SPIDER-MAN ~Girls band party~   作:通りすがりのゴキブリ

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色々本作品のスパーダ―マンについて不満を覚える方も居るかもしれませんが、本作のコンセプトは、「どんなに辛い事が有っても、また立ち上がり、倒れる度に強くなる」と言う物なので、原作と違っていても、そこはご愛嬌と言う事でお願いします。


…だから何が有っても、僕はまた立ち上がるんだ。

海斗と僕で過去にスパイダーマンが関わった全ての事件を調べてから僅か3日後。

 

「‥‥…」

 

僕は無言でとある目的地までウェブスイングしていた。

 

そう、今日は犯罪者狩りをする為ではない、自分自身が背負うべき『責任』を果たす為にある場所へ向かうのだ。

 

「…っ…」

 

ウェブスイングを中止して街灯に着地し、目的地に辿り着く。その場所は北にある町はずれの病院。

 

そう、ここで僕はとある人物を待ち伏せしていた。

 

病院に着いて、待つ事十数分。僕は街灯から降り、待っていた人物に話しかける。

 

「あの…氷川紗夜さん…ですよね?」

 

すると青髪を持ち、少し吊り上がった目をして、クールな雰囲気を醸した僕と同年代程の少女は、僕を見るなり、顔を顰め、僕を無視してそのまま通り過ぎようとした。

 

彼女の名は『氷川紗夜』今から1年前、僕が…スパイダーマンが銀行強盗が起きた現場に駆け付けた時、僕の不注意で強盗を手榴弾で自爆させ、そのせいで僕は彼女の母に重傷を負わてしまった。

 

さらに、強盗の仲間グループを追ったり、街で起こる様々な犯罪の対応していたせいで有耶無耶になり、海斗と僕が過去の事件を全て調べる数日前まで、僕が彼女の母について知る事は無かったのだ。

 

「あの…!待って!」

 

僕が止めても氷川さんは声が聞こえていないかのように、完全無視を決め込み、そのまま直進し続ける。

 

僕が今日すべきこと、それは彼女に…そして彼女の母について謝罪し、僕の罪をリサさんに知って貰う事。

 

世間では僕の事を良く思っていない人もいるし、リサさんに僕の罪を知られるのは勿論怖い。

 

でも…リサさんにはちゃんと解って欲しい。それに…彼女が紗夜さんが僕の事で喧嘩しているのが見ていられない。

 

全ては僕のエゴイズムだ。

 

「待ってって!」

 

僕は走って彼女を追い抜き、そのまま彼女の正面に立つ。

 

すると氷川さんは諦めたのか、俯き、静かに言葉を漏らした。

 

「…何ですか…今更…何をしに来たんですか…」

 

「その…君の母親について…話したいと思って…」

 

その事を聞いた瞬間、無表情だった氷川さんの表情が一気に怒りに染まる。

 

「だから…今更何なのです? 謝罪ですか?…それに関してはお構いなく、貴方には非が無い事で、悪いのは強盗ですから。」

 

「でも…その…」

 

『貴方には非が無い事で、悪いのは強盗』まるであの時の僕の不注意を許す様な言葉、だが彼女の表情や声色は憤怒に満ちており、心中で僕の事を許してない事は明らかだった。

 

「話はそれだけですか? 私は早く帰りたいので失礼します。」

 

そう言うと背を向け、スタスタと歩いて行ってしまう氷川さん。

 

『…退け…ユウ。今この女には何を話しても無駄だ。』

 

僕の視覚モニターからこの様子を見ているだろう海斗の声がインカム越しに聞こえる。

 

…そうだな…また、近い内にまた来よう。

 

僕のエゴイズムに付き合わせるのは悪いと思うけど、彼女に一言謝らないと気が済まない。

 

「…待ってください。」

 

今日の所は退こう、そう考えウェブスイングでその場を後にしようとした瞬間、氷川さんが僕の事を引き止める。

 

今度の彼女は僕に背を向けていない、己の意志を伝えるために真っ直ぐな眼差しで僕を見ている。

 

話を聞いてくれるのか?

 

ウェブを放とうとした腕を引っ込め、僕は彼女へ向き直る。

 

すると氷川さんは静かに、だが何処か威圧が籠った声で僕に訊いて来た。

 

「貴方…私の母について知っているって事は、私の母以外にもあの場に居た人達が怪我をした事を知っているのよね?」

 

「…ああ。」

 

自分が不甲斐なくて嫌になる。

 

あの時多少のけが人が出ていた事を知っていた。だがその事を気にするより僕は犯人の共犯者や他の犯罪を優先し、あの場の怪我人たちを無下にしていた。

 

怪我と言っても皆あの手榴弾の爆心地から放したし、悪くても骨折位で数か月も有れば元通りの生活に戻れる。そう甘く考えていた。

 

「じゃあ…何故貴方はその怪我人達の事を知っても、巫山戯けたコスチュームを着て、軽口を叩き、自己満足で犯罪者に暴行を加える自警団ごっこを続けているのです?…まさか正義の為なんて事言わないわよね…」

 

…僕がヒーローを続けている理由か…

 

「貴方…もしかして『自分の行動のお陰で万人を救っていた。』とでも思っているのかしら?…もし思っていたら‥‥それは正義ではなく…偽善よ。」

 

「…ああ…その通りだよ。氷川さん。僕がヒーローを気取っても皆が皆を助ける事はできない。…この活動をしていると気付かされる…」

 

「……」

 

氷川さんは無表情を貫いており、彼女が今抱いている感情が何なのか、僕には解らない。

 

「‥‥付いて来て。」

 

僕はそれだけ言うと、徒歩で向かいの廃ビルまで向かう。

氷川さんは僕の後ろ姿を黙って眺め、そのまま僕に付いて来るのだった。

 

 

***

 

向かいの廃ビル、4階のベランダにて。

 

「あそこにいる車椅子の女の人が誰か……解るかな?」

 

その子を見下ろしたまま言った僕に、氷川さんは眉を顰めながら首肯する。そう、窓から見えるのは彼女…氷川さんの母。

 

…そう、今から1年前、僕が…スパイダーマンが銀行強盗が起きた現場に駆け付けた時、僕の不注意で強盗を手榴弾で自爆させ、そのせいで僕が重傷を負わてしまった被害者その人だ。

 

 

「あの人…君の母は僕のせいでああなった…他にも…あの場に居て、僕の不注意のせいで重傷を負った人間は他にも居る。」

 

僕はマスクの中で唇を噛みしめながら言葉を続ける。

 

「スパイダーマンになって、事件や事故に遭った人を全員助ける事ができれば、どれだけ良かったかと思うことはあるさ。…でも…コレが現実…万人を助ける事なんて…僕には出来ない。」

 

犯罪者との戦いに巻き込まれた人々、自分が不甲斐ないばかりに悲劇的な結果になってしまった人々。

 

たまにふと思う。

 

”いっそ自分の様な存在(ヒーロー)なんて、ただの役立たずで、本当は誰も求めていない存在なのではないか?”と。

 

でも…

 

「でもね…氷川さん。一つだけこれは断言できるんだ。」

 

僕は振り返り、氷川さんを見据えながら、言葉を続ける。

 

「例え自分が無力でも。憎まれても、軽蔑されても。偽善だと言われても…僕の行いで助かる人が居るんだよ。」

 

そう…僕が屈したらその先で俺の助けを待つ人を見殺しにすることになる。いつまでもウジウジしていても何も始まらないのだ。

 

「…だから何があっても、僕はまた立ち上がるんだ。どんなに苦しくても、辛くても。氷川さんの母親の様な人を守れなかった罪に押し潰されようとも。…自分の信じた事を絶対に疑っちゃ駄目なんだ。」

 

僕だってマスクを脱いでヒーローを辞めたいと感じる時も有る。でも、そこで辞めたら何もかもが水の泡となる。

 

大いなる力には大いなる責任が伴う。

 

その責任を果たす意味を見失ってはならない。それがこの力を持った者の宿命なのだから。

 

「でも…君の母親がICUに送る程の重傷を負ったのは…あの時の僕のせいだ…だから氷川さん。」

 

僕は氷川さんの前に立つと、腰を90度に曲げ、誠心誠意の謝罪を告げる。

 

「…本当に…申し訳ありませんでした。」

 

頭を完全に下げている為、僕には氷川さんの顔が見えない、一体彼女は今どんな表情をしているのだろうか。やはり憤怒の表情を浮かべているのだろうか…それとも涙を流しているのだろうか…

 

「貴方も…ちゃんと背負っていたのね…」

 

僕が彼女に謝罪して何秒経ったか…もしかしたら数分経っていたのかも知れない中、氷川さんは静かに口を開いた。平静を装っているのだろうけど、その声は震えており、感情を抑えている事はすぐに解った。

 

「私は…まだ貴方を許す事は出来ないわ…でも…私は貴方の事を少し誤解していたみたい。」

 

僕の謝罪を受け入れない様な台詞。だが彼女の口調から僕の事を”まだ”という言葉から『許そうとしている』ものである事が解った。

 

「私は…貴方の事をただの無責任な自警団だと思っていた…でも…貴方は、しっかりとした『責任』を持ってこの活動を行っている。貴方を許すには‥‥まだ時間が掛かるかも知れないけど…私は…貴方を許したい‥‥」

 

「別に許して欲しいとは思っていないよ。…ただ…僕が1年間も事の重大さを理解していなかった事を…君に謝罪したかった…それだけなんだ。」

 

海斗と僕が氷川さんの母等と言った重傷者の現状を知ったのはつい数日前、強盗の仲間グループを追ったり、街で起こる様々な犯罪の対応していたせいで有耶無耶になり、一番重要な事から目が届いていなかった。

 

いや…それはただの言い訳に過ぎない。

 

僕は不注意のせいで、氷川さんの母に重傷を負わせ、その事を軽く見ていた事で今しっぺ返しを食らっている。……それだけなのだ。

 

「…強いのですね…貴方は…」

 

彼女の本心から言ったのか、皮肉のつもりで言ったのか解らない言葉。

 

氷川さんはそれだけ言うと、僕に背を向け、静かにその場から去って行った。

 

『…大丈夫か?』

 

「…ああ…」

 

インカムから海斗の心配する声が聞こえる。

 

『まったく…不器用だな。何もお前が謝る事じゃないのに。わざわざ1年前の事件に巻き込まれた被害者の家族に謝罪しに行くなんて。』

 

「…僕はただ…気が済まなかっただけ‥‥今回は僕のエゴに付き合わせて悪かったね…海斗…」

 

『…気にするな、お前は平気か?』

 

「…僕は平気…ただ…そうだね…」

 

『……』

 

「ただ…少し疲れたよ。」

 

僕はそれだけを海斗に伝えると、無線を切り、再びその場に蹲り、項垂れる。

 

すると突然、ポケットに入っているスマホが震えだし、着信音を鳴らし始めた。

 

そう…まだだ…まだ終わっていない‥‥

 

僕は自分自身を奮起させながらスマートフォンを取り出すと、通話ボタンを押し、耳に翳す。

 

そのスマートフォンの着信名は『今井リサ』と書かれていた。

 

 

 

 




紗夜さんがスパイダーマンに関して怒っていた理由をまとめると。

1つ目は『母親が重傷を負った事に対する怒りをスパイダーマンに当てていた』と言う八つ当たり的な理由。

2つ目は『多くの人がヒーロー活動のせいで怪我を負ったりしているのに、スパーダ―マンは構わずヒーロー活動をしており、みんなを助けたいと言うのなら、なぜ苦しんでいた自分たちを助けてくれなかったんだ』と言う憤り。

今回は紗夜さんの2つ目の怒っている理由を解消させました。


作者の文章力が拙い為か、解りずらいと思いますが、紗夜さんがスパーダ―マンに抱えている感情は、少々複雑となっています。


次回予告

今井リサに事件の全貌を告白し、自分自身を責めるユウ。

蹲り、苦悩する中、一人の少女がそこに現れる。

次回『僕…ちゃんとヒーローやれているかな?』

是非ご期待ください。

よう実が原作のクロス小説の主人公ヒーローだれが良い?

  • ブラックパンサー
  • キャプテンアメリカ
  • ハルク
  • プロフェッサーX
  • マグニートー
  • クイックシルバー
  • スーパーマン
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