美少女ソシャゲ人気キャラ憑依   作:もぬ

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PS4に体験版があるらしい

 薄暗い空間にいる。

 ここは僕の部屋だ。ベッドで横になっていると、そこに誰かが入ってくる。

 その人は足音もなくやってきて、僕のいるベッドの縁に座ってきた。少しの揺れがあって、きし、と古いバネの音がする。

 

「アズールさん」

「こんばんは。社長」

 

 アズールさんはこっちに身体を向けて、薄く笑った。

 それで、ベッドに両手と……膝を、ついて、そのまま乗り上げてきた。

 動物みたいに四つん這いになって、僕の足元から、ゆっくり進み寄ってくる。昇ってくる。

 やがて、アズールさんの両腕が、僕から見てすぐそこに突き立った。アズールさんの顔が、目の前で、僕を見下ろしている。

 

「あ、あの……な、なにを」

 

 くすり。

 アズールさんが笑った。

 

「なにって……。今日はわたしが、ルーファンくんのお布団になってあげます。迷宮都市の夜は寒いですし。わたし、あったかいですし」

「え……ええっ!?」

「わたし、好きですよ、きみのこと。ルーファンくん。ルーファンくん」

 

 だんだんとアズールさんの顔が近づいてくる。首から下の方にも、暖かい何かが覆いかぶさってくる感触があった。

 う、うそ、こんなことって。嬉しい、嬉しいけど、なんか、変っていうか。

 暗闇の中で、アズールさんの、神秘的な青い眼だけが、ぼんやり光って見える。

 

 そこで――、

 ぴぴぴぴ、と。目覚まし時計の音が、鳴ってしまった。

 

「………」

 

 冷たい朝の世界に戻ってきて、のそり、と身体を起こす。

 そうか、いつもの起床時間がやってきたんだ……。

 

「……ああ。ああああ。あああああ~~」

 

 変な夢、みてしまった。

 

 ▽

 

 朝のルーチンワーク。

 朝ごはんとか、顔を洗うとか、歯を磨くとか。外に出て、上の層で日を浴びながら身体を動かすとか。オフィスの掃除をするとか、裏口の鍵を開けておくとか、父さんとじいちゃんの写真に挨拶をするとか――。

 そういったことを済ませたら、人は誰もいない事務所の、自分のデスクに座る。

 いろいろと溜まっている仕事があるので、アルバイトのアズールさんが来るまでは、これをやらないといけない。

 彼女が来たら、迷宮に潜って収入源を回収していく。彼女が帰ったら、また経理や予定管理の事務仕事など。

 おおむねこれが、僕の一日のスケジュールだ。 

 

 じいちゃんが亡くなってからは、ずいぶんやることが増えた。最初はどうなることかと思ったけど、近頃は、なんとか慣れた。

 いや、慣れたどころか、だいぶうまくいっている気がする。アズールさんのおかげで、今はかなり下の層で活動できるようになった。

 

『あー、この番組面白くない。なあ主、チャンネル変えて~』

 

 あと、スケヴニングのおかげ。いつもは静かだったこの時間にも、こうしてテレビと剣の声が混ざるようになった。

 彼のもたらす恩恵のおかげで、アズールさんとの迷宮探索が捗っている。今は少なくとも、僕一人が生活するのがやっと、なんて状態は抜け出せた。

 ……でも、アズールさんはあくまでアルバイトだ。いつまでも、このグランメイズで働いてくれるわけじゃない。

 こっちもちゃんと、先のことを考えないと。アルバイト一人に頼り切っているようじゃ、会社としては成り立っていない。

 そろそろ、人材確保に乗り出さないと。

 

「あれ?」

 

 端末の画面とにらみ合いをしていると、がちゃ、ばたん、と聴き慣れた音がした。

 裏口のドアから、誰か入ってきた。といっても、何の声も無しにそこを開けて入ってくる人は、今はひとりだけだ。

 やがて、こんこん、と、オフィスのドアをノックする音。

 入ってきたのはもちろん、

 

「おはようございます、社長」

 

 アズールさん。僕より年上の、女の子。

 予定の出勤時間より1時間半も早い。慌てて席を立って、出迎える。

 

「おはようございますっ、アズールさん。今日はお早いですね? どうして……」

「ヒマなので、早く来ちゃおうと思って」

 

 近寄って声をかけると、アズールさんはこっちを見て、目つきを和らげて、ふっと笑った。

 

「……!」

 

 亜麻色の髪、その隙間から、こっちをじっと見ている、神秘的な淡い青――。

 その表情が、今日見た夢のアズールさんと、重なってしまって。

 あと、前に密着しちゃったときとか、あれとか、それとか、色々思い出して。

 なんだか、こうやってアズールさんにわざわざ近づいて、においとか、体温とか、そういうのを感じ取ろうとしてる僕って最悪なんじゃないかと思って。

 曖昧に笑い、なるべく相手を見ないようにして、後ろに下がる。

 

「ん。どうかしましたか」

「い、いえ……なんでも」

「そうですか」

 

 それから、アズールさんは荷物を更衣室に仕舞いにいって、すぐに戻ってきた。なんか気の利いた話題も思いつかなくて、僕も自分の席に戻っていた。

 社員がいなくなって余っていたデスクの中のひとつ……今は彼女の席に、アズールさんはゆっくりと座る。手には新聞を持っている。

 って、なんで目で追いかけているんだ、僕は。じろじろ見るなんてよくない……。自分の仕事に集中しなきゃ。

 机の上に、資料を広げる。

 それを、じっと眺める。

 

「スケブさん、おはようございます」

『おはよーアズールちゃん』

 

「………ん。この記事……。国内第八迷宮で死傷者多発……うちの迷宮じゃないですか」

『テレビでもやってたぜ、それ。“階層違い”が増えてるんだってよ』

「ああ、前にボコボコにしてくれた、鎧のやつみたいな」

 

 僕たちグランメイズが現場に選んでいるここ、第八迷宮『アンダーアビス』。

 僕にとっての生活圏でもあるアンダーアビスについて、この頃、ひとつの物騒な話題が持ち上がっている。

 “階層違い”。

 本来その階層では現れないはずの強力な魔物が、探索者たちを害している――そんな、おそろしい話だ。

 同業者の人たちの中でも“階層違い”のことは話題になっていた。例えば、僕らが浅層で遭遇した『アインへリヤル・ドール』。あれは本来、100層より下に出現するよう設定されているはずの魔物だ。それがうんと上の階で出張って来たら、迷宮労働者はどうなるか? 結果は、僕たちも体験した通り。

 そしてついに、この話は、テレビや新聞でも取り上げられる、公のニュースになったらしい。

 僕のような弱小業者には……、いや、第八迷宮の労働者全体にとって、これは大問題だ。死活問題。文字通りの意味で。

 今は、迷宮を歩くにあたって、最大限警戒して、勤務時間も減らして、同業他社と連携して……といったような対策をとっているけど、いつまでもこの態勢じゃ、また経営状況に響いてくる。せっかく業績が上がってきているのに。

 

 ここまで、われわれ迷宮労働者の視点。

 けれどもう、僕たちだけの問題じゃないかもしれない。都市層にまで“階層違い”が昇ってくるんじゃないかって、住民も不安がっている。

 ニュースとして取り上げられたのなら、そろそろ、公的機関が解決に動いているかもしれない。

 そうでないと困る。僕はもう、アズールさんがあんな目に遭うなんて、嫌だ――。

 

「まあ。またあの鎧が出て来たら、今度はボコボコにしてやりますけど。……ですよね、社長」

「えっ? ……いや、あの、でも」

 

 いきなり話しかけられる。もしかして、聞き耳立ててるの、ばれていたんだろうか。

 

「なんですか、不安そうな顔して。……ところで、さっきから何読んでるんですか? 手伝える作業なら、手伝いますよ」

「あっ、えっと、これは」

「失礼」

 

 アズールさんは席を立って、こちらへやってきた。

 それで、デスクのあちら側から、身を乗り出してきて、机上に広げた資料をじっと見てきた。

 ……! あ、アズールさんの、胸元が……。ううううう、見ちゃダメだ……。

 視線を、椅子に座る自分の脚へ。

 アズールさんの、息の音が、声が、すごく近くで聴こえる。

 

「……これ、なんです?」

「え、えっと。求人募集を出そうと思っていまして。求人掲載できるところの資料と、必要手続きをですね」

「………はあ?」

 

 なんだか冷たい声がした。思わず、顔を上げる。

 アズールさんは……、氷のような視線で、僕を見下ろしていた。

 心臓に、冷たい感覚が刺さる。

 怒ってる? なんで?

 

「それって、新しい人を雇うってことですか」

「は、はい」

「だめですよ。わたしがいるじゃないですか」

 

 アズールさんはデスクのこちら側に回り込んできて、凄むように近づいてくる。

 あっ、このパターンはまずい、思わず椅子から立ち上がって、後ずさり。どうして剣呑な様子なのかわからず、とにかく早口でこちらの理由を並び立てる。

 

「いやでも、戦力の拡充は今後のグランメイズのためにっ、何よりアズールさんの負担軽減をですねっ、うえっ」

 

 アズールさんの腕が伸びてきて……、僕の頭を掴んだ。何をするんだろうと思う前に。

 彼女の唇が、小さく、短く動く。

 

「うるさい」

「わもっ!? ~~~ッ!?」

 

 思い切り引き寄せられて、顔を、生き埋めにされた。

 苦し…… やわらか いい匂い

   何だ!?  紅茶飲みたい  ふかふか

 腕を振り解く 無事で!? 出来る!?

  否 死因はアズールさんの胸

 

「きみはわたしだけ見ていればいいんですよ。ね、ルーファンくん。わたしよりいい女の子がこの世にいますか? いませんよね」

 

 甘い香りで意識が朦朧としてきたところに、アズールさんの声と体温だけが、頭の中に染み込んでくる。

 この声のいうことだけを聞きたくなってくるけど、でも、でも。

 

「アズールさんだけ見てますけど……でも、だって、アズールさんは……アルバイトで……いつかいなくなるのに……」

「――――。」

「ぶはぁっ!? はわっ、あうう」

 

 気が付くと解放されていた。頭が……くらくらする。

 ………。もしかして、なんか変なこと口走ったかな、僕。大丈夫かな。

 息を整えて、アズールさんの様子をうかがう。

 彼女は……たまに見かける、考え事をしているような仕草をしていた。何もないよそを見つめて、胸の下で腕を組む、っていう。

 

「アズールさん?」

「……ま、とにかく、しばらくは求人なんて出さないでください。そんな人件費があるなら、その、わたしの………るあっぷ、に使って下さい」

「えっ?」

「いえ、なんでもありません」

 

 アズールさんは向こうを向いてしまった。

 それでそのまま、背中越しに話しかけてくる。

 

「もう迷宮に行きましょうよ、ばりばり働くのです」

「は、はあ。……あっ、ちょっ」

 

 アズールさんは、なんと机上の資料をさっと奪い取り、更衣室に行ってしまった。

 うう。僕、一応管理職なんだけど……。

 

 ▼

 

「呼び方から変えましょうか」

「はい?」

 

 オフィスを出て、仕事現場へ続く転移門を目指す、その道すがら。

 隣を歩くアズールさんが、僕に何やら話しかけてきた。

 

「わたしたち、もう結構仲良しだと思うんです。そうでしょ」

「へ? え、えっと、その……へへへ」

「なので、アズでいいですよ。アズールさん、ではなく」

 

 ええと、呼び方。アズールさんを、なんて呼ぶかっていう話?

 ちら、と彼女の方を見てみる。

 

「親しい人には、アズ、って呼ばれています。ああ、親しい人っていうのは、例えば友達とか、親戚とか……それと、恋人とか」

 

 アズールさんは、こっちを見て、意味ありげに笑った。

 こ、恋人……!? ……アズールさん、恋人、いるの……?

 ……そんな。

 

「ちなみに男の人にそう呼ばせたことはないですが。さあ、社長、コールミー」

「あ、なんだ良かっ……え? あ、あの、それって……」

「呼び捨てでいいですよ。いえ、なんならアズお姉ちゃんでも、アズールママでも……いやこれは良くないか……この子母親アレだし……」

「あの、アズールさん」

「ノー。これからはふたりきりのときは、呼び方に親しみを込めてください。どうやらわたしたちは、もっと仲良くなる必要があるようですからね」

 

 な、なんでこんな流れに。

 さっきのことが、アズールさんにはそんなに嫌だったのだろうか。僕は別に、アズールさんが嫌いとか、低く評価しているとか、そんな理由から求人募集を出そうとしたんじゃないのに。

 それとも単に、またからかわれてる……?

 

「で、でも……」

 

 この人を愛称で呼ぶというのは、どうにも気恥ずかしくて、もんもんとしながら歩を進める。でもアズールさんは、そうはさせないということなのか、僕の前に回り込んで、立ちはだかってしまった。

 そして、顔をずいっと突き出されて、そのままじっと目を覗き込まれてしまう。アズールさんの、透明でキレイな瞳。こっちの内心を見透かしているみたいだ。

 なるべく目を合わせないように……視線を下げると、これもまた、よくないところを見てしまうので……アズールさんの、小さいけどぷっくりした口元とか、血色のいい頬とか、髪をかけた左の耳とか、そういうところを見るように……う、うわ、どこを見ても、ドキドキしてしまう。

 どいてほしくないけど、どいてほしい。でも、口にするまで、どいてもらえない。

 息を呑み込んで、がんばって、口を開ける。

 

「あ……アズ……」

 

 い、いや、呼び捨てはダメだ。相手は従業員なんだから、そんなに馴れ馴れしくするなんて。

 

「……さん……。アズさん……」

「なに? ルーファンくん」

 

 心臓が、一瞬止まった。

 花の咲くような笑顔、というやつを、正面からぶつけられたからだ。

 呆けてしまっていると、やがてアズールさんは、いつもの落ち着いた顔に戻った。

 

「と、こんな具合ですね。この調子で仲を深めましょう」

「は、はい……」

 

 はいって言っちゃった。

 ……うああ、ダメだ、こんなんじゃ僕、アズールさんのこと、本当に……。

 彼女が歩いていくのを、僕は、頭をぐるぐるさせながら追いかけるしかできない。

 

「ん。今日はいつもより人が多いですね」

 

 アズールさん……アズさんの言葉を聞いて、周りに目を向ける。

 朝の勤務開始時間に、転移門に近いこの区画まで来ると、探索者たちで通路はごった返すけど……、たしかに、今日はさらに、人通りが多いかもしれない。思えば、“階層違い”の話も出ているっていうのに。

 ……何かあったんだろうか?

 

「社長、はぐれないように、お手を」

「えっ? いや、子どもじゃないんですから――」

 

 まさか聞き間違いでは、と思うようなことをアズールさんが口走った。

 でも、さっと右手を握られて。うわ……って。うわってなった。アズールさんの手。体温、温かい。

 それだけじゃ終わらなくて。アズールさんは、僕の指の間に、彼女の細い指を入れてきた。それで離れない繋ぎ方をして、ぐい、って引き寄せられる。

 また、すぐ近く。お互いの肩っていう橋を渡ったら、すぐ、アズールさんの唇、その上に鼻、目……っていう距離になる。

 どきどきしてどうにかなりそうで、僕は、地面のほうを見てなんとかごまかそうとした。

 

「ん。あれは」

「え?」

 

 また声につられて、周りを見る。向かう先、迷宮の方角から、鎧騎士の格好をした一団がやってきていた。行きかう通行人たちが、彼らの道を作るように割れていく。

 あの格好で迷宮に入る集団といえば、素性はすぐにわかる。世界的に大きな影響力を持つ一大宗教、星天教会に所属する騎士たちだ。もしかしたら、“階層違い”についての調査に来てくれたのかもしれない。

 

「……ああ、ええと。教会の騎士様たちでしょうか。……あ、あの、アズさん。ちょっと、離して……」

 

 先頭を歩いているのは女性の騎士様だった。その後ろのひとりも。他の騎士たちと身に着けている鎧が違うので、たぶん、あの二人は上位の騎士なのだろう。

 しかしそんなことより。この人混みの中で、気になっている女の子と手を繋いで歩くなんて、ちょっと、いくらなんでも。

 

「社長、危ない! 悪い虫が!」

「はい? ――もげぇッ!?」

 

 手を振り解くのも悪いし、どうしたら。

 なんてことを考えていたら、突然、本当に突然、アズールさんに、狭い路地裏に押し込まれて――、顔に、何かを押し付けられらりふげげ。

 苦し…… やわらか いい匂い

   何だ!?  コーヒー飲みたい  ふわふわ

  振り解く 無事で!? 出来る!?

   否 死因はアズールさんの胸

 

「ふっ。乗り切った」

 

 一体、なぜ、こんなことに。何もわからない。しかも短時間のうちに二回の臨死体験。

 

「さあ、行きましょう社長。今日もリソースを溜めて、我々は強くなるのです」

 

 頭の上、遠いところから、アズールさんの声が聴こえる。

 

「あれ……。気絶? おーい。……おっぱいが好きすぎて気絶ですか。あー、やっぱりエロいんだ、ルーファンくんは」

 

 なんか、誰かに、不名誉なことを……言われている……ような……。

 

 ▼

 

 例の問題もあるので、今日は早めに迷宮探索の仕事を切り上げた。

 決して、直前に気絶して体調が良くなかったから……ではない。ないったらない。僕は今日も全力で働けたつもり。

 もちろん、アズールさんの活躍には、全く及ばないけれど。

 

 これであとは、事務仕事を片付けて、一日にやるべきことは終わり。

 アズールさんも退勤して、静かなオフィスで端末と向き合う……

 はず、なんだけど。

 この前から、そこに、新しい日課が加えられた。

 

「……じゃあ、お願いします……」

 

 椅子に座るアズールさんは、そう言って、前の方でごそごそと……たぶん、服のボタンを開けて。背中を大きく、晒けだした。

 うなじよりもっと下まで、雪の精みたいに白い肌が、みえちゃってる。

 ううううう。前から、服越しでいいはずだって言ってるのに、なんで……。

 せめて、なるべく、なるべく見ないようにしながら、アズールさんの背中に、ぺたりと手を当てる。

 

「ひぅ……」

 

 すごく熱い、と思うと同時に、アズールさんの小さい声がした。

 この儀式のときのアズールさんの声を聞くと、すごく、なんだか……心臓がどきどきして、頭がくらくらする。

 いや、いやいやいや、だめだだめだ。これはアズールさんを強くするための、ただの作業。変な気持ちでするものじゃない。

 

『じゃ、やろうかぁ』

「……あ、アズさん、いきますね」

「はい」

 

 スケヴニングが魔石から抽出したエネルギーを、腕を通して、アズールさんに流し込んでいく。

 これが、彼女の潜在能力を引き出すために必要なこと。

 

「……っ! っ、あっ! ふぐっ……!」

 

 苦しそうな声。もう何回かやっているのに、彼女はずっと慣れない様子で、苦しそうなままだ。

 早く終わらせないと。

 “力”がスムーズに、いっぺんに流れるように、イメージする。

 

「んやぁっ!? うあっ、これっ、いっ、いっ……」

 

 アズさんの背中がびくびく震える。座っているイスが、がたがたと鳴った。

 ……こうなったら、作業は終わりだ。もうひとつ、強化の段階があがったはず。

 アズールさんの……なんというかその、あられもない姿。それを見ないようにすぐに後ろを向く。

 はぁ、はぁ、という荒い息遣いが聴こえる。……耳も塞いだ方が良いだろうか。

 耳を塞ぐために、両手を持ちあげて――、

 

 びーっ。

 あまり、聴き慣れない音が鳴った。

 僕がグランメイズを継いでからは、あまり耳にしなかったもの。

 ……外からの、お客様が鳴らす、チャイムの音だった。

 

「来客……あっ、で、出迎えないと」

「……わたし、着替えて来ます」

「あ、えと、はい」

「……後からお茶をお持ちしますので、ご対応頑張ってください、社長」

 

 そう言って、アズールさんは更衣室の中に、ゆっくり入っていった。荒い息遣いのまま……。

 ……はっ、目で追ってる場合じゃない。オフィスの表玄関に行かないと。

 

 それで。

 玄関口にやってきていたお客様は。

 僕にとって、見たことのある、ふたりだった。

 どこで見たかと言うと。

 最寄りの転移門の近くで。さっき。

 

「おっ。きた……んんっ、ごきげんよう」

「あら? こんにちは。お店の方はいらっしゃいますか?」

「……あの、スカーレットさん。この子が“十三号聖剣”の担い手ですよ」

「えっ? あ、あらあら」

 

 鎧に身を包んだふたりの女性。星天教会の騎士様たちが、そこにいた。

 

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