公式で霊感のある男の過去を捏造!性格も捏造!存在しない幽霊を登場!何一つとして関係のないGOの恐竜!
そんな小説ですがよければどうぞ。

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幽霊恐竜と見える少年

 化石。それに心惹かれぬ男子はいないだろう。簡単に手に入るとなれば尚更。彼もその例に漏れず恐竜の化石が入ったガシャポンを回した。

 

 牙の化石――よくわからない足の骨の一部だとかありふれたアンモナイトよりもカッコいい、当たりと言えるだろうソレを手にした日の夜。そいつはやって来たのだ。

 

 

 

 ――我ははるか古代の支配者であった……。

 

 かの世界では力こそが全てであった。強くなければ飯も食えなかった。でもある日突然天変地異かはたまた宇宙人か、とにかく滅んだ。絶滅した。そんで土の中にサンドイッチとかもうマジ無念。

 

 肉が腐り臓腑が失せ骨が石となり土に覆われてなお我が意思は消えることなく残った。されど力は無い。永遠に闇の中、いつ来るかもわからぬ助けをウン年間ウン度寝を繰り返し待ち続けると思っていた……ら!

 

 人の手で発掘された。よかったー次は厳かかつ清潔感あふれる博物館生活だと思ったのに次はガチャの中である。ないわー。我の価値ワンコインである。高くてもスリーコイン。あの巻貝共と同列扱いとかマジないわー。下手したらウンコともイコールよ? これちょっとどう思う人の子〜?

 

 ……あっさては夢だと思ってるな人の子。残念ながらこれは現実なんだよおら寝ようとするなそんな枕なんかこうだ! ぺっ! ってこやつ、枕なくても寝れるタイプか……。

 

 まあともかく、我の入ってたガチャ引き当ててくれてありがとうおめでとう。景品として我はキミに憑く。早寝早起きの健康的な生活をするのだぞ人の子よ……我は変温動物だからおひさま浴びないと上手く動けないから……。

 

 

 以上が恐竜――その幽霊が枕元に立って延々と説明してきたあげくの発言である。

 

 

 

 少年はいわゆる『見える人』――というものだった。視界のあちらこちらにゆらめく人影、一応の前置きが必要な二足歩行をする闇。そこ行く人となんら変わりない残留思念。それらが本物の人間じゃないと気付くのには少しの年月が必要だった。

 「あそこにおばけがいる」……そんな子供の言うことを信じる大人が少なかったのは幸か不幸か、少年が『普通』の枠組みに乗っかることを許してくれた。

 

 

 向こうに自分が『見えている』と気付かれると絡まれる。害が出る。良い幽霊も悪い幽霊も、今を生きる人へ自分の心残りを主張したい点についてはたいして変わらない。何も知らない人達に誤魔化すのも嫌で嫌で仕方がなくて。もう視線を合わせたくなくて、外に出る時は目隠しを巻いて過ごすことにした。家族にはオシャレのためだと嘘をついた。誤魔化した。分かってくれないだろうから。

 ……目には表情が出る。表情が分からないと話しかけにくい。だからか同年代の子達も寄らなくなったが、日々の平穏と比べたらどうってことないデメリットだ。

 

 

 少年はサッカーをしていた。その鋭い霊感を生かして有名選手の霊――本当に大丈夫な霊か見極めるのにかなりの時間を必要としたが――からこっそりとコーチを受け、めきめきと頭角を表し、将来有望な小学生とちやほやされていた。……影では変なやつとひそひそ陰口が聞こえてはきたが。

 

 

 そんな過去がある少年だったが……こんなのに絡まれるとか一ミリも思ってなかった。

 

『こんなの呼びは酷くない人の子〜? 我ってば人の子から人気高い肉食恐竜よ? ほら見て立派な歯並び』

 

 むいっと口を開いて見せつけてくる。威嚇だろうか。どうやら徹底的に無視をする、という攻撃的な悪霊の回避方法はこのよく分からない幽霊恐竜にそのまま流用はできないらしい。

 無視されているとわかっていてもコイツは話しかけてくる。朝自分が起きた時からくだらない事を延々と話しかけているヒマ恐竜。このままだと学校までついてくる……悪夢だ。近くの神社でお参りしたら消滅しないだろうか……恐竜がお参りに負けるビジョンが見えない。無理そうだ。

 

 はあ、とため息をつく。こんなことならガシャポンなんて回さなければよかった……そう後悔してもまさかガシャポンを回しただけでこんな事が起きると誰が予想できただろうか。ガシャポンから出てきた変なモノに憑かれる、なんて経験をしたのは全世界探しても自分一人だけだろう。

 

「お前、いいかげんにしろよ」

 

『何を? ……おお人の子、学校が見えてきたぞ。あれが人の子が通う学校か?』

 

 少年が苛立っている理由を何一つとして理解していない恐竜。ちゃんと勉学に励むのだぞ、友達を大事にするのだぞ、と少年を気にかけているが、一番の悩みの種である恐竜にそれを言われたくない。少年の眉間に皺が寄る――まあ、目隠しをしているためそれは他人に分からないのだが。

 

 視界を邪魔しないようにと教室にまでは入らず校門でお座りする、変なところでこちらを気遣っている幽霊恐竜。ずっとこっちを見て、ゆらゆらと尻尾が揺れている。……犬だろうか?

 

 

 特に意味もなく視線を動かす。ふ、と目が合った同級生は直ぐに顔を背ける。関わりたくない、そう言っているも同然の動きだった。

 幽霊恐竜を気にして授業に集中しきれていない自分を気にかけるような、積極的に話しかけてくる友人はいない……いや、まず友人と言えるほど関わりの深い人間がいなかったか。自嘲の笑みを浮かべても、誰も自分へ話しかけはしない。……変わらない。周囲の人間と自分の間には壁があって、それを乗り越えようとする者は誰もいない。

 

 ――誰も自分を理解してはくれない。サッカーも、一人でしているようなものだった。

 

 どうやら待っている間に自分のことを忘れる都合のいい展開はなかったらしい。下校の時間まで律儀に一匹で大人しくしていた幽霊恐竜が彼の隣を歩く。

 

『そういえば人の子、友達と一緒に下校はしないのか? 一人は危険だぞ』

 

「……友達なんていない」

 

 恐竜に豊かな表情筋は無いから表情は変わらない。けど、彼の言葉を聞いてどことなくしょんぼりした……そんな気がした。

 

 

 

 幾日か経ってもこの恐竜は飽きることなく自分に憑いていた。……なぜコイツは自室に置いているサッカー雑誌をウキウキで読み漁っているのだろうか。サッカーに詳しい恐竜ってなんだ?

 

『人の子、尾刈斗行こうよ尾刈斗』

 

 ほら、と前足を器用に使い雑誌のあるページを開きこちらに見せている。

 

『尾刈斗なら見えることを隠さずにありのままでいられるよ人の子〜』

 

 ――尾刈斗中学校。文字通りオカルト方面に強い中学校だ。霊感があるスピリチュアルな生徒を応援するとオープンにしている。嘘か本当か分からないが霊能力を活かした職につく卒業生が殆どだ、とも。

 

『我としては尾刈斗が一番人の子の良さを生かせると思うんだけど〜〜』

 

 今の自分は他人から見るとちょっと痛々しい子――それ以上でもそれ以下でもない。そんな奴が尾刈斗に行きたい、なんて自分から言ってみろ。どうなるかは火を見るより明らかだ。

 

『学区内だから尾刈斗行けるじゃんか人の子〜行こうよ〜』

 

 ごろごろとおねだりポーズをする恐竜。そんな爬虫類に対して可愛いなどまっったく思わない。こんな行動にコロッと絆される己ではない。というかうざい。枕をぶん投げるも、実体を持たない幽霊には当たらない。すり抜けていくだけだった。

 

 

 

 ――もう二週間が経とうとしている。この恐竜は口をひらけば少年にあれやこれやと要らない助言を授けてくる。お前に構う暇はないんだ、と引き出しの整理に取り掛かろうと取っ手に手をかけ……固いものが動く音がした。

 音の正体は恐竜の化石。――そうだ、これがきっかけだった。これがあるからこいつは自分に執着している。これがなくなれば、じゃあ……窓を開け下を覗く。ちょうどゴミ収集車が止まっていた。

 

『換気か人の子。うむ、換気は大切だ』

 

 その荷台目掛けて、化石を投げた。

 

『……あぁあああーーーーーーっっっっ!!?!?』

 

 何が起きたのか理解するのにに数秒かかった。恐竜が叫び声をあげながら窓から身を乗り出し叫ぶ。少年が投げ捨てた化石を掴もうと必死に手を伸ばしている。既に荷台に落ちた後、勿論届かない。

 

『ちょ待って!! 人の子ぉおおお!!』

 

 窓枠に足をかける。遠くなるエンジン音。どしどしのすのすとゴミ収集車を追いかけて走る幽霊恐竜。これで当分は帰ってこないだろう。

 二週間ぶりの平穏が訪れた瞬間だった。

 

 

 

 名もなき妖しきモノがあった。夜闇を電気で切り裂かれ、力を持たないはずのナニカ。それはこの街に満ちる負を喰らい、少しずつではあるが力を得ていくモノ。それはただ一人をじっと狙っていた。

 妖しきを感じる力を持ち、更には数多の負のおもいを向けられる一番のご馳走――それが少年だった。

 

 ――恐ろしや、恐ろしや。

 

 ――あの大蜥蜴を誰ぞ追い払いたまえ。

 

 ――できぬ、できぬ。

 

 ――敵わぬ、敵わぬ。

 

 ぞわり。蠢く。それは喜んでいるようにも見えた。

 

 ――離れたか、離れたか。

 

 ――今ぞ、今ぞ。

 

 ――陽が落ちれば我らの時よ。

 

 ――好機は逃さぬ。動くは今日。

 

 

 

 夕刻。

 

「君、最近変な事があったりしないかい?」

 

 話しかけてきたのは濃い紫の髪をした、頬に細い傷が複数走る中学生。……尾刈斗の制服。どこからどう見ても厄介ごとの気配がする。

 

「いえ、特には」

 

「あ、いや……ならいいんだ」

 

 っかしーな、と中学生は呟き少年と反対方向へ数歩進む。ウロウロと何かを探している、そんな動きをしている。

 何だったんだろう、と時折後ろを確認しながら家路に向かって――何かに口を塞がれ、引き摺り込まれた。

 

 

 

 右よし左よしと何度も確認したり宙のニオイを嗅いだりした後、ケータイを開く。

 

「……八墓(やつはか)、大丈夫そうだぜ?」

 

『何行かせちゃったんですか先輩!!』

 

 電話越しに大声が耳に響く。尾刈斗中学校の中で予知能力に突出しているとある人物がある日「この日にこの小学生を狙ってヤバいのが動く」と言った――それがきっかけで始まった大捜索は皆真剣に取り組んでいた。霊から身を守る術を持たない小学生の保護、下手をすれば命の危機に繋がるが故だ。

 

 尾刈斗の新入生は在校生が見出すことも多い。その基準は勘であったり、占い、お告げ、そして――霊による被害。尾刈斗中学校はごく普通の学び舎であり、怪異への対抗策を身に付けさせる専門学校でもある。

 もし霊で困ったことがあれば寺社よりも尾刈斗を頼れ、と、ある人は言う。インチキやぼったくりは絶対に起きないからだ。理由はただ一つ。霊力の強い者が弱い者を守る伝統があるから。それは外部の人間がほとんど知らない真実。

 

「気配なにもしなかったしヘーキじゃ、」

 

『んなモン先輩がいたから引っ込んでるんですよ! 一人になった時を狙うに決まってるでしょうがぁあ!』

 

 興奮しているからかどんどん声が大きくなっている。(たたる)を怒らせると災いが起きる、なんて言われるだけはある。わかったわかった、と電話を繋げたまま辺りを探す。走る。

 少年はこの道を歩いていた。そんなに時間は過ぎてないからそう離れた場所は行ってない、はずだ。なのに。

 

「どこに行った……?」

 

 何も見つからない。ニオイも気配すらも感じ取れない。まるで、神隠しにでもあったみたいな――。

 

「やられた、()()()()()()! 今すぐ皆に連絡してくれ、入口を探す! いいか、場所は――!」

 

 

 

 真っ暗闇の中、少年はただ怯えていた。

 

 ――捕らえた、捕らえた。

 

 ――どうしてやろうか、どうしてやろうか。

 

 これまで見たどんな悪霊よりも恐ろしいナニカ、それが自分を見て喜んでいる。何をしても無駄、無意味。無邪気な幼児が虫にそうするように、オモチャのように、ゴミのように扱われるのは火を見るより明らかで。

 

「――っ、あ」

 

 這い寄ってくる。擦り寄ってくる。醜悪な手が、目に、眼球に触れようとして……。……?

 がぎん、ばぎん。硬質的な音。音がする度に揺れる。闇の壁が崩れ落ちていく。

 真っ暗闇のはずの世界に光が入って来た。

 

『――恐竜のエントリーだッッ』

 

 空から現れたのはあの幽霊恐竜。迷うことなく飛び降り、着地の衝撃で一際大きく空間が揺れる。

 ホイ、とこちらに何かを投げてよこす。それは捨てたはずのあの化石。

 

『遅れてすまんな人の子!』

 

 ――どうして、どうして!

 

 恐ろしいモノ達があり得ないことが起きていると狼狽えている。少年から離れていく。怯えている。

 

『我は人の子に憑いているのだぞ? どこに居ようと見失いはしない。それにほら――恐竜はカッコいいからな!』

 

 ――どうして! おれたちが先に目をつけていたのに!

 

 ――ずるい、ずるぃい!

 

 聞くに耐えない権利を主張し始めたソレに、恐竜は視線を向けて一言。

 

『黙れ』

 

 ――ぎいャあア!?

 

 ぐじゃり。踏み潰した。

 

「え、あ、へ…………だいじょう、ぶ?」

 

『人の子への恨み妬みが大元の小物に、この古代の支配者をどうにかできるはずがない』

 

 そう言いながらぐりぐりと足で念入りに……いや、気持ち的にはばっちいものを踏んで地面に擦りつけている、の方が近いかもしれない。

 ……待った、なんと言った? 『自分への恨み妬みが大元』? じゃあ原因は自分にある――?

 

『気にする必要はない、取るに足らない戯言よ。気にしすぎは体に毒だ、が……なんとかしたいと言うなら人の子自ら変わる必要がある』

 

 ちら、と少年を見る。声には出していないがその目は続きを要求している。――これまで他人を真に信頼してこなかった少年が、少しずつ変わろうとしている。

 

『他人の言葉を全て遮れとは言わん。ただ一つ、誰になんと言われようと自分を削るな』

 

 ――お、ま、おまえオマエおまえお前のせいだだだだたすけ、

 

『胸を張れ人の子、お前はお前であるだけで素晴らしい!』

 

 喉を震わせ勝ち名乗りを上げる。

 

 現代に蘇った恐竜達が暴れる映画――そのラストシーンを思い出させる力強い咆哮。自分がここにいると自分自身に宣言するかのような雄叫び。

 

 確かにこの時、少年はその在り方を――いいな、と思ったのだ。

 

 

 

 

 

 とある中学校に一年生でサッカー部のキャプテンを務めるようになった生徒がいる。彼の名前は『幽谷博之』。

 どうやってサッカーが強くなったのか、霊が関わっていると隠すことなく言えるようになった君がいる。

 

 その事実にあの出来事とこの恐竜が関与しているかしていないか――それは、彼らしか知らない。


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