白浜和美、黒嶺ユメ、篠月橙の3人は裏バイトのためM県S市にある杜王町に向かっていた。今回のバイトは漫画家アシスタント、勤務日数は1日、日給はなんと100万円。依頼者の名前は、岸辺露伴

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漫画家アシスタント

「ウマい!これウマいッスよ先輩!」

「そんなに食ったらまた豚になるぞ」

新幹線の中で牛たんのみそづけ弁当を勢い良く掻き込む橙に少し呆れ気味に声をかける

「大丈夫ッス!私食べても太らない体質なんで!」

「コイツ豚になった事忘れてやがる…」

やれやれとため息をつきユメちゃんの方へと視線を移す、どうやらユメちゃんは仕事内容の再確認をしていたらしい

それに比べてコイツは…と再び橙の方を見る

橙は弁当の隅に残った米粒を卑しく舐め取ろうとしている所だった

「橙、これからどんな仕事やるのかは忘れてないよな?」

「モチロンッス!漫画家の手伝いですよね!」

「じゃあ漫画家の名前は覚えてるか?」

「確か…軽部!」

「違うわよ」

ユメちゃんがすぐさま否定する、まあ橙にしてはよく覚えていた方だろう

「今回私達が手伝う漫画家は」

 

「"岸辺露伴"ね」

 

 

 

漫画家アシスタント

 

 

 

漫画家、岸辺露伴

16歳の時からジャンプに連載作品を持つ天才漫画家

リアリティに拘った作品に対する姿勢、そして漫画家としての技術は凄まじく毎週19ページの連載をアシスタント無しでこなしている

そんな漫画家からのアシスタント依頼が来たのだ

"裏バイト"として

期間はたったの1日、日給100万円

こんな割の良い仕事受けない訳にはいかなかった

 

「ユメちゃん、着いたよ」

携帯で何かを見ているユメちゃんに声をかける

自分の荷物と橙が忘れていった荷物をまとめて手に取り新幹線から降り、バイト先に向かうバスに乗る

到着を待つ間ユメちゃんが今回のバイト先、杜王町について調べた事を教えてくれた

どうやら新幹線の中で確認を終わらせた後携帯で調べてくれていたようだ

ユメちゃん曰く

町の人口は5万3千人、町の花はフクジュソウで

名物は…橙が行きに食べていた牛たんのみそづけ

S市のベッドタウンとして急速に発展してきたこの町だが、「行方不明者が多い」「死刑囚が潜んでいる」など物騒な噂も多いらしい

「もしも"黒い匂い"がしたらすぐに知らせるわ」

「頼んだ」

ユメちゃんは危険を"匂い"として察知できる

今までも裏バイトでは色々と危険な目に会ったが、この能力のおかげで乗り切ってこれた

『次は杜王町勾当台二丁目、杜王町勾当台二丁目です』

「ここで降りるぞ」

「アタシがボタンを!ウオオォォ!!」

橙が勢い良く降車ボタンを押す

メキッ、という音がボタンから聞こえた

「バカ!ボタン壊す気か!」

 

 

 

「見えた見えた、あれが今回のバイト先か」

バスから降りて少し歩くとすぐに岸辺露伴邸に到着した、売れっ子漫画家というのは伊達ではないらしい

家はとても大きく、豪邸と呼ぶのに相応しかった

「とりあえずインターホン押してみるか」

「アタシがボタンを!」

「やめろ」

橙を制してインターホンを押す

『はい』

しばらく待つとドアの向こうから声が聞こえた

少し低めの男の声だ

「すみませーん、アシスタントで来た白浜と黒嶺と篠月ですけどー」

『ああ、君たちが、今開ける』

ガチャっとドアが開き男が出迎える

この男が岸辺露伴だろう、16歳でデビューして現在20歳というのは本当らしくまだ顔が若い

体も引き締まっており『漫画家』と言われて持つイメージと少し違っていた

「どうぞ中へ」

露伴に連れられ3人で中に入る

「ハマちゃん」

その途中ユメちゃんに小声で話しかけられた

「どうしたの?」

「少しクサイ」

どうやらユメちゃんが匂い…危険を感じたらしい

「少し?」

「ええ、本当に少しだけ」

「ならちょっと様子を見よう、どうせ1日きりなんだし、もっと危なくなったら逃げればいい」

「ええ、そうね…」

 

 

 

「ここが応接間だ、どうぞ」

露伴と向かい合う形でソファに座る

テーブルには人数分のコーヒーが用意されていた

『豪邸に住む漫画家の若者』と言うにしてはおもてなしがしっかりしているな、と少し露伴を見直した

「…」

露伴は黙って私達を見つめている

品定めをされているようで少し気味が悪かった

「ええっと、今回のバイトはアシスタント…ですよね?私らは何すれば良いんですか?トーンでもベタ塗りでもなんだってやりますよ」

耐えかねて話を切り出すと露伴がこちらに目を向け、ようやく口を開け喋りだした

「『トーンでもベタ塗りでも』?オイオイオイオイオイ、この岸辺露伴がそこらへんのシロウトに漫画を任せると思っているのか?思い上がりがすぎるんじゃないか?え?」

露伴は明らかに心外といった態度でこちらに指を指しながら文句をつける

「あ〜、そうですね、アハハ…」

前言撤回、コイツは面倒臭いヤツだ

「でしたら、私達は何をすれば?」

「ああ、簡単だよ、ちょっと"話"を聞かせてもらうだけだ」

 

 

 

10時00分〜13時00分 黒嶺 ユメ

13時00分〜16時00分 篠月 橙

16時00分〜19時00分 白浜 和美

指定された時間に露伴の仕事部屋へ行き、ネタ出しのために話をする

それ以外の時間は何をしていても良い

外に出ていても良いが時間には戻ってくる事

家で待つなら応接間を使い、他の部屋には入らない事

ただし飾ってるコレクションには触れるな

 

これが露伴から提示された仕事内容だった

「ユメちゃん、匂いは?」

「少しだけ」

今は9時58分、まず最初にユメちゃんが行く事になっている

「ユメちゃん、もし何かあったらすぐに逃げてね」

「わかってるわ」

「呼んでくれればアタシも助けに行くッス!」

「ありがとう、橙ちゃん」

「助けに行くって、お前どうやって助けるつもりだよ」

「あの漫画家をぶん殴って…」

「やめとけ」

 

 

 

3時間後、ユメちゃんが応接間に帰ってきた

「どうだった?」

「大丈夫、何もなかったわ、匂いも無くなってる」

ユメちゃんの言葉を聞いてホッと胸を撫で下ろす

「じゃあ次は橙だな」

「頑張ってくるッス」

橙はガッツポーズを作り仕事部屋に向かっていく

「大丈夫かしら…」

「匂いは消えたんでしょ?大丈夫だって」

「それもだけど、橙ちゃん何かやらかしたり…」

「ああ…」

少し…いや、かなり納得してしまった

「それで、ユメちゃんはどうだったの?岸辺露伴は『話をする』って言ってたけど、何の話したの?」

「ええ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()わ」

「へぇ〜、そっか」

少し拍子抜けだなと思いながら来る途中で買ったペットボトルを開け、口をつける

自分の番まであと3時間もある

「ねえユメちゃん」

「なあに?」

「仮眠取るから時間になったら起こして」

ユメちゃんにそう伝えてソファで横になる

私の家と杜王町はかなり離れている

バイトは9時集合だったため早くに家を出た、新幹線では橙がうるさく寝れなかったので昨日からほとんど寝てない

流石に眠い

「えっ、ちょっとハマちゃん?…ホントに寝てる、一応バイト中なんだけど…」

 

 

 

「先輩ーー!!!起きてください!!!!この篠月橙、帰還いたしましたぞーーー!!!!」

「うるせぇ!」

橙の声に思わず飛び起きる

「ふぁぁ、もう3時間経ったの?」

「いえ、まだ13時50分くらい」

ユメちゃんが答える、橙が仕事部屋に向かい私が寝たのが13時、まだ1時間も経ってない事になる

「おはよう、よく眠れたか?」

「き、岸辺露伴…先生…」

声が聞こえたへ視線をやると岸辺露伴が不機嫌そうに立っているのが見えた

「なあに、別に寝ていた事を責めるつもりはない、待ってる間は何をしていても良いと言ったのはこっちだからな」

「ハハハ…」

「ただ…」

「"篠月橙"ッッ!こいつは何なんだッ!?"本"の文字が汚くて読めたもんじゃない!!!せっかく面白そうな体験をしているのに読めないんじゃあ意味が無い!!だから早めに切り上げて『14時から17時に予定を早めると次のヤツに伝えろ』と言ったんだ、なのにそれすらも覚えられないだとッ!!アホの億泰よりもアホなヤツがこの世に存在するなんて信じられないぞ!!!」

露伴が早口でまくし立てる、内容は全ては理解しきれないがどうやら橙が馬鹿すぎて怒ってるらしい

当の橙は笑いながら頭を掻いてる、図太いやつ…というより自分が怒られているとすら理解していないのだろう

「ええっと…つまり橙が早めに終わったから私の番を早める…って事ですよね?」

「ああ、そうだ、14時からだからな、早く準備して来るんだ、わかったな」

「ハイ…」

それだけ言うと露伴は後ろを向き仕事部屋へと戻っていった

「…ふぅ、橙、お前あんまりバイト先の人怒らせるなよ、クビになったらどうすんだよ」

「?」

橙はやはり何もわかっていなかったらしく首を傾げる

「まあいいや、それでどうだったんだよ、仕事は」

「そうッスね、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()ッス!」

「そっか…って早くしなきゃな、じゃあ行ってくる」

橙の言葉に少し違和感があったが気のせいだろうと割り切り、服を整えてソファから立ち仕事部屋へと向かう

「ええ、気をつけてね」

「呼んでくれればアタシが助けに行くッス!」

「助けに行くって…さっきもやったよな、このやり取り」

 

 

 

「白浜でーす、言われた通り来ましたけどー」

仕事部屋の前でノックしながら露伴に呼びかける

『ああ、来たか、入ってくれ』

「どうもー」

ガチャ、とドアを開け中に入る

仕事部屋はいかにも『漫画家の部屋』といった感じのレイアウトで少し感動を覚えた

「君の事は知っているよ、黒嶺ユメから"読んだ"」

「は?」

いきなり訳のわからない事を言われ思わず声が出る

「ええっと、さっきユメちゃんから聞いたって事ですか?いやあ、ユメちゃんもそうならそうと…」

「白浜和美、身長170cm年齢21歳、黒嶺ユメとは中学の同級生、ホールスタッフのバイトで再開し以来行動を共にしている、裏バイトを行う理由は世界をくまなく回るため、中学校の卒業式では好きな相手にラブレターを渡す事が出来ず終始機嫌が悪かった」

「…は?」

身長、年齢はともかく裏バイトをする理由や昔の恥ずかしい思い出なんてユメちゃんが言うはず無い、何故知っているのかわからず思考が停止する

「どうして…?」

「簡単だよ、記憶を読んだんだ」

「"ヘブンズ・ドアー"」

露伴が縦にした手を90度回転させるのと同時に自分の顔からパラパラ、とページが捲れるような音がした

その直後に力が抜け立っていられなくなり、ふと下を見ると自分の手がまるで本のような形になっているのが見えた

「相手を本に変えて記憶を読む、そういう能力がある」

声が出ない、どんどん意識が薄れ、体が本になっていく

「"裏バイト"なんてやってるヤツがこれまでどんな人生を送ってきたか興味があってね、わざわざ募集まで出したんだ、篠月橙はハズレだったが黒嶺ユメは想像以上だった、幽霊ファミレスに異世界に繋がる電車、若返りの泉、そしてスタンドとは違う"匂い"を感じる能力…まあこれは逃げられちゃあもったいないから僕には反応しないよう書き加えさせてもらったが…どれも漫画のいいネタになる、そしてその隣にいた君の記憶も、きっと素晴らしい物なんだろうな…」

 

「読ませてもらうよ、君の人生を」

 

 

 

岸辺露伴の仕事部屋では少しネタ出しに付き合ったくらいで、大した話はしなかった

 

 

 

「あっ帰ってきたッス!」

「おかえり、ハマちゃん」

応接間を開けると二人に出迎えられた

「ただいまー」

「どうだった?」

「まあ、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()かな」

 

 

 

「やあお疲れ、今日はどうも」

応接間のソファに座りしばらく待っていると露伴がやってきた

「あっ、露伴先生」

「いやいや、ほぼ待ってるだけで楽な仕事でしたよ」

「そうかい、それならよかった、ああそうだ、僕のサインはいるかい?お礼に描いてあげよう」

「えっ、良いんですか?」

「ああ、いいとも、おかげで"良い経験が貰えた"からね」

 

 

 

 

「この前の漫画家アシスタント、楽でよかったよね」

「そうね、待ってるだけで匂いも無くて、毎回ああだといいんだけど」

あの仕事から一週間、今は違うバイトに行く途中、現場近くのコンビニで昼食を買っている所だ

「おい橙、ジャンプ立ち読みしてないで早く行くぞ」

「あっ!待ってください!今腹筋ローラーの値段を!」

「広告じゃねえか、ほら閉じろ」

「あぁっ!!」

橙の持っていたジャンプを取り上げ棚に戻し、店を出る

「それじゃあ、今回のバイトも頑張るか」

 

 

 

 

 

 

 

センターカラー!

岸辺露伴 豪華読み切り三本立て!

『時を喰う遊園地』

『イチョウ』

『大いなる者』

 

 

 

 

 

 

 

 

黒嶺 ユメによる(裏)帳簿

勤務地 M県 S市 杜王町

勤務期間20XX年 10月20日

 

黒嶺 ユメ殿 日給1,000,000×出勤日数1.0 計1,000,000円

 

白浜 和美殿 日給1,000,000×出勤日数1.0 計1,000,000円

 

篠月 橙殿 日給1,000,000×出勤日数1.0 計1,000,000円

 

白浜殿はもらったサインを転売し金銭を得た模様、要確認


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