前話や感想でおおかた予想はついてますでしょうが、敢えて言います。
ここに転生者騒乱パーティー開催を宣言する!
ではでは!どうぞおお!!
「………っかしいな~」
十月三十日、頼斗は毎年九校戦同様に開催される魔法科高校の論文コンペティション、通称『論文コンペ』を見に日本魔法協会支部がある横浜に来ていた。九校戦ほどではないが、毎年かなり注目される催しだ。頼斗は今回、グランドミッション『敵の侵攻を鎮圧せよ』をクリアするためにここへ来ていた。
しかし、頼斗の母校である一高のコンペ開始まであと一時間という時に、頼斗の意識は自身の脳内…普段使っている転生者スレに向いていた。
「…なんで誰も出ないんだ?」
繋がらないわけではない。しかし、何を打っても返事が誰からも、一文字も返ってこない。
「………皆用事あんのかな」
が、特に疑うこともなく頼斗は伸びをして、会場の方へと歩みを進めた。
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同時刻、横浜のとある高層ビルの屋上。そこでは日傘を立てて出来た影の下で紅茶を嗜む妖艶な雰囲気を醸し出す金髪の女性と、そのすぐ横で右手を横浜の立体地図を映すパソコンのキーボードに走らせ、左手で左耳に装着されたインカムのような装置を押さえる、メガネをかけた二十代後半程の男性がいた。
「………ふぅ」
「さて、最終確認です。皆さん、いいですか?」
『こちら地上班代表、
『地下シェルター班代表、条之内城護。こっちも問題ねぇぜ』
『はいはーい、サポートコンビ代表
「オッケーです。もうすぐ敵の攻撃があるので、それを合図にそれぞれ行動を開始してください」
「………そろそろかしら?」
「そうですね。さて、彼はどんな反応するのか、ちょっと楽しみです」
本来居るはずのない存在たちも、いよいよ動き出そうとしていた…。
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今年の第一高校のテーマは、加重魔法の三大難問という、現在の魔法技術では実現困難と言われている三つのテーマ…尤も、その内の一つの、所謂『飛行魔法』は解決されているが…の一つである『重力制御型熱核融合炉』についてだ。三大難問の一つと言われているだけあって、このテーマには魔法大学関係者や民間研究機関の研究者も注目していた。
無論頼斗もリーナからこのテーマを聞いた時は驚いたが、今日はそれ以上に驚かされた。継続的核融合を捨て、『ループ・キャスト』を用いた断続的核融合を目指すというのは、それほどに斬新な発想だった。会場の後方でそんな後輩の舞台を見届けた頼斗は、ステージの裏手へと向かっていた。
「…さて、後輩の激励に行くとします…!!?」
ステージの裏手、生徒の控室へ向かおうとした瞬間、轟音と共に会場がガクンと揺れた。それとほぼ同時に通常のライフルとは明らかに違う銃声も大量に聞こえてくる。
「この音…フルオートじゃねぇ…対魔法師用のハイパワーライフルか!?だとしたらマズい!!」
頼斗はステージ裏手扉をこっそりと開け、放送室の窓からこっそりと様子を見る。そこには計六人の兵士たちが魔法科高校の生徒たちに銃を向けている光景が広がっていた。
「…さてどうするか…なるべく素早く変身できるやつ………アレで決まりだな」
そう言って頼斗は目薬のようなパーツが付いた装置…メガウルオウダーを左腕に装着し、いつもの白狐の面を被ってステージに続く階段をゆっくりと登っていった。
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三高の生徒…吉祥寺真紅郎は焦っていた。
今やライバルである一高の司波達也…彼らに今度こそ一泡吹かせようとした矢先に謎の襲撃。自分たちの研究は対人に転用できると知っていたのだが、使おうとした途端ハイパワーライフルをすぐ横の壁に撃ち込まれた。次は外さないだろう。
何より…数年前のトラウマを呼び起こされている。自身の両親を失った、あの忌々しい事件を。
「……!?」
しかし、階段を登ってくる音には気づけた。そちらを見ると、何かの装置を左腕に着け、右手に緑色の眼のようなアイテムを持つ、白狐の面を被った男がステージに上がっていた。どうやら襲撃してきた兵士たちはその存在に気づいていない。
「あなたは…」
男…頼斗は装置…メガウルオウダーに緑の眼…ネクロムゴースト眼魂をセットし、装置を展開。横部のボタンを押すと、セットされた眼魂から幽霊…ネクロムのパーカーゴーストが出現した。兵士はここでようやく頼斗に気づき、パーカーゴーストにハイパワーライフルを撃つが、簡単に弾かれる。
頼斗がメガウルオウダーの目薬の部分を押すと滴がメガウルオウダーに落ち、エメラルドグリーンの波紋が辺りに広がる。直後、光が頼斗を包み、パーカーゴーストが被さる。その瞬間光が消え、頼斗は一本の刃のような角を持つライダー…『仮面ライダーネクロム』に変身した。
「………さて、いくか」
「…う、撃て!!」
その言葉と同時に何発もの銃弾が頼斗を襲うが液体金属である『クァンタムリキッド』で全身を覆うネクロムには効かない。腹部や胸部に襲いかかった弾丸は簡単にすり抜けて壁に着弾した。
「効かないってのに………なッ!」
メガウルオウダーを戻し、軽くジャンプすると頼斗はまさしくゴーストのようにフワリと浮かび上がった。そのまま、頼斗は手に持っていた武器…ガンガンキャッチャーに白の眼魂…サンゾウゴースト眼魂を装填し、銃モードにして兵士たちに向けた。
「はっ!!」
放たれたエネルギー弾は会場の奥にいた兵士たちを武器ごと吹き飛ばし、戦闘不能にさせる。そして頼斗はそのまま空中で仕上げに入った。
「はああぁぁーーっ!!!」
「うわああぁぁ!!!???」
再びボタンを押し、滴を眼魂に与えて放たれた頼斗の必殺キックである『ネクロムデストロイ』をくらい、兵士たちは壁にめり込んで気絶した。さすがに今回は義妹であるリーナがいることもあり、威力は自重した。が、リーナからの「なんでここにいるの?」という驚愕と疑念の視線に、頼斗は堪えられなくなってその場を急いで後にした。
それから外に出ると、街の所々が炎に包まれ、戦場と化した横浜が広がっていた。
「改めて見ると酷いな………うおっ!?」
頼斗が変身を解除して呟いたその時、何かが物凄い速度で頼斗の前を走り抜けた。それを不思議に思った頼斗は、いつの間にか自分の手に握られていたインカムのような装置に気がついた。
「………何だコレ?………もしもし?」
取り敢えず左耳に付けて話しかけると、なぜか返事はすぐに来た。
『やぁ、こうして声で話すのは多分初めてかな?
「!!?…何モンだ」
頼斗が真っ先に疑ったのは、以前オーマニキが話していたもう一人の転生者の可能性。しかし、それは本人から否定されることとなった。
「
その瞬間、頼斗は言葉を失った。
「………相談ニキ、ですか…!?」
「スレの返事無くて混乱したでしょ?ごめんね。実は九校戦が終わった時ぐらいに、僕たちに同時にミッションが届いてね。君をサポートしてくれってなったんだ。あの後から参加したゴーストライダーニキとオーマニキ以外、全員ここに来てるよ。…えっと今飛行ニキが狂喜の叫びでポケモンたちにはかいこうせんさせてるけど見えてる?」
「…………ボーマンダ、チルタリス、カイリュー、はかいこうせん!レックウザ、りゅうのはどう!ヤッハアア!デストロイェーイ!!!」
「………はい、一応…」
頼斗の目には、ビルの間を飛ぶ四体のポケモンとその内の黒いレックウザに乗る白い服の男性がパリピのような奇声でポケモンたちに指示を出している様子が見えていた。
『…一応自重するよう言っとくね。だから、君も変身して暴れて良いよ。あ、ちなみに君にこのインカム渡したのは音速ニキね』
「………じゃ、俺も行ってきます!」
『敵が多い場所とかはこっちで教えるから』
「はい!」
気合いを入れ、頼斗は横浜の街へ駆け出した。