迅竜と少女の奇妙な絆

 この小説はせと。様主催#モンハン愛を形に2021の企画小説となります。この場をお借りしてお礼申し上げます。今回は参加させていただきありがとうございます。
 未熟で拙い文ですが、誰かの心に刺さればいいなと願っています。

 では、一狩り(狩りしないけど)行こうぜ!

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密林の迅竜の気まぐれ()

 テロス密林近郊にその村はあった。狩場に近くモンスターが侵入してくることも珍しくない小さな村。その村に今までにないほどの緊張感が漂っていた。

 

 

「あやつをどうにかできないのかね…!?」

「どうにかと言われましても…通りすがりのハンターさんもいないので現状嵐が過ぎ去るのを待つしかないでしょう……」

「その嵐の矛先がこの村に向いてしまったらどうするんだ!」

 

 ものすごい剣幕で村の受付嬢に詰め寄る老いた村人。心配になるのも無理はない。危険度の高い飛竜が住み着いたことが確認されたのだ。

 その名を迅竜ナルガクルガ。普段森林の奥深くに生息している飛竜で、普段狩り場では滅多にお目にかかることはない。極めて好戦的であり、テリトリーに侵入すれば生きては帰れない。そんな常識がこの村には存在していた。

 それもそのはず、この村に元々いた居付きのハンターはナルガクルガを相手にして死んでいった。今回現れたナルガクルガがその時のナルガクルガとは限らないが、警戒して当然である訳だ。

 

「大変だ、子供が薬草を取りに村を出ちまった!!」

「なんだって!?」  

 

 凶報。心配させないように言わなかったのだろうが、それが裏目に出てしまったようだ。連れ帰ろうにも発覚が遅すぎたことも相まって、取り返しのつかないことになっている。

 

「……そこの家の親は確か」

「父親は遠出して帰ってくるかわからず、母親は流行り病で娘さんが看病してるんだ」

「…襲われないことを祈るだけだ、俺たちにできるのは」

「そうだな……」

 


 

「あなたはなんでここにいるの?」

「グルル……」

 

 密林の奥深く。といっても村から徒歩で侵入できる場所ではあるが、そこには通常よりも巨体なナルガクルガが少女を見つめあっていた。ナルガクルガはどちらかというと警戒色強めの、しかし興味深そうな眼差しで。少女は興味心と少しばかりの恐怖心を。

 相対しているのが大人ならばよくて威嚇、最悪の場合首から上が地面とキッスしていたところだろう。

 

「あなたはここにすんでるの?」

「……」

 

 興味を失ったかのように顔を背ける迅竜。しかし興味の尽きない少女は顔を背けた方──右刃翼側に回り込んだ。

 

「カァァ……」

「ねむいの?」

 

 少女は迅竜の下顎をなでながら寄りかかる。上半身を預けたところでナルガクルガの鼻息で少女は転がった。

 

「いてて……すごいなぁ……」

「グルル……」

 

 うっとりするような、見惚れるような眼差しで少女はしばらく見つめていたが、はっと気づいたように薬草でいっぱいになったかごを抱えて森の出口へ走っていった。

 

 その様子を何かを警戒するように影の暗殺者は見つめ、音もなく翼を広げた。

 

 

 森を抜け、砂浜を駆けていく少女。真昼の密林は生物のスタミナを奪っていく。体力の少ない少女は息を切らしながら、しかし懸命に足を前に進めていた。

 

「ガギャア!」

「ガァ、ガァ!」

 

 だがここは狩り場。ハンターではなくモンスターを含む全ての生き物にとっての(・・・・・・・・・・・)生活の場。力のない少女は格好の餌である。

 

「はぁ、はぁ、はぁ」

「ギャ!」

「きゃ!?」

 

 焦りからか、足をもつれさせて坂道を転がってしまった。隙が生まれた獲物に目を輝かせながら飛びかかるランポスの群れ。

 後ろ足で少女を押さえつけ、肉食獣特有の鋭い牙を煌めかせながら食らいつこうと喉を伸ばしt

 

 

「……え………?」

 

 土埃と転んだ時にできた額の切り傷からの出血、そしてランポスのヨダレで汚れた少女は目を見開いた。自分がこの蒼くて怖いモンスターに食べられなかったことに驚いていた。起き上がって左の崖を見ると、朱いトサカのついた細長く蒼いもの(・・)が真紅の血を吹き出しながら張り付いていた。そして背後には森の奥深くで休眠していたはずのナルガクルガが翼を紅く染めて佇んでいた。

 

「……」

「ギャワァオォォォォォォッッッ!!」

 

 漆黒の巨体から金切り声を放ち、周囲の生物を威圧する。その目は真紅の宝石のようだった。

 逃げようとするランポスの群れ。その後ろに真紅の眼光を残像のようにたなびかせ回り込む。ランポスたちが振り向こうとする間もなくその首が落ちた。

 

「フシュルルゥゥゥゥ……」

「……ありがとう………」

 

 そういって少女は気を失った。

 

 


 

 

 

 

「その後どうなったんすか!?」

「そんな焦らないでエイデン。村の入り口まで咥えられて運ばれてきたらしいわ」

「野生の、それもナルガクルガがぁ!?」

「村の人みんなびっくりしてたわ」

 

 ここは前線拠点セリエナ。集会所の温泉に浸かりながら懐かしげな表情を浮かべながらかつての少女──メディスは語っていた。今しがたエイデンと共に古代樹の森でナルガクルガを狩猟して来たところであった。

 

「初対面で白疾風を狩りに行った時の様子はそれが原因だったんスね」

「あれはまだ未熟だっただけよ。仕方のないことだけど」

「トラウマはなかなか消えないッスよ」

 

 メディスの首元には白味がかった尾棘がかかっていた。

 目を瞑り、かつての記憶を辿る。得た絆は今を生きて歩み続ける。ハンター同士、人間だけの絆ではない。時にモンスターと、大自然と、世界と絆を紡ぐ。

 

「さぁ、探索に出るわよエイデン!」

「うッス!今日こそ大いなる存在の正体を突き止めるッスよ!」

 

 雪の降りしきるセリエナの頭上には、幾つもの星が瞬いていた。

 

 


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