もしも毘沙門天の兄が勇将だったら   作:サンサソー

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今回会話文多めです。



信長が男など馬鹿らしい!

目を覚ませば見知らぬ場所。どうやら晴景はウィンウィンと珍妙な音を鳴らす人ならざる者に抱えられているらしい。

 

その抱え方もまた粗雑であり、柴田勝家とやらに吹き飛ばされた晴景を助けたという善の者でもないようだ。

しかもその隣にて歩きを共にする男、いかにも大成した僧侶の出で立ちをした坊はニヤニヤと心持ちを悪くする笑みを浮かべている。

 

「ノブ!ノブブー!」

(訳:離せ!離さぬか!)

「ついに手に入れたぞ。これで摩玖主本尊はさらに衆生を救う力を得るのだ」

「ノブァ!」

(訳:聞けぇ!)

 

坊主と妙ちくりんな者は声に一切反応すること無く晴景を運んでいく。やがて出たのは巨大な燈籠の如きナニカが安置された部屋だった。

 

「ノブブ……」

(訳:ここは……)

「いるか。マックスウェルよ」

「ええ、ここに」

 

燈籠の影から見ぬ態をした男が現れる。確か洋服と言ったか。少々信長の服装に似る所が見て取れる。その内には並々と満たされている魔力を感じる。恐らくこの男、サーヴァントだ。

 

「各地の状況は如何か」

「今はカルデア家が日の出る勢いですね。魔王信長配下の柴田勝家と激突した後は尾張へ侵攻、本物信長と一戦交える頃合でしょう」

「そうかそうか。では信長らが戦などという愚かな遊戯をしている間に、我々は自由に動けるな」

「まあ、東は魔王信長の目がありますから大きくは動けませんがね。ところで、そちらが例の…?」

 

晴景が無造作に掲げられる。暴れようにもしっかりと掴まれており抜け出せる気配はない。

 

「うむ。このような醜悪な生物を使うのは気が進まぬが、見逃すことなどできん。悪魔にはさぞ馳走となるだろう」

「ですか。では……」

「ノッ!?」

(訳:ぬぐっ!?)

 

マックスウェルとやらが晴景へ手をかざす。魔力が晴景へと絡み付き、その手を離れ宙へ浮かぶ。当の晴景は苦しげに藻掻くが、その手足は虚しく宙を掻くのみ。

 

「……恨んでくれて構いません。今は本尊の中へ」

「ノブ…ブ…!」

(訳:何…を…!)

 

やがて晴景の胸から何かが迫り出される。それは輝きを放ち、燈籠の中へと消え行った。

 

 

 

 

 

 

一方、カルデア家では一つ報せが舞い込み、家臣団に激震が走っていた。

 

「た、大変です皆さん!尾張の本物信長さんが亡くなったそうです!」

「マジで!?本物なのに!?まあもう本能寺の変の年過ぎてるしね!やった!またしても戦わずして勝つわしったら信長」

「貴方も彼も本能寺で蘇ったという話では……?」

「そんで?本物の大殿が死んだのはなんでなんだよ?別の大殿の勢力にでもぶっ殺されちまったか?」

「報告によりますと、どうやら家臣の謀反のようです……」

 

『謀反』と聞いて真っ先に思い浮かぶのはちびノブ。そこから今は亡いものとされた晴景が思い出されるが、すぐさまその思考を払った。

 

「なんだよ、返り忠かよ。最悪じゃねーか」

「おいおい、まさかミッチーじゃあるまいな…」

「それが、跡を継いだのは明智光秀ではなく……」

 

 

 

 

 

「僕が尾張の正統後継者!織田信勝だ!」

 

ご覧の通りである。尾張の軍勢と再び相対したカルデア軍。立香らは納得の様子で頷き、ノッブは頭を抱えた。

 

「越後の信長とやら!姉上の偽物の分際で姉上の国に攻め込むとはいい度胸だ!この僕が、姉上に代わって地獄の底に叩き落としてやる!!」

 

「あやつか……、まーた正統後継者とかなんとか世迷いごとを抜かしだしおったな」

「信勝っつーと、死んだ大殿の弟だったか?」

「弟、ですか」

「はい。信勝さんもわたしたちの仲間のはずなんですが…」

 

合戦場に似合わぬ気の抜けた空気が辺りに満ちる。やれやれと首を振りながら信長が前へ出た。

 

「まあ、わしが出ていけばまた日和って降伏するじゃろ。ちょっと行ってくる」

「そうですか。では早めに済ませて来てください。その間にこちらは陣中餅でも食べておきます」

「わしの分は残しておけよ!?」

 

軽く駆け陣の前方へ躍り出る信長。その様を見ながら無慈悲にも陣中餅は減っていく。

 

「おーい信勝!わしじゃわし!さっさと降ふ━━━」

 

刹那、ズダンと銃声が鳴り響き信長の顔スレスレを銃弾が過ぎ去った。

 

「のわっ!?あぶなっ!?」

「ダメみたいですね」

「ダメみてーだなー」

「信勝、貴様ぁ!わしの姿を忘れたと申すか!?」

 

「はあ?貴方のどこが姉上だって言うんですか?姉上はもっと正面顔だったというか…」

「あー、確かにちょっと変わったもんねノッブ」

「立香ぁ!立ち絵がちょっと違うだけで別人判定とかわし泣くぞ!?確かにとか言うなし!」

「……うん?確かに姉上によく似て…いやいや、騙されませんよ!少なくともマントの形は確実に違います!」

「いやそれはそのクラスが違うというかそういうのでじゃな……」

 

なぜクラスが変わっているのか自分でも理解できていないノッブ。まごついている内に、信勝の方は方針が決まったようだ。

 

「……しかし、確かに姉上と甲乙つけがたい姉上…よし、かくなる上はひっとらえて隅々まで確認させていただきます!」

「好き勝手いいおって。やるぞ立香!考えようによっては本物信長より楽かもしれん!」

「…………実の弟を攻めてよろしいのですか?」

「ん?……まあ、命だけは取らんでおいてやるさ」

「相変わらず身内にはあめーな大殿!なんつーか、変なところアレだよな、大殿はよ!」

「黙らんか勝蔵!とにかく行くぞ!」

 

サーヴァントを先頭として両軍がぶつかる。互いに意気込み、熾烈を極めるであろう戦いは……。

 

「うっぎゃあああああ!!」

 

信勝の瞬殺によって幕を閉じる。僅か数秒の出来事だった。

 

 




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