美少女ソシャゲ人気キャラ憑依   作:もぬ

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憑憑憑

 受け取った銃をしげしげと眺める。

 アズールが元から使っていた魔動式の銃は、近未来・機械的な要素が詰まったヒロイックな外観であったが。社長が貸してくれるというこちらは、それとはまったく違い、もちろんリアルの伝統的な銃とも違い……なんというか、有機的なデザイン? だった。神様の武器ってこんな感じなのかね。

 

「えーっと、たしか、霊銃ドラグーン、だったかな……うちに置いてある唯一の神造兵装ですね」

「……あっ。ドラグーンって……」

 

 聞いたことあるな。……見たこともある。

 例によってアズールが……ではない。オレが、だ。

 これ、たしか『ダンジョンロード』のガチャで、アズールを引いた余りの石で引けたSSR武器だ。

 じゃあ、なにか。もしかしてこの世界って、オレのアカウントのデータと連動でもしてるのか。

 ………。

 それがわかったから何? ってかんじだな。アズールに乗り移るとわかっていたなら、もっと課金してSSRの剣とか当てておくべきだったなあ、くらい。思うことは。

 

 お借りします、と社長に礼を言い、これをホルスターに……仕舞おうとしたが、サイズがちょっと合わなかったので。しばし思案し、パーカーの内ポケットに雑に入れた。

 とりあえず今日は、初めての労働なので、この身体が扱い慣れている武器の方がいいだろう。試し撃ちは機を見て。

 

 

 社長の先導に従って、迷宮都市の第5層を歩いていく。彼の進む方角へ行くほど、やがて住宅や店舗、人の気配が減じていく。

 そうしてたどり着いたのは、より下層へと続く大階段だった。ここから先は、宝物と怪物が同居する魔境……。

 緊張してきた。オレに怪物退治の経験なんかあるはずないし、アズールも、知識と訓練経験こそあれど、本場のダンジョンに入るのは、実は初めてらしい。

 気を引き締めていこう。

 社長とのエロハプニングを起こすのも大事だが、普通~に活躍して好感度あげるのも大事だ。

 

 第6層。

 この第八迷宮では、ここからが本当に本当のダンジョンである。

 とはいえ、人間の居住層を除けばもっとも浅層であり、道の複雑さも出てくる魔物も、実に初心者向けだという。新人探索者のための研修にはうってつけだ。

 余談だが、迷宮都市の住民の中には、この層をジョギングのコースにしているような人もいる、なんて噂もある……。変なこと知ってるな、アズール。

 さらに余談。近年はこの6層にも都市化計画が持ち上がっているらしい。自治体のやることだから詳細は知らない。

 

 大階段を下りきると、すこし空気が変わったように感じる。魔物の気配、あるいは魔力というエネルギーの気配……とかだろうか。

 アズールはとても敏感な女の子のようだ。

 そして一歩踏み出してみて、なるほど、初心者向けだし、ジョギングもできるな、と思った。

 第6層のぱっと見の景観は、ゴツゴツとした岩の壁、割と高い天井と幅の広い通路……大洞窟、とでも言い表せるだろうか。

 しかしそのわりに、地面がしっかり均されているのだ。歩きやすい。人間が足を踏み入れる想定の地面。ドジっ娘じゃなきゃ転ばない。

 さて。

 これはもちろん人間が舗装したのだ……と、いうわけではない。実は。

 神様がやったのである。

 

 地球に存在する“大迷宮”はすべて、神々が、人間が利用することを想定して創り上げたものだという。

 資源や武具は人間への恩恵であり、魔物は人間への試練だ。とくに魔物は、()()()()()()()()()()を模して造られている。

 神様は人間に、より強くより豊かになってほしいと考えている。なんせわれわれ人間は、彼らにとっての大事な戦力だからだ。

 外敵を撃退するための。

 

 以上、例によって、アズールが学校の授業で習った話。

 この子、かしこくて真面目で助かるね。きっとオレのためにこれまで勉強しててくれたんだな、ありがとうね。

 おバカキャラの美少女も好きだが、こうして脳みそを使わせてもらえるのなら、やっぱり性能の良い脳の方がいい。

 

「アズールさん、これを見て」

 

 少年の声で、アズールの記憶を読む遊びを中断する。

 社長の指す岩壁に、よく見ると、小さな鉱石が埋まっているのがわかった。鉱脈だ。

 ほんのり赤く発光しているので、専門家でなくとも見つけられそうだ。

 

「これが魔石です。赤いのは“火曜石”。こうして壁や地面に埋まっているものは、掘り出さずに石の魔力だけを採取します。掘り出してしまうと神法違反ですね」

 

 背負っていた荷物の口から、社長は、筒状の器具を取り出した。穴が空いている部分を壁に向ける。

 すると石の赤い光が、吸い込まれるようにして、社長の手元へと移動していく。光は筒を通り、おそらく社長のバックパックの中へと収集されていった。

 ……あっこれ、掃除機みたいなもんか。

 

「この回収した魔力を取引先に買ってもらうのが、うちの収入源のひとつですね」

 

 魔力……魔力か。これについても反芻してみよう。

 指をこめかみにあて、アズールの頭の中を自分のモノにしていく。

 考え事をするときのオレの癖で、腕組みをしようとしたのだが、乳がデカ過ぎてうまくいかなかった。

 

 魔力(マナ)。現在のこの星での、最先端のエネルギー資源である。

 特徴は……そうだな。電気なんかと違って、人間の技術によるゼロからの大量生産が、未だに叶っていないことだ。社会がこれを活用していくには、迷宮からの直接回収が必要なのである。

 そのおかげでこうして、ルーファンくんは、迷宮を歩き回って魔力を回収する業者として、それを食い扶持にできている……という構造だろうか。

 ちなみに、人間の身体にも魔力に関連する臓器がある。……美少女たちがゲーム的なスーパーパワーを発揮できることへの、理由づけの設定だろうな。

 

「深層までいけば、魔石の“濃度”がまったく違いますし、さらには大鉱床なんてのも発見できるそうです。一獲千金の夢がありますね」

「………。それを見つけられたら、そのあとはもう安泰じゃありませんか? 他の業者には教えないで、占有できれば」

「鉱床は時間が経つと移動してしまうんですよ。明日同じ場所に来ると、もうそこにはありません」

 

 なんて意地悪な仕様なんだ。

 神様はどうも、人間にこの迷宮をうろうろさせたいらしい。恩恵が欲しければ足を動かせ、というのがルールになっているみたいだ。

 

 

 仕事のひとつがわかった。

 それで、次は……。

 

「いた。……アズールさん、魔物です」

 

 左手で銃を引き抜く。

 まだ距離があるが、オレ達の向かう先には、たしかに人間ではない何かがいた。

 あの魔物は……そうだ、チュートリアルでも出てきた。それにアズールはもっとよく知っている。

 名称は『バイター』。

 大きめの枕ぐらいのサイズで、ふよふよと浮いている魔物。こちらを認めると、鋭い牙で噛みついてくる。それだけ。様々な種類のいる魔物の中で、一番くらいに弱っちいタイプであるとされる。

 ……ちなみに、()()()バイターは、雑兵であり、地球の生物の情報を“あちら側”へ持ち帰る機能を持っているそうだが、この迷宮のバイターとは関係のない話だ。

 

「まずは僕が倒してみますね。アズールさんは、魔物を観察していてください」

 

 少年が荷物を静かにおろし、剣を抜く。

 オレは一応、銃を起動状態のまま保持し、彼の背中を見守った。

 

「――やああっ!」

 

 空いていた距離を一息に走り抜け、大上段から気合の一閃。

 小さめの抱き枕みたいなバイターは、あっさりと真っ二つになって、地面にぼとりと落ちた。弱っ。

 

「お見事です、社長」

 

 銃をしまい、胸の前で拍手をして、ほめる。……拍手も若干やりにくいぞ、このカラダ。

 ルーファンは剣を鞘に納め、照れ笑いをする。うん、女の子の接待で機嫌をよくしてくれ、社長なんだし。

 

「いやあ、迷宮都市生まれならこれくらい、10歳の子供でもできますから……」

 

 ところが途中から、ルーファンくんは嬉しそうな顔から、なんとも申し訳なさそうな顔になり、卑屈なことを言うのであった。

 ありゃ。もしや自分の実力にコンプレックスがあるのか……?

 ………。

 

「アズールさん、ちょっと、これを見てください」

 

 呼びかけられ、近くに歩み寄る。

 ルーファンが示しているのは、真っ二つになったバイターの、血も出ない死体……、

 の、真ん中にいつの間にか現れていた、小さく光る石くれ。

 魔石だ。さっきも見たやつ。

 

「青いので水曜石ですね。魔物は絶命すると、こうして死骸から魔石を零します。これは、さっきとは違って、持ち帰っても神法違反にはなりません」

 

 言いながら、ほんの小さな魔石を、彼は拾い上げて収集した。

 壁の石は持って帰っちゃダメなのに、魔物が落としたやつはオーケーなのか。魔物をちゃんと倒させるためのルールかな……。

 

「強い奴ほど質の良い石を落とすみたいなんですが、僕はこのレベルを相手にするのが精いっぱいで……へへへ。ともかく、これも大事な収入源、ですよっ」

 

 なるほど。

 では、アズールがたくさん、強い魔物をボコボコにすれば、ルーファンくんに利益をもたらせるわけだな。

 自分の仕事がわかった。

 

 ここまで来たら、研修の次のプログラムはわかる。

 さあ、実際に、自分の手で挑戦してみよう。

 

 

 しばらく、迷宮をうろうろして。

 第7層まで来た。大して魔物の強さは変わらないらしい。

 というわけで、ついに目の前に現れた初獲物は……、バイターが3匹、加えて『バタフライ』が1匹だった。

 バタフライは、地球の生物の情報から造られた(エネミー)……を、バイターと同じく、神様が魔物として迷宮で再現したもの。まあ、弱いらしい。

 オレとしては、あんなデカい羽虫、正直キモいし怖いし相手にしたくないんだけど。

 なるべく、()()()に自分を寄せると、訓練でも戦ったことはあるし、なんとかなりそうだった。

 

「では……行きます」

 

 右手に光剣、左手に魔弾銃を持って、ゆっくり前に出る。

 ちらりと横目に少年を見ると、こちらを心配する顔つきだった。もしかすると彼には、4体となると、この層の相手すら難しいのかもしれない。だから心配顔になる。

 こちらの有用性を示して、安心させてあげよう。

 ……4体もいるのだし、色んな攻撃方法を試そうか。

 結局、銃はしまって、剣の刃もオフにした。ちょっとかっこわるい。

 

 左腕の袖をまくる。

 腕の内側に書き込まれた、4つの刻印のうち、ひとつにふれ、魔力を走らせた。

 ――魔法刻印(スキルコード)電撃(ショック)を使用。

 迷宮の壁にそっとふれると、そこから敵に向かって、紫色に可視化された魔力が迸る。稲妻状のそれは、派手に瞬いて4体の魔物の身体を焼き、動きを止める。

 すぐにスタートを切る。同時に、加速(アクセル)を使用。光剣を抜き、距離を詰め、羽ばたきも止まって見えるバタフライの方を、まず斬って落とした。

 そこで加速時間が終わる。

 硬直の解けたバイターが殺到してくる。

 魔法刻印(スキルコード)地壁(シールド)を使用。地面から、斜めに角度をつけて飛び出した長方形の土塊が、先頭のバイターに手痛いアッパーを食らわせた。前方を壁にさえぎられた二体目が一瞬、止まる。回り込み、それを斬り捨てる。

 三体目が、その大口を開ける。バイターは、口を開いて牙を剥いた瞬間だけは、さすがに怖い。

 迎撃できたが……思うところあって、左腕を差し出し、噛みつかせてみた。

 

「あっ!」

 

 今のは社長の声。

 でも、うん、攻撃を受けている感触はあるが、痛くはない。バリアはちゃんと作動しているようだ。

 腕を思い切り振って、地面に叩きつける。そのまま剣で貫き、邪魔なので蹴り飛ばした。

 上方に顔を向ける。さっき地壁(シールド)でかちあげたバイターはまだ生きている。壁を駆けあがり、光剣で薙ぎ払った。

 4体目、処理完了。

 

「す、すごい……」

 

 剣を仕舞って、社長のほうに歩いて戻る。

 そして、左手で抜いた銃を向ける。

 

「えっ!?」

 

 彼の背後から襲い掛かろうとしていた、()()()()()バイターを撃ち抜いた。

 

「……ふっ」

 

 別に煙も出てないのに、銃口にふっと息を吹きかけて、かっこつけた。

 いや、撃てる角度の位置関係で良かったな。ちょっとひやっとした。

 

「あ、アズールさん……すごいっ!」

「………。ありがとうございます」

 

 表面上はクールに振る舞えているだろうか。正直、自分でも意味分からん動きができたので、興奮やら激しい運動やらで心臓がどくどく言ってる。

 ルーファンくんは目を輝かせて、こちらを讃えてくる。これも照れる。

 そうだろうとも、このカラダは有能なんだ。おっぱいデカいのにスピードスターなのだ。

 オレはアズールの性能に興奮し、わたしは、努力の正しい発揮と、社長からの期待を喜んだ。

 

「いまの、魔法(スキル)ですよね。3つも、しかもこのクオリティで使いこなしているなんて、すごい」

「えっと。治癒(ヒール)も使えるみたいなので、4つです」

 

 ……魔法(スキル)とは、個人が、その身体に事前に入力してある刻印(コード)を介して引き起こす、超常現象である。

 ただし、体中に刻印(コード)をいっぱい書き込んでおけば誰でも大魔法使い! というわけではなく、人によって魔法を詰め込める容量(メモリ)の上限が違う。

 ひとつひとつの魔法の威力も、この容量をどれだけ使用するかで決まる。

 例えばアズールなら、100ある容量を、4種の魔法に、20、20、30、30と振り分けて使っている……といった具合。

 刻印は専門店でいじってもらえる。

 ちなみに、『容量』と『魔力量』は別。前者はスキルポイント、後者はMPと各種ステータス。

 

 ま、そういう設定らしい。ゲーム的、マンガ的だ。

 ともかく、迷宮で何か成し遂げたい人間にとって、魔法(スキル)は非常に頼れるものである。

 

「すごいなー。憧れちゃいますよ」

 

 魔石を回収しつつ、社長は興奮冷めやらぬ様子だ。

 その後ろについて、周囲を警戒しながら、作業を見守る。

 

「………。社長は? どんな魔法入れてるんですか」

「ああ、僕、容量がゼロなんですよ。魔法屋さんに行って魔法入れようとしても、全部弾かれちゃって。才能無しですねー」

「あ……」

 

 話題を広げようとして、地雷踏んだ。本人は地雷踏まれた~なんて思っていないだろうけど、表情が少しだけ曇った。

 剣の腕も普通で、魔法(スキル)も使えない。でも祖父から会社を継いだ以上、この迷宮で戦っていかなければならず、競う相手は経験豊富な探索者たち。 周りと自分を比べて若干卑屈になるのも、しょうがない。

 

 うーん。

 そういう劣等感、ちょっとわかるな。誰でも経験することではある。

 子どもは……大人もそうだが、成功体験が少ないと、どうしても自己肯定感が低くなってしまう。それから周りと比較してしまって、さらに落ちていく。

 そんな暗~い世界は抜け出せた方が、たぶん人生は楽しい。あの歳の子なら、このへんでひとつ、自分の良いところを何か見つけていてほしいところだ。

 でも、そういう部分を見つけて褒めてくれる、保護者とか、学校の先生とか、周りにいるべき大人が今の彼にはいない。

 愛情というか、信頼関係というか。子どもが健全に成長するには、そういう要素が必要だと思うんだが。

 ……………。

 

「えい」

 

 どん。

 乳からぶつかる。

 そのままルーファンを、壁に追い詰めた。

 

「うえっ、あ、アズールさん、うぶっ!?」

 

 つま先立ちで位置を調整し、口元をふさぐようにして、少年を石壁と女体の間に挟む。

 それで、じっと見下ろして、目が合うのを待った。

 ルーファンのブラウンの目が、こちらを見上げる。口を解放してあげた。

 言葉を頭の中で整理して、すうっと息を吸った。ルーファンが漏らした息が、膨らんだ胸にかかる。

 今からいいことを言おうと思う。

 

「……あの、わたし。経理仕事とかできません。営業もできません。できるのなんて、こんなふうに、肉体労働くらいですよ。……ね? 肉体の」

「に、にくたいの……」

「労働」

「ろうどう……」

「でも、社長はすごいですよね。まだ15歳なのに、いろんなことを頑張っているのでしょう。わたしにはできません」

 

 言葉の意味がルーファンに染み込むのを待つ。

 そうしたら身体をひっぱり、くるりと向こうを向かせ、今度は後ろから抱き着く。胸が、ルーファンの背中で、ぐにゃりとつぶれた。

 体温が伝わるように、しっかり身体を押し付ける。

 この姿勢になると、ちょうど少年の耳が、こちらの口元に来る。右の耳に向けて、後ろから熱い息をかけた。

 

「……あなたはちゃんとできてる。できないことには、わたしを使って下さい。ね、社長。なんでも言うこと、聞きますからね」

 

 そっと身体を放す。あ、という名残惜しそうな声が、少年から漏れた。

 

「言いたかったのは、それだけです。まだ知り合ったばかりなのに、知った風なことを言ってごめんなさい」

「……あ……その……いえ、ありがとう……ございます」

「いえ。……明日から、よろしくお願いしますね、社長」

 

 あとはそれだけ言って、わたしは踵を返した。

 ………。

 にひ、と。

 見られない角度になると、表情が、いやらしく崩れてしまった。自分がこんな、純な青少年に、愛情を示してあげられるカラダをしていることに、優越感のようなものを覚えて。

 これならルーファンくんも、健全に成長していけるかな? くひひ……。

 

 

 これで研修は終わりだ。

 しかし長い一日だったな。社長に……わたしの“有用性”、わかってもらえたかな。

 刻みつけられたかなぁ。

 

 帰り道。ちらちらとこちらを見ているのが、すぐにわかった。

 たまたま目が合ったふりをして視線をぶつけてみる。

 オレは、わたしは、どろどろに熱いものが漏れ出さないように、つとめて爽やかに、笑いかけてあげた。

 

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