SPIDER-MAN ~Girls band party~   作:通りすがりのゴキブリ

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僕‥ちゃんとヒーローやれているかな?

氷川さんへの謝罪が終わり、重たい気分の中、僕は携帯電話である人物に電話を掛ける。

その人は勿論、今回の出来事の発端となった人物の一人、今井リサさんだ。

 

そして今回の事件を解決させるに当たって僕が最後にやる事。

 

それは今井リサさんに全てを話す事だ。

 

紗夜さんが巻き込まれたよ銀行強盗の事件で僕が犯した過ちについて、そして隠していた僕…スパイダーマンの正体についてだ。

 

『も、もしもし?!』

 

少しの通知音の後、今井さんの声が聞こえて来る。やはり番号を見て、スパイダーマンから電話が来た事に緊張しているのだろうか、少し声が上ずっている。

 

でも今は彼女とお喋りする時じゃないし、ファンサビスの時間でもない。僕は呼吸を整えると静かに受話器に話し掛けた。

 

「もしもし、スパイダーマンです。」

 

『ス、スパイダーマン! その、お電話有難うございます!その…まさかそっちから電話、掛かって来るとは思わなくて…』

 

かなり緊張しているらしく、言葉を繋ぐように話すリサさん。でも…

 

「ゴメン、今日は君とお喋りする事じゃなくて、仕事の為に電話したんだ。」

 

『…え?あ…そ、そうですか…そのすみません、アタシ。一人で盛り上がっちゃって…』

 

少し気まずそうなリサさんの声。果たして紗夜さんの母親が巻き込まれた事件の真相を話せばこの声は怒気を含んだ声に変わり、僕を罵るのだろうか?

 

これから起こる先の読めない事に不安になりながら僕は静かに目を閉じる。

 

「……」

 

深呼吸。

 

「実は数日前、僕の友達の小林ユウ君から聞いた事なんだけど…その氷川紗夜さんの事だっけ?」

 

『あ、…ハイ…』

 

この話題を振った瞬間、リサさんの声のトーンが低くなったような気がする。以前バンドの練習の時、彼女が怒ってスタジオから出て行ってしまった事を考えているのだろう。

 

「実は―――」

 

僕は氷川紗夜さんがかつて巻き込まれた事件についての顛末を全て話した。

 

紗夜さんがかつて銀行強盗に遭遇した事。そしてその場に僕が駆け付けた事。僕の不注意のせいで強盗が手榴弾で自爆し、紗夜さんの母親が全治1年もの大怪我を負った事。そして僕がその事件を長い間知らなかった事。全てを話した。

 

「これで全部……かな?」

 

『そう…だったんだ…』

 

電話越しから聞こえる今井さんの声は、困惑している事が直ぐに解る程動揺しており、何処か震えているようにも聞こえた。

 

「今回の一軒は全部僕のせい…僕があの時もう少し警戒していればこんな事にはならなかった。」

 

『……』

 

僕の懺悔めいた言葉を聞いてもリサさんは何も言わない、ただ沈黙を貫いている。

 

「だから…ゴメン…今回の件は全面的に僕の責任だ…本当に…ゴメン」

 

電話越しに謝罪する僕、正直…これから言われるリサさんの言葉が怖い。今回の一件、彼女と紗夜さんの関係に亀裂を入れてしまったのは確かだ。

 

僕はこれから彼女に怒られるのだろうか? それとも悲しむのだろうか? もしかしたら呆れられるのかもしれない。

 

だがリサさんから発せられた言葉は意外なものだった。

 

『……スパイダーマンは悪くないと思うよ?』

 

それは僕の完全無罪を主張する様な言葉、その言葉を聞いてマスクの中の僕の瞳が開く。

 

『だって…スパイダーマンの話を聞くに紗夜のお母さんに怪我をさせたのも紗夜を傷付けたのも強盗じゃん? スパイダーマンが責任を感じる必要は無いよ。』

 

今のリサさんは微笑んでいるのだろうか、電話越しに聞こえる声色は明るく感じるものの、やはりどこか陰を感じさせ、無理矢理明るく振る舞っている様にも聞こえた。

 

…そっか…僕…慰められているんだ…

 

本当は僕が守ったり、慰めたり、励まさなくちゃいけない人間に、逆に慰められているんだ…

 

「…本末転倒じゃん」

 

『…え?ゴメン何て言ったの?』

 

思わず自分自身が情けなくって言葉が漏れてしまう、幸いリサさんには聞こえていなかった様だ。

 

「ううん、なんでもない。今日はこの事を話そうと思っただけだから。」

 

『…え? あ、うん…』

 

僕はこのまま彼女と電話しているのが辛くなり通話を切ろうとする、だがそれと同時に、僕は彼女に伝えようとしていた事を思い出した。

 

「あ、あの…リサさん。」

 

『ん?何カナ?』

 

言うんだスパイダーマン。僕の正体を、僕が一体誰なのか、結果的に僕は今リサさんを騙している状態なんだ、せめてものケジメとして正体だけはちゃんと言うんだ…!

 

「ぼ、僕は…!」

 

『…うん…』

 

リサさんは話を聞こうと黙って待ってくれている。ホラ、早く言うんだユウ!

 

だが喉元まで出掛かっていた言葉は何時になっても発せられず、結局僕がスパイダーマンの正体を明かす事はできなかった。

 

『…ゴメン、やっぱり何でもない。…じゃあね…』

 

「え?! ちょっと!スパイダーマン!」

 

突然別れを言われ、驚いているリサさん。でも僕は彼女とこのまま話すのが怖くて、電話を切った。

 

 

***

 

 

電話を切った後、僕はその場で蹲り、項垂れる。

 

自分が情けなくて仕方がない。

 

思い出すのは勿論先程の電話での会話、何なんだあの会話は。

 

リサさんに真実を話したのは良いものの、僕が罪悪感を感じているとリサさんに悟られ、挙げ句の果てには慰められる始末。

 

それにせめてものケジメとして、今まで騙していた事、そして正体を彼女に明かそうとした。だがいざ電話越しにその事を話そうとした時、もしリサさんが僕の正体を知ったらどうなるか、もしそれがヴィラン達…犯罪者たちにバレたらどうなるか、突発的に考えてしまい、躊躇して結局何も言わず逃げる様に電話を切ってしまった。

 

結局…僕は臆病なのだ。どんなに立派な事を考えても、所詮僕は実行できない臆病者だったのだ。

 

「僕は…意気地なしだ…」

 

自分で自分が嫌になり、溜息を吐いて項垂れる。

 

するとぽつぽつと体に冷たい水滴が落ちてきている事に気が付いた。

 

「…雨か…」

 

やがて小降りだった雨は少しずつ勢いを増し、本降りになり、数分もすればザーザーと音を立てて大雨が降り出した。

 

「……」

 

普段の僕なら急いで家に帰宅するだろう。けど、今の僕はどんなに雨で体を濡らしてもその場で蹲り項垂れたままだった。

 

何と言うか、このまま雨に打たれていると、気が楽だ。

 

今回の一件、全面的に僕に責任がある筈なのに、誰も僕の事を責めなかった。

 

何だかそれが苦しかった、彼女達の優しさが辛かった。…だから、こうして雨に打たれていると神様が俺を罰してくれている様で、少しだけ気が楽になった。

 

「……?」

 

だが突如、体に振っていた雨の感触が無くなる、上を見てみれば黄色い傘が開かれており、何者かが雨に打たれている僕に傘を差してくれたくれた事を察する事が出来た。

 

「…何をしているの? こんな所で。」

 

後ろから僕に傘を差してくれている人の声が聞こえる。

 

だがその声を聴いた瞬間、マスクの中の僕の瞼は涙に溢れ、胸がぎゅっと苦しくなった。

 

嬉しいようで、悲しいようで、悔しそうな混沌とした感情の中、僕は涙を堪え切れず、ぽろぽろと涙を流しながら振り返る。

 

「それはこっちの台詞だよ……千聖…」

 

後ろに居た千聖は喫茶店の前での様な冷たい態度は無く、まるで泣き出しそうな子供をあやす母親の様に慈愛の満ちた表情をしていた。

 

「風邪……引くわよ…」

 

すると千聖は肩で傘を支えつつ、鞄からタオルを取り出し、雨で濡れた僕の髪を拭き始める。

 

「もう、びしょびしょじゃない。 ほら、早く帰るわよ。家まで送ってあげるから。」

 

千聖は俺の腕を掴み、立ち上がらせようとするが僕は動かない。

 

「ゴメン…暫く…ここに居たい。…動きたくない…」

 

千聖の目には今の僕はどんな風に映っているのだろうか?

 

自分でも情けない姿だって事は知っている、でも……今は、誰にも責められなかった俺を怒ってくれるこの雨に打たれたい。

 

すると千聖は傘を置き、僕と同じく雨に打たれながら、僕の隣の地面へと腰掛けた。

 

「な、なんで…?」

 

「私も、貴方の気が済むまで一緒に居るわ。今の貴方を放っておく事なんて出来ないし。」

 

傘を差さず、ずぶ濡れになりながらそう言う千聖。

 

「…何も…聞かないんだね?」

 

「…ええ、私がこう言った事が苦手って、貴方も知ってるでしょ?」

 

「…そうだね…そうだったね…」

 

そうだった、付き合っていた時の彼女との喧嘩の原因も大抵僕に有って、千聖がそれを刺激するような事を言って始まる事が多かったっけ…

 

「…海斗君からある程度の事は聞いているわ…でも…私はこんな時、なんて言えば解らなくて‥‥私に出来るのはこれしか無いけど…」

 

そう言うと千聖はそっと俺を体を抱き寄せる。まるで子供を慰める母親の様に、僕と言う大きな子供をあやす様に。

 

そういえば付き合っていた時も、お互いに何か嫌な事が有るとこうして抱き合ってお互いの傷を舐め合ったり、慰め合ったりしてたっけ…

 

「ねぇ…千聖…」

 

「何かしら?」

 

僕は静かに千聖の背中に手を回すと、ずっと自問自答していた疑問を訊いてみた。

 

「僕…ちゃんとヒーローやれてるかな?」

 

今日1日の僕の行いや、紗夜さんが巻き込まれた事件を考えれば、今の僕はきっとヒーローではなく、ただの赤いタイツを着た偽善者だろう。

 

でも彼女と言う第三者から見た僕はどうなのか、知りたかった。

 

「…ええ…貴方は立派なヒーローよ、私にとっても、皆にとっても…」

 

千聖は僕を抱き締める力を強くしながら千聖はそう言ってくれる。

 

情けない。

 

自分が情けなさ過ぎて涙が出てくる。

 

女の子に抱き締められて、子供みたいに慰められて。

 

こんな情けない奴がヒーローなんて、お笑いだ。

 

でも少し…ほんの少し、彼女に慰めて貰えた事で、僕は自己嫌悪から抜け出せた様な気がした。

 

 

 




どうも、ご拝読有難うございます。作者のゴキブリです。

今回は皆様にご報告が有ってこの場をお借りしました。

実は私、最近バンドリ以外が原作の別小説の執筆を検討しいています。と言ってもこの小説と全く関係が無い訳ではなくMCUの様に『この小説と同じ世界観での物語』と言う設定で書いていこうと思います。名付けてGNU(ゴキブリ・ノベル・ユニバース)と言った所でしょうか。

そしてGNU二作品目の原作は『ようこそ実力至上主義の教室」と言う作品です。

原作小説は決まってますが、主人公のヒーローについてはまだ決まっていません。

そこで読者の皆様にアンケートで調査をして決めたいと思います。良ければぜひ協力してください。











次回予告

千聖に慰められるものの、罪悪感により意気消沈するユウ。

それを見かけた海斗はリフレッシュを兼ねてユウにある事を提案する。

次回『たまには良いんじゃない? ずっと肩を張ってるのはキツいだろ?』

是非ご期待ください。

ご感想お待ちしております。

よう実が原作のクロス小説の主人公ヒーローだれが良い?(最終選考…多分)

  • キャプテンアメリカ
  • ドクターストレンジ
  • ブラックパンサー
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