核で一度滅んだ世界に転生した瞬間なんか死んだ件について   作:rikka

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014:奪い取る者、守る者

 ダイヤモンドシティ。

 連邦で最も華やかな街。連邦のグレートグリーンジュエル。

 

 最も人が安心して暮らせる地域であり、だが同時にその周囲は――

 

 

――キャラバンと女だ! 全部奪え!

 

 

――馬鹿違う! フェラルだ! 後ろから……っ

 

 

――ぎゃあああああああああああああっ!!!

 

 

――待て撃つな! アタシだ――あ゛あぁっ!

 

 

 その周囲は、連邦屈指の激戦区でもある。

 こっちを襲おうとしたレイダー共とどこからか湧いたフェラルの群れが入り乱れてきゃっきゃうふふしてる。

 わーおカオス。

 

「パイパー、皆と一緒に下がって。グローリーさんは援護――いや、近づいてくるフェラル達の足止めをお願いしていいですか?」

「あぁ、任せてくれロスト。こういうのには、私の武器の方が向いている」

 

 フェラルの迎撃どころか誤射からの同士討ちまで始めちゃったレイダー共はフェラルとまともにやりあえていない。

 まぁ、無駄に足の速いあのゾンビもどきを相手にするのにストップ能力が低いパイプ銃じゃあ無理があるのも分かる。

 パイプ銃一丁だけでフェラルの群れを相手に出来る奴は、俺並みの精密射撃と素早いターゲッティングが必要になるだろう。

 

「パイパー、カーラ、建物の上からフェラルが降ってきているから気を付けろ。ほとんどはそのまま死ぬか足砕けて動けなくなってるけど油断はするな」

 

 旅慣れているだろうカーラはともかく、パイパーが少し不安だったが顔に緊張はあっても不安はない。

 念のためにセンサーをフル稼働して呼吸音などを確かめるが、落ち着いているようだ。

 うん、これなら大丈夫だろう。

 

(リコン・センサー起動、enemy01~07(無駄に暴れているレイダー共)までを、enemy08以降(フェラル共)と分けてタグ付け)

 

 こういう混戦は経験した事がない。

 足が速くてどこから襲ってくるか分かりづらいフェラルと、混乱していてどこに弾を飛ばすか分からないレイダー。

 

(グローリーさんのミニガンの弾幕のおかげでこっちを目当てにしているフェラルはそこらに転がっている)

 

 グローリーさんとこうして肩を並べて戦うのは初めてだが、やはり戦い慣れていると分かる。

 すごい勢いで走ってこられるとついつい胴体を狙ってしまうしそれが正解なのだが、彼女はミニガンの制圧能力を最大限に生かして片っ端から足を潰している。

 被弾率が低い足元を狙いながら、まぁ見事に押さえている。

 

(……とはいえ束になってかかられると不味い。先にフェラルから減らすか)

 

 視界に入るフェラルは片っ端からタグ付けしているが、二,三体倒したらまたどこからか同じ数がフラフラと歩いてくる。

 もしフェラルが同時に、しかも全員こっちに向かってきたらさすがに無理だ。

 不安要素もあるが、レイダー共はフェラルの餌になっていてもらおう。

 

(建物の向こう側から聞こえる銃声は五つ。音の発生源をunknown01~05に設定、レイダーと仮定して放置。)

 

 音がする以上、そちらにもそれなりの数がいるハズだ。

 とりあえず音が止むまではある意味で安心できる。

 

(VATS使用。目標、enemy09,14,15各頭部。……ターゲットインサイト)

 

 手に握っているのは、もはや使い慣れたサイレンサー付きカスタム10mm。

 姐さんからもらったマグナムをドカドカ撃ってみたいんだけど、さすがにこいつらにマグナムは過剰火力だ。

 ついでに音もデカいし、今の状況には向かない。

 

「交戦開始」

 

 本当にもう……ダイヤモンドシティは目と鼻の先だっていうのに。

 

 俺達の後ろにはパイパーとカーラがいる。

 負傷して(・・・・)動けなくなった(・・・・・・・)DCセキュリティの一隊(・・・・・・・・・・・)を守ってだ。

 彼らは皆、耳が千切れていたり、妙な焼き印のようなものがどこかに付けられていた。

 

(一月前にここら一帯片づけたのに、もうこうなるのか。地獄かよ)

 

 

 

 

 

 

△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼

 

 

 

 

 

 

「お帰りパイパー! ……あれ? ミスタも来たの!?」

 

 ちょっとしたレイダーの一団と、どこからか湧いてきたとんでもない数のフェラルを切り抜けてようやくたどり着いたダイヤモンドシティでは、久々に聞く声が俺達を出迎えてくれた。

 

「ただいまナット。あぁ、向こうで偶然出会ってね。そのまま連れてきたのさ」

 

 なぜお前が俺を引っ張ってきたことになっている、パイパー。

 

「久しぶりだね、ナット。あれから印刷機はどう? おかしくなってない?」

「大丈夫。あれから変な音はしないし、インクが滲んだりもしないよ」

「……ヘイ、ロスト」

「なんだパイパー」

「普通、そういうことは私に質問することじゃないのかい? ええ?」

「お前、大雑把な性格だろ。それなら細かい事に気を配ってるナットに聞いた方が二度手間にならん」

「い、言うじゃないのさ」

「あぁ、後先考えずに一人で地下水道に潜入しようとする奴には釘を刺しておかないとな」

 

 そう言うとさすがにパイパーもグッと言葉を詰まらせた。

 よし、反省しておけ死ぬほど反省しておけ。

 

「しかも唯一の護衛に薬盛ってまで」

「わかったわーかった! 私が悪かったよ」

「ん、それが分かっていればいい」

 

 目を離したら無茶するタイプだからなコイツ。

 たまにはこうしてイジめておいてやろう。

 

 別にパイパーの事を思ってやってるわけじゃないんだからね! 勘違いしないでね!

 

「さて、パイパー。とりあえず見知った顔に挨拶してくるよ」

「あぁ、わかった。終わったらここに来なよ。ソファーで良かったら泊まればいい」

「もう、パイパー! それじゃあさすがにミスタが辛いでしょう? ミスタ、一応寝袋があるからそれ使って」

「あぁ、ありがとうナット。んじゃ、行ってくるよ」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「っと、もう揃ってたか」

 

 ボブロフ兄弟の酒場宿、『ダグアウト・イン』

 このダイヤモンドシティ唯一の酒場――というわけではないが、まぁ……俺が飲めるのはここだけだ。

 

「あぁ、どうも事態は無視できるものではないようだ」

「私としちゃ、売る物売ったらさっさと次に行きたいんだがね……まぁ、そこの女が言うように無視できる話ではない」

 

 本来ならばここでもう別れるハズだったグローリーさんに、商品を卸し終わったカーラがソファに腰を掛けて俺を待っていた。

 他のダイヤモンドシティの住人は、余所者の俺達を遠巻きに眺めている。

 

 まぁ、そんなものだろう。

 カーラもあんまここには来ないらしいし、グローリーさんも顔が利くわけではない。

 そして俺は以前一度ここに来たことがあるだけの男だ。

 

「それで、セキュリティからの話は聞けた?」

「あぁ、聞いたさ。まったく、エラく胸糞悪い話さ」

 

 あの妙な負傷が目立つセキュリティは、碌に口を利くことも出来なかった。

 最初は負傷による痛みのためかと思っていたが、フェラルやレイダーを片づけてダイヤモンドシティに向かう道中でも、彼らは怯えるばかりで会話にならなかった。

 

「街の中に入れて、ようやく安全だと分かったんだろう。それでこちらのセキュリティ仲間にポツポツと話し始めてくれたんだが……どうやらレイダーにとらえられて、仲間になるように説得されていたらしい。……いや、その、説得というか」

 

 言いづらそうにしているグローリーさんだが、大体は分かる。

 あの奇妙な負傷の事だ。多分――

 

「拷問されていた?」

「…………あぁ、そのようだ。彼らの他にも何人かセキュリティや……それにトレーダーと思わしき人員がいたらしいんだが……今現在どうなっているかは分からない」

「少なくともセキュリティの仲間は一人殺されたらしい。アイツらの目の前で、生きたまま皮を剥がされた。アンタが担いで帰った男が、泣きじゃくりながら話してたよ」

「……惨いな」

 

 問題は、そういった真似をするレイダーがグッドネイバーからダイヤモンドシティの間に存在しているかもしれないという事実だ。

 互いに仲の悪い街同士だがそれでも行き来はあるし、ライフラインでもある。

 

 危険だ。放置しておくわけにはいかない。

 

「本拠地はあるのか?」

「いや、今はないらしい。どうやら誘拐と拷問を繰り返しながら拠点になる場所を探している所だったらしく、先日までは干からびた地下水道を拠点にしていたらしい」

「お前たちが助けたあのセキュリティ達は、引っ越しのタイミングでどうにか逃げ出せたということだ。餞別に弾丸をもらってな」

「……それでどうにか逃げ切った所で、今度はレイダーに襲われて……俺達とフェラルが到着したということか」

 

 危機一髪だったな。

 もし俺達が彼らを助けていなかったら、その危険なレイダーの存在に誰も気づかず、その連中は隠れ住んだまま誘拐と拷問による戦力増強を続け、下手したら一大勢力となって近隣の居住地を脅かしていたかもしれない。

 

 叩き潰すには、今しかない。

 いや、今じゃないと駄目だ。

 

「グローリーさん、カーラ、他に何か情報は?」

「……まずロスト、さん付けはもう止めてくれ。君は私と、肩を並べて戦ったんだ」

 

 お、おう。

 俺にとってグローリーさんは大恩人だから、出来るだけ敬称は付けたいんだけどな。

 

 まぁ、大恩人の言う事ならば仕方ない。

 

「OK,グローリー。で、情報は?」

「どうやら連中は、まだ戦力が足りないと言っていたようだ」

「……となると、また誘拐か」

 

 わざわざ武装しているセキュリティを攫って拷問する連中だ。

 多分だけど、即戦力の連中を求めているんだろう。

 そして拷問して心を折って自前の戦力にして、また誘拐して拷問して……を繰り返すのだろう。

 お前ら質の悪いブラック企業かよ。

 

「狙われるのはセキュリティかキャラバン、そのガード……グッドネイバーのギャングやレイダー、ガンナーも条件に沿うか」

「略奪者を誘拐する略奪者か。お笑いだね」

 

 笑えねえっす、笑えねぇっすよカーラの姉御。

 そんな連中がこの近くに潜んでる可能性大なんですから。

 

「他に居場所が分かるような手掛かりはなしか」

「ああ、強いて言うなら、ボスらしき男が『ゼラー判事』と呼ばれていたという事しか……」

 

 判事? 変な名乗りをする奴だな。

 まさか、旧裁判所を拠点にするつもり……なわけないか。

 そういうこだわりがある奴ならば、引っ越しなんて繰り返さずにもう占拠しているはずだ。

 

「この周辺の地図はあるか?」

「あぁ、一応あるよ。……戦前の地図に、私が商売しながら色々書き込んだだけのものだが」

「充分すぎる。ちょっと見せてくれ」

 

 カーラがテーブルの上に広げた地図には、やはりというか当然だがグッドネイバーとダイヤモンドシティの場所がちゃんと書かれている。

 

 以前たまたま拾って、前の世界と言う戦前の感覚で捨てられなかったお金――紙幣をクルクルと巻いて簡単な棒にして、グッドネイバーとダイヤモンドシティをつなぐように置いて、それを潰す。

 

「ロスト、君はその連中がこの線の辺りにいると?」

「いや、それはない。この一直線のエリアは、多分連中の狩場だ。連中は拠点を作るには数が足りていないと思っている。なら、繋ぎの仮拠点は狩場から離すはずだ。誘拐した連中はそこに置いているだろうし、混戦になったら逃げられる可能性が高まる」

 

 そうだ、連中の目当てはまだ戦闘そのものじゃないし、誘拐だけでもない。

 誘拐したうえで、拷問で心が折れるまで確保しなきゃならない。

 

「この線からある程度離れた所に拠点がある。……ハズなんだが」

「範囲が余りに広すぎる。これだけのエリアを一人で歩き回るつもりか? ガンマン」

「……必要なら」

 

 カーラさんが呆れたように言うが、マジでやるしかない。

 誘拐と拷問のノウハウがあるなら、いずれ子供も攫う可能性がある。

 こんな時代だ、子供ですら見捨てられる可能性はあるが、それが出来ない人間だってそれなりにいる。

 その可能性があるなら、こういう連中は必ず付け込む。

 

 つまり放置すれば、ここのナットやバンカーヒルのメグのような子だって危険な目に合う可能性が格段に高まる。

 

 それなりにこの世界に染まってきた自覚はあるけど、これを許容できるほどにはまだ染まっていない。

 

 カーラはそんな俺に呆れたのか、軽いため息をつく。

 

「馬鹿かお前は。一人で時間がかかるのならば、複数人でやればいい」

「いやでも、カーラにこれ以上は」

「誰が手伝うと言った。もっと簡単な方法がある」

 

 カーラは胸ポケットから、大好きな手巻き煙草を取り出し火を付ける。

 

「こっちの女兵士はしばらくこの街の防衛を手伝うんだろう? 私は商人で、今のお前に手を貸してくれそうなのはあの女記者くらいだ。どう考えても人が足りん。なら、余所から持ってくればいい」

「雇うっていうのか? でも……あんまりキャップはないぞ?」

 

 今の手持ちキャップは200とちょっとくらいだ。

 本当はもうちょっと持っていたのだが、先ほどアルトゥーロが開いている武器店で弾薬を補充したおかげでほとんど使ってしまった。

 

「金がなくてもやりようはある。まぁ、とりあえず今日は互いに一杯飲んで解散といこう」

「……任せろってこと?」

 

 カーラは美味そうに煙を吐くと、ニヤリと笑って見せる

 

「朝になればわかるさ。とりあえず今日は飲んで寝て、疲れを取ればいい」

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 そしてカーラの言う通り、後からやってきたパイパーも交えて一杯やって、その後ナットが用意してくれた寝袋に包まって寝て、朝を迎えた。

 

 そして、またもや集合場所だった『ダグアウトイン』に行くと、そこにはカーラやグローリーに加えて四人の男女がいた。

 四人とも揃って似たような服を着て、頭にはカウボーイを彷彿とさせる民兵帽を被っている。

 背中に背負っているマスケットっぽい長い銃は、どうやらレーザー兵装のようだ。

 

「話を伺い、駆け付けた。君が噂のガンマンか?」

「さて、自分がどういう噂をされているか知らないからなんとも言えないが……」

「ああいや、失礼。自己紹介が先だったな」

 

 少しだけ他の三人よりも小奇麗な服装をしている黒人男性が、ニッコリ笑って握手の手を差し出す。

 

「プレストン・ガービー。コモンウェルス・ミニッツメンだ」

 

 ミニッツメン?

 話だけ聞いていたけど、警察というか自警団のような真似をしている民兵組織だったっけ。

 そうか、カーラが言っていたのは彼らの事か。

 

「危険度の高いレイダーの捜索、および排除のために駆け付けた。こちらは仲間のエマ、ジョシュ、それにアンソニーだ。ミニッツメンの中でも、特に偵察任務に長けた人員を連れてきた」

「心強い。暴れるだけなら意外と得意なんだが、探すのは苦手でね」

 

 心からの本心だ。

 特にここは、住み慣れたバンカーヒルではない。

 土地勘のない所での、しかも最悪単独での探索をするかもしれないというのは正直怖かった。

 

 差し出された手を握って、俺も名乗ろう。

 

「俺はロスト。今はバンカーヒルに身を寄せている、流れ者だ」

 

 

 

「よろしく頼む、プレストン」

 




ガービーに着いてきているミニッツメン三名。
名前でピンと来た方は大正解、スーパーウルトラマーケットの三名です。
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