SPIDER-MAN ~Girls band party~ 作:通りすがりのゴキブリ
多分読者の皆様にはだんだんユウ君の株が下がって千聖の株が上がって行くでしょう。
写真撮影を終えた翌日。
今日の商店街は休日と言う事も有ってか、昨日より人が多い。
やはり日曜日の昼間と言う事も有るのか通行人が多く、家族連れやカップルを見てみれば微笑ましいやり取りをしている。
「WAFOOOOOOO!!」
そんな中僕は、町中をウェブスイングしパトロールに勤しんでいた。
今更だが、こうして空をスイングするのは爽快だ。そこらのジェットコースターよりもスカッとする。海斗にもこの爽快感を知って貰う為に、以前彼を片手に抱えて飛んだ事も有ったが、終始海斗は叫び声を上げ続け、終いには半狂乱状態で号泣しながら爆笑する始末。あの時の海斗は某邪神もビックリな程SAN値がピンチな状態で、マジで精神状態を疑うレベルでトチ狂っていた。
『…なんかバカな事思い出してねぇよな?』
「いや、別に何も。」
すると噂をすれば何とやら、耳に取り付けた薄型のインカムから海斗の声が聞こえる。全くコイツは勘が良いのだからこう言う時に厄介だ。
「そんな事よりアプリの状態はどう?」
『おう!もうインストール件数は200人を超えてる!なぁユウ、これ広告収入付けて「ダメ!ゼッタイ!」‥‥だよな……言ってみただけ。』
まったく…油断も隙も無い奴だ…まさか広告収入を付けようとするとは…でも200人か…これなら問題視されていた情報不足も解決できそうだ。
すると丁度タイミングよくスーツのポケットに隠していたスマホから「ピピピッ!」と電子音が鳴る。
『仕事か?』
「ああ、丁度アプリからの通知だ。」
スマホを起動させ、どんなメッセが届いているのか見てみると、そこには「助けて」の一文字。
『…ユウ…』
「…解っている、行くぞ。」
たった一文字しかない文面、だがこの一文字は相当切羽詰まっている状況で書かれた物だと僕は感じた。
だが僕に、恨みを持っている犯罪者達がアプリを利用した罠かも知れない、十分警戒して向かわなくては。
「海斗、メッセージの主の居場所は!」
『今GPSの反応特定してる…見つけた。』
相変わらず仕事が早い…僕は海斗に道案内を頼むとメッセージの主へとウェブスイングを用いて急行するのだった。
***
案外目的地は遠かった。
そこは完全な商店街とは真逆の方角、住宅街のど真ん中。
一軒家がずらりと並ぶ中、一人水色の髪をした少女が立っている。
『発信源はここだ、多分お前の目の前に居る水色の子がメッセ主だろう。』
「わかった」
インカム越しにそう返すと僕はウェブスイングを中止し、彼女の後ろに着地する。
えっと…彼女はきっと怖い思いをしただろうし、何か安心できる言葉…この場合だとジョークかな?あーでもリサさんの時みたいに上手く行くかな…
いや…ちがう、そんな事を考えてる暇はない、まず彼女が何故僕を呼んだかを知らなくては、その為にも取り合えず彼女に話しかけてみよう。
そう考えて彼女の肩を優しく叩こうとしたその時。彼女は口を開き、同時に彼女から放たれた言葉に僕は安堵した。
「ふ、ふぇぇ‥‥ここ何処~!」
…なんだ…ただ道に迷っただけか…
一気に込められた緊張が体から抜けていく、良かった‥‥どうやら犯罪に巻き込まれた訳では無さそうだ。
でもメッセージに「助けて」の一文字だけとは‥‥何事かと思ったよ‥‥
てもまぁ、ただ迷子になっただけなら別に気を遣う必要はない、いつも通りの自分で行こう。
「もしも~し、そこの可愛いお嬢さん」
「ひゃぁっ!」
気軽に彼女の肩をトントンと叩き、話しかけてみるが、どうやらビックリさせてしまったらしい、彼女の肩がビクっと跳ねた。
「ごめんごめん!驚かせちゃった?」
「ふ、ふぇぇ…!スパイダーマン~!」
こちらを見るなり僕の名前を呼びながら助けを求める水色髪の女の子、うん‥‥この子小動物みたいで可愛い。
「あはは…どうしたの? 様子を見るに道に迷っちゃったみたいだけど。」
「は、はい…すいません。私方向音痴なので…」
成る程、ここの地形は複雑だ、それにここは東京都内、住宅地となると家の数はマンションから一軒家まで多い。そんな中なら混乱するだろうし、迷子になるのも仕方ないだろう。
「そうなんだ…目的地は何処か解るかな?」
「えっと…羽沢珈琲店って所です。…その…友達と待ち合わせしていて…もう行かないと間に合わない…」
え?マジ?
羽沢珈琲店って現在地と真逆の方角だぞ?
しかも結構ここから離れている距離だ。少なくとも歩いて40分以上は掛かるだろう。
もしそこに行くつもりで迷ってここに居るってなると、この子相当な方向音痴だな…
「解った、待ち合わせの時間は何時かな?」
「えっと…10時30分です。」
「え?マジ…」
「は、はい…」
ナンテコッタイ…
彼女のスマホから現時間を確認するが、今の時間は10時20分、あと10分以内に羽沢珈琲店に向かわなきゃいけない。
歩いて40分は掛かる道のり、羽沢珈琲店に僕が付いて行って案内しても時間通りには間に合わないだろう。
さてどうするか‥‥いや、手は有る。でもこれは…いや、手段を選んでいる暇は無い。
「…失礼するよ。」
僕は暫く考えると、彼女をひょこっと持ち上げた。
「え?ふぇあ!」
「ごめんね、これしか間に合う方法が無いんだ。それと口を閉じていて、下手に喋ると舌を噛むよ。」
「ふ、ふぇぇぇぇぇぇぇ!!」
あー、やっぱり悲鳴を上げるんだ…そんな下らない事を考えつつ、彼女を片手に抱え、僕は羽沢珈琲店へウェブスイングで向かうのだった。
***
そして10分後、待ち合わせ場所の羽沢珈琲店にて
「ふう‥‥何とか間に合った~」
「ふぇ、ふぇぇぇ…」
何とか待ち合わせの時刻に間に合った事を安堵し、溜息を吐く。
「大丈夫、結構スピード出てたと思うけど…」
「は、はい、平気です。」
「そっか、良かった…」
「その‥‥本当にありがとうございました。」
勢いよく頭を下げてお礼を言う水色髪の女の子、どうやら彼女の方も問題無い様だ、最初スイングを始めた時は「ふぇぇぇ…」と良く解らない叫び声を上げていたが、どうやら10分で適応したらしく、目的地が近くなるにつれて呻きはする物の、叫び声を上げる事は無くなっていた、この子意外と肝が据わっているのかも。
「あら花音、今日は時間通りに来ていたのね。」
そんな事を考えていると、後ろから聞き慣れた声が聞こえる。
‥‥ってアレ?この声って……
一瞬躊躇うが、振り返って見てみると、そこには遂先日会ったばかりの元カノ、白鷺千聖がそこに居た。
「うん、千聖ちゃん。スパイダーマンがここまで送ってくれたんだ。」
「ふふふ、そうなの。ありがとうスパイダーマン。」
にこにこ張り付けたような笑顔で僕にお礼を言う千聖。顔は笑っているが心は笑っていないとはこの事だろう。
「でもまさかこの子の待ち合わせ相手が君とは思いもしなかったよ。」
「あら、私を知っているの?」
おっといけない、思わず千聖の知り合いの様な口調になってしまった。もし千聖がスパイダーマンである僕と知り合いだと、この花音と呼ばれた女の子に知られたら色々面倒な事になりそうだし、ここは初対面で接する形を取ろう。違和感を感じられたら厄介だ。
「勿論!何せ僕は君のファンだから!」
「あら、ありがとう。」
「す、すごいよ千聖ちゃん!スパイダーマンがファンだったなんて!」
「ふふふ、そうかしら?」
今度は本心で笑っている様だ、先程の取って付けた様な陰は無い、本心から来る笑顔。だがそれは僕に向けられた物じゃない、この花音と呼ばれた水色の髪の女の子に向けられた物だ。
別にこの花音って子を羨ましいとは思わない、ただ少し、ほんの僅かだけ寂しい様に思えてきた。
「さあ花音、早く入りましょ、折角早く着いたんだし時間が勿体ないわ。」
「え?ちょ‥‥千聖ちゃん待ってよ~。」
千聖はそのまま喫茶店の中に入り、花音と呼ばれた子は僕に改めてお礼を言うと千聖の後を追い喫茶店の中に入って行った。
千聖side
花音の先を行く形で喫茶店に入った後、近くのテーブル席に腰掛ける。
まさか昨日今日で
「ち、千聖ちゃ~ん!お店に入るの早いよ~」
席に着いてほんの数秒後、彼にお礼を言って店に入ったであろう花音が私の座っているテーブル席を見つけて向かって来る。
「花音…ごめんなさい。貴方を置いてけぼりにする形にしちゃって‥‥」
「う、ううん!気にしてないから大丈夫だよ? でも…」
花音は何処かおどおどしながら、何か聞きたい事があるような素振りを見せる。
この子は勘が鋭い、彼女が疑問に思っているのか、何を私に聞こうと思っているのか、何となく解ってしまうのが少し辛い。
「…何かしら?」
「そ、その…」
花音は少し躊躇するが、意を決した様に顔を上げると、少し早口で私に問い掛けた。
「ち、千聖ちゃんはスパイダーマンと何かあったの?」
…やっぱりそうなのね…
内心頭を抱えつつ、必死に冷静を装う。全く自分が不甲斐無い、ドラマとかの撮影では普通に演技できるのに、彼の…ユウの前ではそうも行かないらしい。
「…どうしてそう思ったのかしら?」
「だって千聖ちゃん、スパイダーマンに対して少し態度が冷たかったから…それに…その、何時もと雰囲気が違ったし‥‥どこか苦しそうだった。」
やはり花音にはバレているらしい。花音はおどおどしつつ声を震わせながら言葉を続ける。
「その…私が千聖ちゃんの力になる事なんて、少ないと思うけど…私に話してくれるかな?」
花音の言葉に胸がギュッと締め付けられ、苦しくなる。本当に花音は優しい子なんだから…でも…
「それを知ってどうするの?貴方にはそれを知る勇気があるのかしら?」
そう、花音は優しい子。だからこそ彼女には話せない。
「…え?」
私の言葉が信じられないのか、花音は一瞬困惑するような態度を取る。
「…ごめんなさい。少し厳しい言い方になったかしら。でも、彼と私の関係は‥‥とてもじゃないけど人には言えない関係なの…」
そう、ユウと私は元恋人だけど、それ以上にこの関係は人に言えない程重く、深い。そして彼を裏切った私の罪も…
だから私は今後も彼を…ユウを突き放し続ける。
もう、私にはユウの傍に居る資格は無いのだから。
次回予告
皆さんは何かを抱えたり、何かを背負ったりした事が有るでしょうか?
悪い事をした時に背負う「罪」、そして仕事をする上で不可欠な「責任」、努力するうえで発生する「負担」、そして誰かと自分を比べられた時に抱える「劣等感」。
どれも生きていれば必ず感じるものでしょう。
さて、果たして彼は、スパイダーマンは一体どのような物を背負っているのでしょうか?
次回「何も背負っていないあの人が、正義の味方なんて…私は認めない。」
是非ご期待ください。
ご感想等お待ちしています。
色々スパイダーマンの小ネタを挟んで来たけど、この中でどのオマージュを見てみたい?
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列車の暴走を怪力で止める