核で一度滅んだ世界に転生した瞬間なんか死んだ件について 作:rikka
「駄目だジェイコブ、雇った連中も全滅したようだ」
「ガンナーの役立たずめ! しかも全滅という事は装備を回収されたという事だろう?」
「生き残ったコンパウンドの部隊が偵察を出したが、タレット網が更に強化されていたらしい。それに、あそこに住み始めた人間もいると。当然武装している。恐らくガンナー連中の装備だろう」
スーツに身を包んだ恰幅の良い初老の男と、ジャケット服に身を包んだ男が声を潜めて話している。
「……こちらから手を出すのは危険か」
「ガンマンという話の通り手練れなのだろう。だが幸いな事に奴は、襲撃した『コンパウンド』の実行部隊をどこかで優秀な防具を手に入れたレイダー集団だと思っている」
話している内容は、一人の男について。
ここ『コベナント』からは離れてはいるが、男達にとって大切な『研究拠点』のすぐ近くに住み着いたとある
「ガンナーの事も?」
「誰かが人造人間である自分を始末しようと雇った。……までは考えているようだが、我々と結び付けている様子はない。あるいは候補に入れているかもしれんが、確証はないだろう」
「……では、先日の奴からの警告は」
「人造人間の癖に、とは思うが……純粋な善意なのだろう。レイダーの存在によるこのコベナントへの流通の影響を気にしていた」
「…………忌々しい。強さからして、恐らく奴は本物だ。なんとしても排除せねば」
「だが、今は静観するべきだ。幸い奴も試験の事を説明したら納得していたし、無理に我らと関わるつもりはない様だ」
「……大問題なんだぞ、スワンソン」
「
「わかっているとも、ジェイコブ。だからこそ、奴の情報が必要だ」
「繰り返すが、今は静観するべきだろう」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
(こういう戦前の施設探索の依頼は、ワクワクするのと同時に一番ヒヤヒヤするんだよな)
闇夜に紛れてダイアモンドシティのその先へ。
レイダーらが左右の建物に潜んでいる事の多い戦前の大通りを通り抜け、今回の目的地であるその施設に辿り着き、中の探索を進めている。
いつも以上に足音に気を付ける。
(視界を暗視モードにしているから見えるには見えるが……純粋に怖いんだよな、この視界。ホラーの世界そのもので)
入った施設の一階は、恐らく多くのコミックやおもちゃが並んでいたのだろう棚だらけだ。
正確には棚と、その棚に飾られていたコミックが燃えた灰や煤だらけ。
(っ! おっと……)
暗視モードの視界の先。
店舗カウンターらしき台のその先の床に、人の頭を見つける。
判別が難しいが、どうも頭蓋骨ではなく――
(V・A・T・S起動。……反応あり)
姐さん特性の10mm拳銃は、特に優秀なサプレッサーが付いた一品だ。
静かに目標頭部にその銃口を向けて、
――パシュッ、パシュッ。
二発を叩き込む。
――パシュッ。
その向こうから起き上がろうと腕が動くのが見えたので、台の向こうに頭が隠れてしまう前にさらに一発。
――グゥ……ゥ……っ
するとうめき声と共に、ゴトリと重い物が床に転がる音がする。
舌打ちしそうになるが、咄嗟に伏せて周囲から体を隠しながら聴覚センサーを上げる。
もしこの瞬間にどっかの馬鹿がフラグ爆発させたりしたら、いつぞやの時みたいにのた打ち回る自信がある。
――ア゛ァ……ァ……。
ボロボロになって穴が開いている天井のその向こうから、うめき声が聞こえる。
それと同時に、何かが徘徊し始める音も。
(……穴が開いているのが厄介だな。階段周りの安全確認したら、大丈夫そうな所に念のための地雷をセットしてから……いやでも下手に建物壊すようなことになったら、目的の物を紛失する可能性があるか。フラグじゃなくてキャップ地雷にしよう)
今俺がいる建物は、大戦前は多くの人間に夢と希望を提供していた、今でもその痕跡が残っている会社。
その名を『ハブリス・コミック』という、かつての大出版社の成れの果てである。
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
「僕のシルバーシュラウド・ラジオを受信したい? き、き、君の居住地でかい!?」
「ああ。今日初めて受信したチャンネルだったから聞いてみたんだが、結構面白くてね」
事の発端は十日前。
俺が人造人間であるというスクープが流れたダイアモンドシティのざわめきが落ち着いた頃を見計らって訪れた結果、ほとんどの店は受け入れてくれたが肝心の雑貨店である『ダイアモンドシティ・サープラス』のマーナが、本人はもちろん夜担当のロボット店員にまで俺との売買を禁止したことから始まる。
あの拠点を改装するには大量の物資が必要であり、それを揃えるには雑貨店の協力が必要だったのだがこれは痛い。
こうなると他の所で売買する必要があるのだが、近場で売買できるのは小規模なトゥルーディの店とそこに立ち寄るカーラのキャラバンのみ。
コベナントは中に入れない。
こうなるとそれなりの規模を持つちゃんとした雑貨店の協力が必要で、真っ先に思いついたのはグッドネイバーしかなかった。
バンカーヒル? 論外である。
いや、出て行った面子というのもあるんだが、デブの奴もうちょっと弾薬も取り扱ってくれないかなマジで……。
で、グッドネイバーに辿り着いたのが三日前。
入って早々「この人造人間野郎!」と絡んで来た十数名を黙らせて市長のハンコックに挨拶をした上で、雑貨店を取り扱っているデイジーというグールに会ってきた。
幸い彼女はこちらに好意的に接してくれたおかげで、今後の取引について上手く話がまとまった。
で、たまたまこの辺りでしか聞けないラジオを耳にした事が始まりだった。
「俺の拠点はちょっと楽しみが少なくてね。……まぁ、最近じゃ住み着いた男がちょっとしたバーをやっているけど、娯楽が全然足りてないのさ」
「それでラジオを?」
「ああ。ダイアモンドシティラジオも悪くないけど、やっぱりバリエーションは欲しいだろう?」
ギャラクシー・ニュースラジオという戦前のラジオチャンネルの中でやっていたドラマの録音を流しているチャンネル。
その大本の人間と話すことが出来たのだ。
名前はケント・コノリー。
戦前生まれの子供のグールだ。
「ちょいと面倒だが、幸いここいらは高所が多い。電波を拾う中継アンテナを建てて行けば、俺の住んでいるミスティックパインまで運べるだろう。途中からはあまり邪魔になる建物も無くなるし」
「それで、わざわざ許可を?」
「まぁ、どうも趣味の一環のようだが、それでも君が運営しているチャンネルだ。許可は取っておきたかった」
「し、し、資材を作るお金はないよ?」
「? 無論、それはこっちでやる。この間襲ってきたガンナー共の装備の余りがいい稼ぎになったし、出来るだけ貯めた「浄化済みの水」をデイジーが全部買い取ってくれたし注文書にも応対してくれる約束をしている」
「じゃ、じゃあ……お金を?」
「あぁ、必要なら払おう。月にいくら必要なんだ?」
「僕が払わなくていいの!?」
「なんでそうなるだい?」
マック――どこからかウチの話を聞きつけ、バーを開きたいと言うからちょうどいいと飲食物の管理者として住まわせた男からも、『バーを盛り上げられそうな物があったら、ぜひ持ち帰って欲しいんだ』と頼まれているし。
野郎、家主に依頼するとはいい度胸だ。
「楽しませてもらう事になる立場だ。今も流れているこのラジオは、ケントが戦前に録音していたものか?」
「う、うん」
「ならば間違いなく、君の物だ。それを借してくれというんだから、多少のペイは当たり前だろう」
実際、俺の居住地に特色を付けるためにも色々と必要だし。
ここいらのラジオなんてダイアモンドシティ・ラジオとクラシック垂れ流してるチャンネル以外は、大戦前の救難信号がそのままになってる物を拾ったりするくらいだ。
本当に、ジェットみたいなオクスリが普通の娯楽になるのが段々違和感無くなっていくくらいに娯楽が本当にないんだよなこの世界。
酒・女・ドラッグ。
さすがにもうちょいどうにかせねば。
「ろ、ろ、ロスト。き、君の事はラジオで知っていたけど……本当にいい人なんだね」
「有名だったかい?」
「うん。人造人間というのもそうだけど、なによりガンマンとして……デスクローを倒したとか、ダイアモンドシティを囲みつつあったスーパーミュータントをやっつけたとか」
あぁ……そっちか。
主に人造人間とバラしてからの信用回復のために、折を見てはDC周りの脅威排除は繰り返していたからな。
おかげでプレストンとは再会できていないがミニッツメンの一部部隊とは随分仲良くなったもんだ。
「わかった。通信の事はいいよ。電波の問題を君が解決してくれるなら好きに使って」
「ありがとうケント」
「代わりと言ってはなんだけど――」
「ちょっと調べて欲しい場所があるんだ」
◆ ◇ ◆ ◇ ◆ ◇
これまでのウェイストランド生活で、ここまで足音に気を使うのは初めてだろう。
いつもフェラルと戦う時は周囲を気にせず爆発物を利用して吹き飛ばしていたから。
ただし、今回の依頼ではそれは出来ない。
確実に何もないと確認して退路確保のために地雷こそ使ったが、いつもの感覚でグレネードなんて使えない。火炎瓶なんてもってのほか。
――ハブリスコミックを知ってる? シルバーシュラウドやグロッグナック・ザ・バーバリアンを出版していた会社なんだけど。
――きっとあそこには、シュラウドに関するグッズや物が残っていると思うんだ。
――頼むよロスト。あそこではTVショーの撮影もやっていたんだ。小道具なんかが残っているかもしれない。
(やれやれ、正直連中相手に火が使えないってのは少しキツいが)
占拠していたのが所構わず銃弾や爆発物を投げまくるレイダーやガンナーじゃなく、建物を血と臓物で汚しまくる筋肉ゴリラでもなかったのは幸いだが。
ヒタヒタと歩く音がする。
一階を慎重にクリアリングした後、俺は静かに二階に上がってすぐの所に身を潜めて中の様子を伺う。
そこそこの数のフェラルが徘徊しているようだ。
(中央部に二体。寝たままならともかく、アレを倒せばさすがに音がするな。とはいえ排除せずに探索続行するのはさすがに無理)
同じくサプレッサーを付けてもらったコンバットショットガンに、装填されている事を確かめる。
姐さんの作品じゃない。
『Kill or be killed』という武器店を開いているクレオというアサルトロンから買った一品だ。
敵が分からない屋内戦闘になるという事で派手な音がするマグナムの代わりに慌てて用意した銃だが、フェラル相手という事で正にドンピシャの銃となった。
(VATS再起動、足音から予測したポイントへのタグ付け)
見えない壁の向こう側に、作り物の脳が作り物の目に赤い印をポイントしてくれる。
(――インサイト!)
――カシュシュ! カシュシュ!!
陰から飛び出し、赤いポイントの場所にドンピシャでいた二体の胴体目掛けて、ショットガンを二発ずつぶっ放す。
――ギィッ!!?
――グッ!!
単純威力では下手なレーザー銃より強いその二撃を喰らい、下の階の微かな異音で起きた二体は今度こそ永遠の眠りに着き――
――オ゛ォォォォォオォォ……
彼らに床に倒れた音で、新たな個体が動き始める。
(予測……上に三体、同階には……こちらも三体。ついでにローチっぽい羽音も向こうからしているな)
すばやく物影に隠れて、向こうからドアを叩き開けて来たフェラルの視界から体を外す。
下手に見つかればそのまま暴れられて、その音で他の個体が集まり食い殺される。
フェラルと戦う時は可能な限り一体ずつ、確実に始末していくのが大事だ。
(……体内ガイガーカウンターに反応もある。こりゃ光る奴もいるだろうな)
すぐさま物陰から一体だけの個体にまた二発撃ち込み、そしてシェルを装填して次に備える。
(探索時間も含めると、長丁場になるな)
確実に探索したと納得するまで調べるには、どちらにせよこの建物内のフェラル全てを排除する必要がある。
再度VATSを起動して、今動いている気配を全てタグ付けする。
「……ターゲット、インサイト」
結局、この日の探索は夜明けまでかかる事になった。
黒いコートに身を包み、町に蔓延る悪を討つ男。シルバー・シュラウド。
その衣装に帽子、かつての台本に写真、ついでにポスターの類も慎重に剥がして回収した。
そのついでにコスプレをする羽目になり、グッドネイバー内部のクズ共を討ち取り、果てには急速に勢力を伸ばしていた厄介なレイダー集団を叩き潰すことになった。
途中依頼主のケントはちょっと大変な目にあったが、依頼の全てが完了したことに喜んで追加の報酬をくれた。
その後一月の安全確保も含めた作業を経て、我が「ミスティック・パイン」は音楽だけではなく、はるか昔の――だが今も知る者が多いヒーローの物語を楽しめる拠点となったのだった。
「……あ~、その。……オーナー?」
「ロストでいい。で、どうしたマック。水やドリンクに問題が?」
「あぁ、いや、通りかかったキャラバン全員ウチの冷えたドリンクには大満足、売り上げも上々なんだが……うん。その、だな」
「どうしてそんな真っ黒なコートの……あぁ、コスプレを?」
「報酬でもらったのに使わないのはもったいないだろう」
「……いや、でも」
「なんか特殊繊維まで編み込まれているから、防御性能が凄くいいんだよ」
「……依頼された時だけ着ればいいんじゃないのか? ラジオの」
「滅茶苦茶頑張って改造してくれた子供のお願いを無下にはできないだろう!!? あの子小遣いのキャップ貯めて俺に依頼出して来るんだぞ!?」
そうして『ミスティック・パイン』は、ラジオを通じて危険なミュータントの発生情報を知らされるや否や銃を手に駆け付ける、現代の『シルバーシュラウド』の住む拠点として認知されることとなった。
なお、後日訪れたパイパー・ライトは俺の格好を見て過呼吸一歩手前になるまで爆笑した。
2016年にPS4盤を購入して十年。
PC版を購入して五年前後が経過した今日この頃。
初 め て 『シ ュ ラ ウ ド ク エ ス ト』 ク リ ア し ま し た
グッドネイバーの外に出てくる敵役辺りから、いかにもアメコミヴィランっぽい奴らが出てきてめっちゃ面白かった
この世界のケント君は悪党との戦いには疲れたけど正義にはまだ憧れて、ミュータント相手の依頼をラジオで用意してくる「さっさと行け、アボミネーションを殲滅しろ」枠。