【こんにちは、八和道行去永です。
幻想郷における夏、という季節がやってきました。
流石は神サマが当たり前にいる世界、四季がはっきり感じられてとても暑いです。しかし、僕は今冷や汗のおかげでめちゃくちゃ寒いです。え?なんで冷や汗かいてるのかって?あっはっは、目の前にリアル閻魔様が鎮座していらっしゃるからですね。(絶望)】
行去永の前には、地獄の閻魔である四季映姫がお茶をすすって座っている。勿論理由は昨夜の出来事についてのことだった。
「、、、、、、、、、エンマサマガナンノゴヨウデ」
「そんなに怯えないでください、特別貴方を裁きに来たわけではありませんので」
「いやあの、僕も日本人なので閻魔様の話はよーく知ってるんすよ。もう少しだけ、、、ちょっとだけ待ってください」
行去永は深く深呼吸をして対面する。
「もういいですね?私も休みを返上して来てるので手早く済ませましょう」
「はい、、、」
「昨夜、地獄に来る予定のない低位の妖怪が出現しました。浄玻璃の鏡という道具を用いて原因を追求したところ、貴方の姿が鏡に写りました。ここまではいいですか?」
「はい、大丈夫っす」
「それではここからが本題です、あの妖怪を送り込んだのはあなたで間違いないですね?」
「はい、、、」
「それは地獄の侵略等が目的ですか?」
「絶対に、百%、そんなことはありえません」
「まぁ、そうでしょうね。大方、貴方と一緒に写っている子供を助けるためでしょうし」
「そう!そうです!邪な気持ちは一切ありません!」
首をブンブンと縦に振りながら全力で肯定の意を示す。
「嘘偽りは無いですね?嘘をつくと、、、舌を抜きますよ」
「いやほんとに!鏡では冷静に見えるかもしれないけど内心めちゃくちゃ慌ててたんですよ!」
ジロリと睨みつけながら脅しをかける閻魔の風貌に、見た目は幼い少女ながらも威圧感を感じて行去永は再び冷や汗を滝のようにかく。
「、、、分かりました。では、今後はそのようなことのないように、もし避けられぬ事情があり、行うのであれば正当な理由を私か小町に話してください」
「はい、、、二度としません」
「、、、流石にそこまで恐れられると私も傷つくのですが」
「僕の目標は安楽的な死なので、、、閻魔様や幻想郷の神々とは対峙したく無いんすよ、、、」
「変わった人間ですね、、、少なくとも今の所、貴方の罪は白が八割ほどを占めてます。そんなに不安になることはありませんよ」
「マジっすか!?ありがとうございます!!」
「それでは、これからも善行に励むように」
「はい!お気をつけてお帰りください!!」
映姫はそう言い残して博麗神社を後にした。
「、、、、、、、、、、、、もう行った?」
「あ、霊夢さん起きました?」
「ずっと起きてたわよ。で、あんた何やらかしたの?」
「いやぁ、、、自己防衛の過剰防衛で怒られました」
「ん?まぁ何でもいいけど、面倒事はやめてよ?」
「以後気をつけまーす」
話していたのは朝の五時、行去永は幸い早起きなので応接することができた。
「あ、そうだ。あんた今日は日雇いの仕事するんでしょ?」
「そうっすね。良い感じの給金でしたし、ボーナスも出るみたいなんで今日は帰るの遅くなるかもですね」
「ふーん、じゃ、頑張ってー」
霊夢は行去永の用意したご飯をよそいながら欠伸をかいてそう言った。
──ー
夜
「んー♪良いねぇ、魔法使えば荷運びなんて楽々だ。お陰で懐が潤ったし、今日はなにか食べて帰ろーっと」
行去永は仕事を終え、一月の間に何度かお世話になった屋台の暖簾を潜る。
「やぁ、久しぶりー」
「おっ、居候の兄ちゃん!久しぶりだなぁ!酒でいいかい?」
「何度も言うけど未成年だって、ラムネとなんか適当にご飯頼むよ」
「かーっ!細けえなぁ、あいよラムネ!」
屋台には他に二人組の男客、それと身なり的には恐らく妖怪や神様の類の片方に翼が生えた女性が一人、ひっそりと端で酒を楽しんでいた。
(セフィ○スみたいな人いるなぁ、かっけー)
陽気な店主は行去永が久し振りに来たのが嬉しいのか、笑いながら会話をどんどん広げる。
「やー、だいぶ前だがあんときは助かったよ、腰をやっちまった時!」
「困った時はお互い様だよ、病院は行ったの?」
「んなもん行かなくても寝ときゃ治るもんさ!ほれ!余裕だぜ!」
腰をバシバシと叩いて見せる。
「なら良かった」
カタンッ
その直後に屋台の端の女性は盃を落としてしまい、中の酒が溢れてしまう。
「ん?」
「ありゃ、大丈夫かお客さん。飲み過ぎか?」
女性は首を横に振るが、頭がクラクラと動き、明らかな酔いが見て取れる。
「あー、どうしたもんかね」
店主は行去永をチラリと見るが、それより先に二人組の男が反応する。
「あー、いいよいいよ、俺らが宿まで連れてってやるよ、なぁ?」
「そうだな、俺らが運んでやるよ」
ニヤニヤと二人は嘲笑いながらそう言い、意識が朦朧とする女性に肩を貸しながら宿のある方へと向かう。
「、、、、、、なぁ行去永君よ、どう思う?」
「どうって?」
ラムネを開けて飲みながら相槌を打つ。
「あの二人だよ、なんか怪しくねぇか?」
「怪しくてもねぇ、こんなとこで酔い潰れるまで飲んで、お持ち帰りされるのは自業自得な気がするけどねぇ」
「やっぱりそう見えるよな?」
「、、、、、、はぁ、、、あのなぁオヤジ、客のそういう話まで首突っ込んだらキリないぞ?彼女は運が悪かった。更に言えば行いが悪かった。もしかしたら男たらしで意外に楽しく激しい夜を過ごすかもしれないよ?ほら、んなことより飯作ってくれよ」
「いーや、生まれて六十三年、芯の曲がったことは大嫌ぇなんだ!様子見るだけで良いんだ!頼まれてくれよ!」
店主は手を合わせてそうねだる。行去永は優しくない、打算と計画無しに動かない。逆に言えば、報酬さえあればある程度はどんなことでも引き受ける。
「、、、、、、はぁ、、、飯代は?」
「安心しろ、ツケといてやる!」
「じゃやんねぇよ」
「冗談だ、好きなだけ食ってけ!」
「全く、、、今回だけだからねマジで」
「おう!ありがとな!!」
行去永は空いた腹を満たすのをもう少しだけ我慢し、三人の跡を静かに追っていく。
──ー
「どの宿にするよ?」
「いっそ家でいいんじゃね?」
「そうするか。いやぁ、幸運だなぁ、こんな美人が隣で酔いつぶれるなんて」
「だな!ちょうど最近溜まってたんだ、無理矢理ヤっても問題ないだろ。なぁ、そう、だ、ろ、、、?」
男は後ろを振り向いて同意を求めるが、そこに友人の姿は無い。
「おい、つまんねぇことしてねぇで出てこいって!そのへんに隠れてんだろ!?」
男の声は虚しく人里の闇に木霊する。
ドサッ
男の真後ろに泡を吹いて倒れている男の友人がいた。
「ひっ、ひぃ!」
男は慌てて女性の肩から手を離して後ずさると、行去永が女性を受け止める。
「おっと、女性の扱い方がなってねぇな。もっと紳士に扱えよ」
軽口を叩きながら脈を測ったりして女性の様子を確認する。
「んー、なにかされた訳じゃなし、ただ酔い潰れたたけか、、、迷惑だな全く」
「お、おぉお前、屋台にいた、、、!」
「ん?あぁ、そうだ。おにーさん、魔が差すのは分かるけどさ、流石に倫理ってもんがあるでしょうよ。つーことで少しだけ痛い目にあってくれ」
「へっ?」
バチバチンッ
男は行去永の魔法による電撃を受けてその場に倒れ込む。
「便利だなぁパチェリーさんの魔法。さて、おっさんのとこにでも運ぶか。おーい、おねーさん、歩ける?」
「ん、んん、、、」
目を覚ますことなくウンウンと唸っており、とても歩ける状態ではない。
「ダミだこら、運ぶけど吐かないでよ」
ザッザッザッ
(、、、、、、背中に柔らかい物が、、、)
バチンッ
行去永は自分の頬を叩き、考えを改める。
(いや待て待て会ったどころか見たことしかない人にそんなことを思うのはアイツラと変わらねぇだろ!ぁぁあでも考えないのもキッツい!いっそ能力で運ぶか?いや気絶しながら歩くとかシュールすぎる!クソっ!耐えるしかないのか、、、)
行去永が一人悶々としていると、おぶっている女性が目を覚ます。
「、、、、、、ここ、、、は?」
「おっ、目、覚ましたね、立てる?」
女性は軽く頷いて背から降ろされるが、まだ足取りはおぼつかず頭に手を当てている。
「肩貸すから取り敢えずその辺に座る?」
再び軽く頷き、既に閉店している近くの茶屋の長椅子に腰掛ける。
「さて、諸々の事情は省くけど、おねーさん僕に助けられたって解釈にしてくれない?その辺の説明は屋台のおっさんがしてくれるから」
女性はコクコクと二度うなずく。
「あー、あまり喋れない感じ?」
再び二回頷くと、申し訳なさそうに俯く。
「、、、取り敢えず名前だけでも教えてくれないかな?駄目なら文字を書くとかでも良いんだけど」
気まずい空気を流すために当たり障りのないことを質問すると、答えが帰ってくる。
「、、、稀神サグメ」
「なるほどね、サグメさんね、OKOK」
指で丸を作り、警戒させないようにニコニコと若干怪しげな笑顔を作る。
するとサグメは左手を口元に当てたまま、行去永の手の平に右手で指を走らせる。
「ん?あぁ、筆談か。ごめん、もう一度してくれない?」
ついついと指で文字を作る。
サグメは舌禍の稀神、口にした事象を逆転させる能力を持つため、不用意に喋ることが出来ない。そのことを掻い摘んで話した。
「ふーん、難儀な能力だなぁ、、、じゃあ今酔ってるっていったら酔いは抜けないの?」
その手があったかと言わんばかりに、事象を口にする。
「私はお酒に酔っている」
そう口にすると、みるみるうちに顔の赤みが抜けていき、半分以上虚ろだった瞳もハッキリと行去永の姿を映す。
「おぉ、すげぇ。ほんとに逆転するんだ」
『少年、私はどうすればいい?』
ついついと再び文字を行去永の掌につづる。
「ん?あぁ、事情の説明を屋台のおっさんにしなきゃならないから付いてきてくれると助かるんだけど良いかな?」
『了解した』
二人はそれほど長くもない道を歩きながら筆談を交えて会話する。
「へぇー、遠い所からわざわざここに来てお酒飲んでたの。誰か信頼できる人がいないと危ないよ?」
『それに関しては申し訳ない』
口を開くのを拒んでいるが、それはあくまでも能力の都合上であり、本人は人と話すのが苦手なわけでも嫌いなわけでもない。ただし、地上の穢れを嫌うのは月人の共通点であることに代わりはない。
助けてくれた恩人を無下にもできず、一定の距離を取りながら返答だけする、謎の会話方式が取られていた。
「まぁ、ちょっと危ないことがあった後だもんね、あんまり信用されないのは分かってるよ」
(そういうわけではないのだが、、、しかし、説明するのは、、、)
説明しあぐねている様子を見て行去永は話を逸らす。
「あっそうだ。物理的に近付かずに会話する方法なら少しあるよ」
「?」
行去永ちょいちょいと手を動かして見せる。
「手話って言ってね、外の世界で声を出せなかったりする体質の人が使う"会話"なんだ。まぁ、僕もあんまり知ってるわけじゃないけど」
そう言いながら、一般的な手話の形を作る。
サグメは物珍しそうにその様子を眺める。
「これがおはようで、これがおやすみ。んで、ごめんなさいと、ありがとう」
サグメはなんとなくその形を真似してやってみる。
「はいはーい、どういたしまして」
「!」
真似しただけの手話に反応されてからかわれ、サグメはムスッとした顔で既に提灯が見えている屋台の方へと早足で行ってしまう。
「えっ、ごめんって、怒ったんなら謝るからさー!」
行去永もそれを追いかけ、その後に暖簾を潜る。
「おう!兄ちゃん、やっぱり俺の勘は間違ってなかっただろ?」
「はいはい、そうだね。それよりはよご飯、お腹と背中がくっつきそうだ」
「待ってな、今準備してやる」
店主は振り向いてご飯の準備を進める。
(、、、まぁ、こんなもんだよな、人並みに社交力はあると思ってただけにわりかしショックだなぁ)
先に座っていたサグメは行去永を見ることなくぼんやりとしている。
ぼーっとしているとご飯ができたようで、行去永の前に鼻孔を刺激する見た目からして美味しそうなご飯が準備される。
「ほら、たんと食いな!」
「いただきま~すっと。あ、おっさん、サグメさんに事情説明してくれよ」
「おっとそうだったな、嬢ちゃん実はな──」
店主が説明している間に行去永は念願の夜ご飯を静かに一人で食べる。酒がメインの屋台なため定食などではないが、居候の博麗神社よりは豪華なご飯であり、細身の高校生の腹に溜まるくらいのボリュームの、満足のいくご飯だった。
「ごちそうさま〜」
手を合わせて終了を告げると、サグメが行去永を呼ぶ。
「少年」
「はいはい、少年ですよー」
「名前は?」
「あ、名乗ってなかったね。改めて、博麗神社に居候してる外来人、八和道行去永。よろしくね」
『あぁ、改めてよろしく』
店主からもらったのか、紙にスラスラと書いていく。
「それだけ?ってことはないよね」
『、、、さっきの手話のことなのだが、今回のような例もある。、、、もっと詳しく教えてもらいたい』
「あぁなんだ、そんなことか。鈴奈庵っていう本屋ならもっと詳しい本があると思うから今度行ってみたら?」
『、、、、、、店主、彼は随分鈍いのだな』
「いつもは鋭いのになぁ、人間関係になると急に疎くなる。なぁ兄ちゃん、この嬢ちゃんは一緒に見てくれって言ってるんだよ」
「?、、、、、、あぁ!そういうことか、手話覚えても話せる人いなかったら意味ないもんね」
サグメは溜息をついて再びペンを走らせる。
『もう、そういうことでいい。それと、私と話すときはそんな笑顔を作らないでもらえると助かる。遠慮する必要もなければ取り繕う必要もないし、敬称もいらない』
「、、、それでいいんなら遠慮しないけど」
ずっと貼り付けていた笑顔をやめ、いつものような怪しげで表情を悟らせないような顔に戻る。
「やっぱり兄ちゃんだいぶ印象変わるな、笑顔作ったままのほうがいいんじゃねぇか?」
「失礼だなおっさん、俺は人を選んで話してるだけだっての」
「嬢ちゃんもそう思うよな?」
『私としてはこっちの方が楽でいい』
「ほーらな」
「ったく、、、ま、いいや。さ、そろそろ店じまいだ。二人共帰んな」
「へーい。あ、サグメ、宿まで送るよ」
『飛んで帰るから問題ない』
「あんたも飛べんのかよ、、、」
行去永はサグメを見送り、夜が更けて来る時間に博麗神社へと戻り、布団に入っていた。
(てか、今日どっかの権力者とパイプできたってことじゃん、ラッキー♪)
いつもどおり、ろくでもないことを考えながら夢の世界へと旅立っていった。
東方の少女達はなんか、性格を正確に知れないので自己補填とかです。(激ウマギャグ)
苦手な人とか、こうじゃないだろー!って人は絶対にいると思うので今後ともお気をつけください。