もしも毘沙門天の兄が勇将だったら   作:サンサソー

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お気に入り登録をしてくださったこと、アンケート結果から続けてみようと思います。

不定期更新ではありますが、なにとぞよしなに。


虎千代、妖が如くなり

叩く音が屋敷に響く。次いで倒れる音も。

 

何事かと晴景は音の場所へと向かった。そこで見たものとは……。

 

「父上、おやめください!」

「退けい綾!そこの妖を叩き出すのだ!」

「あはははは!父上!虎千代は妖ではございません!」

 

為景が虎千代を殴り、それを綾御前が庇うところであった。

 

虎千代が笑い、その顔を見た為景は酷く怯えた様子で怒鳴り散らした。

 

「ひっ……!?これじゃ、この顔じゃ!こ奴め、叩こうが殴ろうが何をしようと笑う!泣きもせぬ、逃げもせぬ!ただただ笑うばかりよ!得体が知れぬ、おぞましい!」

「父上!それはあんまりでございます!虎千代はただ迷っているだけなのです!迷い、どう答えれば良いのか理解が追いついていないのです!」

「だまれだまれ!わしは本気で殴ったのだ!だのに、この者は涙すら流さぬ!常人であれば、人の子であれば顔を歪め大泣きするところであろう!」

 

為景と綾御前の言い争い。不毛だ、この上なく不毛だ。方や恐怖に支配されてしまい、目を向けたくない。もう方や人並みの愛を持ってはいるものの、肝心の虎千代を置いている。

 

「父上」

「む、晴景か!そなたもこの妖を殴れ!ここから、我らの前から消すのだ!」

「っ!兄上…!」

 

為景の悲鳴にも近い叫びと、綾御前の縋るような視線。晴景はそれらを無いもののように足を進め、虎千代の手を取った。

 

「父上、私はこれから虎千代と稽古をするのです。私の成長には虎千代が不可欠。私が見ておりますゆえ、自室にお戻りください」

「晴景、そなた…!」

「誤解はせぬよう。私はただ利用するだけだ。虎千代に肩入れする訳ではない……虎千代は連れてゆくぞ」

 

どちらにも組みしない。虎千代は言わば道具であると宣言し、少々乱暴に虎千代を庭へと出す。

そのことに、虎千代は笑顔を崩さぬまま……いや、兄との稽古に顔を輝かせた。

 

「兄上!虎千代と稽古などなんとも珍しいですね!お身体の加減はよいのですか?」

「ああ、今は特別調子が良い。ゆえに、此度もお前の勝利は有り得ぬ」

 

晴景。その身体は病に犯されやすい、少々頼りのないものだった。しかしそれでも、晴景は剣を持つ。武を磨く。なぜなら自分は、父たる為景に当主となるに相応しい将となれと言われているのだから。それなのにどうして、妹などに負けることができようか。

 

「いいえ、いいえ!此度こそ、虎千代が勝利します!兄上を超えること、それが私の望みです!」

「うろたえたことを言うものだ。お前の才能はまさに乱世を乱し泰平にも転がる程のもの。だがまだまだ童よ。お前は病弱で貧弱であるはずの兄に勝つことは能わぬ」

 

互いに木剣を構え、一合二合と剣を交わす。虎千代はまさに鬼才。それは父である為景さえも凌駕している。しかし虎千代は一度も晴景に勝つことができていなかった。それはなぜか……。

 

「父上の言葉に、何かしらの傷を負ったかと思ったが杞憂だったようだな」

「あはははは!兄上!虎千代はよくわかりませぬ!父上が何に怯えているのかも!父上がなぜ虎千代を殴ったのかも!」

「そうか、ならばよい。下手に何かしらのしこりを生んでいれば……」

 

 

その首、この場で叩き折るつもりであった。

 

 

虎千代と晴景の違いはそこだ。

虎千代は兄から一本を取るために試合するが、晴景は妹の命を獲るつもりで試合している。

 

面白き試合と真剣死合い。あくまで遊戯と戦い。

 

虎千代の剣を、文字通り必死の覚悟でいなし獲ろうとする。その違いこそ、強すぎた虎千代と弱すぎた晴景が戦えている理由だった。

 

虎千代は妖と呼ばれている。しかし、本当の妖とは……。

 

「むんっ!!」

「おおっ!?」

 

晴景の剣が虎千代の頭を捉え、その小さな身体を転がす。勝負は晴景の勝ちだ。

 

「才能はあれど()()童。身体も()()未熟ゆえな」

「あはははは!またです兄上!また虎千代は負けました!」

 

頭から少々血を流した虎千代が笑う。晴景もそれにつられて笑みを零した。

 

これで何度目か。殺すつもりで振った剣はやはり、虎千代の命を奪うまでには至らなかった。

 

虎千代とともに晴景は笑う。此度も、私は()()()()()()

 

諦観の笑みが、無機質な笑い声と重なる。

 

 

ああ、やはり。狂気に至った人とは、かくも恐ろしいものだよ。

 

 




壊れたモノ、狂うモノを書く時は、普段思いもしないことを浮かべながら書くべし。

ううむ、我が父ながらカッコイイのかちょっちダサいのか分からない言葉を投げかけてくるものです。

カルデアでの話、いる?

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