核で一度滅んだ世界に転生した瞬間なんか死んだ件について 作:rikka
(なるほど、こりゃ確かに精鋭だわ。アストリンとはさすがに比べられんけど、それ以外の今まで見てきた戦闘職の中では余裕で上位だ)
少なくとも、キャラバンのガードよりは役に立つ。
唯一気になるのは、装備による隠密性が皆無な事くらいか。
「ありがとうロスト、おかげで被害はゼロだ」
「いや、俺がいなくても大丈夫だったろうさ。ミニッツメンの兵士は、下手な護衛よりも頼りになる」
そして問題の連中らしき武装グループだが、あっさりと見つかった。――というかこっちに奇襲を仕掛けて来やがった。
武装集団だから目を付けたのか?
普通は逆だと思うんだけどなぁ。
「プレストン、ジョシュ達は?」
「先行偵察を頼んでいる。もし何者かに襲撃を受けたら、フレアガンを上空に放つように言いつけてある」
「……なら大丈夫か」
今探索しているのはダイヤモンドシティの東部エリア。
建物が多く、身を隠す所が多いためにトレーダーもあまり通らないか、あるいは警戒する場所だ。
いるとしたらこういう所なのだろうと思っていたら……いやまぁ大当たりを引いたのはいいんだけどさ。
「それにしても、なんなんだコイツらは……」
俺と行動を共にしているミニッツメンの指揮官――プレストン・ガービーは、一枚の汚い紙きれを忌々しそうに見ている。
ちなみに、自分も同じ物を持っている。
奇襲をかけてきた連中が懐に持っていた、血液で書かれた誓約書だ。
『自らの血をもって、拷問と死を覚悟の上で』
『自らの命をかけて最後まで判事と彼の部下に誓います』
とまぁ、なんというか……世界観に合ってるような合わないような文章が血で書かれている。
おそらく、書いた本人の血なんだろうが……読んでいるだけで気が滅入るメモだ。
「『ゼラー軍を恐れろ!』とか叫んでいる奴がいた。……おそらくだけど、拷問に耐えられなくてそのゼラー軍っていうレイダーグループに加わった奴らじゃない……かな」
「イカれているとしか思えない。一刻も早く連中を排除しなくては」
「ああ、俺もそう思うよプレストン。だから冷静に、な」
この男は、かなり正義感の強い男のようだ。
正直、驚いている。
この手のタイプなんてこの世界にはもういないんじゃないかと思っていた。
「ロスト、君はこの近くに連中がいると思うか?」
「思う。……というか、多分待ち伏せている」
「待ち伏せ?」
「戦う事を知っている人間を出来るだけ生け捕りにしたいのならば、手っ取り早いのは大人数で囲んで戦意を喪失させる事だ」
「……なるほど。それで念入りに建物のクリアリングをしていたんだな?」
「一応、な」
更に念を込めるために、定期的にセンサーをフル起動して定期的に後方のチェックを行っている。
どうやら、今の所は尾行されていないらしい。
「あんまり人間がいないのかもしれない。いたとして、10人に届くか届かないかくらい」
「根拠は?」
「一つは、救出したセキュリティが聞いた『数が足りない』っていう証言だ」
これは自分の経験則だけど、この近隣のレイダーは10人くらい集まって一つの集団として活動を始める。
実際10人の武装集団がいれば、それが全員パイプピストル程度の装備しか持っていなくても脅威だ。
「それに、それなりに数の揃ったレイダー集団になっているんなら補給の必要が出る」
「襲撃の話が出ているハズだと?」
「多分ね。引っ越し繰り返すような連中なら猶更だと思う」
まぁ、今の拠点で食い物大量に見つけたとかじゃあない限りだけど。
「で、最大の理由だけど」
「ああ」
「数が揃っているなら、とっくに仕掛けていると思うんだよね。中途半端な奇襲とか仕掛けず」
「……なるほど」
何か所か包囲に向いている地形はここまでにあった。
あそこで奇襲に来た要員も含めて、出せる戦力を全部出していれば包囲出来ただろう。
数が揃っていたのならば、だけど。
「いや待て、それなら相手は戦力を捨てたのか?」
「あのイカレ具合を見るに、多分ちゃんと戦力として使えるのはアレが全部だったんだろう。要するに……拷問による洗脳が終わった新しい連中は」
「つまり、残っているのはその……『新人』と元々の戦力ということか?」
「まぁ、推理に過ぎないけど」
それなら分からなくもない。
戦力として一応数えられるが、外に出せばまだ逃げ出す可能性がある。
そういった『新人』を確実に手元に残すには、『新人』に確実に手を汚させる必要がある。
「多分、どこかの建物に立て籠もっていると思う」
「『新人』の監視と教育のためか」
「それに、やり方によっては少人数で効果的にこちらの退路を塞げる」
というわけでプレストン。正確にはミニッツメンの皆さん。
……装備、変えない?
いやもうこの際そのレーザーマスケットはいいよ。
射程はあるし、3,4人で並んで一斉発射すりゃ強いだろうけどさ。
でも一発ずつしか撃てないじゃん。
威力を高める改造は出来ても連射は出来ないじゃん。
せめて屋内戦に備えて拳銃くらいは腰に差していて欲しい。
もうこの際パイプピストルでいいからさ。
物陰に身を隠した相手の頭抑えられるくらいの制圧力持った武器を持ち歩かない?
(――って、言えたらいいんだけど……どうもあのマスケットはミニッツメンのトレードマークみたいだしなぁ)
「それらしい所を見たら、ミニッツメンは一旦下がってくれ。壁役も兼ねて、俺が最前線を受け持つ」
俺ならやろうと思えば弾丸を見て避ける事もできるし最適解だろう。
実弾なら見てから避けることも出来るし、仮になにかの間違いでレーザー兵器持っててもこの体なら多少は耐えられるはずだ。
カウンティー・クロッシング周囲の一件でルーカスから報酬代わりにもらったアーマーも、それに耐性がある奴だ。
被弾したことないから、直撃もらってどんくらいのダメージになるかは分からないけど。
「……なぁ、ロスト」
「ん?」
「君は今、流れの傭兵だったな。どうだ? この件を乗り切れたら、ミニッツメンに来ないか?」
「……ん~~~~~~~」
とりあえず、この件終わらせて、ちゃんと探偵と話合ってからだな。
というかさ、予想しないじゃん。
入れ違いで探偵が出かけてしまってるなんてさ。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
「……舐められてんのかな」
一度、交代で見張りをしながら夜を過ごしたりしてたどり着いた、人の気配がする建物を発見した。
そこの壁には、拾ったのだろうペンキで「Free Water!」「Welcome trader!」なんて書かれていた。
入り口を示す矢印と共にだ。馬鹿か?
「なぁ、その……エマ、ジョシュ、奴らはこの中に?」
偵察役を買って出てくれたミニッツメンに声をかけると、彼らは自信満々に頷く。
「ええ、間違いないわ。連中の一人が中に入るのを確認した」
「それに、そこまで古くない血痕がこの周囲にチラホラあった。弾痕もだ」
「……何人か襲ったか」
どういう拷問をしていたかは聞いている。
生皮剥がすような分かりやすい物から、鼠を捕まえて対象の腹の上に置いて金属ボールを被せて、その金属ボールの上で火を付けたそうだ。
熱を恐れた鼠は逃げようとするが、金属のボールを突破できない。
すると、柔らかい所を掘って逃げようとする。
つまり、腹を食い破ろうとする。
恐怖を植え付けるために、捕えられたトレーダーの一人がその方法で、他の皆の目の前で殺されたらしい。
(……今まさに、レイダーへと教育中かもしれないな)
聴覚,並びに視覚センサーを最大まで上げて建物へと目をやる。
……叫び声の類は聞こえないが、確かにそこに誰かがいる。
「プレストン」
「なんだ?」
「話していた通りミニッツメンの面々と一緒に、周囲の警戒を頼んでいいか?」
「なんだって?」
プレストンは頷いてくれたんだが、ミニッツメンの一人――ジョシュが驚いて……いや、ちょっと不満そうな顔をしている。
「まさか、一人で乗りこむつもりか? 俺達がいるんだぞ?」
「そうじゃない、聞いてくれ皆」
いや、あからさまに中狭そうだから、数いるとかえって邪魔だなって言うのもあるけど!
「もし本当にあそこが敵の今の拠点なら、仮に突入した時に他の所から逃げられる可能性がある」
「……退路を確保してあると」
「あるいは、俺が突入した後に出入口を固める奴らがいるかも」
いやまぁ、いるかもというか間違いなくいるんだが。
対象の建物の隣に、アンブッシュしてる連中がいるのが分かる。
この人造人間ボディは伊達ではないのだ。
装填音くらい、これだけ離れていてもしっかり聞こえる。
(パイプ銃の装填音じゃないな……ちょっといい装備を持った連中がいる)
金属の摩擦音が軽くなかった。多分、トレーダーの商品で武装したんだろう。
本当なら今頃安全な壁の中で、同類の探偵と未来について話し合ってるハズだったのが、実際はこうしてドンパチの話し合いとは泣けてくる。
しかもあの探偵、どうも例の水の件でバンカーヒルに旅立っていたらしくてすれ違い。
しばらくはダイヤモンドシティの中で小銭稼ぐしかないとか……。
ナット、パイパー、いっそ俺を印刷機の整備士みたいな役職で雇わないか?
「俺が建物の中を荒らして鼠共を追い出す――あるいは呼び寄せる。多分、その時真っ先に動くだろうそいつらは例の……あぁ、判事だったか? そいつの手持ちの中の古参組だと思う。つまり……」
「精鋭ってこと?」
唯一の女性兵のエマの発言に頷いて見せると、他のミニッツメンもある程度納得したようだ。
「よし、分かったな皆? まずはロストが攪乱する。俺とエマは見つからないように移動して、反対側を押さえる。ジョシュとアンソニーはここで待機。それぞれ怪しい奴を見かけたら撃て」
「「「了解」」」
よし、決まり。
それじゃあ行くか。
クリケット姐さんへの、ちょうどいい土産話を作りに行くとしよう。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
(うん、ひょっとしたら違うレイダー集団の拠点だったかもしれないと思ってたけど……これは当たりだ)
入っていきなり仕掛けられていたワイヤートラップを解除し、もし引っかかったらぶっ放されていただろうダブルバレルのショットガンも取り外してから一番手前の部屋の鳶をそっと開けて覗くと、腹部が抉られて血まみれになっている女性の死体が目に入ってきた。
(例の鼠の拷問を食らったのか。ここでもやってるって事は、どこかに誘拐された人間が他にいるハズだな……)
よく見ると、顎が無くなってる死体や、顔を焼かれた死体がその周囲に転がっている。
全員拷問に耐えられなかったのか。
(死体置き場ってかゴミ捨て場みたいだな……いや待て、ってことは)
視線を上の方へと向けるとそこは割と大きな穴が開いていて、少しだが上の階の様子が分かる。
(檻っぽいのがあるな。上は収容所兼拷問部屋――)
――そこにいるのは誰だ!!
(来たか!)
上から撃たれかねないためにそこを飛びのき、通路へと目をやると物陰から二人飛び出してきた。
(VATS不要!)
44.マグナムを引き抜き、二連射。
それぞれ真っすぐに、飛び出してきた二人が引き金を引く前にその頭を吹っ飛ばす。
「ジャックポットだ! お次はまだか!?」
いつもの10mmではなくマグナムを使ったのは、ひとつにデカい音を立てて外の連中――敵にも、プレストン達にも開戦を知らせるため。
そしてもう一個は、いるかもしれない拷問による教育が終わったばかりの連中をビビらせるためだ。
「戦う気がないなら銃を捨てて隠れていろ!」
もし銃を捨てて投降してくれたのならば、なんとか助けたい。
外からレーザーマスケットの独特な射撃音がした。
入口を押さえようとした連中を、プレストン達が押さえてくれているんだろう。
上から怒号とバタバタ足音がする。
(リコンセンサー起動、足音の発生源にタグ付け)
自分は仕事上屋外での戦闘が多かったが、屋内戦の方が得意かもしれない。
一度に出てくる数が限られているのならば、仮にVATSを使う場面があったとしても負担が少ない。
アストリンと出会ったあの軍施設のようにそこそこ広い所だと話は変わるが、普通の建物ならば背後さえ確保されていれば問題ない。
(まぁ、そういうこと考えてると背後から襲われるんだけどな)
――死ね! 死ね! 死んでくれぇぇぇぇぇぇっ!!
通路を突き進んで上へ上がろうとしたら、階段の所で弾幕を張られていた。
パイプライフルじゃない、サブマシンガン持ちが1名。
狙いは全くあれだけど、うっとうしい事この上ない。
「足止めか」
先ほど覗いていた部屋から重い物が落ちた音がする。
死体の上に落ちるのは避けると勝手に思っていたが、考えたらその程度で止まる連中じゃないか。
(リコンセンサー再計測、移動している音源の数……8)
幸い壁は古く、薄く、そして俺の手元に
「そこっ」
音源に付けて視界に映るタグを目安に、壁越しにマグナムを一気に叩き込む。
最初の数発は壁に阻まれるが、それで更に脆くなった壁を抜いた弾丸が、遮られた視界の先にいたターゲットを貫いたのが音で分かる。またもやジャックポットだ。
(万が一、今のルートを通って外に逃げようとしてもミニッツメンが待ち伏せしてる。だったらさっさと上を押さえるべきか)
念のために、緊急時の退却用に持っている地雷のスイッチを入れて部屋の入口辺りに放り投げてマグナムを構える。
……弾幕が厚くなった。増員が来たか。
(今1人倒して残り7。上でマシンガンばら撒いているのが多分2人)
一番怖いのは捕まえている人間を盾にされることだけどその様子はない。
それもそうか、連中からすれば大事な戦力候補だ。
(さっさと上を押さえるか。VATS起動)
オートターゲットをオフ、精密射撃モード過去の経験データから10mm拳銃の弾道を予測、目標、階段手すりの金具を経由した
「落ちろっ!」
マグナムじゃ威力がありすぎるし計測するにはデータが足りない。
空気の抜けるような音とほぼ同時に階段折り返し部分の手すり飾り――金属製のそこに火花が散り、そして更に上の方で、肉が貫かれる鈍い音がする。
――え、あ……?
着弾は間違いない。床に倒れ込む音がした。ただ生死は不明。
段差ではなく、壁と手すりの柱を左右交互に蹴って踊り場まで一気に駆け上がり、呆気に取られている男の眉間を狙ってもう二発。ついでに倒れている奴の頭にも二発ぶち込んでおく。
「……よし、死んだな」
外からレーザーの音も消えた。
あの面子が負けるとは思えんし、とりあえず片づけて念のために包囲を維持している感じか。
さて、あとは……
――面白いな、貴様
……来たか。
入口にわざわざ生首を飾っている部屋から、4人のレイダーを引き連れた男が出てきた。
無駄に貫禄のある男だ。
「お前が『判事』か?」
返事の代わりに、四人がそれぞれ得物を構える。
とっさに目の前の部屋のドアを蹴破って中に飛び込むのと同時にサブマシンガンやらショットガンの弾丸が轟音を立てて吹き荒れる。
「貴様は、他の手ぬるい連中とは違う。勇気ある者だ。俺が求める勇者だ」
「俺の下に来い、勇者。お前ほどの勇者を使いこなせるのは、このゼラーだけだ」
黙れサイコ野郎。
勇者ってなんだよ。勇者がいるっていうんならついでに魔王も連れてこい。
「違うぞ、自称判事の拷問狂」
「なに?」
「俺を使いこなせるのは俺自身か、いい女のどちらかなのさ」
レーザーマスケットは正直スナイプ以外で運用したことがないですね……
結構あのデザインは好きなんですが……その、普段使いにはちょっと(
大体いっつもスプレー・アンド・プレイかオーバーシアーが主力になる
熟練将軍の方いらっしゃいましたら、ぜひバニラマスケットの使い方教えてください……