核で一度滅んだ世界に転生した瞬間なんか死んだ件について 作:rikka
死んだと思ったら見知らぬ世界で目を覚まして、その瞬間また死んだ件について。
何を言ってるか分からないだろう? いや俺も本当に分からなかった。
唯一分かるのは、自分が確実に二度死んだという事だと、ここが自分が最初に死んだ世界ではないということだ。
最初に死んだってなんだ。
なにせ二回目に死んだ時など、目が覚めたらなんか緑だか黄色だかに光ってる変な嵐の真っただ中にいて、ビビって息を吸い込んだ瞬間に全身がカッと熱くなって倒れてなんやかんやあってまぁ……死んだ。
(まぁ、そりゃあ死ぬよなぁ)
目の前に広がるのはだだっ広い荒野と廃墟がほどよくミックスされた光景。
これはひどい。
まずそもそも全く壊れていない建物という当たり前のが一つもない。
焼野原になった街をそのまま放置していた感じだ。
「核関連技術が異常発達した世界が核で滅んだ世界とかそれなんてポストアポカリプス?」
街の残骸の向こう側からは、乾いた火薬がさく裂するような音がずーーーーーっと聞こえている。
うん、それはもうっずーーーっとだ。
どういう人がどういう人かモノに向けて撃っているのか。
うわぁ、考えたくねぇ……。
「大丈夫か? まさか、キミの意識や記憶に不具合が? かなり無茶な実験だったと記録には残っていたが……」
後ろから、女性にしては少し低めのかっこいい声がする。
「あぁ、いや、大丈夫。ごめんねグローリーさん。状況にめちゃくちゃ混乱しているけど、まぁ大丈夫」
とりあえず状況を整理しよう。
俺は一回死んでこの核バンザイ世界に来た。
もうこの時点で十分トンチキすぎて吐きたくなる。
問題はその後だ。
核バンザイ世界にまったく適応していないクリーンな体だったためか、俺はすぐにゲボ吐きながら倒れた。
そこまではうっすら覚えているが……。
なぜか『人造人間』とかいうロボット兵士が、俺を今まさに後ろで燃え盛っている施設の地下へ運んでいたらしい。
まったく記憶にないというか、自分が9割死んでいた時の話のようだが。
これはついさっき知ったことだが、身体が完全に死ぬ前に色々調べ回ろうとした挙句に、自分の人格というか記憶を知りたがった『インスティチュート』とかいう連中の手駒っぽい奴が、自分の脳みそを機械の疑似脳にまるごとコピーしようとしたらしい。
それまで一回も成功していない実験で。
で、その結果生まれたのが、俺の記憶を受け継いだ俺のそっくりな俺という『人造人間』というわけだ。
……もう! 全然! 俺じゃないじゃん!!
いや俺ではあるんだけどさ!!
「グローリーさん。俺の元の体は……」
当然その連中――インスティチュートとかいう奴らは俺をなんらかの形で利用しようとしていたみたいなんだけど、そいつらと敵対していた組織の人がたまたまその施設を襲撃。
ちなみに実験内容その他もろもろは、その施設の中を調べて分かったことらしい。
で、その際に俺を助けてくれたのがこのバカでかいガトリングガンを持った銀髪サイド刈り上げで褐色肌の美人さん。グローリーという人だ。
「あの地下施設は敵もろとも爆破した。……キミの体はおそらく燃え尽きただろう。すまない、もう少しこっちが数を用意できていたら運び出せたのかもしれないのに」
「あぁいや、むしろ燃えてくれてよかった。鏡越しとかじゃなく直接自分の死体を自分で見るなんて、自分でもどういう感情を持つか分からない」
自分が自分とほぼ変わらない人造人間という頭ぶっ飛んでるとしか言えない事態だって上手く呑み込めている自信はない。
ここで自分の死体なんて目にしたら……考えたくないな。
「それにしても、よく施設が分かりましたね」
なんでも昔の金持ちが自分用に作ったシェルターを改造した場所だとか。
ほとんどロボットと言っていい古い人造人間の目撃情報が出ていたためにここを調べていたら発見した――ということらしい。
「元々インスティチュートが新しい施設を作ろうとしていたのは知っていた。どうしてそんなことをしたかは分からないが……。それで襲撃をかけてみたら、ちょうどキミが目を覚ます所に出くわしたというわけさ」
「偶然だったか」
どちらも秘密結社っぽいのが少々気にかかるが、少なくともこちらはある程度自由を保障してくれるというから、まぁ当たりを引いたのだろう。
「それで、これからキミはどうするんだ?」
「正直、右も左も分からないしなぁ。ここがどこなのかも分かってないし」
「あぁ、そこからか。ここは連邦。コモンウェルスさ」
連邦。コモンウェルス。なるほど。
……なるほど?
「つまり、どこの連邦なんです?」
「……キミは本当に、一体どこから来たんだ?」
「とにかく遠い所……だとしか」
マジでまったくここがどこか分からん。日本ではさすがにないとは分かるけど……。
ラノベやアニメによくある異世界なのか――いやまぁ、異世界なのは間違いないんだけどほら、こう――ほら!
「他の地名とかあります? その、例えば核が落ちる前とか。変わってません?」
「あぁ、なるほど。そうだな……ここはかつて、ケンブリッジと呼ばれていた地域だ。川の向こう側はボストン」
ケンブリッジ。イギリスか?
いや、向こう側がボストンって事は……ここアメリカかい!
そういやなんか普通に英語話してたわ。
なんか勝手に翻訳してるというか、耳とか口とか頭が勝手に動いてるというか。
あぁ、意識してないと忘れるけど、自分もう自分っていう人間じゃなかったわ。
自分と全くおんなじ人造人間だ。
「ちなみに、そちらの……組織? に面倒みてもらうってのは難しいですかね」
「ふむ。ボスがどう思うかというのもあるが……私としてはオススメしない」
「理由は?」
「戦う事になる。……いや、こんな世の中では暴力は必須なのだが……」
滅茶苦茶重そうなガトリングガンを軽くノックしてみせるグローリーさん。
「私の組織に入れば、キミの選択肢はかなり限られるだろう。私としては、出来る事ならばキミには自由になってほしい。……せっかく奴らの手から逃れて、この連邦で目を覚ましたんだ」
そういう事を言ってくれるから、組織というか貴女の世話になりたいというのが本音だ。
優しくて強い美人とか最強すぎる。
情けない事この上ないが、マジで右も左も分からないから誰かについていってせめてある程度の知識は教えてほしい。
その旨を伝えると、グローリーさんはしばらく考え。
「なら、一つ私に考えがある。幸い、キミは生前よりもはるかに体は頑丈になっている。それを利用して、私のツテで働ける所があるかもしれない。とりあえずはそこで働いてみるのはどうだろう?」
それはかなりありがたい。この人の紹介なら信用できるし、働く事でとりあえずココの常識だって学べるだろう。
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「グローリー! あぁ、『死の天使』! 戻ったのね」
「ああ、今戻ったよ。デズデモーナ、報告した通り少々特殊な人造人間を一人解放し、実験設備を破壊した。P・A・Mの予測は正しかったな」
レールロード。
謎の科学組織『インスティチュート』と敵対し、彼らが作り出す人造人間の『解放』を目的としている組織。
それがグローリーが所属する組織だ。
「それじゃあ発電設備もあったのね? 奴らがエネルギーに関して問題を抱えているというのが確認できたのは大きいわ。でも、特殊な人造人間って?」
「インスティチュートは、どうやら連邦市民と人造人間のすり替えをより効率的にしようとしているようだ」
グローリーがあの地下施設で見つけたのは、大昔の大規模な自家発電設備。そして何度も改修したのだろう人間の頭に接続する何らかの装置だった。
彼女が見つけた人造人間と、その元だったのだろう『彼』の死体が繋がれていた。
「記憶を完全な形で移植しようとしていたんだ。余りに危険な研究だったので爆破した。トムからすれば持って帰るべきだったかもしれないが……」
「いいえ、よくやったわグローリー。そんな危険な研究の芽を残すわけにはいかない」
グローリー達レールロードを率いる女性、デズデモーナの言葉に、頭に奇妙なヘッドギアを付けた黒人――『なんでも屋のトム』が頷く。
「あぁ、デズの言う通りだ。……いやまぁ、興味がなかったかって言われると嘘になるが……」
連邦に知らないものはいないとされている恐怖。
これの最大の恐怖は、気が付いたら隣人が中身の違うものに入れ替わっているという恐怖だ。
その入れ替わり方も惨く、入れ替わる人間を攫った後、凄惨な尋問と拷問によって情報をすべて抜き出していることが判明している。
「それで、その特殊な奴っていうのはどうしたんだ? 察するに、生前の記憶をまんま受け継いでるんだろう?」
それがここから先、生前の記憶と人格をコピーされるようになったら、あるいはいつの日か自分でも知らないうちに人造人間になっていた――などという事が起こり得たのだ。
「ああ、彼はバンカーヒルのストックトンに頼んだ。本人も仕事を求めていたし、キャラバンの手伝いから始めるようだ」
「あら、随分と真面目な人格なのね。ちなみに名前は?」
デズデモーナの質問に、グローリーは小さく笑った。
「ロスト……と、名乗るそうだ」
「
「思うところがあったんだろう。人造人間として生まれた人格ではない」
グローリーは、自分でも気づいていないほどにあの人造人間の事を気に入っていた。
話した時間はわずかだったが、それだけで十分に人の良さがグローリーには伝わっていた。
「解放した以上あまりこちらは関与しないが……念のために個人的に時々様子を見に行きたいんだ。構わないか、デズデモーナ?」
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この世界には、たくさんの人間が住んでる大きな町というのは数か所しかなかった。
かつての大きな野球場に手を加えた頑丈な拠点。連邦のグレートグリーンジュエル。ダイヤモンドシティ。
連邦のならず者やグールが住む連邦のごみため。多くのギャングの根城。暗黒街グッドネイバー。
そして、それらの街や小さな居住地をつなぐキャラバン隊の多くを傘下に置くここ。交易中心地バンカーヒル。
グローリーさんから紹介されたのは、ここバンカーヒルを中心に活動するキャラバンの手伝いだった。
ここを拠点とするキャラバンは、当然のことながらここで十分に用意を整えてから売買の旅へ出発する。
その旅のための水や食料の管理と用意、その荷を運ぶバラモン(突然変異して首を二つ持つようになった牛)の世話。ついでに装備品で修理が可能なモノなら直したりと……まぁ、雑用である。
もっとも、こういう世界だから雑用がすごく大事になっている。
雑用だから幅広い事をやらなきゃいけないし、たまに自分でも銃を握る必要が出てくる。
「出て来いクソ野郎ども!」
「頭ねじ切って玩具にしてやるぜーー!!」
「バラモンを殺せ! 中の荷物を奪え!! 女は足撃って捕まえろ!」
――今みたいに
「あっはっはっはっは! 見なよロスト、ちょうどいい的が湧いて出てきた! さぁさぁ! アタシらのコレクションをぶっ放そう! 胴体は5点、手足は10点、頭ぶっ飛ばしたらジャックポットさ!!」
「すいません隠れて横から行こうとしていたところだったんでちょっと黙っててくれませんかねクリケット姐さん……」
グローリーさん、マジで俺を雇いませんか。
この頭の中に炸薬しか詰まってないトリガーハッピー・キャラバンに同行するくらいなら絶対貴女の方が――っぶねぇ喉元に跳弾かすった!!!!
「ンのクソボケレイダーどもが! 死んだらどうするんだボケコラァ! 殺してお前らの着ている物も全部はぎ取ってキャップに変えてやるぁぁぁぁぁぁ!!」
「そうだよロスト! 派手にぶっ放しちまいな! キャッホーゥ!!」
グローリーさん、貴女に拾ってもらっておよそ二か月。
すっかり私もウェイストランドに慣れ申した。