とある少女達の話をしよう。
少女は産まれながらに己の足が不自由であった。不自由ながらも一族の家業である「調整」の役目を全うできるだけの能力があった。
少女は一族の家業である「芸能」の才があった。少女は自分の才に溺れる事なく血の滲む努力をした。
少女の一族の家業は百喰の邪魔となる存在「掃除」であった。優しい少女は自分の心を傷付けながらもその役目を全うする為に研鑽を続けた。
少女は努力家で、真っ直ぐな性格であった。その性格は騙され易く、少女の一族の家業である「金融」には不向きであった。しかし彼女は努力を止めなかった。
彼女達は幼いながらに一族の役目を果たせる様に努力した。しかし一族の大人達はそれは当然の事だ、出来て当然なのだと言い捨てた。
その言葉は幼い彼女達の心に深い傷をつけたのは言うまでもない。彼女達は大人達に、両親に、認め貰う為に頑張ったと言うのに待っていたのはこれまでの自分達の努力の否定だった。
特別な一族に産まれた、しかし彼女達は子供なのだ。ただ頑張ったと、良くやったと褒めて欲しかった。それを否定され、彼女達は大人達に絶望していた。
その時、暗くなっていた彼女達の心を照らす存在が現れた。
それは自分達と同じ年頃の少年だった。
少年は彼女達の努力を否定せず、その努力を称賛した。それは彼女達が最も欲しかったもの⋯⋯その言葉で心が救われた。
彼女達は1ヶ月に1度会う少年と過ごす内に、百喰一族の人間としてではなくただ1人の子供して過ごす事ができた。彼が綺羅利とリリカの両親の客人であると後々知ったが、そんな事はどうでも良かった。短い時間とはいえ少年と過ごせる事が楽しみであり、幸せだったから。
短い時間とは言え、彼と過ごす内に彼女達は惹かれていったのは言うまでもない。それが【恋】だとは気付くのは中学生に上がった時だった。中学生に上がった彼は何かと忙しく、会うことが出来なくなった。
彼女達は寂しく、切ない気持ちになったが、それでも良いと思った。彼は一族の外の人間、やがて自分達とは違う道に進む事はわかっていた。いずれ来る別れが来たのだと自分に言い聞かせた。
彼女達は少年との思い出と恋心を胸の一番奥底に仕舞い込み、それぞれの役目を果たす為に歩み始めた。どんなに辛くとも、苦しくとも、心の奥底に仕舞った思い出が彼女達の支えとなった。
時は流れ、彼女達は一族の役目を十分に果たし、それぞれの一族の中心となっていた。
そして約数ヶ月前、ある話を聞いた。綺羅利が一族の老人達に責め立てられてた時、従者の青年が老人達に冷水をかけ、綺羅利をお姫様抱っこで連れ出したと。
始めは何処のドラマだと笑っていた彼女達だが、黙って抱えられて去る綺羅利はどんな顔をしていたのか気になった彼女達はその時の監視カメラの記録を見ることにした。
一族の子供達で集まり、監視カメラの映像を見る事にした。そして映像に映っていたのは、1人の青年だった。
それを見た彼女達は直ぐに気付いた、あの少年だと。
自分達を振り回す綺羅利、何故かその従者になっている初恋の少年、恋愛物の様にヒロインをお姫様抱っこで連れ出すシチュエーション、それを目の当たりにし彼女達が感情を大爆発させたのは言うまでもない。
少年の事を調べると綺羅利に百花王学園に入学させられたと分かった。それからの彼女達の動きは早かった。
抱える仕事を速攻で終わらせ、自分達も百花王学園に入学しようと考えていた。そんな時、老人達から綺羅利から生徒会長の座を奪ってこいとの命令が出た。
彼女達にとって百喰の当主の座など、どうでも良かった。そんな物は彼と再び会える喜びと比べたら、些細な事だった。
〜現在 百花王学園 生徒会室〜
想い人を振り回す綺羅利に対する怒り、何故彼はそれに従っているのかなど、色々な思いがあったものの
「ぁあ⋯⋯あの時の別れが今生の別れだと思っていた⋯⋯普段は運命なんて信じない。だがこの時ばかりは言おう、この再会はきっと運命だと」
車椅子の少女は翔の腹部に顔を埋めていた。
「もう会えないと思っていたわ。でもきっとこれと私と貴方との運命の赤い糸が引き寄せた結果ね」
マスクを外し、少女は翔の背から抱き着き、涙を流しながら呟いた。
「神などこの世にいないと思っていたが⋯⋯貴方と再会出来た事を神に感謝しよう」
銀髪の少女は翔の右手を取り、自身の胸元に引き寄せ、その熱を確かめていた。
「わぁぁぁん、会いたかったよぉ〜」
ツインテールの少女は泣きながら翔の左腕に引っ付いており、犬が周りを回っていた。
翔は困惑しているものの、少女達に見覚えがあった。
(この子達は⋯⋯もの凄く見覚えある。それよりも⋯⋯当たってる! 色々な方向から柔らかい感触が⋯⋯)
翔は女性特有の柔らかい感触を全身で感じている。しかし彼は忘れていた、此処は何処で、誰がいるのかを。
「「翔」」
2つの冷たく、重い声が生徒会室に響いた。
それを聞いた翔はゆっくりと声のした方向を見てみる。そこに居たのは綺羅利とリリカだった。
「あらっ随分と楽しそうね」
「鼻の下が伸び切っているぞ」
綺羅利はニッコリと笑っているが、彼女から発せられる冷たい気配で怒っているのが分かった。
リリカは仮面を着けているので表情は分からないが、綺羅利と同じ様に冷たい気配を漂わせているので怒っているのは間違いない。
「フフフ、本当に⋯⋯仕方ない人ですねぇ、私の旦那様は」
入り口側を見てみると、綺羅利と同じ様に笑っている夢子が立っていた。
真っ赤になっていた翔の顔が、血の気が引き、真っ青になっていったのは言うまでもなかった。
この光景を見ていた楓はノートパソコンを閉じて早々に部屋から出ていった。
途中に翔と目が合って
『楓! 助けて!!』
『無理だ、自分が巻いた種だろう⋯⋯後、名前を呼ぶな』
『薄情者ー!』
『僕は此処にいると命の危険を感じるのでこれで失礼する』
などとアイコンタクトをし、生徒会室から出ていった。
楓は廊下を歩きながら翔の事を考えていた。
(会長に副会長、蛇喰夢子、新たな4人の女⋯⋯全員が全員、ヤバい女達だ。
アイツはそう言う女達を引き寄せるフェロモンでも出してるのか?
それに⋯⋯黄泉月のあの態度)
翔が女達に囲まれてる様子を見ていた生徒会メンバー達。
シーンと静まっていたからこそ、横からの小さな声が聞こえてきた。
『あははっ⋯⋯かけっち、本当に節操ないよねぇ。心の広い私でもそろそろ我慢の限界だよぉ〜』
楓は横を見た、そこには綺羅利や夢子と同じ表情をした、るなが舐めていた飴を嚙み砕いていた。
(アイツが誰と結婚するか分からんが⋯⋯誰と結婚しようと待ってるのは⋯⋯。
まぁアイツならどんな生活だろうと上手いことやりそうだがな)
などと考えながら帰宅する楓だった。
と言う訳で新しいヒロインは
等々喰 定楽乃
和楽喰 淑光
骨喰 ミラスラーヴァ
狛喰 希
の4人になりました。