もしも毘沙門天の兄が勇将だったら   作:サンサソー

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ちびノブに感ず

駆ける。駆ける。飛び跳ねる。

 

木々を避け、窪地を飛び越え、坂を駆け上がっては駆け下りていく。

 

その小さな影は、まるで全ての憑き物が落ちたかのように軽快な足で走り回っていた。

 

その勢いたるや猪の如く。その小回りのよさは飛ぶ鳥が如し。

 

しかしその疾走具合とは裏腹に、その体躯はキュートでスモールであった。

 

まあ、つまるところ……。

 

「ノッブイェーイッ!」

 

晴景、暴走す。

 

 

 

 

 

 

晴景はこのちびノブとやらを気に入った。奇怪な姿と奇妙な鳴き声を除けば、人であった頃よりも遥かに良いとさえ思っていた。

 

小さくて小回りが効く、刀を持っていてもそこまで重く感じず、何より病弱であった頃の息苦しさが無い。

 

それに気づいた晴景はずっと走り続けていた。

 

「ノッブ!ノブノブブブノブッ!」

(訳::素晴らしい!この身体は良い!)

 

もはや自分の声がノブノブだろうと気にもとまらない。生前ではありえなかった全力疾走。いくら走ろうとちびノブパワーなのかサーヴァントパワーなのか一切疲れが無い。

 

しかし、いつまでも走り続けられる訳でもなく。しばらくした後に晴景は地面にぶっ倒れていた。

 

「ノ……ノブブァ……」

(訳:は…腹が……)

 

サーヴァントは魔力が無ければ現界を維持できない。本来の聖杯戦争であればサーヴァントには必ずマスターがつき、魔力を貰うのだが……晴景にはマスターがいなかった。

 

こんな身体をしているのだから、真っ当な召喚では無いのだろうとわかってはいたが、流石に小さな身体ではしゃぎすぎた。

 

サーヴァントの本質は魂喰いだ。魂が無ければ血肉を取り込み魔力にするしかない。

 

追放した冷静さが戻ってきた。

 

必要なのは食糧と雨風しのげる仮住まい。まずは食糧だと 辺りを見回し、その場にしゃがみ込んだ。

 

「ノーブノーブノーブブー♪」

(訳:やーれやーれ植ーえよー♪)

 

里にて子供らに教えられた田植えの歌を口ずさみながら、そこらに生えている雑草(ご馳走)を抜いては集めていく。

 

たかが雑草と侮ることなかれ。私にとっては馴染みのある食物だ。

 

ヒエやアワと共に雑炊にするもよし、煎じて茶にするもよしの万能具合だ。

しかし茶は不味く雑炊も大して美味くはないが。

 

里の者らにとってはこれらが食事。何度も馳走してもらったものだ。

 

一人浸りながら雑草を抜いていく晴景。しかし、走り回っていた時に近くに水場は見ていない。なので……。

 

「ノブブノッブ!」

(訳:頂戴する!)

 

晴景は雑草をそのまま口に入れた。広がるのは懐かしの味、里の者らを思い出す味、クッッソ不味い味。

 

「ノ…!ノブブ…!」

(訳:おう、おうふ!)

 

晴景は久方ぶりの苦味に涙を浮かべながらも必死に咀嚼する。あらゆる茶を嗜んでいた晴景にとって、慣れるまでは早かった。

 

雑草を食みながら近くの木を一閃。倒れた木を綺麗に四等分にする。それらを柱に見立てて、上に枝と葉っぱを敷き詰めて軽く石を乗せれば、仮住まいの完成。サーヴァントの力ってすごい。

 

壁は無いが、雨はしのげる。食糧はそこら中にあるし、ここを拠点にすればある程度の探索はできるだろう。

 

「ノブノブ……ノブブノブブブノブッブノブ」

(訳:やれやれ……まずは誰かと接触しなければ)

 

土地の名、世の状況、調べなければならないことが山ほどある。近くに集落が無いかを探そうか。この姿を見ても話を試みようとしてくれる者がおればよいが。

 

寝転がり、口寂しさを紛らわすために雑草を食む。日も傾いてきているし、探索は明日から開始しよう。

 

晴景は枝の束を枕代わりに、初めての夜を寝て過ごすことに決める。念の為、索敵のために脆い枝を撒いているため、地に足つく何かの接近にはすぐに気がつけるだろう。

 

刀を手に抱きながら、微睡みの中に意識を沈めていったのだった。

 

 

 

 

 

 

 

 

「………………」

 

周囲の茂みが揺れる。その中から、数多の丸い目が眠る晴景を見つめていた。

 




ちびノブ、カルデアに持って帰れないかなぁ。
信勝くんのように全ちびノブを揃えてみたい。

タイトル「勇将」を変えるか否か

  • 勇将
  • 義将
  • 心将
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