核で一度滅んだ世界に転生した瞬間なんか死んだ件について 作:rikka
歩けるくらいまで回復したパイパーと共にバンカーヒルへと戻ったのが三日前だ。
その間、医者のケイに診てもらいながらパイパーは記事の草案を書いている。
「それでルーカス、カウンティ・クロッシングの方はどうなってる?」
で、俺はまたこの腹黒薄らハゲと一緒にサヴォルディの小さなバーで飲んでるわけだ。
なんで天下のバンカーヒル唯一のバーが、こんな立ち飲み屋みたいな吹き曝しの店なのか。
……せめて風よけ付けない?
「あぁ、作業のための人員を向かわせた。お前の言う通り、あの訓練施設にオートタレットが数機あったそうだから、それを居住地側の防衛に使うそうだ」
アストリンから教えてもらっていたのが役に立った。
元々あの州軍の訓練施設のモノで、手動スイッチ式のモノだったらしい。
アストリンも対フェラル用に無傷だったタレットを使おうと思っていたのだが、その前にあの群れに追い詰められてしまっていたという事だったとか。
「バンカーヒルは、こう……もう少し外に人をやったりしないのか?
カウンティー・クロッシングの件も、結局防衛のための資材といくつかのキャップを出して終わりという事になるそうだ。
あそこは重要交通路であるあの橋を見張るのにもちょうどいいし、絶対人をやるべきだと思うんだけどなぁ。
「そういう話もなかったわけではないが……。まぁ、見ての通りだ」
「なんでさ」
「そうだな、なるだけこのバンカーヒルから人を割きたくないというのもあるが……」
「人が一番替えの利かない資産だから?」
「というよりはな、目の届かない所に置いていたくないんだ」
「……中抜きみたいな不正とか、勝手な独立とかを恐れて?」
「それと『入れ替わり』をな」
「……
俺を作った奴と同一犯なんだろうけど、マジで何を考えて『入れ替わり』なんてやってるんだろうな。
目的がよく分らん。
忍ばせて一斉蜂起……とかが目的ならとっくにやってるんじゃないかなぁ、とか考えてしまうんだけど……。
おかげで俺は自分の身の振り方に死ぬほど悩んでるんだけど。
「なんだいアンタら、男二人で酒盛りかい?」
「……なんだ、ダイヤモンドシティの跳ねっ返りか」
「ご挨拶だね、ルーカス。サヴォルディ、アタシにも一杯くれよ。あと灰皿も」
おっと、パイパーか。記事に目途がついたのかな?
軽く酒の入ったグラスを掲げると、「やぁ、ロスト」と手を振ってきた。
「お前さん病み上がりだろうが。それで酒に煙草とはロックだねぇ」
「ロスト、連邦一のガンマンのアンタにそう言われるとは、それこそ最高の箔さ。最高にロックな新聞記者、パイパー・ライト!」
お前さんひょっとしてもう大分入れてらっしゃる!?
「おお、パイパー。ガンマンに救われた物語のヒロインじゃないか。ほれ、スタウトでいいか?」
「サンキュー、サヴォルディ。……にしても、今日は随分機嫌がいいじゃないか」
「そうか? いや、そうだろうな」
そういえば確かに機嫌がいい。
実は俺の酒、最初の一杯はサヴォルディの奢りだしな。
「前に話したかな……。俺の祖父――ブレント・サヴォルディはミニッツメンだった」
ミニッツメンって、……あぁ、例の民兵組織か。
「当時のミニッツメンは勇敢だった。レイダーはもちろんアチコチで暴れているミュータント、そしてインスティチュートの人造人間にも負けなかった」
話を聞きながらグラスを空にしたら、サヴォルディがなにも言わずに同じ酒を注いできた。
おいおい、いいのか? ご馳走になっちゃうよ?
「私にとってそれは誇りだ。私の身体の中には、ミニッツメンの血が流れている」
本当に機嫌よさそうなサヴォルディ。ジョー・サヴォルディに対して息子のトニー・サヴォルディは少しむくれている。
……親子仲に問題あり、か?
ダイヤモンドシティのボブロフ兄弟といい、同じ箱で酒場担当と宿担当で店やってる奴らはぶつかりあうのかねぇ。
「ロスト。お前の活躍は実にミニッツメンだ。多くの危機を銃を持って切り抜け、キャラバンや連邦市民を救う。あぁ……クリケットはもちろん、ケイやメグが気に入るのも分かる」
「? あの親子が?」
医者――というか、家畜の様子をみていた獣医がそのまま人も見るようになった。が正しいが――のケイと娘のメグ。
確かに、最初はよそよそしかったけど行商終えてからはケイは薬品関係の補給にも協力してくれるようになったし、生意気なのは変わってないけどメグも懐くようになった。
「あぁ。ケイは医者だからな。人を助ける者を信じるのは当然だ」
「……まぁ、ロストが変わり者だって言うのは確かだね。わざわざ死体を処理したりさ」
「? 普通じゃないのか?」
変に死体を残してたら虫やらフェラルが寄ってくる可能性があるから危ないだろう。
特に虫。
あれはヤバすぎる。
すぐに湧くし育った奴は弾が当たらない上に固いとかいう地獄のコンボ発揮するし。
「……そういやアンタ、ウチのナットに色々教わるくらい世間知らずだったね」
「普通は使えそうな物や売れそうな物を剥ぎ取ったらそれでおしまいだ。その場に置いていくか、罠や餌に使うか、あるいは玩具にされるかそのまま食われるか……」
ルーカスが浮かんだ光景を振り払うように酒を呷り。サヴォルディは小さく頷いている。
「ロスト。バンカーヒルに流れ着いたガンマン。私はお前のそういう所に期待しているのだよ」
そう言って、俺達の席にイグアナの串焼きを乗せた小皿を出したジョー・サヴォルディは、歳に似合わないウィンクをしてみせた。
……いやホント似合わねぇ。
見ろよ、パイパーもルーカスも苦笑してんじゃねぇか。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
「それじゃあ、少しの間離れるっていうこと?」
「あぁ、姉御やキャラバンの皆には申し訳ないんだけど、ちょいと個人的なことでダイヤモンドシティに行きたいんですよ」
パイパーの身体能力も完全に戻り、大丈夫だろうという所でケスラーの姉御に話を持ち掛けてみた。
「正確に言うと、しばらくの間ダイヤモンドシティに居たいんだ。少し話を聞きたい人たちがいる」
「……それは、貴方のプライベートな事?」
「ああ」
「……そう」
ケスラーの姉御は、なんとか俺をバンカーヒルの所属にしたいのだろう。
そうなると、外堀を埋めるためにも俺がバンカーヒルの一員に見えるようにキャラバンに同行させたいはず。
(パイパーの護衛も兼ねてどっかのキャラバンについていって、ダイヤモンドシティで別れるって感じか)
まぁ、仕方ないかと思ってると近づいてくる人がいた。
ストックトン爺さん?
ここの責任者じゃないか。
「それなら、ちょうどいい。ロスト君、カーラのキャラバンに同行してくれないかね」
「ストックトン?」
ケスラーが怪訝な顔をするが、ストックトンはニコニコしたままだ。
「カーラ。トラシュカン=カーラでしたっけ?」
前々から気になってたあの人か。
ジャンク品の売買について是非とも話を聞いてみたい人だったから、こちらとしても好都合だ。
「君も知っていると思うが、バンカーヒルに正式に所属しているキャラバンは四隊。アーマーを取り扱うルーカス。医師のDr.ウェザース。武器弾薬を取り扱うクリケット。そして雑貨商のフレッド・オコネル。彼らを定期的に回すことで我々は利益を上げている。そのため彼らには身の安全のためにガードをつけているが……」
「確か、カーラさんはあくまでバンカーヒルの協力者であって、正式なキャラバンではないんですよね?」
「その通りだ、ロスト君」
だから気になってる人だったんだよなぁ。
そこらへんの事を色々と詳しく聞きたかった。
「だから彼女にはガードが付いていない。いや、人手不足というのもあるが……。事実、フレッド・オコネルの隊にはキャラバンガードではなく傭兵を雇って護衛に付けている」
「そうだったんですか……」
自分はまだフレッド・オコネルには出会ったことがない。
雑貨商というだけあって様々な商品をあちこちの居住地に届ける、少々特殊な隊というのは聞いていたが。
「うむ、カーラはこれまで自前のキャラバンを運営してきたベテランなので心配はしていないが、最近ダイヤモンドシティの周りはなにかと物騒になりつつある。もしそこまで行くというのであれば、彼女の護衛をお願いしたいのだよ」
「はぁ……。まぁ、ダイヤモンドシティ周りは少し片づけるつもりだったからこちらとしては構いませんけど」
レイダーのように
さすがに全勢力を一気に片づけるとかは無理だろうけど、せめてダイヤモンドシティ周辺と大通り周りに略奪や餌目的で屯ってる奴らは片づけておきたい。
「……なるほど。ロスト君、君は聞いていた通りの男のようだ」
なんかしきりに頷いているストックトン爺さん。
どう聞いていたのかすごく聞きたいけど聞きたくねえ。
「なら話は早い。カーラは明日の昼にはここを出発するそうだ。それまでに用意を整えておいてくれるかな?」
「分かりました。パイパー・ライトにも話を付けておきます」
「あぁ、頼む。君ならば大丈夫だろう」
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
「向こうに着いたらニックを紹介してほしい?」
「そうだ、頼むパイパー」
夜になり、風よけもないサヴォルディのバーでは少し寒い日だったので風よけのあるキャラバンの営業所にあるカウンターでパイパーと一杯やっていた。
すぐそばではデブ――日本語的には酷い名前だがそうじゃない――が自分のジャンク品店の店仕舞いをしている。
キャラバンの営業所にいるのは今日はルーカスだ。
そういえば、ルーカスも明日出発だったか。
「そりゃあ別にいいけど、なんだか驚きだねぇ。アンタが探偵に用事があるなんてさ」
「探偵であるのと同時に便利屋だろう? ある意味で同業者さ。前から話をしてみたかった」
ニック・バレンタイン。
この連邦では極めて珍しい探偵業をやっている――人造人間。
クリケット姐さんの話だと、俺みたいな完全に人間な見た目とは違って所々皮膚が破れて中身が見えているという話だ。
そういう『明らかに人間と違う』っていうのもある意味で受け入れられた原因かもしれないが、彼の経験と歴史は俺にとって有益な情報のハズだ。
「あぁ、確かにそうかもね。……ちょうどいい、その時はアタシのオフィスにも来てくれ。ちょうど詳しい取材をしたかったのさ」
灰皿に短くなった煙草を押し付けて、パイパーは笑っている。
うん、食欲もちゃんとあるようだし問題はないようだな。
「あぁ、記事にしたいって言ってたけか。いいよ、べつに。独立するつもりだっていう事のアピールにもなるし」
しかしなるほど……。
こうして一日一日積み重ねていくと実感するが、娯楽が酒と煙草とドラッグしかないな。あと女というか異性。
パイパーもやけに煙草を吸うヘビースモーカーだなぁと思ってたけど、案外これが普通なのかもしれない。
(メグやナットが大きくなった途端に煙草吹かしてジェットキメ出したら俺マジで泣くかもしれんな)
「独立ってことはやっぱり自分でキャラバンを?」
「いや、まだそこまでは決めてない。まぁ、キャラバンというか店を持つか、あるいはどっかに畑開くかのどっちかだろうけど」
「ロストが銃じゃなくて鍬持って地面を掘り返してる姿は、ちょっと想像できないな」
「ソイツは俺もさ。……そういえば、ダイヤモンドシティの食料面はどうなんだ? 足りてるのか? バンカーヒルでは特にそういう話は聞かないけど」
食事担当の時には食糧庫の残りから計算して七日分くらいの献立を立てて料理していたけど、ダイヤモンドシティだとどうなんだろう?
「ダイヤモンドシティじゃあ、食料は月に二回ちょっとした配給があるけど……大体は、パワーヌードルさ」
「……あのロボットの?」
「そう、タカハシ」
ひどく馴染のある名前だったのでちょっと店に立ち寄ったが、『ナニニシマスカ?』しか話せないという悲しいロボットが営業する店だった。
出しているのはヌードルだけ。
うん、その……パスタとかそういうのでもなくラーメンっぽいものだ。
具なしラーメンというか……、味も不味いというほどではないが美味い物では決してない。
「ナットから、『
「でもあれが本当にダイヤモンドシティの主食だからね」
「じゃあ、あの肉屋は? ポリーさんが捌いてただろう?」
ダイヤモンドシティ・マーケットに入って右手に、ポリーという女性店主が一人で切り盛りしている肉屋、『チョイス・チョップス』。
割といろんな肉が仕入れられていたので、自分もいくつか買って料理の練習に使ったが、思い返せばあんまり人は来ていなかった。
「特別な時に肉料理を出すために買うって感じかな……。一週間を乗り切った時とか、あとは誕生日とか18歳になった時とか、それか結婚式みたいななにかの式典とか」
「……やっぱ高級品か」
「そこまで高価ってわけじゃあないけど、まぁね。コッドマンファミリーの牧場からバラモンの肉は定期的に仕入れているみたいだけど、それ以外が入手できるかどうかは運次第だからね」
ダイヤモンドシティまで来たキャラバンがそういったものを仕入れているか、あるいは道中でそういったミュータントと遭遇,交戦して解体して商品として持ってきていれば……って所か。
(……ダイヤモンドシティで猟師にでもなってみるか?)
肉の仕入れがネックになるけど、そこらの広い水場の中に肉放り込んで群がって来たマイアラークを片っ端から狩ればそこそこ良い仕入れになりそうだし、銃と狩場を選べばかなり安全に狩れそうな気がする。
(まぁ、身の振り方も含めてそこらへん、ぜひとも例の探偵とじっくり話してみたいな)
状況によっては、バンカーヒルとの間にケジメを付けて身を寄せるのもありかもしれん。
ダイヤモンドシティはアルトゥーロの店とマーナとハンディのダイヤモンドシティ・サープラスはほぼ絶対に使うと思うけど、他の施設を把握している人って結構まばらだと思うんですよ私。
服飾店『ファロンの地下室』を発見したのがついこの間というrikkaでした