しかし、私はまた性懲りも無く書き続けます。期間が空こうが人も離れようが書き切る所存です。
こんなダメダメな作者ですが……とりあえず、『もしも毘沙門天の兄が勇将だったら』復帰です。
評定の後、晴景はちびノブ忍軍を用いた連絡役を任ぜられた。その他にもちびノブ兵の鍛錬など様々なちびノブの仕事を受け持つことになる。
ちびノブとは全く定まらない。
信長らによって精神は荒んでおり、しかしどこまでも純粋で。
存在そのものが聖杯と信長による揺らぎ、亀裂があるのだ。ナマモノと呼ばれるこれも、なんと哀れなものである。
「ノブノッブ!」
「ノブブブ」
確かに、有給休暇が無いことや諸行無常を憂いることはある。しかし、その目に諦観は無かった。
ちびノブというものは、どうしようもなく打たれ弱く。だのに確かに打たれ強かった。
ではこちらが哀れんでいる暇などない。今やこの者らは慕ってくれる大事な部下だ。彼らが前を見据え、確かに歩んでいるというのに、将たる己が過去にとどまるわけにもいくまい。
「ノブ、ノブッブ」
(訳:そら、できたぞ)
「ノッブー!」
今こうしてできるのは、ちびノブを強く鍛え、そして荒んだ心を繋ぎ止めること。任務から帰ったくたくたなちびノブを茶で迎え、背中を押してやることだ。
活力があれば、どのようなことにも挑戦できる。そして自信がつけば、やがて己の武器となる。
その手助けだけでも、同族にはやはりしてやりたいのだ。たとえこの身が、さらに存在が迷い続ける魑魅魍魎だとしても。
「ノブッブ、ブー!」
また一人、ちびノブが元気よく駆けるようになった。さて、茶道具を片付けそろそろ鍛錬を見に行ってみるかと腰をあげようとした時。
「……ノブブ」
(訳:……客人か)
柱に背を預け、晴景を窺う者が一人。いつの間にやらそこにいたソレは、居住まいを正した晴景へ無遠慮に近づいていく。
「ノブノッブブ、ノッブ」
(訳:何用かな、
「………………」
言葉は通じていないだろう。カルデア家を興す際から既に居たという古株の将。そして、晴景の━━━
「ちびノブ…?たちに茶を振る舞う。なるほど、噂は真のようですね」
「ノブ」
(訳:然り)
「……私も、一服頂いてもよいでしょうか?」
晴景は一つ頷き、片付けた茶道具を広げる。茶葉を選び新たに点て始める。
「………………」
「………………」
景虎は茶を点てる晴景の動きを目で追っている。そのために晴景が茶を片手間に顔を見ていることには気付くことが出来なかった。
少々ムスッとした固い顔は自分が新参者故か。確かに意味のわからぬ怪生物。警戒するに越したことはない。
「………………」
ただ無言。顔を見る間も作業に一切の濁りは無く。久しいその顔を晴景はよくよく見つめ続ける。
良い顔だ。今の固い顔は武士の物。決して侮られてはならぬ。覚悟している者のそれであり、またその覚悟を他人に押し付けない。もっぱら己の生き方を貫こうとする者がなる顔だ。
「……ノブブ」
(訳:……待たせたな)
「……いただきます」
景虎が茶を一口飲む。どうやら美味かったのか、言葉も無く再び口を付け全てを飲み干した。
「……ふぅ」
「ノブブ、ノブ」
(訳:もう一服、如何か)
「っ……では頼みます」
手をやったことで晴景の意図に気づいたか、茶を所望する景虎。言葉も無い静かな時を、しかし二人は良しとした。
居住まいも乱れがない。茶の湯は禅の修行、その姿勢こそ最も大切なもの。どうやら注進はもう必要ないらしい。
「……ノブ」
(訳:……さあ)
「…………っ」
口をつけ、未だ固かった顔が変わる。無理もない。それは宇治の茶。私が生前に最も好み、そして何度もこの戦馬鹿に拵えてやった物だ。
「これは……」
「ノブノブ」
(訳:気に召したかな)
「……不思議なものです」
景虎は顔を緩ませ、美味そうに茶を飲み干す。茶碗を寄越すと、立ち上がり晴景を見る。その意図を汲み取った晴景はその場を退き、今度は景虎が茶道具に手を付けた。
「私も宇治の茶を馳走しましょう」
「ノブ、ノッブ」
(訳:うむ、頼もうか)
正直、意外であった。頭の中は常に戦のことばかりで、やはり良くも悪くも表裏の境目が曖昧であったあの景虎が。今や見事な手前で茶を点てている。
「私が、茶を点てるのが意外ですか」
「ノ……」
(訳:それは……)
「本来、私はこういう諸芸に興味はありませんでした」
少々手に力が入っている。嗜みはすれど、まだまだ景虎も拙いようだ。
「しかし、とあるお人のおかげで……私は諸芸を好むようになりました。陣では歌や詩を読んだものです」
「……ノブ」
(訳:……そうか)
「ええ、本当に不思議。あなたとあると、そのお人を思い出してしまいます」
点て終わった茶をこちらへ寄越す景虎。熱い宇治の茶を、晴景は一息に飲み干した。
「……ノブノッブ。ノブブブー」
(訳:……熱すぎる。及第点はやれんな)
「反応で多少はわかりますね。どうやらお眼鏡にはかなわなかったようですが」
「ノブ、ノブブノッブノッブァー」
(訳:まだ荒く、務めの凝りが抜けきっておらぬわ)
「何を言っているのかはわかりませんが……はい、酷評なのはわかります」
肩を落とす景虎。晴景は鼻息を一つ鳴らし、茶道具を手早く片付けた。景虎は首をコキコキと鳴らし、軽く身体を捻った。
「しかし、茶は肩が凝りますね。私はやはり戦場にいる方が性に合うようです」
「ノブブブノッブ」
(訳:戦馬鹿は健在か)
「……何故かはわかりませぬが、無性にあなたを叩きたくなってきました」
妙なところで勘が鋭いのも健在のようで。晴景は軽く笑い、景虎もまた笑う。
のどかな、戦国に似合わぬ場がそこにあった。
その時である。
「ノッブァー!」
いかにも慌てた様子のちびノブが一人、部屋に転がり込んできた。
「ノブブ!?」
(訳:どうした!?)
「ノブ、ノブブッブ!」
「ノブブ、ノブノッブ!」
(訳:招集か、行くぞ景虎!)
「はい?あの、あまり状況がああぁぁぁ……」
晴景に手を掴まれ、景虎は凄まじい速さで宙に浮かぶ体験をすることになるのだった。
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