「クッハハハ、どうした? 幼き真紅の姉妹よ。その程度か?」
行去永の顔。しかし、その背丈は以前より伸び、服装も袴のようなものに、背中には円陣を描くように矢印が回っている。
道祖神は高らかに笑う。幻想郷の上空に自分だけの空間を作り出し、そこで異変の解決者を待ちわびている。ただ、暇をつぶすためだけに。
「せっかくここのルールでやっているのだ。私を失望させるな」
道祖神の力は圧倒的だった。弱体化された状態でさえ月の精鋭にも劣らずの能力、それが80%も発揮されている。幻想郷でも実力者に名が挙がる二人でさえ、苦戦を強いられていた。
「お姉様!」
(くっ、ここまでなんて、、、)
「、、、フラン、生け捕りはやめよ。ここからは、純粋な殺し合い、、、!! 行去永は二の次に考えなさい!」
「クッハハハ!! 夜の女王とその妹君、僭越ながら私がリードを取らせていただきましょう」
「[紅符]スカーレットシュート!!」
「[禁忌]カゴメカゴメ!!」
「[道符] 燃ゆる怒りは修羅の道」
姉妹の技はいずれも道祖神に当たる寸前に軌道を曲げる。そして、二人の横に豪炎が作られ、道祖神に向かって一本道が出来上がる。
「[紅符]不夜城レッド!!」
レミリアのスペカによって炎の道に穴ができ、二人はそこから脱出する。
(ありえない、私の弾幕が当たらない! 運命が、、、無理矢理捻じ曲げられた!?)
「運命を操る能力、とてつもないチートだ。だが、私はあらゆる因果関係に道を作り好きな順序に入れ替えられる。つまりは無駄なのだ」
道祖神はそこまで言うと、姉妹の頭上へと歩む。
「生憎、見下されるのは好きじゃないの。私が上! 貴方が下よ!! [天罰]スターオブダビデ!!」
「お兄様を返せ!! [禁忌]フォーオブアカインド!」
ブオッ!!
「禁忌──!!」
真紅の弾幕と共に、フランが四人に分身してさらに空中へ上昇する。フランが道祖神を囲み、スペカを放とうとした瞬間。
「愚かだなぁ、妹君よ」
ズドドドドッ!
「ガハッ、、、」
四人のフランに、先程自らが撃った弾幕とレミリアの弾幕が背中から直撃する。
「先程自らが宣言したのだ。純粋な殺し合いと。退屈しのぎにはなった。が、そうだな、神らしく天罰でも下そうか。今から貴様等の館を破壊するとしよう。これも神に逆らった運命というやつだ」
(、、、!)
満身創痍な二人は、それでも立ち塞がる。自分等の尊厳を保つために、家族を守るために。
「私以外が運命を決めるのは許さない、、、!」
「[禁忌]レーヴァテイン」
「[神槍]グングニル」
フランが作った槍をレミリアが受け取る。
レミリアも同時に自ら槍を作る。
「クハハハ。弾幕ごっこの外の技、ゲームや漫画なら認められんだろうな、、、いいだろう、来たまえ。避けはせんさ」
「[禁槍]クレイジアスカーレット!!」
ギュルルルッッ
二つの槍はレミリアの周りを高速で回転して飛び回り、無数の紅い弾幕を生み出し道祖神へと投げられる。
ギュオンッ!!
「、、、見事、、、」
道祖神は言った通り、姉妹の技を回避しなかった。
技を真正面から受けた道祖神は弾幕を受け、身体は焼け爛れている。しかし、その状態でさえ道祖神は神たる立ち振る舞いであった。
道祖神は涙を流しながら、道祖神は姉妹を褒め称える。
「これが血の絆、姉妹というものか、、、! 非常に美しい」(あんな大技を真っ向から食らって、、、!? 狂ってる、、、!)
「気に入った!!美しい姉妹愛だ!今日のところはもう帰りたまえ、なにも私はこの幻想郷を破壊したいわけではない。今は美を模索しているのだ」
「美を、、、模索、、、?」
フランに肩を貸しているレミリアの疑問の呟きに、道祖神は答える。
「そう、万物を拒まず、受け入れる幻想郷。だからこそ異界の私でさえ入れたわけだが、まだこんなものではないはずだ。かつて料理人が間違えて花火を生み出したように、科学者が放置したものが叡智の炎となったように、あらゆる可能性を探すべきなのだ。この幻想郷なら尚の事、美のためだ、受け入れろ」
「腐ってるわね、貴方。貴方ほどじゃないけど、私も長生きなの。永く生きてると、必要なものばかり増えていく、日常のどうでもいいことが大事になってくるのよ」
「、、、、、、何が言いたい?」
道祖神は顔を曇らせ、不機嫌を顕にする。
「日常にある美しさも見えていない愚者が、私の幻想郷を語るな。そう言ったのよ」
「お兄様の方がよっぽど幻想郷について分かってたわ、神様ってのも大したことないのね」
ビキキッ
満身創痍の二人は道祖神に向かって悪態をつく。
道祖神は、怒りと共に二人に対する興味を失った。
「はぁ、、、お前達なら分かってくれると思ったのだがな。残念だ。せめてもの手向け、骨も残さん」
サァァッ
紅い霧が晴れていく。道祖神は紅霧を、雲を晴らし、二人に太陽光を当てようとしたがその瞬間、光のレーザーと星型の弾幕が道祖神に向かって放たれた。
ギュゥーン!!
「ノンディレクショナルレーザー!!」
「グレイソーマタージ!!」
タタタタッ
道祖神は空を走ってそれを避け、天に足を向けて彼女らを見上げる。
「これはまた、、、大人数だな」
「やっっっっと見つけたぜ行去永!!」
「行去永さん! なんですかその変な服は!?」
「あややや、随分変わりましたねぇ」
「魔理沙、早苗、突っ走りすぎよ」
「ご無事ですか。お嬢様、妹様」
「「咲夜!」」
「遅れてしまい申し訳ございません。この場は私めらにお任せを」
咲夜は二人に肩を貸し、ひとまず下へと降ろしながら話す。
「パチェリー様の魔法でも紅霧を維持するのは難しいらしく、ここはこの咲夜めにお任せを」
「、、、えぇ、そうね。主のできぬことをこなすのが使用人だものね。なら、命令よ咲夜。あの馬鹿を引きずり下ろしなさい」
「御意に」
「絶対だよ!?絶ッッ対ね!」
「ご安心ください、強力な助っ人もいますので」
チュドドーン!!
「! では、行ってまいります」
咲夜は空へと飛び上がり、四人の元へと向かった。
「さぁ! ここで会ったが百年目!! この妖怪退治の専門家! 霧雨魔理沙がお前を退治してやるぜ!」
「お決まりの口上ね」
「別にいいだろ、言わないと盛り上がらん!」
魔理沙の口上にアリスは冷静にツッコミをいれる。
「二人の魔法使いに、そこの姉妹のメイド、天狗と巫女か。、、、どうした? 紅白がいないようだな?」
ニヤニヤと道祖神は五人に問いかける。
「そこまで隠す気がないといっそ清々しいわね」
「クハハハ、奴の能力は私の天敵なのだ。可能であればスキマ妖怪も無力化しておきたかったが、余程ここが大事なのだろうな。正面から真っ赤な顔で挑んできたぞ」
「結果は、、、聞く必要もなさそうですねぇ」
(どう見たって満身創痍なのに、なんでそこまで平然としていられるの、、、?)
「私が強い理由を教えてやろう。私は異界の神ゆえ、能力を外側から見れる。お前達とは認識能力が違うのだ。お前達の弾幕をこの一ヶ月、たっぷり観察したが、どれも散らすには惜しい。私が作る新しい幻想郷の美の一部となる気は──」
ビュンッ!! ビュオウ!! バラララッ!
アリス、咲夜、文のジャブ程度の弾幕が道祖神に向かって放たれ、ダメージを与えられずとも話を遮る。
「話が長い、精神が年寄りはこれだから」
「取材の時なら話してほしいんですがね」
「貴方の自分語りに興味は無いわ」
「全く、、、神を崇めよ、愚か者共が。不届き者には天罰をくれてやろう」
パキキキッ
「[六道]廻る輪廻と果てなき渇望」
ゴオッ!
道祖神の背から無数の弾幕が展開される。球形からレーザー、尖弾までそれは形を選ばない。
「幻想郷のルール! それは弾幕ごっこ!」
「単純明快、分かりやすいわね」
5人はそれぞれ重なることなく弾幕を避ける。
(なんて密度! でも弾幕ごっこなら)
(私達に分がある!)
「[幻符]殺人ドール!」
「[旋符]紅葉扇風!」
ヒュヒュンッ! ビュォッ!
咲夜の時間停止からの、文の突風によるナイフの加速、道祖神も歩いてそれを避けるが、避けれずに身体に掠る。
「おっと、そういえば当たってはいけないんだったな。避けなければ」
(? おかしいな、霧雨魔理沙ならもっとアグレッシブに攻めてくるものだと思ったが、いやに大人しい)
(やっぱり、永琳の言うとおり身体はまだ人間!!)
5人は行去永を探す道中、目撃証言のあった永遠亭で話を聞いていた。
永琳の予想では、道祖神はまだ身体の主導権を完全には握っておらず、身体もまだ人間のまま。付け入る隙はそこともう一つある。
(、、、ここまできたら力じゃどうにもならない、だから、彼女の力を借りる!)
バァンッ!!
魔理沙はなにもないところに弾幕で花火を打ち上げる。それは事前に決めていた作戦の合図であり、アリスと文はスペルを宣言する。
(((合図!)))
「「「スペルカード」」」
「む? なるほど、、、弾幕ごっこだと思っていたのは私だけだったようだな」
回避不可能、超高密度弾幕!
人形と自然と奇跡が入り惑う美しい弾幕、通常の弾幕ごっこならば許されない、逃げ道のない弾幕である。
「幻想風靡!!」
「グランギニョル座の怪人!」
「[奇跡]客星の明るすぎる夜!」
「ならばこちらも遠慮はせんぞ。[道符]
ギュンギュンッッ! ズバァンッ!
二人の弾幕の中央を切り裂くように刃の弾幕が道祖神から放たれる。
「妖怪と人間が神に勝てるとでも、、、他のニ人は、、、?」
咲夜は弾幕に隠れて時間を止めた、そして道祖神の後ろに魔理沙と共に回り込んだ。
「魔理沙、絶対に堕としなさいよ」
「分かってるぜ、、、覚悟しろよ行去永!! とっておきだ! [彗星]ブレイジングスタァー!!!!」
(三人は囮!! 狙いはこっちか!ふむ、防げないな)
魔理沙は八卦炉を後ろに構え、数多の星の弾幕と共に道祖神に、さながら本物の彗星が如く突撃する。
ドスッ、ゴォォォッ!!!!!
「ッッぐぁッ!!」
そのまま道祖神を連れて幻想郷最南端、道祖神が拡張し、荒野と化させたエリアへと向かっていった。
「、、、大丈夫かしら」
「永琳さんが考えた作戦ですし、問題ないんじゃないですか?」
「奇跡は起こすものです。きっと上手くいきますよ」
「だといいんですがねぇ」
四人の少女にできるのは祈ることのみ。
──ー
ゴォォー!
(もう少し、、、後少しだ!)
「、、、そろそろ止まれ、不愉快だ」
クンッギュンッ
「うぉわっ!?」
意識を飛ばしていた道祖神が目を覚まし、直線から真上へと道を作り出して路線を変更する。
(やべっ、止まんなきゃ!)
急ブレーキをかけた魔理沙に対し、道祖神は空中をゆうゆう歩いて語り出す。
「さて、霧雨魔理沙。お前の弾幕は星を模したもので特段美しい。知っているか? 人類は昔、星は手の届かぬものとして神秘的に考えていた。しかしながら、現代技術の発展により、星はただの物質となったのだ」
「うげ、まーた長い話か? 勘弁してくれよ」
「そう言うな。続きだが、そんな中でも、魔法使いという概念は、星に対して魔力や魔術の思いを馳せる。私としては実に美をくすぐられるわけだ。やはりお前は、私が作る新しい幻想郷に──」
ボボボンッ!!
「、、、、、、」
「うるさいぜ、バーカ。私は今の幻想郷が気に入ってんだ。これは異変! だったら! 異変解決の専門家の私が負けるわけにはいかないのぜ!」
「、、、、、、ならいい、、、貴様が辿るのは、破滅だ」
ゾッワァ、トンッ
瞬間、魔理沙の背筋が凍りつく。同時に身体がその恐怖から開放される。魔理沙の背を押したのは、紅白の巫女。異変解決のスペシャリスト
「霊夢!?」
「ボサッとしない! 前見なさい!!」
「身体を推してきたか!! [滅禁]無我痛快、破邪の道!」
ギュイーンドドドドッ!!
道祖神が腕を下から振り上げ円形に広げる。その腕の軌跡から、無数に破魔矢を象った弾幕が二人へ襲いかかる。
ヒュンヒュンッッ!!
「細かいことは無し!! 話は永琳からもう聞いてる! やることはいつもと同じよ!」
「ーッ! 分かったぜ、出し惜しみは無しだ!」
魔理沙と霊夢はマジックミサイルとホーミングアミュレットで道祖神の動きを制限しながら弾幕を避ける。
ガガガガッ!! ググ、、、!
「チィッ! 私と接近戦をするのは貴様だけだぞ博麗の巫女!!」
「あら、ここまで彗星に吹き飛ばされたのはどこの誰かしらね!」
「減らず口を、、、!」
バチィンッ!
「さっきまでの余裕が消えてるぜ? 笑顔はどうした、神様さん?」
ビキキッ
道祖神は手を上げて交錯し、振り下ろす。
霧が晴れた夜空から、高密度の蒼い隕石が落ちてくる。
「これは弾幕ごっこではないぞ、、、[隕符]
(規格外、、、!!)
(隙間がない!?)
「回避不能、最大限のズル。死にはせんさ、人としての形を保ててるかは知らんがな」
キュンッドドドドドォンッ!!
地上の荒野にクレーターが出来上がる。道祖神の拡張した擬似空間が崩壊寸前で止まり、それを道祖神は見下ろしている。
「クハハ、、、美とはいつも崩壊と維持のギリギリを保つものだな、、、私がいた世界は、その崩壊に耐えられなかった、、、お前のような能力を持つ者がいれば、結末は変わったかもしれないのに、なぁ? 紅い館のメイドよ」
カチッコチッカチッ
懐中時計の音が響く、メイドの両脇には二人の少女が抱えられていた。
「咲夜!?」
「お前! こっち来てたのかよ!?」
「嫌な予感がしたのは当たりみたいね、、、今回だけよ、私の世界に貴方たちを連れるのは」
カチンッ
咲夜の能力で世界の時間が停止する。道祖神でさえ逃れられない、絶対の理。
「私の身体から手を離しちゃだめよ」
「お、おぉ、、、」
「私は動けるから問題ないわ」
「、、、そう。じゃあ、ありったけをぶつけましょう」
カチンッ
時計が再び刻を刻みだす。道祖神の目の前に広がる無数のナイフと御札と星の弾幕。
「私の能力を知らぬはずあるまい!! どれだけ弾幕を重ねようとも! 私が道を作ればいいだけの話だ!!」
道祖神は真っ直ぐに道を作る。その前には、箒に乗り、八卦炉を構えた魔理沙と、お祓い棒を向けた霊夢の姿。
「道の神様の癖に知らないんだな!」
「いいことを教えてあげるわ」
「「道っていうのは! 歩んだ後に出来るものよ(だぜ)!!」」
「[魔砲]ファイナルスパァーク!!!」
「[霊符]夢想封印!!」
霊夢の巨大な光弾と魔理沙の極太のレーザー、二つが道祖神が作った道をなぞるように放たれる。
ビキビキ
「私を崇めぬ愚か者共が、、、!! 塵すら残さんぞ!! [道符]──」
ギリィッ!!
「「「!!!」」」
道祖神は自らの首を絞め、技の発生を防いだ。
神の中にある人間が反旗を翻したのだ。
「ッッ! 八和道行去永ァァ!!!」
ボッ、、、ギュォォォー!!!!!
二人の技は直撃、道祖神は墜落していった。
「よっしゃ異変解決だぜ!」
「、、、それは彼女次第でしょう」
「そう、、、ね、、、」
ガクッ
「おっと、気絶したのか」
霊夢は身体をダラリと預け、眠りに入る。
「永琳が薬を作ってるらしいわ。次に霊夢が起きるときには、異変の影はきっと無くなっているはず」
「月の賢者様が頭下げてきたんだ。私らはこれ以上は無粋だぜ」
道祖神と戦う前、5人は永遠亭へと赴き事の全てを知った。彼女らに頭を下げたのは、他でもないサグメ。ある意味で行去永と最も近い人物。彼女の後悔を知った5人の少女は、協力することにしたのだ。
行去永を退治せずに異変を解決することを。
──ー
ザリ、、、ザリ、、、
「ゲッホゴホ、、、振興を集めればこの程度の傷など、、、!!」
道祖神はボロボロの身体を推し、荒野を足を引きずりながら歩く。しかし、眼の前に現れた白髪で片翼の賢者が立ち塞がる。
「稀神サグメ、丁度いい。私の運命を逆転させろ。そうすれば、こいつの完全な消滅は避けてやろう」
「、、、行去永、聞こえているだろう?」
「先の抵抗で完全に沈黙している。語りかけるだけ無駄だぞ」
サグメの語りかけに答えるのは道祖神。サグメは首を摩りながら再び言葉を紡ぐ。
「この跡、君に対して怒っているわけではない。君はなんだかんだ責任を背負いすぎだ」
「五月蝿い、そんなもの聞こえ──」
「打算だなんだと言いながら、君は結局いつも無償で人助けをする。手を貸しすぎないように程々に、私のことも、店主に何も言われなくても君ならきっと助けに来ただろう」
ビキキ
「、、、その変声機を壊せば多少は口が減るか?月の賢者よ」
道祖神は敗北と幾度とない話の中断と不敬さに苛立ちが止まらない。殺気と神気を漏らしながらサグメを睨みつける。
「やればいい、出来るとは思えないが」
ビタッ
「!?」
道祖神が手を振り上げた瞬間、身体が停止する。
「覚えているか?君が初めて私に教えてくれた手話だ」
「ぐっ、、、!? アァ!?」
サグメはありがとうやこんにちわなど、とても初歩的な手話を混乱する道祖神を前に続ける。
「茶屋で君の話を聞く時、月の団子を喉に詰まらせた時、下らないジョークで滑った時、、、全ての時間が愛しいよ」
「やめろ、黙れ!」
サグメは変声機を取ることなく、道祖神の顔に右手を伸ばす。
「私の声は
道祖神は両手をサグメに伸ばし、そして
グイッ、ガクッ
肩を強く、優しくつかんで膝を着いた。
神気は消え失せ、サグメの眼の前にいるのは穢れを纏った一人の友人。
「、、、危なすぎるよ、、、少しは俺の気持ち考えてくれない?」
ボロボロの行去永はへニャリとした情けない笑顔をサグメに向けた。サグメはそれを見て安堵したように笑う。
「これで借りは返せたか?」
「元々借りなんて思っちゃいないよ、、、」
「私の眼の前で延々と居眠りをされては溜まったものではないな」
「ハハッ、だったらディズニーよろしく熱いkissでもして起こしてくれれば良かったんじゃない?」
行去永はいつものように軽い冗談を吐きながら立ち上がり、踵を返す。
「色んなところに謝りに行かなきゃなぁ、、、もしかしたら紫さんに殺されるかも」
「、、、行去永」
「はいはい、行去永です、、、」
サグメは変成機を取り外し、行去永の口に手を当ててその上から自分の唇を当てた。
「よ、、、? へ、、、? は、、、?」
サグメは唇を離し、変声機を再びつける。
耳まで赤く染めながら、サグメは行去永の前へと歩き出す。
「、、、私は君からされるのを望んでいるんだ。待っているから頑張ってくれ」
「ふぁ、、、ふぁい、、、 」
(いや、今しかないでしょうが!)
「サ、サグメ!」
ヒュンッ
行去永がサグメの名前を呼んだ瞬間、上空から6人の少女が現れる。
「あら、成功したのね。その間抜けな顔は行去永だわ」
「わー! 行去永さんお帰りなさい!!」
「よぉ! 随分遅かったな!!」
「あややや、これはもしや、、、お邪魔でしたかね?」
「早く神社に戻りなさいよ、紫がカンカンよ」
戻るやいなや、咲夜は痛烈な言葉を行去永に浴びせ、気絶した霊夢を背負いながら魔理沙は笑い、とびきりの笑顔で早苗は帰還を喜び、ニヒルな笑顔で文ははにかみ、呆れた顔でアリスはため息をつく。
「、、、、、、ごめんサグメ、また今度」
「ふふ、楽しみに待ってるよ」
絶好のチャンスを行去永は逃し、博麗神社へと連れて行かれた。
──ー
それからの一週間は大変だった。
博麗神社に戻ると、待っていたのは紫さんを含めた幻想郷の重鎮達。最初は紫さん直々の処刑モードだったのが、終わりよければの論で怒りは沈下されて助かった。
俺はは道祖神が暴れた二日間の修正の為、使い慣れていない力をフルに活用し気質を頑張って元通りにした。
霊夢さんの薬は完成していたらしく、起きた途端に俺は本気の拳骨を頭にもらい、しばらく気絶したらしい。なっさけね。
今回の件、異界から来たアイツは一つ大きな勘違いをしてたらしく、実はそこまで強大な神じゃなかったらしい。
幻想郷を狂わせられたのは、前の世界の貯蓄を使っていたに過ぎなかったそうだ。
あの時、消えたように見えたその肝心な神はというと、今も俺の身体の中に住み着いてる。はた迷惑に変わりはないけど、そのお陰で能力をありがたく使わせてもらってるけど。
んで、今日は異変解決祝いの宴会をするらしい。
「おーい、遅いぞ行去永ー!」
「病み上がりに持たせる量じゃないでしょ、、、」
行去永の両手には大量の酒瓶、そして魔法を使ってさらに大量の酒樽が行去永の横を進んでいる。
「仕方ないだろ、今回の首謀者なんだからよ」
「なんも言えねぇ、、、」
魔理沙は宴会の時間まで暇を潰すために行去永にちょっかいをかけている。
「、、、、、、ハハ」
「薄気味悪い笑い方だな」
「まぁ、アレが中に入ってるし」
「ふーん、、、おっと、そういやアリスに呼ばれてたんだった、じゃあなー」
魔理沙は箒に乗って魔法の森へと向かっていった
「? なんだ急に、、、あぁ、気が利くようになったじゃん」
風が爽やかに吹き抜ける平原、博麗神社へと向かう道の一つだ。
行去永の前方にいたのはサグメだった。
サグメは行去永を見て手話で話しかける。
「良い天気、ね。そうだね、宴会日和だ」
「、、、、、、私はいつまで待てばいい?」
「ゔ、、、もう少しだけ待ってください。実感沸かないんだよ、、、」
「はぁ、、、ヘタレ、意気地なし」
「ごめんなさい、すいません」
「そんな君だから、私は隣にいたいと思うんだがな」
「、、、そっか」
行去永は唐突に魔法で酒瓶を浮かせ、片手の親指と人差し指を立てる。そして少し上に持っていき、指をくっつけながら下におろす手話をした。
「? まだそのページは見てない」
「だろうね、だからしたんだもん」
「意味は?」
「秘密〜」
酒瓶を再び手に持ち、少し早足で博麗神社へと歩きだす。
(我ながら情けない、、、まぁでも、時間はいくらでもある。君の隣に立つ男に相応しくなるまで、もう少し待ってくれ)
外の世界で生を否定された男は、幻想郷で与えられた新たな生に希望を抱いた。彼は神がいることを除けば、彼は普通に友達を作り、少し働き、それなりに毎日を謳歌し、普通に恋をする、普通の男だ。
そんな人間の、ほんの短い幻想郷録でした。
〜fin〜
はい、かなり駆け足で終わったと思いますし東方のファンの方には中々申し訳ないような描写も多かったと思います。
ですがまぁ、初めての完結ということで作者的にはめでたいです!
ここまで見てくれた方、ありがとうございました!
因みに次は一次創作?っていうんですかね、を、投稿しますので、そちらの方も是非是非よろしくお願いします!
それでは改めて、ありがとうございました!