核で一度滅んだ世界に転生した瞬間なんか死んだ件について   作:rikka

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013:良き隣人の街での一夜

 退廃と暴力の街と呼ばれる物騒な場所がある。

 争いに慣れたキャラバンガードの面々でもうんざりだという街。

 

「にしても、マフィアの街の名前が『グッドネイバー』ってのは何? 最大級の皮肉か?」

「入った途端に絡まれたね、ロスト」

「その直後に刃物を取り上げて地面に叩きつけるあたりさすがだよ、ガンマン」

 

 まったく、キャラバンガードの連中――特に女性がグッドネイバーを嫌がる理由がよく分かる。

 金を要求されるくらいは想定していたが女を置いていけとかいう、こっ恥ずかしいB級映画の三流悪役みたいな台詞を聞くとは思わなかったよ。

 

 これなら道中野宿でも一直線にダイヤモンドシティに向かった方がマシだったんじゃないかと思うくらいだ。

 

「まぁ、通過儀礼みたいなものだ。銃を頭に突きつければ大体引き下がる」

「……引き下がらなかった時はどうするんだ? カーラ」

「そのまま穴を空けてやればいい。そうすれば静かに通れる」

「……紳士的な回答、どうも」

 

 カーラもやはりキャラバンだなぁ。

 なんだかんだで銃の腕も悪くないし、一人で連邦を歩き回るだけはある。

 

「それで、カーラ。ここでは何を仕入れるんだ?」

「あぁ、弾薬だ。ちょいといい弾と引き換えに安い弾を大量にもらうのさ」

「安い弾の方を?」

 

 レクスフォードホテルという、寂れているにはやけに内装が豪華な宿――まぁ、文字通り戦前のホテルだったんだろうが――の一室に一同で集まっている。

 というか、俺が頼んだ部屋だ。

 

 男と女なんだから一応部屋を分けた方がいいだろうと思ったのだが、コイツらは一緒に寝ても問題ないらしい。

 

 まぁ、並みの男よりも強い女性三人に男一人じゃそうもなるか。

 

「私の商売相手はそこらの農場や小さい居住地が主だ。そうなると軽機関銃みたいな高いしある程度まとまった数がいる弾薬よりは、修理も改造も簡単なパイプ銃向けの弾薬の方がキャップになるのさ」

「……逆に、ちょっといい弾が売れるのは?」

「そりゃあここだろうな。.45弾の需要が最も高い。そして居住地やダイヤモンドシティでは.38弾や10mm弾。……まぁ、たまに流れのガンナーがフュージョンセルを欲しがることがあるけど、アイツらは取引じゃなくて要求をしてくることが多い」

「……今度から優先的に排除するか」

 

 あの傭兵集団、やっぱり問答無用で叩き潰して装備回収してダイヤモンドシティとかに回した方がいい気がしてきた。

 そっちの方がよっぽど人のためになるだろう。

 

(あるいは、いっそ俺がそういう部隊を作ってみてもいいかもな)

 

 生活で最も驚異となる怪物。アストリン達が言うアボミネーションの討伐を優先する傭兵。

 問題は補給に困らないくらいキャップを稼げるのかという話だが……。

 まぁ、他の居住地を見て回ってから考えるか。

 

「それで、ロスト。さっきからやけに念入りに銃を整備してるけど、何するつもりさ? 旗揚げかい?」

 

 もはやお気に入りとなりつつあるクリケット姐さん特製の10mm拳銃の分解整備と組み立てを終えて、弾薬のチェックに入っているとパイパーが覗き込んでくる。

 

「旗揚げって部下一人もいない状態でなにを旗揚げするんだ……。一応、念のためにだ。ここは欲望に正直な連中の溜まり場で、連れは皆美人揃いときたらそりゃあ万が一に備えるでしょ」

 

 割と洒落になっていない。

 こんな時代だ。ただの売春はともかくとして、人身売買のための誘拐なんて散々聞いている。

 

 パイパーにせよグローリーさんにせよカーラにせよ、三人とも腕っぷしは立つけど不意を突かれたらどうしようもない。

 それこそ、先日はイカれた宗教団体に襲われたパイパーみたいに。

 

「カーラはダイヤモンドシティまでの護衛対象でもあるし、ここでそれなりに仲良くなった人間が突然いなくなったりしたら悔やんでも悔やみきれないからね。まぁ、一応全力は尽くさせてもらいますから」

 

 念のために脱出口も確保してあるし、グローリーさんやパイパーを嫌な目で見ていた奴らはこっそり起動しておいたリコン・センサーでタグ付けしてある。こいつらがこのホテルに近づいたらすぐに分かる。

 

「相変わらずアンタはウェイストランドの香りが薄い男だね、ロスト。そんなんでやって……いや、やっていけるだけの腕があるからこうなのか……」

 

 パイパーは、手を出さずにじっと、先日クリケット姐さんから頂いたマグナムを見つめている。

 

「まったく、アンタみたいな男がウチにもいればね」

「……ダイヤモンドシティは、以前の行商で見た時はいい街に見えたんだが……」

「見かけだけさ。今でもあそこの住人はレイダーやミュータントに怯えて壁の中に籠っている。……いや、別にそれが悪いってわけじゃないんだけど……」

 

 パイパーのつぶやきは、おそらく新聞記者として色々見て、そして聞いてきたダイヤモンドシティ市民の潜在的な不安なのだろう。

 

「現状を打破しようっていう意気込みがないんだ。……それも、上に行けば行くほど」

「パイパー、ダイヤモンドシティのセキュリティは今どういう状況なんだい?」

 

 パイパーの話に興味が沸いたのか、グローリーさんが会話に参加した。

 

「そこまで士気は高くない。……まぁ、少し前からちょっと周りは静かになったし、それはいいんだけど……」

 

(……ひょっとして俺のせいか?)

 

 ナットのいる場所を多少でも安全にしたくて、目につくレイダーやミュータントは念入りに倒した。

 でも、それで防衛力に影響が出るのならやはり問題だな……。

 

「うん、だから外回りの連中が多少緩んでるのはまぁ、仕方ない。でも内回りの連中ですらサッパリだ! 行方不明者が出たって事件もあったのに、アイツらさっぱり動きゃしない!!」

「行方不明者?」

 

 滅茶苦茶物騒な話が出て来たな。

 そんなこともあるのか……。

 

「ああ、チャーリー。チャーリー・ファロン。分かるかいロスト、『ファロンの地下室』の旦那さ」

「奥さんのベッキーなら知っている。ダグアウトインで一杯やっていた時に少し話した」

 

 ファロンの地下室とは、ダイヤモンドシティ唯一の服飾店だ。

 ……思えば、俺の知る服飾の専門店はあそこだけだな。

 ほとんどはアーマー装備とかのついでに衣服も売っている所がほとんどだ。

 

「帰ってこなくなったその日に、ベッキーはもちろんセキュリティに捜索を依頼した。なのに、マクドナウの奴大したことじゃないだろうとか、そのうち帰ってくるとか適当な事抜かしやがって!」

 

 パイパーの嫌悪感MAXのボヤキに、グローリーさんもあるいはそこらの話を知っていたのか『あぁ、彼か……』と少し嫌そうな顔で酒を呷った。

 

「確か市長だったっけ。俺は見た事ないけど」

「あぁ、人をイラつかせる天才だよ。あのデブは」

「デブ」

「そうさ。むかつくだろう?」

 

 まぁ、気持ちは分からなくもない。

 正直、このご時世で太ってる奴ってマフィアの幹部くらいしか見た事ねぇ。

 

 お偉いさんと肥満体の二つがセットになると、なんとなくムカついてしまうのはよく分かる。

 まぁ、顔が良くて人が出来てるお偉いさんとかもムカついてしまうけど。

 

「割とダイヤモンドシティは市民の不満が溜まってる……そんな感じか」

「だと思う。肌で感じるんだ。口ではウチの新聞をデタラメだって叫ぶ連中だって毎回毎回ウチの新聞を買っているんだ。……買ってるんだよ? 包み紙代わりに買われて捨てられた奴を拾うんじゃなくてだ」

「……なんか、マジで傭兵というか雇われ警備員とかやったら儲かりそうな気がするな……補充も含めて」

「アンタなら絶対稼げるよロスト! なんていったってバンカーヒルのガンマンって看板があるんだ!」

 

 ……ちょっと心が揺らぐな。

 あんま戦闘には関わりたくないけどそうも言ってられない環境だし、どうあがいても変異生物(ミュータント)の脅威からは逃げられない。

 

「……銃弾安く売ってくれる所があればなぁ」

 

 結局これに尽きるんだ。

 銃そのものも消耗品だけど手入れ次第でまぁ長持ちさせることはできる。

 だけど弾だけはどうしようもない。

 こればっかりは数がいる。相手がレイダーならパイプ銃でもどうにかする自信はあるけどこの間の筋肉ダルマみたいな連中だと、それなりの弾をかなり消費する必要があるから面倒くさいんだよなぁ。

 

 いっそ、ガンナー襲ってレーザー装備と弾薬を確保するか?

 ……いかんいかん、さすがにそこまで行くと蛮族だ。

 

「そうだな。今一番簡単に弾薬を入手できるのはこのグッドネイバーかダイヤモンドシティだろうが……そうだな」

 

 この面子の中で唯一にしてベテランの商人であるカーラが、少し考え込んでいる。

 

「ガンマン。もしお前がここやダイヤモンドシティ以外のどこかに拠点を構えたのなら、クリケットとお前の補給について話し合ってやってもいい」

「デカい街以外?」

 

 また妙な事を言い出すなと思ったが、カーラは真面目に小さく笑っていた。

 

「お前が常駐している居住地だか農場だかがもしあるのならば、それはいい取引場になりそうだ。それならば、投資としてある程度の弾薬を定期的に、多少は安く持ち込んでやっても構わない」

「……居住地、ねぇ」

 

 小さい居住地にでも世話になって、農作業を手伝いながら時折周りの脅威を排除する生活、か。

 

「悪くない……かもな」

 

 俺がそう呟いた時に、好奇心に目を輝かせるパイパーと対称的に静かに、だけど少し嬉しそうに小さく微笑んだグローリーさんが、なぜかすごく印象的だった。

 

 

 

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