核で一度滅んだ世界に転生した瞬間なんか死んだ件について 作:rikka
「マジで一人で放り出されるとは思わんかったわ」
ライフルを構え、腰に拳銃をぶら下げていつ化け物が飛び出してきてもおかしくない荒れた土地を歩いている元人間一人。
……ガードの一人か二人位は貸してもらえると思ったんだけどなぁ。
(薄らハゲがどうこう、じゃなくてバンカーヒルって街が俺を見定めているって所かな……面倒な)
「まぁ、装備には満足してるけどさ」
汚れていない綺麗な旧軍の戦闘服にちょっと強化されたコンバットアーマー一式。
ライフルは取り扱いやすいコンバットライフルを、クリケットの姐さんが俺の満足いくまで改造と試射に付き合ってくれた。
おまけに拳銃は10mm拳銃だが、この地域で流通してる少しゴツい銀色の拳銃じゃなくて、全体的にスマートで黒い拳銃だ。弾は同じのが使えると言っていたし、こっそり動く時が多いかもしれないと言ったら一番いいサプレッサーまで付けてくれた。
なんかアレだ。ルパン三世が使ってる奴にちょっと似てる気がする。
……やっぱり信頼されるトレーダーではあるんだなぁ。
今度から、弾薬なら多少サービスしてもいいとか言ってくれるし。
文字通り手取り足取り撃ち方の基本とか教えてくれたからすごく助かったのは事実。
帰ってきたら飯奢ってくれるって言うし、本当にいい人だと実感できた。
グレネードと火炎瓶、それに緊急用の薬品類一通りも分けてくれたのもポイント高い。
これでガチトリガーハッピーという一点がなければ真面目に口説いている所だ。
「さて……橋を越えたらすぐだっていう話だったけど……」
実際しばらく歩いて――ついでに襲い掛かってきたクソデカいハエとかトンボ……トンボ? を拳銃で撃ち落しながら歩いていると、それらしいものが見えてきた。
マットフルーツ……あの謎果実が生った木々が、金属フェンスに囲まれた中で規則正しく並べて植えられている。
その向こうの小屋に男性が二人……二人……。
二人!? だけ!? それも男だけ!?
「あのー……すいませーん!」
とりあえず声をかけてみよう。そしたらあの建物からもう二人くらいは……四人住むには小さすぎるなアレ。
……あれ? どうしたの?
なんかすっごい手をバタバタさせて慌てて……
――ウ゛ゥァア゛ァァアアアア…………
……自分の後ろや横から、どこかで聞いた聞きたくない声が聞こえてきた。
あらぁ
……そのままどこかに帰っていただけませんか??
――グアアアアアアアアアアアアアアアアアアアッ!!!!
「やっぱダメかあああああぁっ!!!」
反射的にライフルを足元目掛けて乱射して、近づいてきていたフェラルの足を破壊する。
すると、結構離れている物影や草むらの中からゾンビ映画よろしくワラワラと他のフェラルが起き上がって走ってくる。
小屋の中にいた二人がなにか叫んでいる。
「アンタ、早く逃げろ! ここらは昨日からフェラルがうろつくようになったんだ!」
それなら目立つところに『フェラル注意』って看板下げておいてくれ!!
「クソが! 流れ弾に当たらないように小屋の中入ってろ!!」
10体……13体か! 一部なぜかアーマー着てる奴がいるけどこの間山ほどいた光ってる奴はいねぇ!
よし! いける!
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
「あ、アンタ強いんだな……。あの数を倒すなんて……」
「まぁ、以前のに比べたらね。……バンカーヒルから頼まれて来た者だ。もう十分に体験したが……フェラルがアホみたいに集まってきてたのか」
今後を考えると弾を無駄に出来ないために、とりあえずVATSを起動して拳銃で全員の足をぶち抜いて全員まともに動けなくした後に、適当な鉄パイプとかコンクリートブロックを使って頭を潰した。
これで、万が一あの光る奴が出てきても大丈夫だろう。
アイツ、本格的に光りだすと一回死んだはずのフェラルが復活するからなぁ。面倒くさい事この上ない。
「あぁ、目の前の施設に元々少しはフェラルが居ついているのは知ってた。だけど、襲ってきても数体だったしフェンスもある。だから、たまに来るキャラバンに手伝ってもらって間引くくらいでなんとかやっていけてたんだ」
いやそれでも危険だろう。
「元々いたのか……。逃げようとは思わなかったのか?」
「ここで育ったんだ。それに作物は十分育ってくれるし、ここは汚染されているとはいえ水場もある。……捨てられなかった」
「あぁ、まぁ……そうか。すまない」
俺はまだそこまで他の居住地を見た訳ではないが、この世界の作物は滅茶苦茶強くてすぐ育つけど、その分俺の知っている作物以上に大量の水を必要とする。
地下水を汲み上げるポンプなどが大量にあればどうという事はないが、そうでないならため池を掘るなどいろいろな手段を取らなければならないようだ。
そういう物をポンポン設置できる職人でもいればまた話は違うんだろうが。
「すまないが、ちょっとしたテントを張ってもいいか? 元々俺の仕事はあの施設の調査と脅威の排除だ。捜索の拠点にしたい」
「あぁ、だが大丈夫なのか? 一人なんだろう?」
……正直、狭いだろう屋内でのフェラル相手の戦いは不安な所はある。
他の連中ならリアルFPSかリアルモンスターハンターなんけど、フェラル相手はリアルホラーゲームになる。
ホント勘弁してほしい……。
振り返ったら腐った身体が立っているとかもうホントやめてほしい。
元の身体と頭だったらチビってたね絶対。
ただ、あの光る奴に比べるとやっぱりほとんどのフェラルは脆い。アーマー着てる奴でも隙間を狙えばあっさり足が砕ける。
(こそこそ動いて寝ている奴らに頭をこっそり潰していけば楽かもしれん)
クリケット姐さん特性のサプレッサー装備のピストル、今回は大活躍だな。
もし、後ろを気にする必要がない狭い廊下なら、コンバットライフルの方も出番が多くなるかもしれない。
「正直に言うが、あのレベルのフェラルだけならそこまで脅威じゃない」
あの光る奴がいたとしても、それまでに倒したフェラルを念入りに処理していけば大丈夫。
問題は潰し方か……。音が出ると不味いし、弾の消費が増えるがやっぱり必要経費という事で頭を撃ち抜いていくか。
「もし失敗したとしても上手く反対側につって奴らを遠ざけることはたやすい」
アイツら、瞬間的な足はクソ早くても長く走れんしな。
「ただ、万が一俺が死んだり、あるいは撃ち漏らしが出たりしたらそっち側に漏れだすかもしれない。だから、今のうちにフェンスの補強をしておいてほしい。最悪でも対処しやすいように、数だけは必ず減らす」
今の自分が買えそうにない装備欲しさに結局あの条件で引き受けてしまったけど、やっぱ人員が欲しかったな。
せめてもう一人。
それこそグローリーさんみたいな人がここに残ってくれていたら安心して潜り込めた。
「あぁ、そうだ。ちなみに他になにか変わったことは?」
「そうだな……。これも昨日の事なんだけど、スーパーミュータントを見かけた。なんだか走って遠くに行っちまったから、とりあえず安心はしているんだけど」
「……そういや橋の近くにいたなぁ」
そん時は核爆弾を片手で握りしめてるなんか豪快な奴の『ソレ』を狙撃して、周りにいた奴を巻き込んでぶっ飛ばしたから強さがよく分らないんだよなぁ。
見た目からして弾が通りにくそうだとは思うが。
持ってる武装次第か。
俺が見た奴は、多分そこらのレイダーから奪い取ったんだろうパイプライフルとか木の板持ってる奴らだったから、撃ち合っても勝てたとは思うが……。
「ちなみに、走っていったってどちらに?」
「あっちのデカいアンテナの方にだ」
「……例の場所かぁ……数は?」
「分からない。ちょっとした数はいたと思うが……気づかれないように息をひそめるのが精一杯だったんだ……」
バンカーヒルの連中、ここに人手を出せよ!
重要な拠点になりうるのに周辺がヤバすぎるだろうが!
重要な交通要所である橋とその周辺もほったらかしだったし、あそこをレイダーとかそのスーパーミュータントとかに占拠されたらどうするんだよ!
「……フェラルがうろつきだしたのは昨日からなんだよな?」
「あぁ、そうだ。」
仕事だからってことでこっちまで来たけど、自分の目で見ておいて良かった。
「よし、テントを張ったらすぐに様子を見てくる。後は任せてくれ」
さすがにこれは放っておけんわ。
△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼△▼
ブラザーフッド・オブ・スティール。
通称、B・O・S。
戦前の技術の収集と保存を目的とする、かつてのアメリカ陸軍が姿を変えた組織。
そんな組織にとって、未知の技術の出元と思われるここ――連邦の調査は重要事項の一つだった。
第一次調査隊は、最精鋭を部隊に入れていたこともあって成功を収めた。
もっとも重要な事項――人造人間とそれを生み出す存在に関しての調査こそ進まなかったが、それでも多くのテクノロジーを持ち帰る事に成功。
そして今回、続けて部隊を派遣した。
パラディン・ブランディス率いる第二次連邦偵察部隊。
通称アルテミス偵察隊。
今度こそ人造人間の謎に関してなにか掴むことを期待されていたその精鋭部隊は、連邦に到着したその直後に失敗していた。
「はぁ……はぁ……っ」
ロックをしただけの木製の扉は、今にも破られそうになっている。
所々空いた穴から、すでに腐っている腕が伸びてくるのを、武装した女がレーザーライフルによる正確な射撃で撃ちぬく。
フェラル特有の耳に障るうめき声と共に腕が引っ込むが、すぐにまた新しい腐った腕が伸びて扉を破ろうとバタつかせる。
「あぁ、パラディン……! パラディン・ブランディス!」
鍛え抜かれたB・O・S兵士であっても、この極限状態ではその精神も崩れかけていた。
手にしたレーザーライフルも、もう弾はほとんどない。
彼女の他にいた七人の仲間のうち五人は、到着直後の謎の勢力による奇襲を受けて殉職した。
生き残った三人もこうしてバラバラになっており、どこにいるかもわからない。
どうにか逃げ込んだ先で守りを固めて救援を待とうとしていたが、結局それはフェラルグールという新たな脅威を呼び寄せる事になってしまった。
――ヴァァア゛アアァァッ!!!
ドアをたたく音がさらに強くなり、鍵の金属部分がきしむ音がする。
もう破られることは確定した。
ここで死ぬのだと。
一発で一匹確実に仕留めたとしても弾は足りず、ライフルの銃底で殴り殺すにしても数が多すぎる。
ライフルを構え、覚悟する。いや、覚悟をしようと努力する。
それでも手は震え、顎は震え、足が震える。
「あ、アド……」
アド・ヴィクトリアム。
勝利のために。
B・O・Sの敬礼の言葉であり、合言葉であり、その魂である言葉。
兵士を勇気づける統率の言葉。
死を覚悟した女性兵士は、それを口にしようとする。
次の瞬間、確実に鍵が壊れた。
そう思わせる破砕音がした。
絶望が彼女の指に不必要な力を入れて、発砲してしまう。
それがドアに穴を空け、向こう側の一体を偶然撃ち抜くが、新たな穴からさらに腕が突き出る。
――ドンッ!!!
それが一斉に、大きな炸裂音と共に消えた。
伸ばされていた腕の一本は千切れ、血をまき散らしながら兵士が立てこもっていた部屋に吹き飛ばされる。
外からまだ、フェラルの呻きが聞こえる。
――タタン! タタン! タタン!
それも、続くリズミカルな発砲音で次々にかき消えていく。
いや、正確には高い位置から聞こえていたうめき声が、地面近くから聞こえてくるようになった。
それに対して、次々に聞こえる生々しい破砕音と消えていく気配。
兵士は呆然と、それを聞いていた。
「おい、部屋にいるのは誰だ? ……というか生きてるか? 怪我をしているなら薬も包帯も綺麗な水もある」
「……おい、ドアを開けるぞ? 開けるからな? ゆっくり開けるから撃つなよ?」
そうしてほぼ破砕されているドアを丁寧に開けたのは、特徴らしい特徴がない東洋の血が入っているように見える男だった。
少なくとも、レイダーからは程遠そうな男だ。
「……無事みたいだな」
「ええ」
兵士は、大きく息を吐いライフルを下げた。
「B・O・S所属、アルテミス偵察隊。ナイト・アストリン。……救援に感謝します」
今更ですが、原作の三年前。アルテミス偵察部隊が到着した辺りがスタート時期になっております