もしも毘沙門天の兄が勇将だったら   作:サンサソー

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怨み深しノブの業(2/2)

爆発と共に吹き出す怨念。それらは虚ろな目を向け、ただ信長へと猛進する。

 

「うっわ、何コレ気持ち悪いんじゃけど」

 

動きは少々のろいが、飛び散った跡は小さく爆発している。殺傷能力は確かにある。

 

しかしサーヴァントにとっては回避も対処もしやすい。己に飛ぶ全ての怨霊を、火縄銃の一斉掃射によって撃退した。

 

「ノブ…ナ……ノブナ…ガァ…!」

「れ、霊基の損傷確認!しかし、ちびノブさん止まりません!」

「なんだよ、気合い入れまくってんじゃねえの」

「気を抜いてはならないようですね。様子がかなり変わっ…!?」

 

越後のちびノブから怨念が瞬間的に放出、その勢いを利用し宙を舞う。咄嗟に反応できたのは景虎・沖田・李書文のみ。しかし行く手を阻むこと適わず、信長の首へと刃が襲った。

 

「へ?」

「ノッブ、危ない!」

 

抵抗も許さぬ間に首を破られる……かと思いきや、信長の姿が消え少々離れた場所に現れた。見れば立香が手を伸ばしている。魔術礼装による『緊急回避』だ。

 

「なんて速さですか!?まさか、さっきまでのは本気でなかったとか言いませんよね!?」

「ぐ…ぬ……瞬間的放出による能力強化、といったところか。どっかで見たことがあるような……」

「……もしかして、魔力放出?」

 

腹ペコ王と契約している立香は、信長の見識からすぐさまに通った能力を探り当てた。これは魔力ではなく怨念で代用しているらしく、完全に怨念が制御不能の状態であることを意味する。

 

「ここまで強くなれば、生け捕りも難しい。立香、討伐の許可を」

「でも……」

「我らは魔王信長を倒しに来たのです。ここで消耗しては元の木阿弥ですよ」

 

元は共に過ごし戦った仲間。しかし、このままでは魔王信長と戦う所ではなくなるのも事実。

 

「ノブナガァァアアアッ!」

「うおっ!?ま、マズイぞ立香!怨念の量が増え始めとる!手が付けられなくなるぞ!」

 

再び信長へ飛びかかる越後のちびノブ。その刀身へ怨念が帯び、信長に躱され地に当たる度に爆発を起こす。さらには刀が振るわれる度に怨念が飛び散り、沖田らは近づくのが困難となっていた。

 

「立香!」

「……令呪をもって命ずる。長尾景虎、あの怨霊を打ち倒せ!」

 

マスターの権利。令呪を用いた命令権。それは多大な魔力となって景虎に流れ込み、瞬く間に宝具解放の準備を整えた。

 

景虎の周りへ八つの武具が現れる。それを愛馬、放生月毛に跨った景虎数えて八人(・・)が引き抜いた。

 

「我が敷くは不敗の戦人!駆けよ、放生月毛!毘沙門天の加護ぞ在り!!」

 

生前に得意とした車懸りの陣を対人へと転化した攻撃。ここで初めて、ちびノブは信長以外を目視した。

 

弱きを助け、強きをくじく義の剣。神の刃。その全てが今、己に向けられている。

 

それはつまり、己は弱きの恨みを晴らす者ではなく……『信長と変わらぬ弱者をいたぶる者』であると定められた。

 

腹の底から湧き上がるものがある。ああ、そうだ。いったい何を勘違いしていたのだろう。

 

この地は信長が集う戦国。一揆を起こし、ちびノブのための国を建てたビッグノッブ。そして我らちびノブ。

 

敵は本能寺より出でた己に在り

 

天はノブに在り━━━━天命の攻撃である

鎧はノブに在り━━━━既に心は折れている

手柄はノブに在り━━━━討つべき信長は己である

 

怨霊、鎮まる。突きつけられた自己矛盾に、恨みは逝きどころ無く燻った。

 

「『毘天八相車懸りの陣(びてんはっそうくるまがかりのじん)』!!!」

 

断罪の剣が、八度。ちびノブを貫いたのだった。

 

 

 

 

 

「えぇ……流石に引くんじゃけど」

 

ちびノブは健在であった。しかし倒れたままピクリとも動かない。

 

「アレ食らって耐えるって、え?固すぎじゃね?」

「はぁ……残って当然ですよ。私は立香に『怨霊』を倒せと命じられた。ですから毘沙門天の加護によって、未だに浮き世に留まり続ける霊を滅しただけです」

「……おぬしのソレも充分チートだよね」

 

『毘沙門天の加護』と言えば何をやっても許されるのだろうか。呆れ返る一同であったが、再び気を引き締めた。

 

今回の戦において討つべきは魔王信長である。だいぶ時間を食ってしまったが、このズレは今からでも取り戻せるはず。

 

「越後のちびノブさんはどうしましょうか」

「このまま放っておくにもいきませんし、春日山城へ運びましょう。念の為、ダーオカのように牢屋に入れて様子を見るべきですけど」

「でもよ、こっからだと結構遠いぜ。野盗なりなんなり警戒するならそこらの兵じゃ不安が残っちまいそうだけどよ」

「それはほら、ピッタリなのがいるじゃないですか」

 

沖田が振り返れば、ちびノブ兵たちが並び将たちを見ていた。

 

「ちびノブはちびノブに任せろってわけか。そんじゃあ心置きなく行かせてもらおう」

「そうだね。じゃあ、行こう!」

 

将を纏め、いざ魔王信長退治。少々疲れを感じつつも、一行は城へと潜入するのだった。

 

 

 

 

 

 

「なあ、権六はもう敗れたんじゃよな?」

「はっ!茶々と名乗るカルデア家のサーヴァントによって、安らかに」

「そうだな……その報が入ってからかなり時間が経つが……カルデア遅くね?」

「……来ませんね」

「来ぬかぁ……てか足軽のくせに微妙に馴れ馴れしくないかお前」

「気のせいですよ」

「気のせいかー」

「そうですよ」

 

 




怨霊による魔力放出は奴隷騎士をイメージ。

本編ではビッグノッブは信長にカウントされていた……つまりちびノブ=信長ということでは??
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