くらいなもんだしな」

 

「なるほど、、、じゃあ新聞に書くんならウチって断言しなさいよ、参拝客来るかもしれないし」

 

「この清く正しい射命丸、嘘を書くことはいたしません!裏が取れた以上は本人を探して取材しますとも、それでは!!」

 

 バヒュン! 

 

 適当な敬礼をした後に高速で空を飛んでどこかに行ってしまう。

 

「よく言うぜ、嘘八百で色んな奴から恨み買ってるくせに」

 

「うちは文さんには贔屓にしてもらってますよ」

 

 パンッ

 

 霊夢が手を一回叩き二人を追い払う仕草をする。

 

「ほらあんた達、手伝わないんならどっかに行きなさい、明日は宴会だってあるんだから」

 

「お〜、今回は珍しい奴らくるんだろ?」

 

「珍しく月のお姫様とかが来るらしいですね、あと地霊殿の方とか」

 

「なんであいつらも来るのよ、仕事は?」

 

「さぁ? 暇なんじゃないですか?」

 

「じゃ、明日は良い酒でも持ってまた来るぜー」

 

「私もなにか持ってきますねー」

 

 二人も飛んで行ってしまい霊夢だけが残された。

 

「はぁーもう、やる気無くなっちゃったわ。戻ってお茶でも飲もうっと」

 

 掃き箒を近くに立てかけ、神社の中へと戻っていった。

 

 ──

 

 少年は完全に迷子になっていた。

 

「はぁ、、、格好つけて東とか西で納得したけど、東ってどっちやねん、太陽が上る方じゃねぇのかよ、、、」

 

 思わず関西弁になって独り言を呟く。本人の考えは合ってるが、思い出して上を向く頃にはいつも太陽が真上にあり、方角も分からずにウロウロし続け、すっかり周りは暗くなっていた。

 

「なんだよここー、、、雑木林、じゃなくて竹林?」

 

 迷いの竹林、傾斜と同じ風景が広がるため、方向感覚が機能せず遭難者が続出する幻想郷の一角。

 

 少年にとって最悪の場所に迷い込む。

 

「また日が落ちてきた、、、一週間くらいか? もう団子も無いしなぁ」

 

 近くの岩にもたれかかって幾度目かの夜を越えようとする。

 

「はぁ、、、筍掘ったら生で食えっかな、、、明日やってみよ」

 

 目を瞑って寝るが、数時間経つと不意に目を覚ます。

 

 パチッ

 

(ここは危険が危ないせいで、すっかりショートスリーパーだ、、、)

 

 少年はここに来てから幾度か妖怪に襲われているため、すっかり危機察知能力が上がってしまった。

 

「はぁ、歩くか、人くらいいるかも」

 

 ザッザッザッザッ

 

 ──せろっ

 

 暫く真っ直ぐ歩くと、人の声が聞こえてくる。

 

「お?」

 

(声が荒い、酔っぱらいかもしれないけど人がいるだけラッキーだ!! なんか恩を売って食べもの分けてもらおう!)

 

 近付いていき、どんどん声と姿がはっきり聞こえて見えてくる。

 

 三人組の男が、少女一人に暴行を加えようとしている。

 

「おら!ちゃんと縛れお前ら!」

 

「ヘッへ、あのうさぎ特性の痺れ薬、動けねぇぞぉ」

 

「ん"ー!ん"ー!」

 

 あからさまに悪いですと言わんばかりの笑みを浮かべて少女を麻縄で縛っている。

 

(、、、やっべぇ、こういう現場はちょっとなぁ、人呼んだらなんとかなんねぇかな、、、でもなぁ)

 

「いや待てよ?」

 

 三人の男追い払う→少女に感謝される→色んな物を貰えて感謝される→僕ハッピー。

 

「よしやろう、せっかくだし能力も試すか」

 

 打算しかない少年は深くフードを被り、警棒を手に取る。

 

「おら、暴れんな!」

 

「妖術を使われたら厄介だ、足も縛れ!」

 

「おまわりさーん!! ここに女性に暴行を加えるクズがいまーす!!」

 

 少年は戦わずに追い払う方法を選んだ。

 

(この方が楽じゃん、僕天才〜)

 

「あ? なんだあのガキ、このへんにゃ人なんかいる訳ねぇだろ」

 

「正義感に駆られて動いたか? 馬鹿だなぁ」

 

「えマジ? この辺人いねぇの?」

 

 驚いて固まっている所に男の一人が歩み寄り眼の前まで近付きナイフを取り出す。

 

「あんま関係ねぇけどよぉ、念の為殺しとくか」

 

「あ、すいません自分なんも見てないしなんも聞いてないんで見逃してください」

 

 パキャッ

 

「ブグッ」

 

 そう言うやいなや、手に持つ警棒で男の顔を殴りつける。

 

 たじろぐ所に脛に打ち込み、腕を掴んで何度も警棒を振り下ろす

 

 ボゴォボゴォバキャッ

 

「ァ"ァ"!」

 

「おぉ、警棒って鉄並みに硬いけどホントに腕折れるんだ。怖、、、」

 

 その場に倒れる男が少年を睨みつけて立ち上がろうとするが、少年は顔を何度も蹴りつける。

 

 他の二人はそれをあぜんとして見つめる。

 

 バギャッドガッボグッ

 

「どのくらいで気絶するんだろ?」

 

 ネチャァ

 

 男の血で紅くなって靴を見る、男は動かなくなっている。胸が上下していることから生きてはいる。

 

「な、なんだあいつ、、、まさか妖怪、、、」

 

「ひぃっ! こんなことしてられるか!」

 

 ダッ! 

 

「お、おい待てよ!!」

 

 ダダダッ

 

 二人は逃げていく。

 

「お、ラッキー、手間が省けた。いやー綺麗に奇襲が決まったなぁ」

 

 少年はナイフを拾い、モンペを着た真っ白な髪の縛られた少女に近付いていく。

 

「さて、と」

 

「んー! んー!」

 

 ブチブチッ

 

 ナイフを近づけ、麻縄を切る。

 

「これでよーしっと」

 

「、、、、、、」

 

「喋れる? 、、、いや無理か、痺れ薬って言ってたし」

 

 ヒョイッ

 

「いやーごめんね、力入んないでしょ? おんぶは落ちそうで怖いからこれで我慢してねー」

 

 横抱きにして岩のところまで連れて行く。

 

 その間、少女が不安にならないように下らない話をしきりに話す。ここ数日に起こったことや、道すがらに見つけた虫の雑学などを話しながら、岩まで連れて行く。

 

(いやー、僕って気が利くなぁ)

 

 トサッ

 

 コートを被せてそこに寝せる。

 

「薬が抜けるまで側にいるから寝てていーよ、身体に悪いしねぇ」

 

「ーっーっ」

 

「ん?あ、り、が、、、気にしなくていいのになぁ、律儀だね、君」

 

 パクパクと口を動かして少女は感謝を伝える。

 

 ──ー

 

 チュンチュン

 

「、、、、、、!」

 

 ガバッ! 

 

 いつの間にか眠っていた少女、藤原妹紅は目を覚まして周りを見渡す。少年の姿は無く、コートがかかっていることから夢ではないことを察した。

 

「、、、名前くらい聞かせてくれてもいいじゃないか」

 

 妹紅は立ち上がり、昨夜のことを思い出しながらスタスタと自分の家に歩いていく。

 

「んー、駄目だ、顔も声も思い出せない。薬の影響か?」

 

 僅かに歩いたところに妹紅の家があり、自身の家に入り、博麗神社で宴会があるのを思い出す。

 

「あ、なんも用意してないな、、、まぁ何もなくてもいいか」

 

 ──

 

「しまった! 忍びなくてなんとなく置いてきちゃったけどなんもお礼もらってねぇ!!」

 

 あの後に一時間程近くにいたが、そこにいる理由を忘れて適当に歩いており、日が上った頃に気付く。

 

「うっわ、しかも能力試してない、、、まぁ、人工的な道見つけたし、人がいるところに出るっしょ」

 

 真っ直ぐ歩くと、江戸やその辺りの時代を思わせる人里が見えてくる。

 

「っー!!!人がいることにこんなに感動する日が来ようとは、運がいい!やっぱり僕はツいてる!」

 

 疲労や空腹を忘れて人里へと走り出し、中に入るが、明らかに自分格好が浮いていることに気付く。

 

 道行く人にチラチラと姿を見られ、居心地が悪くなるかところもしれないが、そんな余裕はない少年はなにか食べ物を求め、近くの茶屋を発見する。

 

「団子なら安く済むかな」

 

 タッタッ

 

「いらっしゃい」

 

 おばあさんが経営している茶屋へと入り、まずは確認する。

 

「すいません、このお金って使えます?」

 

「んー?何だいその紙は?」

 

「あ、じゃあこっちは?」

 

「似てるけど、うちじゃ使ってないねぇ」

 

 おばあさんはお金を見せてくる。

 

「これって確か明治とかの、、、マジかぁ、、、」

 

 ガックリと頭を落としながらその場を後にしようとする。

 

「すいません、失礼しましたぁ」

 

「ちょっと待ちなさいな。ほら、座って」

 

「?」

 

 大人しく座るとお茶を出してくれる。

 

「ん? お茶ってサービス?」

 

「あんた、よく見たらあちこちボロボロじゃないか。長生きしてるからねぇ、聞いたことがあるのよ。あんた、外の人だろう? 待ってな、今お団子出してあげるから」

 

「ホントですか!?ありがとうございます!!」

 

 遠慮する余裕もない少年はお茶をすすって待つ。

 

「はい、どうぞ」

 

 昔らしい三色団子を出され、少年は手を合わせて食べる。

 

「おぉ、もひもひしへへほいひいへふ」

 

「食べてから喋りな、ゆっくりしぃ」

 

 ゆっくりと咀嚼して味わう。

 

(こっち来てから団子しか食えてないな、腹持ちいいから別に良いんだけどさ)

 

 団子を食べ終わり、お茶をすすりながら情報を集める。

 

「博麗神社ってどこにあるんですか?」

 

「あらー、最近評判の神社ね、最近まで巫女さんがぐうたらだったのに急にやる気出したみたいよ」

 

「おろ?話と違うなぁ、まいっか。それでどっちに行けばいいんですかね、できれば右とか左でお願いしたいんですが」

 

 先日の反省を活かし、恥を忍んで聞く。

 

「簡単よ、ここからまーーっすぐ行くだけ」

 

 山の方を指差してそう言い、少年は立ち上がる。

 

「御馳走さまでした、必ずお金は返しに来るのでツケておいてください、それでは」

 

 タッタッタッ

 

「慌ただしい子ねぇ」

 

 山の近くまで行くと、とんでもなく長く対して整備されてない階段を見て気力が萎える。

 

「うわ、うっわ、世界は僕に優しくない」

 

 暫く考え込み、歩みだす。

 

「いや、僕が歩けばそこはちゃんとした道になるんだよ!行くぞコラァ!」

 

 誰でもない相手に喧嘩を売り、走り出そうとすると不意に上から声が聞こえ、思い切りこけて頭から階段の一段目に突っ込む。

 

ドゴォ

 

「愉快な人間ね、あなた」

 

「、、、、、、見なかったことにして」

 

「あなたが転んだこと? それとも独り言を言ってたこと?」

 

「どっちもです」

 

 ハナヲ抑えながら声の主を見ると、金髪で宝石のような翼を生やした幼女が飛んで見下ろしている。

 

「外人、、、Hello?Is it for me something?」

 

「なにそれ、別にあなたと同じように喋れるよ?」

 

「あぁ、確かに」

 

 階段に座って話し出す。

 

「で、どちら様? 生憎、僕は今は名前無いよ」

 

「私はフランドール・スカーレット、吸血鬼よ」

 

「本当になんでもありだなこの場所、、、」

 

 俯いて頭を抱えると、フランはその顔を覗き込み、無邪気に笑う。

 

「血を吸うのは別にいいけど、死なない程度にお願いしていい?」

 

「血は吸わないわ、お腹は減ってないもの」

 

「おろ?じゃあなんの用デショウ?」

 

「最近はお姉さまが構ってくれなくて暇なの、人間のフリをして色んな妖怪と遊んでみたけど皆すぐ壊れちゃって、退屈しのぎにもならないわ。でもあなた、人間なのに魔力がと──ってもあるのね」

 

 少女は無邪気に笑い、紅い瞳を覗かせる。

 

 少年は無意識に立ち上がって後ずさって階段を上る姿勢に入っていた、気づくと手や額から冷や汗が溢れ出す。

 

「それで、、、まさかだったりする?」

 

「私と遊びましょう!!」

 

 ダッ!!! 

 

 命の危機を感じた少女は全力で階段を駆け上って行った。

 

 ー博麗神社ー

 

 ガヤガヤガヤワイワイワイ

 

「毎度のことだけど本当に賑やかね、霊夢」

 

「ほんと、うざったらしいくらいだわ」

 

 ワインを飲みながら主に妖怪が騒ぐ様子を見てレミリアは霊夢に問う。

 

「たまたま休みとはいえ、まさか竹林の奴らとか地霊殿の奴らとか集まるとは思わないよなー」

 

「全く、いい迷惑よ。また参拝客が減るじゃない」

 

「減るほど来てるの?」

 

「ぶっ飛ばすぞ」

 

 レミリアの従者、咲夜にクスリと笑われ、苛立ちを見せる。

 

「てか、またフランの奴置いてきたのか。駄々こねて暴れられるのは勘弁だぜ?」

 

「それが困ったことになってね、一週間前から外出したっきり帰ってこないのよ」

 

「家出?」

 

「端的に言うとそうなりますね」

 

 ため息をつき、ワインをゆらゆらと揺らしながら話すレミリア。

 

「ふーん、ま、死ぬことは無いだろ、吸血鬼だし」

 

「放浪癖がつかないのかってことと、、、色々壊さないかが心配でしょうがないわ」

 

「「ほんとそれ」」

 

 霊夢と魔理沙が声を揃えて同調すると、遠くも近くもない場所から破壊音が聞こえ、それはどんどん近付いてくる。

 

 ドォンッ! バァンッ!! 

 

 何だ何だと妖精や神たちがざわめき出すと、騒ぎの元凶が姿を現す。

 

「うぉわっ!!あっちぃ!!」

 

「あははは! 逃げてばかりじゃつまらないわよ!!」

 

 大きな鳥居をくぐり階段をの下から、服の所々が燃えて破けている少年が姿を現す。

 

「永琳、あの子って確か紅魔館の所の妹よね?」

 

「そうですね、追いかけられてる少年は知りませんが」

 

「おぉ!!フランが暴れてるぞ!?」

 

「チルノちゃん、あの人間さん大丈夫かな?」

 

「死んだら食べてあげるのだー」

 

「やめなさい、お腹壊すわよ」

 

「あははっ!禁忌、クランベリートラップ!!」

 

(やばっ、またあれが来るっ!)

 

 少年は警棒で弾幕を防ぐが、耐えきれずに警棒が折れ、勢いのままに吹き飛ばされる。

 

 バキィッ

 

 ビュゥンッ、メギィッ

 

 、、、ボタボタ

 

 少年は足元から吹き飛ばされ、木に叩きつけられ、頭から血を流す。

 

「うわぁ、嫌な音したわね」

 

 身体がビクビクと痙攣し、俯いたまま血を流し続ける。

 

(、、、頭クラクラする、動かねぇ、眠い、、、)

 

「あの、大丈──」

 

 木の近くにいた妖夢が声をかけようとすると、少年は急に木に向き直り、木を掴んで頭を何度も叩きつける。

 

 ゴンッ、ゴンッ、ゴンッ、グヂャッ

 

「ちょっちょっと!?」

 

「あの人間、頭おかしくなったのかしら」

 

「おい霊夢、さすがに神社を曰く付きにするのはまずいんじゃないか、、、?」

 

「当たり前でしょうが! 止めるわよ!」

 

 ピタッ

 

 少年は急に叩きつけるのをやめてフランに向き直る。

 

「はぁ~~、、、、、、目が覚めた」

 

 頭を抑えながらニヤリと笑ってそう言い放つ。

 

「あっは♡恐怖と痛みで頭おかしくなっちゃったのかしら?」

 

「あ"? ここで気絶して死ぬくらいなら頭カチ割ってでも意識保つ方が生き残る可能性があるからだよ」

 

「すっごーい! こんなにしぶとく生き残ってくれる人間なんて初めて!!」

 

 パチパチと拍手をしながら無邪気に笑うフランに、出血で頭が回らない少年は怒りがこみ上げる。

 

「人間なんてウジみたくそこら中にいるだろうに、なんで俺を狙うんだか」

 

「あなたこそなんでそんなに生に執着するの? そんなに苦しい思いまでして生きる理由はあるの?」

 

「記憶ぶっ飛んでるのに生きる理由なんてあるわけねぇだろが」

 

「じゃあ死んでもいいんじゃない?」

 

「良くないに決まってんだろ」

 

「なんで?理由がないのに」

 

 逆に問うフランを周りのギャラリーは静観する。

 

「あらぁ、そんなこと言われたら壊れちゃうわよ、あの子」

 

「生きる理由、か。苦しい問いだな、助けなくていいのか?」

 

「答えによるわね、本当に死にたいんなら妖怪に殺してもらえば楽になれるし。迷惑だからどっか別な場所に行ってもらうけど」

 

「巫女の言う言葉じゃないわね」

 

 少年はクラクラしながら考えてハッキリと答える。

 

「そんなもん、生きる理由以上に死ぬ理由が無いからに決まってんだろうが!」

 

 その答えにその場の全員はあぜんと口を開く。

 

「「「えぇー、、、」」」

 

「ふーん、あっそ」

 

 ゴォォ!! 

 

 フランは炎の槍を作り出して玩具に飽きたかのような顔と共に少年に向けるが、その前に炎の壁と共に妹紅が立ち塞がる。

 

「そこまでだ、それ以上するんなら私が相手になるよ?」

 

「あなたは蓬莱人の、、、あはっ、次はあなたが遊んでくれるのね!!」

 

 ビュンビュンッ! 

 

 フランが色とりどりの弾幕を放つと、妹紅は炎を身に纏う。しかしそれは、妹紅に当たらずに様々な方角へと不自然に曲がっていく。

 

 ザッザッザッ

 

「いやぁ、女の子に守ってもらうってのも悪くないけど、やっぱり男が前に立ったほうが格好つくよね」

 

 少年は立ち上がって歩き、妹紅の肩をぽんと叩く。その姿を見て一同は驚きに満ちる。怪我が治っている。それこそ血の跡はあるが、傷が全て癒えて無くなっている。

 

「嘘、、、!?」

 

「ちょっと永琳、蓬莱の薬ってまだあったの?」

 

「いえそんなはずは、、、」

 

「これは摩訶不思議な現象だぜ、なぁ霊夢?」

 

「まーた異変の気配がするわ」

 

「咲夜、あなたがなにかしたの?」

 

「いえ、私はなにも」

 

 ザワザワと再び喧騒に包まれる中、驚きの一言を少年は言い放つ。

 

「いやほら、僕って昔から怪我が治るのは早いんだよね」

 

「そんな理由で治るか!!」

 

 妹紅は体中をベタベタ触って確かめる。

 

「ホントに傷がない、、、あんたも蓬莱人なのか?」

 

「僕はふっつーのDKでーす」

 

 その光景をみてさらにフランは笑みを浮かべる。

 

「ますます面白いわ! さぁ! もっと遊びましょう!!」

 

「うーん、一つ訂正。生きる理由はないって言ったけどたった今一つできたわ」

 

 少年はポケットに手を入れて能力を行使しようとする。

 

「良い女の前で格好つけたいからってのはどうよ?」

 

 少年は真剣な表情でそう言い放った後、ニヤリと鼻で笑い飛ばす。

 

 ヴゥンッ

 

「!?」

 

「はい、お終い。その位にしときなさいな」

 

「紫よ、止めるのが少し遅いのではないか?」

 

 フランはそれを見て弾幕繰り出そうとするが、後ろから扉が現れ、結界の中に捉えられる。

 

 その扉の中からは紫と椅子に座った後戸の秘神、隠岐奈が現れる。

 

「おろ、紫さんだ」

 

「はぁい、久し振りねぇ」

 

 紫は手を振りながら少年の前に降り立つ。

 

「随分時間がかかったみたいね?」

 

「方向音痴は自覚してたんですがね。自覚してもどうにかなるもんじゃないんで」

 

「ちょっと紫!どういうことよ!!」

 

 霊夢がツカツカと紫に近付いていく。

 

「あら霊夢、助けるのが遅いんじゃないの?」

 

「そこじゃなくて!一体どういうことよこれ」

 

 ギャーギャーと騒ぐ二人をよそにして少年は近くの木に腰掛ける。

 

「あ"ぁ"疲れた、、、てか格好つかねぇな。だっせぇ」

 

 座り込んだ少年に永琳と優曇華が慌てて近づく。

 

「大丈夫ですか!?怪我を見せてください!」

 

「ほら、早く上脱ぎなさいな」

 

「え、いや、完治したんで大丈夫っす、、、」

 

「そんなわけありません! 早く!」

 

「ちょっ、待って待ってせめて自分で脱ぐから!」

 

 流されるまま渋々と服を脱ぎ、傷があった場所を診察してもらう。

 

「、、、、、、ホントに傷一つないなんて」

 

「そろそろいいかな? 流石に至って健全なDKにこの格好は辛いんだけど、、、」

 

「頭の傷もないわ、、、あなた一体何をしたの?」

 

「さぁねー、なにをしたんでしょうかねー(棒)」

 

 目を逸してあからさまな棒読みをする。

 

「話す気は無いのね」

 

「この場所は誰が僕を殺すか分からないからね。悪いけど、あんまり信用しないよ、お医者さん」

 

 頭の血を拭いながら、少年は警戒心を顕にする。

 

 その横で紫と霊夢と魔理沙、そこにいた妹紅が話している。

 

 パシンッ

 

 紫が扇子を音を立てて閉じると、賢者らしい雰囲気を作る。

 

「さて霊夢、あなたは博麗の巫女です、幻想入りしてしまった人間を保護する義務があります」

 

「う、分かってるわよ、、、」

 

「見捨てるような発言はあまり褒められたものではないと思うぞ」

 

 隠岐奈も同じように話し、霊夢は頭が上がらない。

 

「まぁなんだ、頑張れよ。博麗の巫女さん」

 

「ガンバ霊夢だぜ!」

 

「魔理沙は後で弾幕ごっこしましょうか」

 

「お、受けて立つぜ?」

 

「ちょっと!」

 

 霊夢は少年に近付いていく。

 

「え、僕?この辺壊したのは僕じゃないから、賠償金は向こうの金髪さんにお願いできるかな」

 

「そうじゃないわ。私は博麗霊夢、博麗の巫女よ」

 

「おろ、あなたがですか」

 

「そうよ。それで、私はアンタみたいな外の人間を保護する義務が一応あるのよ、アンタ家事できる?」

 

「多分、それなりにはできると思うけど、、、」

 

「じゃ、アンタがこの場所に適応できるまでうちで雑用してもらうからよろしくね」

 

「うん、うん??え?why?」

 

「はい名前、なんていうの?」

 

「あー、うん、記憶が無いので分かりません!」

 

「あなたの名前は八和道行去永(やかみちいざな)よ」

 

 紫が横から口を出して名前を教える。

 

「え、そうなの?」

 

「苗字は私が考えたけれど、名前はあなたのもので間違いないわ。詳しくは私の能力でも分からなかったけれどね」

 

「と、いうことらしいです、、、随分仰々しい名前だな」

 

「そ、じゃあ行去永、今日からこき使うからよろしくね」

 

(、、、要するに住み込みで働けってことか)

 

「こちらこそよろしくお願いします」

 

 深々と頭を下げて握手する。

 

 こうして、八和道行去永の素敵な幻想ライフが始まった。




はい、今回の主人公は適応力?以外は割と平凡に書きました。少し運動神経が良いですが、実際に現実で目で見た範囲以上の動きはさせてないので飛び抜けてイカれた動きはさせてないと思います。
もう一つのシリーズの方はしばし不定期投稿で、こっちも不定期なので気が向いたら見てもらえたらなと思います。
応援お願いいたします!!
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