核で一度滅んだ世界に転生した瞬間なんか死んだ件について   作:rikka

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016:決意

「プレストン! 隣からさらに出てきた! レイダーよ!」

「分かっている、手を休めるな!」

 

 建物の中の銃声が一瞬途切れた瞬間に、さらにワラワラとレイダーの集団が現れた。

 むろん、例のゼラー軍である。

 

「どうなっているの……準備が良すぎる!」

 

 レイダーは当然ながら、略奪でしか物資を補給出来ない。

 下手に強そうな人間や、数の多い人間を襲うと人員が減る可能性も高いし、医薬品も消耗――最悪全滅する。

 

 そのため襲うのは個人のトレーダーや、少人数で運営しているファームが主で、そこで手に入る銃弾なんてたかが知れている。

 

 にも拘わらず、今ミニッツメンが戦っているレイダーは、まるで弾薬を湯水のように使っている。

 

「エマ、物影から頭を出すな。落ち着いて、確実に数を減らしていこう」

 

 反対側でも音がしているという事は、そこそこの数が分かれた仲間を襲っているのだろうとプレストンは判断する。

 そして反撃の音からして、二人ともまだ無事だと。

 

「クランク数は最低にしておけ。とにかくしっかり当てて行けば負けはない」

「分かったわ。……彼の方は大丈夫かしら?」

 

 一方でミニッツメンは皆、今回の一件の発端となった男の身を案じていた。

 突然名を上げ始めたガンマン。

 

 バンカーヒルのキャラバンを守るガード達が、『最高』の一人と声を揃えて語る男。

 

 曰く、銃を持たせれば一発で確実にレイダーを仕留める。

 

 曰く、銃弾の雨の中を何でもないように歩いて一発も被弾しなかった。

 

 曰く、ホルスターの中の銃に手を掛けた瞬間、完全装備のガンナーの一団全員の頭に穴が開いた。

 

 普通に考えれば箔付のハッタリが独り歩きしたと考える所だが、ミニッツメンは実際にその実力を見ている。

 

 物陰から飛び出したばかりのモングレルドッグが、次の瞬間頭が無くなった状態で自分たちの目の前に力なく落下したのを。

 

 高所に潜んでこちらを狙っていたはぐれレイダーが、まず一人殺そうと身を乗り出した瞬間額に穴が開いて目の前に落ちてきたのを。

 

 今回の発端となった大量のグールとの戦闘でも、拷問で心がボロボロになっていたセキュリティが 気力を取り戻すほどに鮮やかで、力強かったと言う。

 

 大本である判事と呼ばれているレイダーが籠っているのだろう建物からは、先ほどから銃声が続いている。

 銃声が続いているという事は、やはり交戦中という事だ。

 

「……ロスト、まだか?」

 

 

 

 

 

 

◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇

 

 

 

 

 

 

「……おかしい」

 

 部屋の中に逃げ込み、壁だけじゃあ不安だから更に盾になりそうなベッドを引き上げてその影に隠れたが正解だったな。

 

「弾が切れる気配が全然ない。……あの判事とか言う奴、どこでどうやって弾薬を補充した?」

 

 あれかな。顔の知られてない普通っぽい奴にキャップ持たせてダイヤモンドシティかグッドネイバーで弾薬買ったとか?

 

 

――どうした勇者! お前の腕はこの程度の攻撃で止まるものではないだろう! 立ち上がれ! 

 

 

 

――そして立ち向かえ! この私に! そして(くだ)れ! この私に! このゼラーに!

 

 

(いや、あれにそんな頭はないな……)

 

 無駄に拷問知識は持っているようだけど、コイツは典型的な奪う事しか知らないタイプだわ。

 

(パイプ銃ご用達の.38弾ならまだわからんでもないが……45弾とかコイツらどこでこれだけ手に入れた?)

 

 珍しい弾ではない。

 主にグッドネイバーのギャングが好むサブマシンガン用の弾だ。

 クリケットの姐さんの主力商品だし、グッドネイバーやダイヤモンドシティでもそこそこ売っている。

 

(カーラも向こうでよく売り捌いているって言ってたしな)

 

 だが、これだけ長々と弾幕張るほどの45弾となると……キャップ4ケタは普通にいくだろう量だ。

 それだけのものをこうも無駄に使うとなると……。

 

(誰かが裏にいる。目的は分からないけど、コイツラの補給を請け負ってる奴が)

 

 出来る事ならばこのレイダー達を捕まえて全部吐かせてみたい所だが、その余裕はない。

 

(タグの移動は見られず。マジでこのまま撃ちまくって俺をあぶり出すつもりか)

 

 部屋に飛び込む前に起動していたリコンセンサーでタグ付けしていたゼラーとその取り巻きに、動く様子は見られない。

 

(普通のレイダーならとっくに一人二人くらいは部屋の入口側に回ると思うんけどな)

 

 というか、あまりに動きがなさすぎる。

 ついでに言えば、マガジンの交換も少し遅い。

 

(使い慣れていないって所か。普段はパイプ系ばっか使ってたって感じか?)

 

 となれば、この弾幕は訓練の一種かもしれない。

 そうか、判事が直々に率いているから古参とは限らないか。

 むしろゼラー本人が睨みを利かせて新米を仕上げる方が効率的だ。

 

(で、教材が俺か。いや、俺レベルは予想外だったんだろうが)

 

 言っちゃ悪いが、これが並みのガードやミニッツメンならもう死んでいただろう。

 アストリンくらいの腕があってようやく切り抜けられる、それくらいにはこの狭い屋内での戦闘は難易度が高い。

 身を隠す場所も限られているし、その場所もだいぶ脆くなっている。

 爆発物の一つでも投げられたら即アウトだ。

 自分ならば爆発物自体に銃弾当てて爆発させられるだろうが……。

 

(人を操るには、罪を犯させて罪悪感抱かせるのが一番だからなぁ。殺しが最初の第一歩か)

 

 レイダーみたく何度も殺人をしている連中でも、『一緒に殺人を行う』という行為は大事だ。

 なんとなく、理解はできる。

 

「……うん。ここで確実に終わらせよう」

 

 二人ほどマガジンの装填を行わなかったレイダーがいる。

 装填の音がしていたタイミングで、布と皮が固い物でこすれる音がした。

 

 拳銃を抜いたか。

 

 仕掛けてくるな。

 

(まずは牽制)

 

 マグナムで狙いを定めて、先ほどと同じように壁越しにぶち抜く。

 頭を狙うのは難しい。狙いは胴体。発射。

 

 轟音と共に壁にいびつな穴が開き、半開きだったドアを押し開ける様に、胸に赤い穴が開いた男が倒れ込んでくる。

 その後ろにいた拳銃――10mm拳銃なんて豪勢な物を持っている奴が二の足を踏んでいる。

 

(VATS待機、一気に決着をつける)

 

 後ろにいた4人とは別にゾロゾロ動き出した連中がいる。

 おそらく、こいつらが精鋭だろう。

 

(音源確認、想定人数計8)

 

 だが、敵は人間だ。

 成長、変異の具合によっては弾を数発当てた所で止まらないミュータントとは違う。

 

(リコンセンサー起動、チェック開始……完了。VATS起動)

 

 目標は呆けている奴だ。

 あぁ、目を見たらすぐに分かる。

 人を撃ったことがない奴だ。撃たずに済んでいた奴だ。

 

 それに耳が片方ちぎれている。拷問の跡だ。

 こいつは、心が折れてしまった一般人なんだろう。

 

「すまん」

 

 この距離でこの判断の遅さなら、VATSは使うまでもない。

 だが、ミリのズレも起こしたくなかった。

 

(精密射撃モード同時起動、ターゲット……インサイト)

 

 一番確実に、額――脳幹を撃ち抜いて、痛みもなく即死させたかった。

 

 引き金を引くと、10mmの方ではまずない衝撃が右腕に響く。

 それと同時に、一切の断末魔もなく――男は肉の塊になる。

 

「……安心しろ」

 

 お前をそうさせてしまった馬鹿共は、俺が全員地獄に叩き込んでやる。

 

(接近警報確認、数2)

 

 左手で10mmを引き抜き、部屋を飛び出す。

 そこにいたゴルフクラブや適当な板に有刺鉄線巻きつけたモノを手にしてる連中に10mm弾をお見舞いする。

 額に、その脳幹に一発だけ。

 

「残り5」

 

 廊下に飛び出した途端に、他の部屋に身を隠しながら狙ってる連中がサブマシンガンを乱射してくる。

 

(視覚センサー計測処理レベルを2.0から2.5に、聴覚センサーを1.5から3.0に調整。軌道予測データ……取得、最適行動予測計算……完了)

 

 サブマシンガンはとにかく連射性能に優れた武器だが、弱点として弾速がやや遅い。

 自分の目と耳なら、高低差も特にない所で2,3人の弾幕を張られてもこうして歩いていける(・・・・・・)

 

「う……そだ……うそだうそだうそだ!」

「当たれ! 当たれ当たれ当たってくれっ! じゃないと……じゃないと……っ!」

 

(構え方がなってない。コイツらも撃ち慣れていないクチか)

 

 戦前の建物とはいえそこまで大きい建物じゃない。

 十数歩も歩けば目の前までたどり着く。

 

「動くと苦しむぞ」

 

 まぁ、動く前に殺してやるが。

 左手の10mmを二回、右手のマグナムを一回ぶっ放してそれぞれ頭を撃ち抜く。

 

 断末魔が聞こえない事に少しホッとする。

 こういう連中の死に際の言葉なんて聞いたら、さすがの自分もしばらく寝れない気がする。

 

 更に一人、一番奥の部屋に気配があったからマグナムで撃ち抜く。

 こっちは配慮の必要がない。おそらく判事のお付きだ。

 

 苦しもうがそうでなかろうが、死んでくれればそれでいい。

 

 奥までたどり着き、上半分が崩れているドアを蹴り破る。

 

「来たか、勇者」

 

 もうホントこいつなんなんだよ。

 無駄に堂々としやがって……さっさと撃ち殺してやろうかとも思ったけど――

 

「一つ、聞きたいことがある」

「なんだ、勇者」

「お前ら、弾薬をどうやって補給した?」

 

 これだ。コイツラの奇妙なまでに潤沢な弾薬と武器。

 間違いなく、補給を担ってるやつがいる。

 善人を装える奴ならともかく、このどう見てもネジ吹っ飛んでいる野郎と取引している奴がいるなら、ソイツもどうにかしないとまたゼラー軍みたいな組織が再編される可能性がある。

 

「……軟弱者はいつも頭数しか気にしない。2,3人ほど多ければ勝ち目はあると勘違いする」

 

 ええからはよ。

 

「そうだ勇者。弾薬に関しては気にすることはない。お前が己の能力を生かすのに十分な環境を、この判事が整えた」

「……思った以上に潤沢か」

「ああ、そうだ」

 

 

 

「このゼラーの後ろには、バンカーヒル(・・・・・)がついている」

 

 

 …………。

 

 

 お前、今なんつった。

 

 

「そう、バンカーヒルだ。あそこの女と取引をした。勢力を拡大して、奴らの販路に拠点を移せばさらに弾薬が手に入る」

 

 

「そうすれば我がゼラー軍はさらに強靭に、さらに頑強になる! いずれはバンカーヒルも制圧し、この時代を乗り越える力を――」

 

 気が付いたら、装填したばかりのマグナムを四発叩き込んでいた。

 頭に二発。心臓に二発。

 ボスらしく話を聞いてやろうかとも思ったがコイツは駄目だ。

 ここで今絶対に死んでもらわないと困る奴だ。

 

 こんなことになるとは思っていなかったが、俺だけで乗り込んでいて正解だった。

 ミニッツメンは来ていないだろうが、一言も発さず崩れ落ちた元判事に念のため10mmをもう二発撃ちこんでおく。

 

(……女、だと)

 

 一瞬銃弾の販売を扱うクリケットの姐さんかと思ったが、違う。

 あの人はエキセントリックな発言をするだけで、それなりに筋や道理を弁えている人だ。

 後いる女は……カーラは除いて医者のケイに娘のメグ、雑貨店のデブ、ストックトンの娘のアメリア……そして、

 

「……ケスラー」

 

 アンタか?

 確かにどこかのレイダーと繋ぎを持ってるって話は聞いていた。

 だけど、ここまでのイカレ野郎の援助なんて、正直どうかしているとしか思えない。

 

(というかよぉ……姉御、意味分かってるのかい?)

 

 外からはまだ銃声がする。

 プレストン達がまた戦い始めたって事は、外にまだゼラー軍がいる。

 バンカーヒルが(・・・・・・・)育てたレイダーがいる(・・・・・・・・・・)

 

 部屋の一部、壁が崩壊している部分から外を覗くと、やはりそれなりの数のゼラー軍がチラホラいた。

 プレストンが何人かマスケットで仕留めているが、相手の位置が悪い所でばらけていて応戦に苦慮している。

 

「リコンセンサー、再起動。補足(タグ付け)開始」

 

 もう決まりだ。俺はバンカーヒルから離れる。

 ケスラーの姉御とは話をしなきゃならんから一度戻るが、バンカーヒルを家にするのはそれが最後だ。

 

 ただ、それでも世話になったのは確かだ。

 サヴォルディ親子には寝床と飯、それに酒を出してもらったしケイはいつもスティムパックを始めとする医薬品を売ってくれたし、娘のメグは遊んでくれた。

 

 これが真実ならばバンカーヒルに汚点のけじめは必要だ。

 だけど、この汚点をいたずらに広げるのも……上手い単語が見つからないが、強いて言うなら俺なりの『義』に反する。

 

「VATS起動。目標(ターゲット)ゼラー軍(All enemy)

 

 せめて、バンカーヒルが危うく育ててしまう所だったこの狂気の略奪者は俺が止めよう。

 ミニッツメンでもセキュリティでもなく、俺が止めなくちゃいけない。

 

「インサイト」

 

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