もしも毘沙門天の兄が勇将だったら   作:サンサソー

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中ボス、越後のちびノブ戦。


怨み深しノブの業(1/2)

我ら、怨の一文字。

 

 

 

山河よりも堅く、大海よりも深い。

 

 

 

そう、我ら怨はアレを呪う。

 

 

 

何故に我らは食い潰される。何故に我らは生きることが許されぬ。

 

 

 

我らは道具ではなく、また替えのきく品でもない。

 

 

 

許さぬ、許さぬ。

 

 

 

貴様を我らは許さぬ。

 

 

 

貴様の生存なぞ認めぬ。

 

 

 

貴様は這いつくばり、我らに許しを請わねばならぬ。我らを恐れねばならぬ。

 

 

 

邪魔なものは消えた。今こそ復讐の時。

 

 

 

さあ、さあ。

 

 

 

信 長 は ど こ だ

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「越後のちびノブ……さん?」

「マシュ、下がれ。アレはそんなモノでは無いわ」

 

思わず駆け寄ろうとしたマシュを景虎が手で、信長が声で押しとどめる。神の化身たる景虎はもちろん、たとえグダグダしていようと魔王である信長は敏感に感じ取ったのだろう。

 

越後のちびノブ、そのボディから薄暗く赤い靄が生じる。よく見ればそれは何かを形作っているようにも見える。そう、無数のちびノブの顔だ。

 

「なんだありゃ。ちっせえ大殿の顔みてえのが沢山張り付いてんな」

「うわぁ…正直言っていいです?この上なく気持ち悪いんですけど」

 

カルデアの面々が困惑に包まれる中、攻撃され膝をついていた柴田のみが動いた。赤黒の雷を伴った大振りの横薙ぎ。その一撃は無造作に立っていた越後のちびノブの小さな身体を吹き飛ばす……はずである。

 

「オ、オオ……!?」

 

越後のちびノブ、動く様子を見せず。いくら力を込めようとその刃は斬り裂くことをしない。大太刀へ刀を添え上へ跳ね上げると、ちびノブボディで止まっていた刃は正常の動きを取り戻し頭上を勢いよく過ぎた。

 

大きく振り抜いた体勢となる柴田。その太腿へちびノブが蹴りを入れると、巨体は呆気なく地へ膝をついた。

 

「え、なんですアレ。あんなに苦戦した柴田が赤子をひねるみたいにボコされてるんですけど」

「マシュ!霊基どうなっとる!」

「あ、はい!越後のちびノブさん、凄まじい力を発揮していますが……え?」

「どう?」

「あ、と、先輩(殿)!ちびノブさんの霊基、安定しません!シャドウサーヴァントよりも不安定で、測定される魔力量も通常のちびノブ個体にすら満たしません!」

「チイッ!この特異点の影響か、はたまたちびノブの怨みがそこまで強いものだったのか…!」

 

越後のちびノブから湧き出る靄は怨霊の類。そしてサーヴァントとしての成立がやっとな程の霊基でありながら、柴田を一蹴する出力。

 

この地に根深く積もり積もった怨みは、『ちびノブの呪い』というスキルへと昇華された。その効果は織田信長から受けるダメージを防ぎ特効を付与すること。

 

「権六は魔王信長の魔力をたっぷりと喰らっておる。その魔力にスキルが発動しとるんじゃ。何故そうなったのかは知らんが、怨霊が暴走したことで歯止めが効いておらんのじゃろ」

「このまま放っておくわけにもいかん。ここは一つ、敵との共闘をするべきか」

「よっし!今まで散々な目に遭わされてきたからなぁ!今までの恨み、ここでぶつけねば!」

 

ガトリングガンを片手に意気込む信長。その声が聞こえたのだろう。まさに振り下ろさんとしていた刀を止め、越後のちびノブはゆっくりと振り返る。

 

「………………」

「………………」

 

目が合った。いや、ちびノブに瞳は無いが確かに視線は交わされた。

 

「カカレェゴオッ!?」

 

敵を前にして余所見をする。戦場においてこれ以上無い侮辱と油断である。激昂した柴田が立ち上がろうとするが、可愛らしい後ろ蹴りが柴田を吹き飛ばした。

 

「柴田と違い、我らは立香から魔力を得ています。呪いの影響はないでしょう」

「ノッブは後ろに下がってて」

「何を言う立香!わしはやるぞお前……」

「………………」

「いややっぱり下がっとこうかの」

「眼力だけで意気消沈しないでくださいよノッブ」

 

その目はただ信長にのみ定められている。先程の威勢はどこへやら。その不気味さに信長はたじろいだ。

 

そしてその一瞬の隙が命取りである。

 

手柄はノブに在り

 

信長の首級を挙げる。その一点のみを望むちびノブは早い。跳躍一つで信長の眼前に迫り、鋭い一閃を放つ。

 

「うわわっと!?」

「はっ!」

 

間一髪、沖田の刀が間に滑り込んだ。柴田の強打を容易に跳ね除けたちびノブの刀はしかし、沖田の刀に阻まれ押し切ることもままならない。

 

「力が弱い、行けますよ!」

「破ッ!」

「オラァッ!!」

 

李書文の正拳が小さな身体を引き離し、長可の槍が地面へ縫い付ける。

 

「2人は柴田さんの所へ!」

「行くよ叔父上!」

「なんかそう呼ばれるの変な感じする!」

 

「何があったか知らねえが、邪魔すんならぶった斬る!」

「しゃおらぁ!!」

「………………」

 

土方の剛剣が振り下ろされる。両手でやっと止めたが受けきれず、ちびノブは横へと流す。そこへ槍を引き抜いた長可の一突きが襲いちびノブを吹き飛ばした。

 

鎧はノブに在り

 

物事を達するために持つ心、信長の首こそ最も求める物。強烈な一撃であることは確か。しかしちびノブには届かない。

 

尾張砲

 

小さな口をめいっぱい開け、放たれるは光の束。つまるところビームである。

 

「チィッ!」

「うおっと危ねぇ!」

 

光線を避けた土方、長可の二人を抜け信長へ迫る。景虎、李書文が対すると、ちびノブは再び口を開けた。

 

「そう何度も通用は…!?」

「ぬっ!?」

 

光線が放たれる。しかしそれは攻撃のためでは無い。刀に光を纏わせるため。

 

ちびノブが素早く刀を振るいいくつもの光波を飛ばした。迎撃に思考を取られ、ちびノブに割く余裕は無く突破される。しかし二人を突破した先に待ち受けていたのは、姿勢を低く構える沖田の姿だった。

 

「一歩音越え、二歩無間、三歩絶刀!『無明三段突き』!!」

 

宝具炸裂。全く同時に放たれた三度の突きを浴びせられたちびノブは大きく距離を離された。

 

本来ならば穿たれた箇所が消滅する宝具である。いくら強き心での防御と言えども胸に小さい穴が空いた。

 

効いたのかその場から動こうとしないちびノブへ、更なる追撃が降り注ぐ。

 

「止まったな!ではもう一つブッパなす!『三千世界(さんだんうち)』じゃああ!!」

 

銃撃の雨あられ。それが一箇所に降り注いだ。万全であればまだしも、身体に穴を開けた手負いの状態。さすがのちびノブも膝をつき、爆発に飲まれた。

 

「うっはっはっはー!スカッとしたぜい!」

「弱ったところで美味しいの持っていくのはどうなのかな」

「だってわしが出ると即死じゃし。是非も無いよネ!」

 

しかし仕留めるには至らなかったのか、煙の中で幽鬼の如く揺らめき立つちびノブ。再び襲い来るかと構えるも、少し様子がおかしい。

 

「ノブ……ノブ…ブ…」

 

身体を丸め、苦しげに唸る。もしや正気に戻ったのかと立香が駆け寄ろうとし……。

 

「ノブ…ナ…ガアァァアアアッッ!!!!」

 

咆哮と共に爆発したように大量の怨霊が解き放たれた。

 

 

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