『テメェ、邪魔する気かフラッシュ!』
『邪魔?あいにく
『キサマァ・・・!!!』
これはまた懐かしい夢だ。俺がまだお母さんの跡をついてくることしか出来ないくらいの頃か。
『これ以上邪魔すんならテメェもふうま一族ごと葬るぞ!』
これは・・・俺の始まりの夢。
数で言えば多勢に無勢。何人もいる対魔忍に対してこっちは小さな俺を抱える同じくらい若い時子。
そして俺たちを守るように彼らの前に立ち塞がる、当時まだ20歳にも届いていなかったフラッシュ兄さん。
『これは驚いた・・・まさか俺より年上が叶わぬ絵空事を言うとはな。そろそろ現実を見たらどうだ?』
『・・・!!!』
相手は全員大人の、手練の者ばかり。そんな中この人は引くどころか余裕すら見せている。
『構わねぇ、殺れ!』
『逃げて!!』
時子がフラッシュ兄さんに逃げるように叫ぶ。──でも
『なにか言ったか?』
時子の言葉に対して、フラッシュ兄さんが返答する頃にはその場にいた刺客達は全員地に伏していた。
呆気に取られる俺たちにフラッシュ兄さんは告げた。
『走れ。さもなくば
───────ふうまちゃん!!
「ハッ!」
俺を呼ぶ声に意識が覚醒する。バッと頭を上げ、周りを見渡してみると夕日に教室が照らされ、オレンジ色の反射光に彩られている。
どうやら居眠りをこいたまま、夕方まで寝ていたらしい。昨日、夜更かししてゲームをし過ぎたからなのだろうか。
そして男である俺を『ちゃん』付けで起こしてくれたのは──
「もう!私が起こさなかったら今頃ふうまちゃん、校舎に一人っきり置いていかれていたよ!」
「あぁ、すまない蛇子」
幼なじみの蛇子だった。淡い緑色の髪を揺らしながら、こちらをジト目で睨んでいる。
どうやら蛇子はわざわざ俺を起こしに来てくれたようだ。このまま起こされなかったら最悪夜の学校を彷徨う羽目になったかもしれない辺り、単純に感謝しかない。
「一緒に帰る約束してたでしょ!」
「・・・あっ」
どうやら俺が約束をすっぽかしてただけなようだ。
「もう!」
「すまん!」
頬を膨らます蛇子に平謝りする。しかしこれも仕方ないのだ。朝にあった模擬戦で『ある意味』心身疲れていたのだ。
「・・・あれ、そういえばふうまちゃん。今日、予定入ってるとか言ってなかった?」
「予定・・・あ!!!!」
蛇子の『予定』と言う言葉にその用事を思い出す。
「ごめん蛇子!一緒に帰るのはまた今度な!」
「あっ、ちょ、ふうまちゃん!」
蛇子には待ってくれていたのに申し訳ない。今度しっかり埋め合わせをしないといけないな。
そして俺は幼なじみと帰ることよりも大切な予定が入っていたことを思い出した。それは───
「フラッシュ兄さんとの訓練忘れてたー!」
対魔スーツに着替える時間すらも惜しい。そのまま学生服の状態で校舎の裏山にある訓練場へ急ぐ。
ヤバいヤバいヤバいヤバいいいいいい!!!!
───────────────────
「・・・遅い」
「申し訳ありません!」
時刻は同じく夕方。いままさに小太郎が向かっている裏山の訓練場には、一組の男女。片方は目を瞑りながら、待ち人がこの場に現れるのを待っている。もう片方は、その、時間になっても現れない待ち人の従者である彼女は男に本当に申し訳なさそうに謝っている。
「ふん、俺を待たせるとはアイツも偉くなったもんだな」
「返す言葉もありません・・・!」
待ち人、ふうま小太郎を待っているのはフラッシュだった。そしてそのフラッシュに謝っているのは、黒髪をポニーテールにまとめ、フラッシュ同様対魔スーツを身に纏う麗人だった。
「・・・アイツは昨日の夜は何をしてたんだ、時子?」
「・・・・・・おそらくゲームを」
「はぁ・・・」
辺りは五車学園の訓練場というにはあまりにも簡素で、山を切り開いただけ・・・言ってしまえば広場のような場所だった。
ゆえにフラッシュの小さなため息も時子によく届いた。それによりさらに申し訳なさそうに身を小さくする時子。
「やっぱり私も「すいません!」・・・お館様!」
若い男の声にフラッシュは呆れた顔で、時子は憤怒の顔で振り返る。
「お館様・・・時間を守るのは人として当たり前のことと常日頃言ってるはずです。ましてや命の恩人であるフラッシュ様を待たせるなど──」
「いい」
やってきた男、ふうま小太郎を早速
「時間が惜しい、さっさと始めるぞ」
「・・・ごめん」
「分かってるならいい」
小太郎の謝罪の言葉を特に気にすることなく、小太郎から距離をとるフラッシュ。それはこれから始まる『訓練』の始まりを意味していた。
「・・・失礼ながら、やはりフラッシュ様はお館様に甘過ぎるように見えます」
「本当に今回は申し訳なく思ってるよ」
「お館様には家に帰ってから
「・・・・・・ですよね」
そんなフラッシュの様子に時子は納得がいかないという感じだ。しかし実際フラッシュはそんなこと気にしておらず、むしろ久しぶりに
「よし、始めるぞ」
フラッシュのその言葉に構え始める小太郎と時子の『二人』。フラッシュと一対一の稽古などと甘い考えは二人にはなかった。むしろ
「・・・よろしくお願いします」
「・・・・・・・・・いつでも」
「そうか」
二人が準備を整えるのを見届けたフラッシュは手始めに──
高速移動で二人の後ろをとった。
「後ろだ!」
「はい!」
そしてそれに反応したのは──小太郎だった。
小太郎から指示を飛ばされた時子は、反射的に背後の気配に向けて回し蹴りをお見舞いする・・・が、既にそこにフラッシュはいなかった。
「ほぅ、俺のスピードに反応したか。成長したな二人とも」
「いや、フラッシュ兄さんなら初手こうするだろうなとアタリを付けてただけさ」
「私もお館様の指示に従ったまでです」
「いや、それでも俺の初撃をかわしたのは見事だ」
(追撃もしなかったのにぬけぬけと・・・!)
賞賛を言うフラッシュに時子は歯噛みする。実際、フラッシュは追撃もフェイントもいくらでも出来たはずをわざわざ
「ふ・・・なら、少し上げるぞ?」
そう言って、またも二人の目の前から消えるフラッシュ。単純に瞬間移動したわけでも、透明化したわけでもなく早過ぎるスピードに動体視力がついていけなかっただけなのだからタチが悪い。
「時子、『目』だ!」
「はい!」
そんな状況でやれることは限られている。小太郎は素早く時子に指示を出す。その声と同時に、時子の目が光り出す。
──『邪眼・千里眼』
時子が持つ邪眼の名前である。その効果は──
「お館様、周囲に目を配置しました」
小太郎達の周囲に目の紋様をした奇怪な模様が多数浮かび上がる。そしてそれらは全て、時子と視界を共有していた。
「そこ!」
時子がクナイを撃ち出す、紋様から。
「ほぅ、いい反応だ」
撃ち出されたクナイは甲高い金属音と共にフラッシュの剣に叩き落とされる。
「まだまだ!」
今度は一つの紋様からではない。その場に展開された複数の紋様からいくつものクナイが射出される。
しかし、フラッシュも今度はたたき落とすことはせず、滑らかな動きで全てのクナイを優雅にかわす。
「いくぞ、フラッシュ兄さん!」
「ほぅ?」
そうしてかわしたフラッシュの先には小太郎が待っていた。誘導されたと気づくと同時にフラッシュには別の思いが芽生えていた。
(お前から白兵戦を仕掛けてくるとはな)
忍者刀を正中線に構えた小太郎を見据えるフラッシュ。その顔には油断もなく、焦りもない。しかしそれは──小太郎も一緒だった。
(何を狙っている?)
まだ五車学園の生徒である小太郎と歴戦の対魔忍の中でも最強の一角を担うフラッシュ。そんな二人が打ち合えば、どちらが負けるかなど始めから決まっている。
しかしそんなこと小太郎自身も理解している・・・だから備えている。
小太郎の聡明さを理解しているフラッシュだからこそ・・・備えた。
忍者刀と太刀、二つの刃が交錯する。
すぐさま、刃を滑らせ、小太郎の懐に潜り込み絶死の一撃を振るうフラッシュ。
「ハァ!」
──その二人の間に割り込むように、上からクナイを振りかざしながら落ちてくる時子。
(やはり陽動か)
ちょうど攻撃の対処がしづらい瞬間を狙うような芸当は小太郎には出来ない。むしろ時子が奇襲をかける役割を担うのは当たり前だった。
「あまい!」
だが、そもそも2対1でそれを想定していないフラッシュではない。すぐさま攻撃を中断、小太郎を蹴り飛ばし時子のクナイを受け止める。
「やぁああああ!!!」
両手にクナイを持った時子は流れるような動きで次々に斬撃を繰り出していく。可能な限り間合いを詰めて、フラッシュの動きを阻害するように。
刃渡りの長い太刀ではどうしても超至近距離の戦いでは遅れをとってしまう。ゆえに時子が持つ短いクナイはむしろアドバンテージとなる。
「いい太刀筋だ」
だが、相手はフラッシュ。数多の戦場を駆け抜けた男。それくらいの戦い、幾度も切り抜けてきた。太刀の刃に手を乗せ、器用に時子の攻撃を捌いていく。
「うぉぉおおおお!!!」
打ち合う時子とフラッシュの後方から、フラッシュの蹴り飛ばしから復帰した小太郎が忍者刀を構え走り込んでくる。
「面白い、やってみろ」
フラッシュは小太郎の攻撃を、腰から抜いたクナイで受け止めた。小太郎と時子、二人に挟まれる形となったフラッシュに一切の動揺は無かった。
「くっ!」
「うっ!」
挟み込むように攻めてるはずの二人の顔に苦悶の表情が表れる。それもそのはず、攻めているのはこちらのはずなのに手数で勝っているのは向こうなのだ。小太郎に至ってはもはや防戦一方となっている・・・しかし。
(防御はまた一段と上手くなったな)
むしろフラッシュは小太郎が自分の攻撃を防ぐことが出来るようになってることに驚いていた。
「はっ!」
「きゃっ!」
フラッシュの一太刀を受け止めた時子はその威力を殺し切れず、後方に飛ばされる。そうなれば残されたのは小太郎のみ。
「うおっ!?」
振り向きざまにスピードを乗せた太刀を小太郎の忍者刀に叩きつける。フラッシュのスピードが乗った一撃に小太郎が耐えられるはずもなかった。
「お館様!」
時子は小太郎を案ずる声を発すると同時に『邪眼・千里眼』を発動、追撃させじとクナイを飛ばす。
しかしそれもフラッシュが一太刀で全て叩き落としてしまった。
(だが、一瞬の時間は稼げた!)
クナイを飛ばす一瞬の間にフラッシュに肉薄する時子。
「おいおい」
やや呆れた表情をするフラッシュ。それは彼らの
(さっきと同じパターンか?)
時子の攻撃を捌くフラッシュは後方に小太郎が起き上がり、構える気配を感じていた。構図としては先程の挟み撃ちと同じ。だから思ったのだ・・・またか、と。
小太郎が後ろから駆け出すのを感じる。
(今日はここまでだな)
同じパターンで自分が倒せるはずはないだろうとこの訓練を
時子が僅かに身体をくねらせた。それが何を意味するのか──フラッシュは瞬時に理解した。
(これは・・・回避!)
素早く後方を振り向くフラッシュ。その目の前には、クナイが迫っていた。
クナイの後方、小太郎を見ると腕に
(小太郎はクナイの注意を逸らすためにあえて飛ばされたのか・・・いや、飛ばされる前提で仕掛けていたのか)
ただクナイを背中に向けて投げたとしてもフラッシュは気配でそれを感知し叩き落とす。しかし、
それがフラッシュの気配察知をここまで鈍らせたのだ。
目前まで迫ったクナイをフラッシュは無理やり身をよじり、背中を反らすことで回避する。
それが彼らの狙いだった。
「「もらった!!!」」
如何にフラッシュと言えど、そんな状態で追撃をもらえば無事では済まない。
小太郎と時子が忍者刀とクナイを振り下ろす。
──いいだろう
フラッシュは・・・笑った。
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「しかし考えたな。小太郎ではなく
「・・・そ、そうだよ」
感心したように頷くフラッシュに小太郎は力なく返す。それもそのはず、今しがたフラッシュの手によって地に叩きつけられたダメージが回復していないのだ。
「まさかあの体勢からも切り返すことが出来るとは。フラッシュ様のその体術、さすがとしか言いようがありません」
肩で息をする小太郎とは対称的に時子も額に汗を浮かべながらも平然としていた。その上でフラッシュの強さを賞賛する。
試合は時子ふうまペアの敗北・・・というより小太郎が戦闘不能になった時点でフラッシュが『止め』をかけたのだ。
(時子もまだ本気を出せてなかった、フラッシュ兄さんも・・・。二人とも俺に合わせてくれてたんだよなぁ)
これはあくまで小太郎の訓練。だからこそ本来小太郎の格上である二人が自分に合わせてくれていたのだと、小太郎は自分の実力の無さに歯噛みした。
「そう悔しがるな。お前が勝てないのは俺を相手にした時点で分かっていたことだ。むしろここまで食い下がれたことを誇るがいい」
(くっ、本当のことだから反論しづらい・・・)
フラッシュの上から目線の言葉も事実ゆえに小太郎も押し黙るしかない。しかし実際、フラッシュの本気をほんの一片でも引き出した事に小太郎は自分の影響を感じた。
(お館様が成長しているのは事実です。時子も嬉しい限りです。・・・しかし)
時子も小太郎の成長を執事として、姉として、喜ばしく思っていた。それと同時に──
(やはりフラッシュ様は
フラッシュの本気をまだ引き出せていないことに己の無力さを感じていた。
試合の中、フラッシュと一対一で打ち合う機会はあった。しかしその間、自分は本気で打ち込んだにも関わらずフラッシュは最後まで本気を出さなかった。
(お館様の成長もですが、私自身も精進しないといけませんね)
「今日はここまでだ」
「あ・・・」
訓練終了を告げ、その場を去ろうとするフラッシュ。その様子を時子が切なそうに見つめている。
「せっ、せっかくだからさフラッシュ兄さんも飯食べていこうよ!」
しかしそんなフラッシュを止めたのは小太郎だった。何やら大げさなジェスチャーをしながらフラッシュをその場に引き留めている。
「そ、そうですよ!僭越ながらこの時子、腕によりをかけて料理をふるまいます!」
そしてそこに加わる時子。
やけに必死に自分を引き止める二人にフラッシュは疑問を抱きつつもこれを承諾した。
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フラッシュside
あっぶねえええええ!!??
本当にさっきのはヤバかったぞ・・・思わず速度を上げてしまった。
いやはや『弟』の成長にお兄ちゃんも嬉しいぞ、うんうん。
昔の
気づけば俺は、小太郎を弟のように扱い、向こうも俺を兄と慕ってくれた。
あの、絵に描いたようなお坊ちゃまが今ではそこらの対魔忍にも引けを取らない立派な男になった。
ふうま一族が持つ魔眼に
それよりも・・・だ。
何故か小太郎は何かを誤魔化すようにそっぽを向いてるし、執事の時子は何やら熱っぽい視線を送り続けている。
・・・二人は俺に何をして欲しいんだ。
あ、そうだ・・・。
「小太郎」
「え、どうしたフラッシュ兄さん?」
「お前、俺の知らないうちに『独立遊撃隊』なるものの指揮官になったらしいじゃないか。今度の鍛錬にはその部隊の隊員も連れてこい。せっかくだから噂の部隊の戦闘力を見てみたい」
俺の言葉に小太郎はギョッとした表情を、時子は捨てられた子犬のような顔になる。
いやなんで二人ともそんな顔をするんだ。
「なに、
「・・・わかった」
(その『軽く』が問題なんだよなぁ~)
この時、フラッシュは自らに課す鍛錬の厳しさが周りよりも乖離していた結果、『軽め』でも並の対魔忍なら吐きまくるようなレベルになっていることに気づいていなかった。
「あ、あの・・・私は・・・」
「ん?無論、時子も参加してもらうぞ。遊撃隊とは別でな。お前は俺と違って正式な五車学園の教師。監督役としてしっかりいてもらうぞ」
時子の問いかけに応えると嬉しいような残念なような複雑な表情を時子はした。え、仲間はずれにされるのが嫌だったんじゃなかったのか?
ムーとでも鳴きそうな時子にしては珍しい表情をしているが、なんでそんなことになってるのか皆目見当もつかない。・・・とりあえず──
「帰るか」
おい、小太郎。なんだその『やれやれこの人は』みたいな顔は。正直少しピキったぞ。
────────────────────
きっとそれは『一目惚れ』だったのだろう。
絵本に描いたような、お姫様のピンチに颯爽と現れる王子様・・・私にはそう見えた。
あの日、幼き御館様とまだ年端もない私が
その剣技が、その立ち姿が、その言葉が、その振る舞いがとてもまぶしく見えた。
「フラッシュ様。お慕い申し上げます・・・」
きっとこの声は届かない。
でも、いつか追いついた日には・・・・・・。
卒論!卒論!・・・・・・・・・・・・・・・アギャー。
皆さんの性癖(対魔忍仕様)はどんなものですか?
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感度3000倍
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箱化
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ふた〇りレズ
-
石化
-
AV堕ち
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その他