SPIDER-MAN ~Girls band party~   作:通りすがりのゴキブリ

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「大いなる力には、大いなる責任が伴う。」

この言葉は「彼等は凄い力を持っているが、それ相応の責任を持った行動をしなければならない」と言う意味が込められており、原作スパイダーマンのヒーローとしての心構えです。

しかし、この言葉はヒーローのようなスーパーパワーを持たない守られる側の我々にも向けた言葉でもあり、「ヒーローは相応の責任を持った行動をしなければならない、だから気持ちはわかるが自己中心的な欲求や批判を彼等に押し付けるな」と言う意味も込められています。


何も背負っていないあの人が、正義の味方なんて…私は認めない

紗夜side

 

「…ただいま‥‥」

 

今日の()()を済ませた後、私は家の玄関を開く。

 

「…あ、お帰りお姉ちゃん。」

 

「ええ、ただいま日菜。」

 

玄関から家に入り、リビングに行くとソファーでくつろいでいた双子の妹である日菜が私の事を出迎えてくれる。

 

私と日菜の関係は昔からあまり良いとは言えない。私が昔から日菜に劣等感…コンプレックスを抱えているからだ。

 

日菜は小さい頃から一度見た物を完璧に覚えることができ、ずっと私は日菜と比べられて育ってきた。私が色々な事に挑戦し、努力したとしても日菜は才能であっと言う間に私の努力を追い越してしまう。

 

私は…その日菜の才能が…憎くて仕方が無い。

 

「ねぇ…そのお姉ちゃん。今日も‥‥行ってきたの?お母さんの所。」

 

「……ええ。」

 

「その…元気だった?」

 

「…元気な訳ないでしょ!」

 

私が急に大声を上げたからか、肩をビクッとさせ驚く日菜。

 

「お姉ちゃんは‥‥まだ恨んでいるの?スパイダーマンの事‥‥‥」

 

「‥‥‥」

 

私は日菜の質問に答える事なく、そのまま自室に戻る。

 

そう、私と日菜が不仲であるもう一つの理由。それは私の母親の事であり、同時にスパイダーマンについてだ。

 

 

 

 

 

 

***

 

そう‥‥あれは私がまだ高校生一年の夏休みの頃。お金を引き下ろす為、私と日菜と母の三人で銀行に行った時の事。

 

母は銀行の窓口で手続きをしている最中、事件は起きた。

 

私の日菜が待合用の椅子に座って母の手続きが終わるのを待っていた時、私の隣を通り抜けてとある男が入って来る。その男が入って来た瞬間、私は本能的に危機感を覚えた。

 

何故ならその人は目の焦点が合っておらず、口元は歪んで薄ら笑いを浮かべており、何かをブツブツ呟いていたのだから。

 

一瞬脳裏によぎる「この男に近づくな」と言う心の声。

 

その不安が的中するまで10秒も掛からなかった。

 

「パァン」という思わず耳を塞いでしまうほど大きな破裂音。

 

怯える銀行の役員、周りの人も困惑している様で一気に静まり帰る。

 

「おい!この袋に有るだけの金をつめろ!警報に触れるな!ぶっ殺すぞ!」

 

店員に向けて銃を向ける男を見てフリーズし掛けていた思考が徐々にしっかりしてくる。

 

そしてその時、私は、私達は初めて「強盗に遭ったのだ」と自覚した。

 

「お、お姉ちゃん…!」

 

日菜が怯えている、当たり前だけど私も怖い。こんな時くらい姉としてしっかりしなきゃと、日菜を自分自身を奮起させ、日菜を宥めていた事を今でも覚えている。

 

だが次の瞬間、私の必死に奮起させていた心は見事に恐怖に染められた。

 

再び「パァン」と鳴る破裂音、今度は何だと顔を向けて見れば一人の店員がぐらりと体勢を崩し、倒れている光景が見えた。

 

再び頭の中が困惑し、パニック状態になる。

 

え?拳銃?今のは銃声よね?

 

なんであの人が倒れているの?

 

必死に思考を保ちつつ、パニックになっている頭を宥める。

 

そして私の脳が今起こった事について結論を出した時、私の身体から一気に血の気が引いて来るのを感じた。

 

人が撃たれた。

 

ゾワッと背筋が冷たくなり、頭では大音量で危険信号が鳴っているが、足がすくんで動けない。

 

私が恐怖の余り凍り付く中、遂に最悪の事態は起きた。

 

 

「お母さん!」

 

 

隣の日菜の絶叫に近い声を聴き、何とか正気を取り戻す。

 

だが私の目に映ったのは、強盗に羽交い絞めにされ、頭に銃を突き付けられた母の姿だった。

 

「お母さん‼」

 

漸く現状を理解し、日菜と同じ位の声が出た。

 

「さ、紗夜…日菜…!」

 

母は強盗に捕まり怯えている。

 

誰が何をしても五体満足で片付かない事が明らかである、この絶望的な状況。

 

「…お姉ちゃん!アレ!」

 

だが瞬間、日菜が何処か安心した様に呼び掛けて来る。

 

()()()が居たのは強盗の真後ろ。

 

()()()は蜘蛛の糸のような物に掴まり、逆さ吊りになりつつ、辺りをキョロキョロ見渡していた。

 

すると()()()はトントンと強盗の方を叩く。

 

「あぁん?!ンだよ!」

 

「…ハロー、ミスター犯罪者。」

 

肩を叩かれ、何事かと男が銃を向けた瞬間、その人は手首から蜘蛛の糸を拳銃の銃口目掛けて放ち、弾丸が放たれるのを防いだ瞬間、間髪入れずに逆さ吊りの状態から、元の大勢に戻る勢いを付け、踵落としを脳天目掛けて放ち、強盗を一撃で床に静ませた。

 

「ハイ、一丁上がり。」

 

「スパイダーマン!」

 

強盗を倒し一仕事終えた様に一息つくスパイダーマンに、日菜は駆け寄る。

 

そう、その時私達を救ったのは、当時町中に現れ一時期話題になっていた自警団ヒーロー、スパイダーマンだった。

 

「ありがとう…!本当にありがとう!スパイダーマン!」

 

「あ、ありがとうございます、ありがとうございます!」

 

日菜はスパイダーマンに抱き着きながらお礼を言っており、母はひたすら頭を下げて彼にお礼を言っている。

 

けど私は彼が嫌いだ。

 

個人的に自警団と言うのは法律で禁止されており、彼がやっているのは勝手に実力を行使するヒーロー気取りの犯罪だ。

 

でも彼が居なければ母は確実に死んでいただろうし、最悪私も日菜もあの場で射殺されていた。

 

彼は命の恩人だ、本当に助かった…そうだ、私もお礼を言わなきゃ。

 

「あの…スパイダーマンでしたっけ?妹と母を助けてくれて本当に有難うございました。」

 

命の恩人にこれだけの事で報いる事はできないだろうけど、精一杯の誠意を込めて彼に頭を下げて感謝の意を表す。

 

「‥‥…!」

 

だがスパイダーマンからは返事が無い。だが一瞬後彼が何かに気付いた様に倒れている強盗に振り返った。

 

「‥‥ぐ、ご‥‥が‥‥!」

 

地面に倒れ、這いつくばる様にこちらに近づく強盗。だが彼の手に持っている物を気付いた瞬間、スパイダーマンは声を張り上げた。

 

「‥‥!皆伏せろ!」

 

瞬間、スパイダーマンは母を突き飛ばし、右腕に私、左腕に日菜を抱えると、大きく飛び上がり、倒れている強盗から距離を取った。

 

「一体何―――!」

 

刹那、体を襲ったのは凄まじい風圧、熱、衝撃波。

 

そう、倒れた強盗が持っていたのは手榴弾だった。

 

 

 

 

 

 

独特な消毒液の匂いと、妙なふわりとした感覚で私は目を覚ました。

 

どうやらここは病院らしい。

 

「…お母さん…日菜‥‥!」

 

家族はどこだ? 痛む体をゆっくり起こし、左右をキョロキョロと見回すが、妹の姿はすぐに見つかった。

 

「あ、お姉ちゃん!目が覚めたんだね!」

 

「日菜…!貴方も無事だったのね…!」

 

日菜の話曰く、今はあの事件から数時間が経っており、どうやら私達は爆発のショックで気を失っていたらしく、あれから犯人は手榴弾で自爆したとして今回の強盗事件は警察に処理されたらしい。

 

危なかった…またスパイダーマンに助けられてしまった。

 

彼の事は余り好きじゃないが、助けられた事を内心嬉しく思う自分も居れば、悔しさを覚える自分も居た。

 

でも日菜は無事だったが、私の母が見当たらない事に気付く。

 

「そういえば日菜、お母さんは?」

 

「‥‥こっち…」

 

それを聞いた日菜は暗い表情でそう言うと、私に肩を貸しつつ、ある場所に向かった。

 

 

その場所は‥‥

 

 

 

 

ICU(集中治療室)だった。

 

 

「‥‥!」

 

ガラス越しに見える母の姿はそれは見るも無残な姿。

 

顔は包帯に巻かれており、体中にチューブや電線などが巻き付き、幾つもの装置に繋がれている姿。

 

日菜が医者から聞いた話曰く、手榴弾爆発の際、スパイダーマンが突き飛ばし、即死は避けられたが、一番爆心地から近くに居た事には変わり無く、短くても全治1年は掛かるそうだ。

 

「‥‥本来なら死んじゃってもおかしくないんだけど、スパイダーマンが助けてくれたんだって。」

 

日菜が少し暗い口調でそういう。

 

「違うわよ。」

 

その時、思わず言葉が漏れた。

 

そう、何故私達が五体満足で生きているのに、何故お母さんだけこんなに酷い怪我をしているの?

 

それはスパイダーマンが突き飛ばすと言う選択をしたせいだ。

 

あの時私や日菜と同じ様に抱えて爆心地から離れていればこんな事にはならなかった!

 

どうせなら私達だけではなく、お母さんを助けて欲しかった。

 

いや、こんな事なら私を見捨ててでもお母さんを助けて欲しかった。

 

「‥‥お姉ちゃん……どういう事?違うって…」

 

「スパイダーマンのせいよ。お母さんがこんな重傷を負ったのは。」

 

「ち、違うって!私達、きっとスパイダーマンが居たから皆助かって…」

 

「あんな姿のお母さんが『助かった』なんて言える?!」

 

 

なんでよ。

 

 

何であなたは、『助かった』なんて言えるのよ。

 

「1年くらいで治る怪我で済んで良かった」とか「3人とも命が有るだけ感謝しないと」と日菜はスパイダーマンに感謝していた。

 

でも私は違った。

 

スパイダーマンは…あいつは…あの状況でお母さんを助けられた筈……そもそも、あの場で犯人の手榴弾の爆発を防げていたら、こんな事にはならなかった筈だ。

 

私は彼が憎くて仕方なかった。

 

それは今でもそう、お母さんがICUを出た今でも、彼への怒りを抑えきれない。

 

この感情は私の我儘から来るものであり、私は身勝手な理由で怒っているのだろう。

 

それは解っている。でも私はスパイダーマンの話を聞くたびこう考えてしまう。

 

あの人の無責任なヒーロー活動のせいで、私の母の様な大怪我負う人間が居る。

 

病院での噂だが、あの事件で負傷した人は私たち以外にも何人かいるらしい。

 

なのにスパイダーマンは今、爆死した犯人に対して喪に服す為や、犯人の遺族や、お母さんの様に重傷を負った人達へ謝罪の意を表す為に活動を自粛する事もせず、彼のヒーロー活動のせいで悲惨な目にあっている人の気持ちも知らずに、のうのうと平気な顔でヒーローを気取っている。

 

 

 

そう‥‥何も背負ってないあの人が、正義の味方だなんて…私は認めない。

 

 

 




色々紗夜さんが狂っていると思いますが、いきなり強盗が現れて、気が付いたら母親が重傷を負っていて‥‥犯人である強盗も自爆して死んでしまい、怒りのはけ口が解らずスパイダーマンに当たっているのが現状ですので、どうかご容赦を。


次回予告

皆さんは相手との恋愛が成就する接し方を知ってますか?

今回良い機会なので皆様にお教えしましょう。

一つは相手の事を良く見て、気を配る事

二つは相手を信じる事

次回「言ってみてよ。‥‥僕は聞く事しか出来ないかもだけど。」

三つめは愛しすぎない事。












牙狼とバンドリのクロス小説も書き始めました!

こちらの息抜き感覚で投稿しますので、是非読んで見てください!

ご感想等お待ちしております。

色々スパイダーマンの小ネタを挟んで来たけど、この中でどのオマージュを見てみたい?

  • 雨の中、逆さ吊りのユウとリサがキス
  • ベランダで千聖をウェブで引き寄せてキス
  • テンションが上がり、町中で闇落ちダンス
  • 池にドボンしたユウをミッシェルが救出
  • 背後から車が飛んで来て、ユウがリサを庇う
  • 列車の暴走を怪力で止める
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