UAも今までの作品の中で一番勢いあって、怖…ン゛ン゛ッ、やる気が出てきます。
隠居した後、晴景は満足に動くことは許されなかった。峠を越えた晴景だったが、その身体は弱り運動ができなかったのだ。
それによって蹴鞠などいくつかの諸芸が禁じられた。晴景にとってそれは辛いことであり、できるのは茶の湯や連歌など。それでは身体がよけいに弱くなると感じた晴景は、たびたび馬で近辺を駆けるようになっていた。
その度に小姓などの従者に連れ戻されてはいるが、晴景は懲りる様子はない。部屋に篭っている方が身体に良くないと言っては従者の死角を突き抜け出していた。
晴景は近辺の里に立ち寄っていた。乱世の村は基本、他所者を招き入れたりすることはない。たいていは間者や山賊の引き込みだったりするからだ。
「あ、晴兄〜!」
「また来てくれたんだ〜!」
しかし、何かとつけて馬を出す晴景は何度も立ち寄っていた。最初は農具を片手に威嚇していた民も次第に気を許していき、ともに仲良く遊べるほどにまでなったのである。
「お前たち、息災か」
「うん!でも…」
「晴兄助けてよ!山に白鬼が出たんだ!」
「白鬼…?」
「おい!晴兄には内緒って言っただろ!」
子供たちは口々に白鬼という言葉を口にする。詳しく問いただしてみると、どうやら里のすぐそばにある山に白い怪物が現れたらしい。
「晴兄!白鬼をやっつけてよ!」
「……よし、やろう」
「ええ!?だけど晴兄!こんな危ないこと晴兄には…」
「よい。お前たちを恐れさせるものは、この晴兄が倒してやろう。お前たちは朗報を座して待つといい」
馬に跨り、早足で件の山へと向かう。いざ着いてみると、山は重苦しい威圧感のようなものに包まれていた。
「……馬は動かぬか……まあいい。何かあるのは確実、ならば確かめねば」
手綱を近くの木に括りつけ、刀に手を添えながらゆっくりと登っていく。山は静まり返っていた。獣の気配もなく、鳥の姿さえ見えない。
「………………」
見られている。獣のような敵意や警戒のものではないが、物音ひとつ立てず、晴景の進む速さに合わせて移動しているそれに警戒せざるをえなかった。
気づかぬ振りをしながら晴景は登り続け、ついに山頂へとたどり着いた。道中よりかは木々も少なく、ある程度見渡しやすい。ついに晴景は、未だに出てこないそれに接触をはかった。
「何者か。道中、私をつけていた時に名乗りを上げぬのは何故か。私ごとき、名を知らせる価値もないとでも。言の葉通ずるなれば出でよ。さもなくば、そなたを我が身を恐れる臆病な鬼として嗤い続けようぞ」
背後の茂みが揺れる。刀の柄に手をかけ、素早く体勢を変え構える。茂みから現れたのは…人だった。それも晴景の知己だ。
「……お前、また放浪していたのか」
「兄上こそ、ここに何用ですか」
いたのは晴景の妹、現当主である長尾景虎だった。景虎には放浪癖があり、よく一人で行先を誰にも伝えず出かけることが多々あった。晴景は、たまたま放浪していた景虎と出会ったのだ。
「里の者から、山に白鬼が現れたと聞いてな。なるほど、お前だったのか」
「鬼……私は、実際に場の空気を吸わねば、策がかちりと頭に入らないのです。絵図面や文献では詳細が詰められないので」
「……ここが戦場になると?」
「いえ、そんな予定はありませぬ。万が一のために立ち寄っただけですから」
ため息をつくと、来た道を戻り始める。景虎もそれに続き、晴景は怪訝そうに景虎を見た。
「場を見ていたのではなかったのか」
「いえ、もう十分見ましたので」
「ならばなぜついてくる。私は里に戻るつもりだが、お前は春日山城に戻るべきではないのか」
「近くにあるという里も見ておこうと思ったので」
面倒そうな顔をしつつ、それ以上は何も言わない晴景。許可を得たと感じた景虎はそのまま晴景とともに山を下りていった。
里に戻った晴景に、子供らが駆け寄ってきた。しかし、晴景の後ろにいた景虎を見ると、白鬼だと言って晴景の背後に隠れてしまう。
「………………」
「あー……」
景虎は石のように固まり、目が変わってしまった。それを見た子供らはさらに悲鳴をあげる。笑顔のまま固まっていた景虎の顔がヒクヒクと痙攣し始めた。なんという悪循環か。
「……景虎、こちらに」
「兄上……?」
子供たちから離れ、景虎を呼び寄せる。子供らが心配にそうに見つめ、しかしこちらによってこないのを確認した晴景はそっと耳うちした。
「なるほど……」
「わざわざ乗ってやるのも一興だろう。さあ、行こうか」
晴景たちは子供らのもとに戻る。子供たちは晴景の後ろに隠れ、景虎は少々反応するも、手を広げながらゆっくりと近づいてきた。
「が、がおー。我、汝らを喰らわん!」
「むむ、白鬼め山から下りてきたか!だがこの晴景の前に出たのが運の尽きよ!」
晴景は大きくうごきながら、勢いよく……しかし寸前で速度を落とし軽く景虎の頭を叩いた。
「が、がおー。我、討たれり」
景虎はおおげさに地に倒れ、それを見た子供たちは大はしゃぎ。子供らは晴景、起き上がった景虎とともに遊び、やがてそれぞれの家に帰って行った。
「…………」
「ぼーっとせんと。帰るぞ」
「は、はい!」
馬に景虎を乗せ、春日山城へと走らせる。背後からは、未だにどこかそわそわとした落ち着きのなさを感じたのだった。
今回、アンケートをとります。
内容はカルデアでの話も入れるか、晴景が死んだらそこで終わらせるか。
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